論語読書会　その3　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　e漢字使用

メンバー

鄭墡謨（京都大学留学）
成田健太郎（京都大学　2007年9月より中国留学）
高津友明（劉鵬）（朋友書店）
沈相�ｺ（京都大学留学/星光商事（株））
上田啓之（国際会議場/定年退職）
安澤英治（行政書士）
川那辺恵津子（主婦、韓国文化研究会より）
高井龍（立命館大学　2007年9月より中国留学）
中村典子（作曲家）
張崑将（台北医学大学）
童嶺（南京大学文学部、京都大学留学）
張伯承（仏教大学留学）
角☆掛奈奈子（精神科医）
韓勇（同志社大学留学）
大西保（国際会議場）
稲垣裕史(京都大学）

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2007年12月15日 　≫　　　　2007年12月22日 　≫
2008年1月12日 　≫　　　　　2008年1月19日 　≫
2008年1月26日 　≫　　　　　2008年2月2日 　≫
2008年2月9日　 　≫　　　　　2008年2月16日　≫
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2008年3月8日　 　≫　　　　　2008年3月15日　≫
2008年3月22日 　≫　 　　　　2008年3月29日　≫
2008年4月5日　 　≫　　　　　2008年4月10日　≫
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2007年12月1日　先進　1〜4
いよいよ先進篇、弟子の誰が先進で、後進かなかなかわからない。そこで上田さん年齢比較表を持ち出す。孔子の諸活動の時点での年齢と弟子の年齢を一覧にしたもの。これである程度の見当をつけていただければ結構。

1）先生がおっしゃった。先進の弟子は禮樂に於て野人という。後進の弟子は禮樂に於て君子という。もしこの基準を用いるとすれば、私は先進でありたい。先進、後進には色んな説があるが、昭和の時代では、定公十四年（前496年）に孔子が魯を出て、諸国放浪に出る前の弟子を先進、それ以降を後進とみているようだが、どうでしょう、と上田さん。基本的なことを聞きますが、先進、後進は孔子が決められたことですか？と中村（佳）さん。吾從先進とありますから孔子も弟子も互いに分かっていた区別はあるでしょうね、と上田さん。前から勉強していた人と最後のほうで勉強していた人、と張さん。早い遅いだけでなく、上達度もあるのでは、と中村（佳）さん。先進は野人、素朴で本質をわきまえた人。後進、君子なりは、悪い意味ではなく、野人じゃなくて華麗、華やかさがあるが、芯が通っていないみたいな。昔の区切り、孔子のなかではきちんとした区切りがあり、完全にわかれた役割があるのでは、と川那辺さん。古くは、先進とは五帝、黄帝、センギョク、帝コク、堯、舜といった聖王、後進は三王、夏の禹王、殷の湯王、周の文王などを想定し、野人とは、質朴なことで、先進は、文質の質、後進は文という風な考え方もあった、と上田さん。昔はいいが今はやっているものは良くない、それも時と場合によって違うが、たとえば冠は絹のものでも倹約につながればそれでもいいが、もうひとつは譲れない、とはっきり心を決めていたでしょう、と川那辺さん。堂に上がってではなく堂の下で拝するという話ですね、と上田さん。そこに疲れた顔の安澤さん、なんでも、四条で自転車がパンク、ここまで押して歩いてきたとのこと、目の前のお菓子をみて、これは何？高笑美、コソミ、美人の高笑い、韓国のお土産です、と川那辺さん。そこに鄭さんも登場。張さんは今日6時に来たとき、誰もおらず、不安で安澤さんに電話をしたとのこと、スタートは6時半なのです。張さん曰く、普通の人であったが勉強した人が野人、先進、役人であって勉強して君子になった人が後進。鄭さんはどうですか？鄭さん曰く、時代的に昔の人、今の人はこうなんだということ。昔は素朴で野人、今の人は君子、文質といって、質が文に勝るのが野人、文が質に勝るのが君子。昔の人は気持ちのこもった禮樂、中味のある禮樂を求めたが、今の人々は心無く形だけ修めようとする。私は先進を然りとする。
前回三人だけで�ｸ黨篇が終わったのだが、前から論語は�ｸ黨篇で終り、それ以降は時代的にも後になって付け加えられていったものと聞いたが、それならば、論語の最後をしめるものとして�ｸ黨篇の最後の節は、あまり相応しいものとは思えないが鄭さんどういうことでしょうかね、と上田、川那辺さん。もともとは子罕篇で終わって、孔子の身の回りのことを付け加えて�ｸ黨篇とした。昔は論語は書物でなく、竹簡に紐を通してまるめていた。最後のところは切れて抜けやすくて、最後に分からないものが入ったり、というかバラバラになったときに無くなってもいいようなもの、分かりにくいものが入っていることがよくある。戦国時代や漢代の発掘現場でもバラバラのものが出てきて順序がどうかとよく議論されている、と鄭さん。竹が落ちて何かあったのかもしれない、と川那辺さん。中国の解説書にも抜け落ちているのだろうと書いている、と安澤さん。では、次に。

2）先生がおっしゃった。陳、蔡に於て私に從った者は皆、門に及ばなかった。普通はここで別節になるが朱熹は続けて�ｺ行には顏淵、閔子騫、冉伯牛、仲弓、言語には宰我、子貢、政事には冉有、季路、文學には子游、子夏を続けている。彼等が陳、蔡に於て随行していたという脈絡からであるが、まず前半からみたい。陳、蔡に於てとは諸国放浪の最悪の時期で、司馬遷の史記でみたように弟子が孔子に不満をぶつけるくだりである。古注では、孔門の弟子達は仕官に復及することも門に進む、学問を続ける事もならず、全く窮してしまい、ただ孔子のみが時を安んじていた、とみている。司馬遷は子路や子貢や顔回を次々に登場させ、その姿勢を問わしめた。それは司馬遷の解釈であるが実に読みごたえのある場面となっている。しかし、ここでは皆といっており、孔子は完全に孤立したものとせねばならない、と上田さん。門に及ばずは、普通は至らない、レベルに至らない、そういう意味ではなく、今はそこに居ないとされる。苦労していた人が、別に仕えたり、今は一人も居ない、それが当たり前のことと思っていたので、上田さんみたいな解釈もあるかな、と鄭さん。中国の解説書もそう、単にここに居ない、現在居なくなったとある。何時の事かが問題だが、と安澤さん。入ったばかり者はレベルに至らないとも読めないこともないが、研究者では、そこに居ないとみている、と鄭さん。その後は十哲、10人に何か意味はあるの？と安澤さん。72人と9には意味があるが10にはない、と鄭さん。
ではそこに行きましょう、ここには子曰がなく、字が使われており、孔子が述べたというより、弟子の間でそういう序列ができあがったとみられている、と上田さん。孫弟子達の評価した言葉ととるべき。孔子が似たニュアンスで云ったことが後に整理された。論理的に説明する、四つに分けてきれいに述べているのは、孫弟子、有子あたりではないか、と鄭さん。言語、文学とはどういう内容か？と安澤さん。特別に才のある人、言語は話すことで書くことではない、と張さん。言語は、賓主相対する辞（ことば）とされ、外交使節や交渉の場において重要なものとなり、君子の枢機（かなめ）ともされ適切なことばで人を納得させねばならないもの、文学は先王の文に典（のっと）ること、後には博学古文とされた、と上田さん。四つのランク付けがある。言語は遊説する、政治家がもつべき巧みな舌。子貢が上手い。状況判断を巧みな言葉で行う。政事は政治に参加すること。文学は我々の想像する今の文学ではない。四書禮樂の注釈を加える、説明すること。子游、子夏の詩の解釈が後世に影響を与えている。孟子は子張の説を受けている、と鄭さん。文献ですか？孔健氏（孔子の子孫）の論語（漢文、英文、訓読み）ではそうなっていますが、と張さん。僕のは中国社会科学研究院のもの、こっちの方が少し難しいでしょう、と二人で本を見せ合う安澤さん。子游、子夏は共に説明して敷衍しようとする、その弟子から孟子に至ると長い説明文となる、と鄭さん。四種類のなかで、徳行はやはり違うと思う。仕事ができる、と人間ができる、の違い、と中村（佳）さん。顏淵、閔子騫、冉伯牛、仲弓の四人に関しては、褒め言葉しか残っていないことからも違いが分かる、と鄭さん。このランク付けが先進篇の流れを作っている、と上田さん。

3）先生がおっしゃった。顔回は、私を助けてくれる者ではない。私が何を言っても説ばないということはない。とまあそんなことですがどうですか？と上田さん。聞いてるだけで意味がない。のれんに腕押し、何か言う事はないのかてなもんやね、と安澤さん。子路は助けますか？と鄭さん。見ているだけでは聞いているのみの顔回。でも、これほどすごい言葉、褒め言葉はない。孔子は本当に分かっていなければ、いじわるなことも言うでしょう。ものすごい褒め言葉、と川那辺さん。弟子というより同等、ある意味では孔子も一目置いている、と安澤さん。ここまで自分のことがわかっているのかってことでしょう、と川那辺さん。長島監督における王選手みたいなもの、と安澤さん。言い方が逆説、反語みたいな言い方。全部よろこんで聞いている、で暗黙の評価、と鄭さん。助けにならないのじゃないか、と張さん。私を助けなくてもいいのではないかですか？教える側からすれば聞いてもらいたい、ここを詰めた方がいいとか、いろいろあるでしょう。質問してもらう方がうれしい時もあるのでは、と中村（佳）さん。子夏と子貢は孔子を触発している。絵の事は素を後にするというと禮は後ですねと子夏が返し、共に詩を語れるようになったとか、そういうことが助けになっている。子貢は顔回は一を聞いて十を知るが私は一を聞いて二を知ると返し、それを孔子は認めていた。顔回はいうことないねとなる、と鄭さん。孔子だけじゃなく、顔回は人の話をよく聞いたのじゃないか。彼が入門してから門人と孔子の間のコミュニケーションがよくなったとされる。顔淵というくらいで、弟子達も淵で憩えたのじゃないか。だから顔回が死んだとき皆が厚く葬りたく思ったくらい。だけど孔子にすればブラックホールみたいなもので、やっぱり困ったのではないか、と上田さん。

4）先生がおっしゃった。孝行だなあ閔子騫は。人、その父母、昆弟、これは兄弟のことですが、の言に�閧ｹず。世間の人は父母兄弟のことを悪くいわなくなった。閔子騫の母はなくなり、父は後妻を迎え二人の子が生まれる。継母はわが子には暖かな着物をきせるが閔子騫には粗末なものしか与えない。冬の道でそのことが分かり、父は継母を去らしめようとしたが、閔子騫は継母がいれば自分一人が寒い思いをするだけだが、継母が去れば三人ともに寒い思いをすると止める。そのことを継母が知って以降、三人を隔てなく育てるようになったという話が残されている、�閧ﾆいうのは隙間のことだが、�闌ｾというのは古語で非難すること、仲たがい、言い合いをすること、と上田さん。jiànは批判をいれる、他の人が父母兄弟の言葉の間に批判をするようなことはなかった、完璧な親孝行をしていた。その物語は韓国でもはやっており、親孝行は舜と閔子騫とされる。継母も反省する話、と鄭さん。ママコイジメ物語、どこでもある話、シンデレラもそう、と安澤さん。世界中にそのような話はある。千年前から教育のために出版され、子供には絵だけでわかるようにしているくらい、と鄭さん。日本では継母物はあまり思いつかない、と川那辺さん。教科書にはのらないですね。これは親孝行の話なのですか？他の兄弟に対するあり方みたいなものに思えますが、と中村（佳）さん。舜の親孝行の話があって、同じパターン。それで堯から王を禅譲されるのですが、舜の場合は火をつけて殺されそうになったり、井戸に埋め殺されそうになるのですが、堯の二人の娘に助けられる。二人の娘を妻にして仲良くやっていけるかも堯にテストされるのです。父、継母、弟、二人の娘これらすべてに仕え、その心を通じあわせるというとんでもない話（書経、舜）がある、中国における親孝行の最たるものです、と上田さん。親孝行に対する考え方が日本とはちがいますね、と川那辺さん。中国では、忠孝を大事にし、家庭の中の孝が忠の源となると考える、それで、家庭も政事も治まる、それを論理的に体系化したのが朱熹、と鄭さん。
川那辺さんの本場の"きむち"のお土産。それを持って珍しく川那辺さん、両中村（佳、典）さんともども白木屋へ。飲んでいても華があります。12月23日は国際会議場を見学したい人は11時集合、お祝いの会は12時から、会費は4500円見当です。女性陣がお開きとなったあと、"きむち"を食べようと北大路に繰り出し、ママさんも美味いと、つまみつまんで案の定、午前様。ご馳走様でした。

2007年12月8日　先進　5〜7
師走、先生が走れば学生も走る。本日はトリオを突き抜け、あずき菓子の"つぶらっ娘"をポリポリ、お茶を飲み飲みのデュエット。

5）南容、三たび白圭を復唱する。孔子は、以て其の兄の子を南容に妻(めあわ)した、ということですがどうですか、白圭は？と上田さん。白圭は詩の一節、「白い玉の玷（かけ）たるは、磨くべし。言の玷けたものは、おさむ可からず」で、白圭ならば欠けても磨いて元にもどすことができるが、失言は、覆水盆に返らず、撤回する事はむつかしい、ということでしょう。この話は前にあったでしょう、と川那辺さん。南容は、邦に有があっても無くてもちゃんと生きてゆける（公冶長2）とあり、彼は、孔子が周の蔵室へ行き老子に会うという時、たきつけた魯の南宮敬叔と同一人物かどうかで議論がわかれるが、いづれにしても貴族、詩の一節を日に三度繰り返して復唱するくらいだから、学識もあり、慎重で進取の気のある人物。ここで取り上げられているくらいで、徳行もあったのでしょう。孔子は自分の娘を無実とはいえ獄に繋がれた公冶長に嫁がせたが、兄の娘は南容に嫁がせた、と上田さん。南容は十哲には入っていない？そうですね。だけど、何故この人に嫁がせたのでしょう。もっと一杯優れた人もおられ、最高の弟子というなら、顔回という選択肢もあるでしょう、今でいえば、学歴も家柄も性格もいい、という人を選んでいるのは何故ですか、と川那辺さん。孔子の母は父と野合して生まれた子で、父が死ぬと、母の顔氏の方で育てられ、葬儀の真似事をして遊んでいたということですから、孔家から離れていたのです。しかし、母が死ぬと、十五歳くらいのことだと思いますが、孔子は仮安置して父の墓を探して合葬していると司馬遷は記しています（孔子世家）。少年丘（孔子）は、自分が生きてゆくには、貧困で葬儀を生業とする顔家より、孔家に入り込むことを考え、孔家の承諾を如何にして得たのか、30歳過ぎで弟子もとるくらいの評価を得た時なら、あるいは父が生きているなら別ですが、十五歳くらいの少年がどうして孔家に入りえたのか、疑問があります。いづれにしても孔子は孔家に気を使っていたと思います、と上田さん。腹違いのお兄さん、ということですか？司馬遷がそういうことを書いている？だったら、孔子がお兄さんにとっては非常にいい人に嫁がせた、すごく常識的な選択、顔回なら結婚する相手としては不向きという判断を下していたことになりますよね、と川那辺さん。実は私もそう思っているのです、顔回は最高の弟子、いうことなしという評価が多いのですが、孔子は偏ったところがあって、とてもじゃないが娘を嫁入りさせるなどとは考えていなかったと思います、と上田さん。丘が孔家をどのようにして継いだのかということは書かれているのですか？いいえ（上田）。だとすれば、お兄さんの足が悪かったということを聞きますが？知りません（上田）。誰かがそうおっしゃっていたと思いますが、中国では身体が不自由な方対してかなり厳しい目があるでしょう。現代であっても体の不自由な方々の権利というのは、欧米や日本に比べると厳しい。まして昔となればもっとシビアではなかったでしょうか？そういう事情もあって逆に孔家のほうから孔子を入れたということはありませんか？とはいえ、妾の子供が本家に入るというのはちょっと想像しにくいですがと川那辺さん。それは知りません、と上田さん。何故、南容なのというのは非常に素人っぽい疑問なんですが、やはり突き当たるところがあるっていうか、何かありますね、と川那辺さん。

6）季康子が問を発した。弟子の誰が學を好みますか。孔子のこたえは、顏囘という者が學を好む。不幸にして短命にして死にました。今はもうおりません、とまあこういうことですが、どうですか、と上田さん。素晴しい弟子と思っている。学を好む人はもういない。でも、何故ここまで言い切るのでしょう、他の弟子の立場はどうなるの？そこまで言わせる顔回と他の人とはどこが異なるのか？他の弟子が嫉妬とまではいわなくても、先生は僕たちをどう見てるのだろう・・・先生と弟子との関係はどうだったのでしょう、と川那辺さん。好学と言ってますよね、晩年の孔子は周公のごとく王の摂政となって政治を行う可能性は無くなった、これは陳と蔡の間の荒野で決定的となり、孔子は学と教育に向かいましたよね。その学を継ぐものがあるとすれば、顔回しかいないと判断をしていたと思います。その顔回が先に死んだということは、後継が断たれたということですから、かなりのショックだったんでしょう。他の弟子では無理だと思っていたということですね。と川那辺。老荘思想といって、荘子がいたおかげで老子は後継をえたようなものですが、孔子の場合それが消えてしまったのです。もし、顔回が生きていたらどうなったでしょう、荘子のように顔回が生きていて孔子の学を伝えたとするなら、論語というものが存在したでしょうか、と上田さん。孔子の優秀な弟子たちは後継をどう考えていたのでしょう、と川那辺さん。子路が生きておれば指揮を執ったでしょうが、順序からゆくと子貢でしょう。本家の長男は死んでいる、子貢は三年どころか六年の喪に服してしまって、まさに孔子の祭りの器を地で行っており、十哲といわれた人々も、そこは手を出せずにいたようです。結局後進という人達が有子を孔子の代役に置いて一時期をしのごうとして失敗。先生の言葉を確かめ合って残すという方向になったんです、と上田さん。じゃ先進の人達って何をしていたのでしょう？数多くの言葉の取捨選択は誰が決めたのでしょう、先進の弟子にはそれぞれの弟子がいたでしょう、誰かが決めないと決まりませんね、と川那辺さん。子夏などは外国に出て行ったりでね、先進の影は薄い、曽子や有子やその弟子達が中核じゃないですか、と上田さん。それって、後進の弟子が偉大だったってことですよね、論語がこういった形で残るなどとは、孔子は弟子に恵まれていた、まさかこんな形で後世自分が伝えられるなんて孔子は夢にも思わなかったでしょう、と川那辺さん。この文に関してですが、同じ問いを哀公も行っています。君主も宰相も、孔子の学団の将来がどうなるかを非常に気にしていた。自国の人ばかりでなく他国からも、どうなるの？と聞かれれば、どう応えてよいか、少なくとも孔子本人はどう思っているのか確かめておく必要はあったのでしょう、と上田さん。

7）顏淵が死んだ。父の顏路は先生の車で椁をつくりたいと申し出た。先生は、才（顔回）も不才（鯉）も亦、それぞれ人の子。鯉が死んだ時は棺有りて椁無し。私は、椁をつくって徒行するわけにはゆかない、大夫の末にいる以上徒行してはならないからだ、とおっしゃられた、ということだがどうですか、と上田さん。これって、すごくあつかましいお願いで、よくもまあ、こんなことがいえますね。何故こんなことを言ったのでしょう？自分の子供に椁を作らなかったというのは、子が親より先に死ぬという中国的には親不孝、日本でも焼き場に行けないというでしょう。忠と悌が成り立たなくなったことがその因で、禮として徒行できないというのは断り文句じゃない、と川那辺さん。顔回が入って先生と弟子の間がなごんだというくらいで、弟子たちにも人望があり、この時は子路も生きており、弟子達がダメもとでもいいから頼んでみろ、えっ、けしかけたのですか(川那辺)、じゃないか、親爺さん一人の意思だけではないでしょう、と上田さん。あまりにあつかましすぎて・・・おかしいでしょう、と川那辺さん。いや、鯉の親不孝と同じく、顔回に対してもそういう気持が、なんでそんな死に方をしたのか、あれほど注意せよ言ったはずだが、という気持があったとい思う、と上田さん。でしょう、いくら学問をしていても、そんな食うや食わずの生活を全面的に良いとは思っておられなかったのではないでしょうか?着るものも、食べるものも粗末なものですまし、そういった厳しい状況で学問をコツコツやっていた顔回と一方、孔子は禮というものに従いながら、身にまとうもの、口に入れるものに対してものすごい美意識を持っていた人だから、顔回を学の上でこの上なくほめていたものの、彼の不足している部分をどこか心配していたんじゃないかと思って。顔回のストイックさと孔子のストイックさというのは、全く正反対のもののような気がして。回に対する、評価というのはところどころ、合わない箇所があるんですよ、と川那辺さん。私もそう思っている。論語の読み方は鄭さんが言っているが、漢で国教になってから初めは、皇太子教育の一環で注釈が加えられ、科挙試験の中心課題、宋では仏教との対抗という時代のなかで、孔子を聖人君子として突出した人物として描くようになってゆくじゃないですか、そのなかで、弟子をその枠内におさめきってしまっている。ところが、顔回には孔子がついてゆけない異能な部分、子路、子貢にしても孔子のもっていない部分があると思うのです、と上田さん。孔子はその時々で軌道修正しながらバランスをとることができる、異能の人をも取り込んでゆく、と川那辺さん。何よりも、いわば報われない人生でしょう、やろうとしたことはうまくゆかない、子や弟子に先立たれる、自らの学を継ぐものすら失う、と上田さん。そこは今の時代の若者にも伝えたい所ですね。孔子というのは、生まれ、育ち、歩んできた人生などどこからみて報われない境遇ですね。それをものともせず、自分の思うところをつきつめ、弟子を教育し、また、その弟子にも救われというか、窮地を切り抜けることができたり、自分の理想は実現できなかったように見えるが、最終的には弟子達が論語というものをまとめ、現代に至って読み継がれている、と川那辺さん。そうですね、逆境に発憤する、伯夷叔齋に光を与えたのが孔子、孔子に光を与えたのが司馬遷という具合です。朱熹なんかもそうなんでしょう。500年くらいに一人そんな人が出ると鄭さんが言っていた、鄭さんもそれを継ぎたいのでは、と上田さん。では、もっと逆境に耐えてもらわなくては、と川那辺さん。

もし顔回が長生きして、孔子亡き後を継いでいたら「論語」の内容はかなり変わっていたのではないか？と答えのない疑問と憶測をしながら、デュエットにしては9時過ぎまで時間がもちました。読書会というより、座談、いや対話ですかね。素朴な疑問は、いろいろな想像をかきたてて時間を忘れてしまいます。二人でも・・・・

2007年12月15日　先進　8〜11
成田君の葉書が届きました、早速の披露。この文句は？と安澤さん。關雎です、と上田さん。若いのに、流石に学があるな、こんな書き方もあるんか、こっちと違うな、と安澤さん。本日はカルテットでスタート、最終6人となりました。

8）顏淵が死んだときのこと。先生は、噫yiと声を漏らし、天予（われ）を喪ぼせり、と二度おっしゃられた。あ〜天がと釈されることが多いが、イーというのはどういう語感ですか？と上田さん。とても悲しい、と童君。歯をくいしばる、と安澤さん。言葉でなく発音、もれる言葉でない音、最高の悲しみ、と童君。それより強いと、何も言えない、と川那辺さん。喪予というのは、一番悲しいときにいう、諺に喪予之痛という、と童君。自分が滅ぶ、と安澤さん。論語の中で一番悲しいところ、と童君。学問上の弟子、人間としてかわいがってきた大事な人を失った悲しみ、と中村（佳）さん。前回、川那辺さんと随分と話したのだが、孔子にとって後継者が亡くなったこと、自分の学を伝えるものが絶えたことを意味しているが、もし、顔回が死なずに孔子の学を継いでいたら逆にどうなったでしょう、と上田さん。顔回と孔子の性格は正反対くらい異なるでしょう。顔回は説明しなくても分かっていた。他の弟子は聞いてくるので、触発されることもあり、それは孔子も楽しかったが、顔回にはそれがなかった。だけど、顔回は精神的な支えであり、言わなくても分かる、その精神的バックアップがないとしんどいでしょう。自分を支えるものを失う、そこに噫yīと声がもれる、と川那辺さん。伝えてくれるはずの顔回が死んだのだからね、と安澤さん。上田さんは、顔回が生きていて孔子の学を伝えるとしたらどうなっただろう、論語が生まれていただろうかとおっしゃっていたがどうですか？と川那辺さん。顔回は学者だけ、別の弟子は別の仕事をしてゆく、顔回は本を読む人、と童君。顔回だけでは孔子を継ぐことはできないということ、と川那辺さん。昔は孔子は天が�ｺを私に与えてくれている。桓魋ごときに何ができようと天を信じていた。では、今回天は何をしたかった、顔回を先に死なせて何をしたかったのだろう、と上田さん。中国では子と愛将が死んだとき、将を痛むことがある、自分の子より、顔回の死をいたんだ、と童君。じゃ次に行きますか、と上田さん。

9）顏淵が死んで弔問されたときのこと。先生は哭すだけでなく慟された。禮では、近親者のみが慟すとされ、先生が禮にはずれたことをされたのを見て、從者が先生が慟されたと言葉にした。先生は、慟したかと言うと、顔回の為に慟せずして、誰に慟すことがあろう、と続けられた。義疏や集註では、慟したことに、孔子自らは気付いていなかったとみているがどうですか？と上田さん。孔子は本来なら慟すことはしない、平常心を保つ人、その人が平常心を失ってしまうほど悲しみが深かった。引き継ぐ言葉は人間らしい言葉、精神的ダメージがきつかったのでは、Ｄｒ．中村さん、と川那辺さん。言葉でなくて絶望ですから、身体の方を抑えようとしても抑えきれず慟してしまったのでしょう、と中村（佳）さん。先生は無意識的でなく、分かって慟されたと思います、と上田さん。ええっ！わざとということ、と川那辺さん。いやわざとじゃなくて、中村さんがいわれるように、どうしても慟してくるのが分かっていた、意識していたと思う、その後の言葉は、そこまで言わせるなよ、分かりきったことを、くらいの気持ちじゃないですか、と上田さん。

10）顏淵が死んだとき、門人が厚く葬むろうとすると、先生は不可とされた。しかし、それを無視して門人は厚く葬った。前段では孔子の意向に逆らっている弟子の姿がある。先生は、顔囘は自分を父のようにみていたが私は子のようには視ることができなかった。厚く葬ったのは私じゃない、夫の二三子のやったことだ、ということですが、脈絡がわかりにくくて、と上田さん。自分はそのように視ていなかった、そこが気になる。子じゃなくて将として視ている、と安澤さん。孔子の意向に逆らって事を行うというのは普通じゃない。孔子が危篤のとき子路が弟子を家臣にみたてて万一に備えるということがあった。孔子と弟子の間の橋渡し役の顔回を慕う弟子達の厚い思いがあり、先生の制止も聞いていない。自分の子として視ておれば制止したが子と視ることができなかったのでと言い訳をしているのですが、と上田さん。孔子も腹ではそう思っていると弟子が読んでやったのでは、と安澤さん。自分の息子だったら相応しいことを行う、質素にすべきと思っておられたのでしょう、と川那辺さん。そうでしょう。ただ、前回川那辺さんと話したことですが、顔回の死について悲しむのみならず、何でそんな死に方をしたのか、あれほど注意せよと言っておいたはずだが、といった怒りのようなものもあったのではないかな、と上田さん。違う見方ですが、平等にする、父と思うとか子と思うとかそういう特別なことをしない、皆同じ学生、この人だけ特別扱いはしないということでは、と張さん。親子関係のようなことはできない、顔回だけ特別扱いしていた私が悪かった、そう思わせたのが悪かったみたいなことか、と安澤さん。特別扱いした弟子がひっくり返る・・・相当混乱している感じ、と川那辺さん。門人は無視する、先生の泣き方は尋常じゃない、特別弟子みたいにしていたためにそうなった、孔子の性格分析をDr.中村よろしく、と安澤さん。あるところは鮮明で他はめちゃくちゃという症状の人がいるでしょう、孔子も声を上げて体を揺らして慟哭していたかと思えば、顔回の身分不相応な葬式にたいして、弟子をしかっている。ここはいわゆる孔子の禮の部分でしっかりと正気でいっているでしょ。この文章を孔子のカルテと見立てたら、このときの孔子の精神状態をどう分析しますか、中村さん、と川那辺さん。行動は混乱しているけれど、精神病か神経症となると、精神病ではなく神経症でしょうか、と中村（佳）さん。鬱じゃないですか、と張さん。同輩、先輩としてみていた顔回でしょう。孔子にここまで（不可）言われるとつらい、と中村（佳）さん。そこで不可と筋目を通すということで漢帝国の国教となり得た、そこで今回だけいいかとやると国家を運営する指針とはなりえない、と上田さん。不可の意味がどこまで通じていたか、先生を冷たい人と思うのが普通、そう思って不思議はない、と川那辺さん。地位と財力によって葬式はちがう、と張さん。財のない人は禮の対象外で葬式もしない、と上田さん。門人は孔子の門人でなく顔回の門人、門人は主人の埋葬を行うことが重要な仕事。他人の主人を埋葬することはできない、顔回の門人が勝手にやったこと、と童君。孔子も人の門人のことはとやかく言えなかったということか、と安澤さん。

11）季路、子路のことだが、季氏の宰をしている時、政治に関与しているときに季路とされるように思う。鬼�~とは死んだ人の霊、祖先神のことだが、この場合は宗廟にかかわることで祖先の霊、祖先神に仕える、祭事を行うことを想定しており、その事を問うたのでしょう。先生は、未だ能く人に仕えることが出来ない、人とは君主、上司あるいは孔子のことか、それが出来ないのに鬼（祖先霊）に仕えることは無理とおっしゃられた。敢へて死を問うですが、何故子路は死を問うたのでしょう？すると先生は、未だ生を知らず、どうして死を知りえよう、とおっしゃられた、どういうことですかね、と上田さん。鬼�~とは何ですか、と中村（佳）さん。鬼は死んだ人の霊、神はこの場合神仏の神じゃなく、祖先神、人面陀身とか妙な格好をした祖先神がいます、だけど季路としており、政事上のこと、季氏の宰となった子路が季氏また魯公の宗廟の祭りでの出仕のことを問うたと思ったので、祖先霊祖先神じゃないですか、と上田さん。鬼�~については、あまり話がないので載せたエピソードではないかと。孔子に軽はずみに死を問うたので、ピシャリときた。答えるはずがない。そいうことがあったから、この会話が残ったのじゃない、と川那辺さん。敢へて死を問うというのは、私が思うに、かちんときた季路は、先生も生きている人に仕えることは下手で周公とか死んだ人に仕えることばかり言うじゃないですか、と皮肉って言ったのではないか？陽虎や公山不狃のことでも子路が止めていたじゃないですか。だから先生もいささか自嘲気味に、生きた人に仕えるのはむつかしい、死んだ人に仕えるはできようことか、とおっしゃられたと考えたのですが、と上田さん。えっ、孔子自身も自省しているという意味？と川那辺さん。鬼�~に反対するのではなく、順番のこと。まず、人の仕事、その次に鬼�~の仕事をする。孔子は生死を昼夜に例える。生と死は同じことの裏表、一つのことの二つの面。それの順番について述べている。敢問死は英語でいえば、Please allow me to ask death. May I ask you about death? の構文。質問することは、自分の学問の趣味。（子路は）学問の順番を知らない、人の事が先と言っている、と童君。日本語の敢えてという語感じゃなく、もっと軽い言い回しってことですか、と川那辺さん。そこに登場していた中村（典）さん、地上では生と死・・・精神的なものについてどう思うかを聞いたところ、地上の具体的なことは人間のかかわりなしに・・・そういう風なことなくして、祖先のことを考えることはできない。生死はひとつのもの、地上におれば生。死となったときは死。死の方を先に聞くことになった・・・日中では夜の場所は分からない・・・と言葉をつなぐ。単に哲学的な問い。尼さんの話だが、死ぬ直前に今からどこに行きますか?と聞くと、死にいくと。小さいころから仏教をやっているので行くところが分かる。死について聞いた、と張さん。質問者が安心したかったのかな、と中村（典）さん。とまあ、それぞれ思う所が色々ありますようで・・・
帰り道、「童さん、中国に帰りたくなって、淋しいとき　イーって叫んでるの？あーとかふーとか言わないの？」とトンチンカンな川那辺さん。「あれは、書き言葉ですよ。あー、ふーは世界共通語」と童さん。「あ〜よかった、まさか一人でイーって言ってるのかと思って」・・・・・。
年末は22日で終わり、23日は高津君お祝いの会。西陣小学校に集合じゃない！国際会館の正面玄関に集合12時、見学の人は11時、イベントホールとかアネックスホールの玄関じゃないですから注意してください。食事はグリルです。年始は5日はきついので12日からです。ちゃんと通じてます？当日が心配です。川那辺さん、携帯とメールを確認、お祝いメッセージは22日までに郵送してくださいと、封筒に宛名書きまでして手渡し、23日直接持ってきてくれてもいいですよ、大丈夫ですかね・・・・それもできない人は、当日会場で書いてください。そして年初めの論語会は1月12日です。

2007年12月22日　先進　12〜15
本年最後の読書会、久々の高津君、祝ご結婚！

12）閔子は閔子騫のこと、孔子の側に居るのであるが、�ｧ�ｧ如たりは、おだやかに理をわけて争うこと。子路、行行如たりは、剛強なこと。冉有、子貢、侃侃如たりは、溌剌と言うこと。先生はそのそれぞれの様子を樂しんでおられたが、由の若きや其の死、然るを得ず、ですから普通どおりには死ねないとなるでしょう、と上田さん。後に由や?というのがあるように、行行如たりは言動によほど危ういところがあり、子路の性格が真っ直ぐであるだけに行く末を相当心配しておられたということですね、実際、子路が非業の死を遂げているだけに、この言葉が、相当印象深く残っている、と川那辺さん。この場に顔回が居らないことで、哀公14年（BC481）以降、子路が翌年に死ぬのであるがそれまでの間の会話とされる。当時子路は、衛の出公（輒）に仕えていた。以前先生が衛の霊公が亡くなった時、孫の輒か出奔していた父（蒯聵）を立てるかで、どちらを補佐されるかという話があった。子貢が伯夷、叔齊を持ち出し先生の意向を探り、どちらにも味方されないと判断を下していた。子路は先生仕官のラストチャンスとして出公（輒）を立て政権に入ることを勧めたが先生は"名正しからざれば"とそれを受け入れられなかった。子路はならばと出公に仕えてしまった、結局それが子路の死を招く、と上田さん。先生はそれを心配していた、と安澤さん。みんなの前で言われた子路はどう思ったのでしょう。私が行かずして誰が行く、命を落とすことになっても私は行くというくらいの気概があった、と川那辺さん。孔子は弟子の命を案じていた、と安澤さん。上田さんがよくおっしゃるように、子路と孔子の間に気持ちの行き違いが生じていたと思う。今までの経緯を見てきても、子路には複雑な思いがあり、だったら先生どうなんですかの気持ち、先生がやらないなら私が・・・みたいな、と川那辺さん。子路なりにあったんでしょうね、と上田さん。これは誰かがみた光景、観察しているもの、先生が楽しそうにしているのだが、あとの言葉は先生が言ったのではないのでは、と高津君。いや、ここでは主語は子、由と言えるのは先生でしょう、と上田さん。

13）魯の人長府を為る。府は財貨を貯める所、庫は兵器を貯める所。閔子騫が珍しく口を開き、舊貫に仍らば之を如何。何ぞ必ずしも改め作らむ。今までどおりにしておけばよい、長府は不要と言った。先生は、閔子騫はものを言わない男だが、言うと必ず的中する、とおっしゃられた。長府を為るですから増税したのでしょう、と上田さん。増税して、何かを仕掛けようとして失敗でもしたのですか？と川那辺さん。左伝の昭公25年（BC517年）に魯では季氏（季平子）の力が強くなりすぎ、昭公が季平子に対抗するために長府を作ったとある。これは失敗に終わり、昭公は斉に亡命、孔子も後を追い斉に行くことになる。それは、孔子が35歳のことで閔子騫は15歳下で20歳のときのこと、三十にして立つですから、そのときに弟子がいたのでしょう、と上田さん。閔子騫は政治向きの人ではないけれども、世の中の先を読めた。ここでは、ものを言っただけですね、と川那辺さん。ぼくみたい、普段は言わないが言えば当たるでしょう・・・弟子の自慢話、と安澤さん。閔子騫をほめながら自分も同意見、暗に批判している、と高津君。でも、何時から弟子が入り、きまりというかシステムがどういう風に定められたのですか、と川那辺さん。束脩というのがあった。それは最初から気になっていたことで成田君に聞いたが、パトロンのことも言ってたし、鄭さんは衛の場合就職内諾を得て行ったようなことで、要するに経済のことは気になっている、と安澤さん。知らない人が弟子入りするのは、この人についてゆけば、学べば自分もよくなり、仕事にも就けるですから、30歳より、亡命から帰って、大臣になってからの方がピタリとくる、と高津君。十有五にして学を志とあり、学で将来が開けるという時代が訪れていること、貴族の南宮敬叔をたきつけ周の図書館に行ったことともあり、30歳では学では知られた人になっており、弟子がおったのでしょう、と上田さん。孔子には生業もあったからね、と安澤さん。白川静先生は葬儀屋と言ってます、と上田さん。儒にもあかん儒もあると言ってるしね・・・葬儀といっても一般人じゃなく貴族の葬儀ですから。学問に励みながら雑多な仕事をしていたともある、と安澤さん。学で評価されているが、貪欲に生きるのが孔子、最高に褒めていた顔回に対しても心の中では、人間として貪欲に生きておれば死ぬことはなかったとの考えもあったのでは、と川那辺さん。孔子は世を変えたい、元に戻したい、禮樂を復興するのは自分という理想の人、と高津君。

14）由が瑟を弾いていた。当時の瑟は弦の数が多かった。先生の家の門で弾くのはやめてくれと先生がおっしゃられた、下手糞だったのですかね。門人達が子路を敬さなくなった。これはまずいと先生は、由は、堂に升っているが室に入らないだけのことだと申された、と上田さん。23弦、25弦と27弦、と張さん。門、堂、室は物質的な順番でなく、音楽のレベル。堂で弾くレベルであるが室で弾くレベルじゃない。子路が下手ということではなく、弾き方が子路らしく剛直、がさつというか、そういうのでは、と川那辺さん。門は家の門ではなく、門人の門。私の弟子だろうか。こんな下手か。それを聞いた弟子が先生は子路のことを軽蔑しているように聞こえた。次は弁解した形、堂は門人、自分の中に入っているから尊敬しないのはおかしい、と高津君。注釈では、川那辺さんのおっしゃるように、壮気、殺伐の気があり孔門には相応しくないとみてます、と上田さん。読み書き算盤じゃないが瑟も必須科目だったから心得はあった、と安澤さん。ところで、先週結婚年齢の話がでたが、禮記では10が幼で学、20が弱で冠、30が壮で室、40が強で仕、50が艾で官政に服す、60で耆で指使、70・80で耄、100で期、7が悼。7歳以下70歳以上は刑罰を問わずとあるから、結婚年齢は室の30、と上田さん。弱冠というのはそこから来るのか、と安澤さん。やっぱり28とか30でしょう、と張さん。しからば、何をしても問われない、元気な70歳を目指す上田さん。とはいえ、飲酒暴走は許されないでしょう？

15）子貢が先生に、師（子張）と商(子夏)はどちらが賢いかを問うた。先生は、師は過ぎる。商は及ばない。と返されたので子貢は、だったら師が愈（まさ）るということですね、と言うと、先生は、過ぎたるは猶及ばざるがごとし、といわれた、と上田さん。日本でも有名な言葉、バランス論、やりすぎは足りないのと同じ、と安澤さん。現代日本では中庸ではなく、やり過ぎるくらいなら足りないほうがましとなりますが、ここでは中庸ですね、と川那辺さん。儒教では中庸です、と張さん。両方ともダメが本来の意味、と安澤さん。子貢は日本とは逆にとってます、と上田さん。十哲には師（子張）でなく商(子夏)が入っている、結果的には及ばずの方が入っている、と安澤さん。評価しているがあと一歩足りない、と高津君。日本人は控え目であることがよくて過ぎたるを悪いと見るが、子貢が逆に見ているのは国民性の違いがでている、と川那辺さん。万里の長城かと思えば、米粒に字を記す、真ん中がないのが中国。中国にはそれがないから中庸をいう、そのとおりになっていないから秩序を目指していう、と安澤さん。では、"おち"のついたところでお開きに。

ところで今日国際会館に来たと童君から電話があったが、一日間違ってるんじゃないか。そうらしい。そりゃ听不懂君だ！
翌日23日は琴を担いで登場の童君。練習暦は日本語と同じくらい。祝賀にふさわしい曲、宴席に相応しい曲、最後に、二人の結婚を愛でる曲「鳳求凰」（鳳は友明、凰は麻美）ウイーンウイン。日本語よりは断然上手いとの評判。祝賀の会も3時間半の盛会、皆様一年の精進同慶。そして、新年は1月12日(土)西陣小学校で事始め読書会です。では、メリークリスマス、謹賀新年



特製のお花、生花ですが枯れません。そのようなお二人に。童君の琴、高井君のピアノ、中村さんの音楽文法、論語読書会の禮樂の樂。祝言集、一枚のみ入りきらない大きさ、番外編の表紙裏。「富貴なる者は人を送るに財を以てす、仁人なる者は人を送るに言を以てす。」吾、富貴に能はず、仁人の號を竊（ぬす）みて、子を送るに言を以てす（老子）。子とは周の蔵室での孔子のことです。

2008年1月12日　先進　16〜18
明けましておめでとうございます。童君は大晦日に知恩院から祇園へ、おけらまいりですかね。研究室の日本人は帰宅、外国人のみ繰り出したそうです。午前様で帰宅し、元旦は朝から吉田神社に初詣。来年までいることがあれば、もう出かけませんとのこと。

16)魯の三桓氏の季氏、それが魯の始祖、周公より豊かとなった。それであるのに求（冉有）、は季氏の為に聚斂とは税を多額に取り立てること、そうして益している。先生は、「そういうことをするとは、吾が徒、私の門人ではない。小子とは孔子の門弟、鼓を鳴らして求を攻めてよろしい。」と申されたのですがどうですか、と上田さん。求が優秀な弟子でありながらそういうことをした背景はどうだったのですか、と川那辺さん。左伝、哀公十一年（BC484年）に季康子が、田土の広さに応じて課税しようとして、冉有に孔子の意見を聞かしていますが、孔子は三度「知らない」と返答をしなかった、とあります。内々に聞くと、「施政は禮を基準にして、施捨は手厚く、使役はほどほどに、徴税は薄くすれば旧来の法で十分。禮を外（はず）れて貪欲に任せれば、いくら課税しても不足する。周公の典章を守らず思いつき施政をするなら、いくら尋ねられてもどうしようない。勝手になさい。」という風なことであったようで、それなりの手を尽くしてやっていたと思います、と上田さん。攻めて可なりと言うが、孔子としては攻めて滅茶苦茶にするというのではなく、原点に立ち返ってやれ、求なら分かってくれようという気持ちが入っている、切り捨てた訳ではないと思うのですが、と川那辺さん。小子は門人。戦いの種類は色々あるが、鼓を鳴らして戦す、とは正義の戦をするということ。普通の場合には鼓を鳴らさず戦う。正義のためには必ず鼓を鳴らす。聚斂は自分の主人に対してはいいことだが民に対しては悪いことになる、と童君。冉有はこの後にでてくるが、民を豊かにする政治手腕の持ち主。その能力の使い方が、この前の句でいえば、過ぎたるに当たる。一つは魯公より季氏が豊かになっていること、一つは周公の法を曲げていることに加担していることに非を鳴らしている、と上田さん。厳しく修行しているのに、人間の欲が出てしまう。相当なレベルの人、うまく育っていたのであるが、毒されたのか？人間ってもろいな、という感じ。孔子の場合は現場からは外れているが、求の場合は立場が違う。政治の現場にあっては、流れに逆らうことはできないってこともあるのですが、と川那辺さん。今の世でも、年金や健康保険の給付を維持するには増税は避けられないとされている、孔子的にいうならば、禮を外（はず）れて貪欲に任せれば、いくら課税しても不足する。貪欲こそが問題、臣が君より豊かになっている、旧法を曲げている、昔に帰れ、みたいなものでこれに同調せよといわれても、と上田さん。孔子と冉有の関係はここからダメになっていった、と童君。

17）柴、姓は高、字は子羔。愚はおろか。參、姓は曾、字は子輿、曾子のこと。魯はどんくさい。師、姓は顓孫、字は子張。辟は過差（失）を飾る。由、姓は仲、字は子路。喭は剛直、粗俗ということ。子曰がないが、名を呼び捨てにできるのは先生の立場にある者ですから、孔子の言葉とされる。厳しい言葉ですがどうですか、と上田さん。えらい言われようですね。こんなこと弟子に言うのですね、と中村（佳）さん。加地伸行氏は、愚はこれ一筋のいいやつ、魯は地味だがよく心得ている、辟は過失を飾る、華麗で熟達、喭は剛直、自信が有って強情、と無茶苦茶けなしているようで、裏からみればそれなりに優れた資質であることも示していると記しておられる、と川那辺さん。愚とは、義疏では「仁を好みて過ぎるなり」、集註では「知足らずして厚きこと餘り有るなり。」魯とは、義疏では「質文に勝るなり」、集註では「鈍なり。故に其の學ぶこと確（かた）し。能く深く道に造るの所以なり」辟とは、義疏では「過差（失）を飾るなり」、集註では「容止（たちいふるまい）に習いて、誠實少なきを謂うなり。」喭とは、義疏では「剛猛なり」、集註では「粗俗なり。」とみています、と上田さん。辟は別の意味で辺鄙な所、チベットみたいな所、学問の中心でなくて、辺鄙な所の学問。学問の理解が"づれ"ていること。喭はあまり使わない、意味は強情ですかね、と童君。これらの性格は、孔子自体がそうというか、紙一重みたいじゃないですか、と中村（佳）さん。なるほど、と一同。魯はとても正義感があるというほめ言葉、クレバーじゃないがとても正しい人の感じ、志の高い人。大智如愚で愚はよく使われる言葉、一番クレバーな人。見かけは愚であるが非常にクレバー。小さいことに気を使わず、大きな、重要なことにはクレバー。辟はほめ言葉ではない。この三つは今でもよく使われるが喭は使われないし、よく理解もできない、と童君。

18）先生がおっしゃいました。囘は其れ庶きか、通常完全に近い、道に近いとされる。しばしば空し、とはいつも貧困なこと。賜は子貢のこと。命を受けずして、誰の命かが問題ですが、他の指図を受けず、勝手に貨殖した、金儲けをしたことになる。億れば、意図したことはよく当たった、大儲けしたということですがどうですか、と上田さん。人間は一長一短、完全に近くても貧乏の代表の顔回、子貢が道に近いか近くないか分からないが、財を成す力を持っている。顔回が素晴らしいといえども短命、生きる力が弱い。子貢は完全に近くないかもしれないが、生きてゆく力を持っている、と川那辺さん。対照的な二人を配している、と中村（佳）さん。庶は天命に近い、子貢は顔回より財布が豊かだが、仁義、天道、志は顔回に劣る、と童君。其庶乎は日常の言葉では、似たり寄ったり、だいたいそんなところであろうという意味になる。庶は、嫡庶の庶で正統でないこと、ほぼ近くともそのものではないものを指すと辞書にある。顔囘の生き方にも偏ったところがあり、そこは、他の弟子と似たり寄ったりである。子貢であるが、不受命とは、秘かに貨殖したこと、当時の商業は官営であり他国との取引などは本来個人的に行うことは出来ない。ところが、子貢は外交交渉などの折に、儲かりそうな物資にめぼしをつけて、君主の命ではなく、秘かに動かしていたのであろう。それがよく当たり大儲けし、孔子の放浪の旅の資金源ともなっていた。億ればとは、物資の流れ、その価格を正確に捉えて判断していたことを物語り、子貢は商人の尊敬を集めてゆくことになった。先生もそれを当てにしておられたが、これも、偏った生き方と思っておられたのだろう、と上田さん。そこにビールを引っさげて鄭さんの登場、では缶を開けて、明けましておめでとうございます！ところで鄭さん、庶は何が近いのですか？命を受けずしての命は誰のあるいは何の命ですか？と上田さん。庶は道に近い、もう少しで至る。命は天命、生まれつきの才ということでなく、知能、才能を生かしてお金を儲けたということでしょう、と鄭さん。さて、ここで恒例の脱線。

今の世の中、巨額の金を動かす人が金を儲けている。他人のお金で金を増す。ホリエモンや村上ファンド、韓国の今度の大統領もそう。巨額の儲けがあるといっても、実業で価値を創造しているのではなく、結局誰かが損をしていることになる。そこが今の資本主義の問題、儲かる人は一部、ほとんどは損をする、大きな格差を生んで行く、そこが理解できない。中国では、今右肩あがりで、皆が株を買っているが、いつまでも続かない、かならず尽きる、そのときどうするのですか？童君、株を持ってる？と鄭さん。いや、持ってないです、と童君。ヘッジファンドは無茶してます。一般人と同じ条件ですべきではないでしょう。プロレスはリングでやってもらわないと、一般人のところにレスラーが出てきて試合をすれば一般人は怪我をして死にます。ヤクザが堅気の世界に入るようなものじゃないですか。サブプライムも住宅価格が上がり続ければ問題はないが、止まり下降し始め膨大な負債を生み、結局一般投資家のみならず、市民生活にまで損害を与えている。自分達だけで大儲けしたり大損するリングでやるのが筋でしょう。大穴あけて会社を潰すのかとおもえば、何とアラブや中国やロシアの政府系の巨額の資金が入って支えているというじゃないですか。資本に色をつけないのが自由主義の資本主義でしょう。最先端の金融会社の資本に政府系の色をつけて、自由の国アメリカのヘッジファンドですかね？資本主義の根幹のレッセフェール、自由を保てば"見えざる手"により調節されるというのはどこへ行ったのでしょうか？年末年始に韓国のテレビ局が製作した孔子のシリーズを4回にわたって放送されてましたが、今のアジアの経済繁栄の基盤に論語の思想があると強調してました。経済には信用、論語では義、が大切であるという見解です、子貢がその手本とされてました、と上田さん。昔ポーカーで賭けをしたけれど結局金を持っている人が勝つ、賭け続けることができるからね。韓国ではアパートで儲けている。アパートは買えば倍になり、それを売って儲ける、僕にはお金がないから出来ないが、結局そういうことをして儲ける人が評価されてゆく。と中国、北朝鮮、ロシア、アメリカへと話は広がり、極東はかつて中国やロシア、日本が干戈を交えて半島に乗り出していった時代と基本構図は変わらないなと新春放談、白木屋にもつれ込みました。
次回は中村佳永子さん、チューターデビュウです。

2008年1月19日　先進　19〜22
本日の塾頭は中村佳永子さん。友人で先輩の角☆掛奈奈子さん同道。角☆掛は"すみかけ"と読みます。先祖は角を掛けるくらいだから"またぎ"でしょうとのこと。

19)子張、善人の道を問う、善人は素質があるけれども学が足りない人。善人のあり方を問うと孔子は先人の迹（あと）を踐(ふ)まないと室に入れないとおっしゃった。何故、子張は善人の道のことを聞いたのか？自分が善人と思っているのでしょうか？どういう状態で・・・自分が善人、素質があるが学が足りないと思って質問したのか、と中村（佳）さん。何故かは分からない。足りないものは何かを聞いたのか？子張なりの善人の解釈あったけれど・・・先生に確かめるために聞いた・・・前の人がやったことを踐まないと室に入れない、というのも分からないですね、と川那辺さん。自分に素質があるからか？そうしたいが自分の思っていることと違うことを指摘されたのか？ところで善人のイメージは今とこの時はどうなんですかね、鄭さん、と高津君。私も分からない、と鄭さん。朱子は、善人とは中村（佳）さんの説明されたように、素質があるが学が足りない、そのままでも悪いことはしないが、学ばねば聖人の域には達せず、孔子の室には入れないという風に説明しているが、子張はこつこつとした善人タイプじゃなくて、過ぎたりで頭のいい人。そんな風でなくても出来る道があると思って先生に尋ねた。ところが先生はやれるものならやってみなさい、そこをきちんと踐まねば無理と突き放された、と上田さん。子張も人を良くしたいと思うが孔子の理想とは異なる。孔子の答えは先人の知恵を踐まずに自分の道を歩くのでは奥には行けないと戒めた。子張は別の道があるのではと聞いた、と高津君。子張の考えがあったのですか？と中村（佳）さん。子張は前に辟と称されたごとく、それは童君が説明したように学問的には"ずれ"ていること、そういうアプローチをしたのではないか、と上田さん。善人はプラスイメージ、室に入らずは、正門の高いレベル。善人の道だけでは足りないと言ったことになる。迹はプラスイメージでは古からの道を学ぶこと、マイナスイメージでは悪いことをしないとなる。古の道を学ばないと深いところには行けない。善人は素直な良さ、孔子はそれだけではダメで学ばねばならないとした、と鄭さん。不〜亦不〜は〜しなければ〜といえどもならず、の文法ではないか、と安澤さん。それはそれでいいが、要は、そのままではダメ、教育に力を入れるのが孔子、勉強をしなければならないの方向、と鄭さん。アート的ではなくコチコチ先人の迹を踐んでゆく、と中村（佳）さん。若いときに韓国では神と一緒になるには教会に行かないとダメと言われたけれど、逆に近づけないような気がした。真ん中に何かを置かれると、そこで何かにとってしまわれ、精神的な流通がさまたげられる、と鄭さん。善人と悪人といえば、日本では歎異抄が有名、善人なおもて往生をとぐ。いわんや悪人をや、悪人正機説、日本人の常識だが解釈はむつかしい。と白板に大書して自説を開陳する安澤さん。人間を善人、悪人とわけているようではまだまだらしいですぞ。

20)先生がおっしゃいました。色莊者はうわべだけの人。言論が篤（あつ）く確実なだけでは、君子かうわべだけの人か判らない。言うのみではなく行動を見なければ判断できない。弁のたつ人、政治家に多かった、と中村（佳）さん。安澤さんどうですか、と鄭さん。大事なことは、物を判断するには、刑法では、結果が悪いのか、動機が悪いのかとあれば、結果が出ないとダメでしょう。口だけの論議だけでは分からない、物の判断をする場合には行動をみる、と安澤さん。色とは顔色、莊とは荘厳なこと。いかにもまじめで荘重に論じる、善人の道の極みみたいなもの。それを行動で判断するというものではなく、その論じ方そのもので判別することができるほど修練できていなければならない。諸国を放浪し辛酸をなめ、先人の道を修養しているからこそ出来ることといいたい、と上田さん。努力してにじみでるもの、と中村（佳）さん。善人とは正反対のイメージ。論篤とはフリをするのが上手い者。みせつけが上手いのは言葉巧みなこと、善人とはそういうものではない。その反対のもの、と鄭さん。與は"か"とみるか"くみする"と読むかで意味が異なる。と中村（佳）さん。この場合後ろ、色莊者、に重きがあり、論篤〜色莊者となる、と鄭さん。

21) 子路が、聞いたらすぐ行いましょうかと聞くと、父兄が居るのだからどうしてすぐ行うのか、父兄にも聞きなさいとおっしゃった。冉有が聞いたらすぐ行いましょうかと聞くと、先生は聞けばすぐ行えとおっしゃった。公西華は先生が違ったことを言うので、子路が聞いたらすぐ行いましょうかと聞くと、父兄在りと言われ、冉有が同じことを聞くと、すぐ行えと言われた。私はとまどっています、どういうことですかと聞くと、孔子は、冉有は消極的なので聞けばすぐ行え、子路は人をしのぐから抑えるようにと言った。孔子は人をみて指導している。公西華は鋭く突っ込んだなあという印象。ですが一体何を聞いた時のことでしょうか？と中村（佳）さん。思いたったらやる人、どうしようかなと石橋を叩いて潰す人、それぞれの性格に応じた答えをされていると思うのですが、それよりも、公西華がどうしてここでこんな分かりきったことを聞くのか、不思議、と川那辺さん。何を聞いたときのことか？何故分かりきったことを聞いたのか？二つとも大きな問題。二人とも政治にかかわっている。タイプとして子路はやりすぎるくらい、冉有は結果的には上手くやっている、と鄭さん。冉有が引っ込み思案というのはうなずけない。公西華が斉にゆくときに、孔子が止めるのも聞かずに手厚く身支度をさせてやった冉有だし、斉との戦いで功をたて孔子に軍事を習ったと嘘をついて孔子を魯に呼び戻すお膳立てをした冉有でもある。公西華もええっと思ったから聞き返した。何を聞かれたかが分からないがそこが問題、と上田さん。何を話している時かだが、義に関することだろう。子路は即行うが冉有は及ばない、と鄭さん。成る程、と唸る一同。八佾篇で季氏が泰山で祭りをするのを冉有に阻止せよと叱って、結局出来なかった話がありました、と高津君。いい事言うね、赤は後進、これから政治の場に出てゆこうとして、先輩の子路のようになろうか、冉有のようになろうか迷っていたと鄭さん。赤はこれを聞いて自分がどうすればよいのかますます迷ったのでは、と川那辺さん。

22) 匡で危険な目に会った時、顏淵が後から来た。お前は死んだと思っていたと孔子が言うと、先生が居られるのにどうして死ねましょうかと顔回が言った。孔子は顔回を頼りにしており、死んでしまったと思っており、顔回の方もどうして死ねましょうとここでは言っているが、実は先に死ぬ。こうした出来事があったのだが、顔回が死んだ時には、このことを孔子は思い出していたのだろうと思う、と中村（佳）さん。ここはかなり危機の場面。顔回は感情が表に出る人ではないが、ここまでのことを口に出すのは、やはり相当の危機だったのでしょう。激しい感情、人間性の裏に秘められているものをみせた、情熱的な人だった、と川那辺さん。貝塚先生は、同性愛に近いものと言っておられる、と安澤さん。陽貨と間違われたときのこと。朱子なども川那辺さんのいわれるように、先生の難には命を捨てて立ち向かい、先生に万一のことあれば、復讐して果ててみせるといった激しい感情をみておられる。この時点では、顔回の死を危惧したのみで、晩年の顔囘の死は、天が孔子を喪（ほろぼ）すといったものだけれど、状況が違う。当時は、自分の死は文王の文の断絶というのが孔子の意識で顔回は決定的な役割を果たしていない、顔回は発奮したのではないか、と上田さん。論語のなかでは、顔回の評価は一定しており、ここで顔回が発奮したというものではない、論語のなかでそのような上田さんのような解釈ができるところはありますか？それを示せなければ成立しない。歴史的な状況はそうかもしれないが、川那辺さんの方向で読むべき。死んでいたと思っていたが生きていた。師との人間味あふれる、顔回の激しい気持ち、そんな時があった。先王の道を信じており、私たちが転ぶことはないといった意識、と鄭さん。これは弟子たちと一緒に行動していて、大人数では危ないということで旅をして、どこかの町で会おうと約束して、孔子がその場所に着いた時の姿があまりに惨めであったのを見て、まるで、主人を失った犬のようだ、喪家という言葉で評されたときでしたね、と川那辺さん。論語が弟子によって編纂された時点では、かなり時間がたっており、歴史的な解釈とは異なるイメージであった、と鄭さん。先進の弟子が書き残しておればいいのですが、井上靖氏の「孔子」に編纂の状況が描かれているが、どれが孔子の本当の言葉かの判定は容易ではなかった。これといったものが論語となり、その他は家語に置かれたのですね、鄭さん、と上田さん。家語の文章は、論語より長いもので説明調、戦国をへて漢代以降の形式、論語には論語が編纂される時点での評価があった、と鄭さん。釈迦でもソクラテスでも弟子が言行を編纂している、ソクラテスの場合はプラトンだったかな、と安澤さん。プラトンのような弟子が孔子におれば、顔回が孔子録でも書いておれば論語は生まれなかったのかもしれません・・・奈奈さん歓迎会と白木屋へ、以降木屋町、王将へと夜は更け、朝を迎えての帰還、中村（佳）さん塾頭、お疲れ様でした。来週は高津君です。

2008年1月26日　先進　23〜25
本日の塾頭は高津君。雪の降る寒い日。安澤さんはご不幸があり電話のみ、二之湯智参議院議員が参加されるとのこと。安澤さん、日中協会の会合でご一緒、二之湯氏は京都の日中友好協会理事長、日韓友好協会の理事長でもあり、国際会議場では上田さんの先輩。還暦をすぎてから人生をよく考えてみなければならない、今年からはわが国の歴史も勉強してみたいと思っており参加とのこと。記録は不完全、編者の独断で取捨変更を加えており、実際の言葉通りとは限りません。公人のご発言は、伝聞形とさせていただきます。

23) 季子然は季氏の一族。仲由、冉求について孔子に大臣かどうかを聞いた。何を聞きに来たと思っていたら、二人のことを聞かれてビックリした。ほかのことを聞きに来たのではないかと思ったが、仲由、冉求のことであった。大臣は、君子の道に進めなければ止める、離れるもの、と答えて更に、仲由、冉求が大臣というより具臣、頭数みたいなことと謂うと、季子然が聞いた。彼らは君子の言われるままに使えるのか、と聞くと、父と君を殺すようなことには加担しない、と答えた。　これは多分、孔子が旅に出る前、大夫になった時期に季子然が仲由、冉求の二人を自分の部下にしていることを誇らしい気で聞いた。孔子が大臣になったころでいいのですか鄭さん、と高津君。この問答のなかで、季子然が求めているもの、孔子の答えたこと、それをよく見たほうが良い、と鄭さん。孔子は季氏をよく思っていない。八ｲﾂ篇で季氏が泰山で祭りをするのを冉有に阻止せよということがあったが止めさせられなかった。これを止めさせるのが大臣ということでしょう、と高津君。これは、旅に出る前か、魯に帰ってからのことか、旅に出る前なら冉求が若すぎる、上田さんどうですか、と鄭さん。季桓子の時なら孔子が大臣で子路が季氏の宰であり、鄭さんいわれるように冉求は宰となるには若い。季康子の時は冉求が季氏の宰、仲由が衛の出公に仕える前に季氏に仕えていたのですかね、と上田さん。季子然が誰の子とか分かればいいのですが、どうもよく分からない、私が思うに、季子然は仲由と冉求が自分の思い通りに従はないところがあり、まるで大臣のごときで、この二人を上手く使うためのヒントでも欲しかったのではないか。ところが魯公に従うのが大臣で、魯公をないがしろにする季氏に従うのでは具臣と孔子がいうと、具臣という言葉がでたのを子然がとらえて、彼等が具臣なら私に従っていただきましょう、と季子然が返した、と上田さん。従う君は君主か諸侯か、誰か？どれくらいのレベルの人か、と高津君。君は魯の王、季氏は大臣、と童君。季子然は何で来たのか？つまらんことを聞く。自分のところへ来るのであれば、もっと大事なことを聞くべきでは、というのが孔子、と鄭さん。二つ君がありますが、両方とも魯の君主です、と童君。後ろは魯公だが前は大夫を指導する人では、と高津君。君は普遍的に王、ここでは暗黙に魯の君、と鄭さん。季氏がしょうとしていたことを戒めていなかった。正しい道をもって季氏を治めることが出来なかった。臣下の道として出来ていないのでしょう。この場合の君は季氏と思う、と高津君。君を止めることができないとは自分がやめること。孔子は二人を否定的にみるのではなく、大臣というものではない。大臣は魯の王に仕えるものであって、大臣が季氏に仕えるものではない。二人は仕方なく季氏に仕えているが魯の王に背くようなことはしない、それくらいの哲学は持っているということ、と鄭さん。魯公にとってかわることはしないというのは分かりますが、と高津君。季子然が来たとき孔子は何を期待していたのだろうか、川那辺さん、と鄭さん。二人のことを聞くので、えっと思ったのでしょう。上手く使えない、数をそろえているが、季子然の言うことを聞かないとか、仲由、冉求が君にとってかわることはないとか、そんなことは分かりきったことで・・・孔子にしたら表立って言うことはできなくても、心の中では私という人間がいるではないかと思っているのではと。ずいぶん皮肉めいたものの言い方をしているのではと、川那辺さん。この時期孔子は政治に参加することをあきらめているのでは、と高津君。自分でするつもりはない。私に今の政治情勢を聞いてくれるなら別、二人揃えていることを言いに来るとは、がっかりだなというところ、と鄭さん。ここで、途中登場された二之湯先生、お互いに自己紹介。

24)子路が子羔を費の宰に使った。夫の人は父のこと、子羔を賊なう、害を与える、まだ勉強も出来ていないのに、費はどのくらいの邑か分からないが、孔子は心配した。子路は、民人が有り、社稷が有り実際の勉強はできる、それから読書すればよいと言った。孔子はそれ以上言わず、口の達者な者は嫌いだと言った。この場合、子羔は若いのだが実践のなかでやることを、孔子は割と認めていたのではないかと思う、と高津君。認めたのか、と鄭さん。子路の言ったことに言い返せないのを暗に認めていたのではないか、と高津君。孔子の言いたいことは、と鄭さん。本当のところは分からない。子路は行動が先に出る人、今までの子路からすれば、口達者じゃなかった。考えるより先に行動する人。今回は割りとピシャと言っている、と高津君。孔子は納得していない。かの人の子を損なうと言っており、孔子は学問をしてそれからでないと、という人でしょう、と中村（佳）さん。費は要衝の地で軍事的にも大事で閔子騫が宰となるのを断った邑。子羔は若いだけでなく小男でみてくれが悪く、孔子は澹臺滅明のことでも外見にこだわって失敗したでしょう。子路はいけるとして強引に引っ張り込んだ。子路は晩年衛において、その子羔が引き止めるのも聞かず城門に入って命を落とすことになった。子羔はそれなりの政治家になっていた、と上田さん。費は季氏の砦、閔子騫が逃げたのはそれが気に入らなかった。民の上に立つものは行政とともに禮が必要。民の上に立つと下手をすれば下にも及ぶ、孔子はそれを恐れた。子路は実地教育で行けるとするが孔子からすれば学ばなければならない、と鄭さん。民人、社稷と言ってるでしょう。孔子は自分の師について聞かれたとき、特別な師はいない、学ぶべきものは人の世に残されている、と言っている。子路はそれを地でいって、それは先生のおっしゃってたことじゃないですかと切り返していることになる、と上田さん。実践を重んじるのはむしろ老荘思想、儒家は伝統的なことを覚えていなくてはならない、と鄭さん。ローマ最初元老院で皆が意見を出し合って政治をしていたが、属州ができ大きくなると元老院では迅速に物事が決められなくなり、皇帝はつくりたくなかったが、オクタビアヌスが古いシステムを壊して、すぐれた君主としてすぐ決定が下せるようにした。子路も実情に合わせてやっている。読書が導くのでなく、参考書にしたのみ、と高津君。政治家の立場で如何ですかと二之湯先生に議論を向ける鄭さん。実践しながら学ぶ。理論ばかりではダメだが政治哲学は必要。しかし世の中の動きが分からないといけないとのこと。孔子と子路の会話はどうかに応えて、両方分かる、現実に対応してゆかねばならないが、流されないよう学ぶことも必要とのこと。童君どうですか、と高津君。仕事の順番についての違うポイントを言っている。孔子は学問、政治、子路は学問より政治、あの時代は子路と同じ順番の役人が多い。孔子と同じ順番の人は少なく、孔子はとても残念で、怒っている、と童君。中国や韓国では科挙試験があり、学ぶことはとても重要であった、と鄭さん。君に事えてよく尽くし、朋友と交って信用あれば、學んでいなくても學んでいると認めるとあったでしょう。後には科挙試験があるからそうなるが、科挙試験も腐敗しているという話もあり、自分がしっかりしていないとダメ、能力だけじゃなく、自分を修めることが必要、と高津君。あの時代の読書は政治家になるためのもの、庶民として読むようなものではない。政治では同じ言葉でも意味が異なる。また、朱子学は理論体系を重んじるが日本では実践を重んじ陽明学が好まれる現実がある、だけど、佞者を惡むという言い方が面白いね、と鄭さん。掛け合いみたいなもんで、子路は先生の言葉通りにやったまでとシャレ込んで強引に子羔引き込んだ、くっそこの佞者め、となったと鄭さん上田さん。深刻な物の言い方じゃない、と鄭さん。

25) これは長いですから少しづつゆきましょう。曾�ﾙは曾子の父ですね、と高津君。曾�ﾙは子路くらいの年、と鄭さん。子路、曾�ﾙ、冉有、公西華が先生と一緒に座っていたとき、私が貴方達より年が上だからといって遠慮することはない。普段自分を理解してくれないと言うけれど、もし貴方達をしているとするなら貴方達は何をしますかと聞いた、と高津君。顔回（孔子より30歳若い）の父顔路(6)、から曾子(46)とすれば子路（9）の下くらいのもの、何故曾�ﾙが出るかといえば曾子の父だから、曾子が有名になればなるほど曾�ﾙが有名になる、と鄭さん。子路、顔回、子貢が常連、このメンバーは珍しい、と高津君。子路、冉有、公西華はよくある、皆政治、と上田さん。これは作り話かもしれない。曾�ﾙが中心で、そのための物語がつくられた。文体、状況設定が違う。先生が評価してくれないと不満をもっていたので、評価してあげるから言いたいことを言ってみたら、というのも作り話っぽい、と鄭さん。
子路は率先して答えて、千乘の兵車の国家が大国にはさまれて、外からまた軍隊、外交的に侵略を受けて、内政面では饑饉であったとして、私が治めれば、三年すれば勇気を身につけて敵と対峙してゆけると答えると孔子は笑った、ほほ笑んだ、と高津君。そうじゃなくからかった、あざ笑った、と鄭さん。子路は軍事手腕があり、侵略に対峙することができた。災害あるときは一番大事なのは統率力。子路には軍隊をまとめる力、心を一つにしてどんな状況にも、災害にも対応する自信があった、と高津君。冷ややかな感じて笑っている。その理由は後にでてくるのだが・・・ここは子路の性格そのものを表している。すぐに反応して述べるという行動にでている。千乘の国とは魯のレベル、自分が魯公になるならば軍事、経済も悪いが勇気を持たせ、方向性もこうしますと言っている、と鄭さん。外の患い内の憂い三年あれば全部解決するという言い方、と高津君。大体、孔子の聞き方も、私が理解するから、言いたいことを言いなさいと。また、子路に関しては、待ってましたとばかり答える辺り、その人の性格をそのまま伝えていて、これは曾�ﾙの答えを誘導するために誇張されている、やっぱり作り話かなという感じがします、と川那辺さん。問われもしないうちから答える、立ち上がらないで答えるという二つのことが指摘されています、と上田さん。作るを立つとみてるようだが瑟を片付けている関連、子路が立たないということは問題じゃない。他の人と比べると子路はスケールが大きい。これは孔子の気持ちを反映したところもあり、出来なかったことを子路がしようとしているともとれる、と鄭さん。
求、冉有はどうかというと求は答えとして、方六七十、如しくは五六十、それは一つの地方都市と鄭さんの合いの手。それを私に任せれば、三年で民を豊かにし、禮樂は君子を俟つことができる、と高津君。宗廟の禮樂、祭祀を行うこと、君子が来たときに失礼のないように教える。子路が笑われたのをみて冉有は賢いから控えめに、そして禮樂は君子を俟つとは、孔子に、禮の最高権威は先生なんですからといわんばかりでしょう、と鄭さん。そういう意味？と童君。冉有は前のところで税制改革をやっており、民政には力を発揮しており自信をもっていたでしょうからちょっと謙遜気味ですよね、と上田さん。冉有は軍事的にも才能をみせたのでしょう、今の政治家でいえば誰でしょう、と高津君、鄭さん。福田さんじゃないですか、と上田さん。政治的なことは二之湯先生にお聞きするのが一番でしょう、と鄭さん。人間社会、すべてに政治あり。少子化を熱弁する独身の政治家を持ち出し、にやり。片鱗を示していただきました。来週はここから川那辺さんが塾頭です。三時から読書会、五時半ころから吉田神社の節分祭に繰り出します。

高津君、来週は仕事で来られない、気になるのですが、このところは政治からとび抜けたところがあり、どうなっているのか、疑問の様子。後の世では政治に失敗した人をなぐさめる言葉となった。老荘思想がまじっており、作り話かな、孔子がうまくゆかないときになってみせた人間らしさ・・・か、と鄭さん。来週のお楽しみにしましょう。

2008年2月2日　先進25
本日塾頭は川那辺さん。成田君一時帰国で参加。宿舎のクラスメートはドミニカ人、ドミニカ共和国とは別で人口7万人のカリブ海の国。台湾から中国に軸を移し、中国から招聘を受けて留学となったそうです。毎日半日は書を練習するとのこと、昔は皆墨で字を書いていましたが、今では墨で書くのは珍しい、書のレベルは落ちているそうです。唐の太宗は優れた書をしたためられ、文武に優れ、貞観政要を著したそうです。

25）赤に君はどうですかと孔子が聞くと、出来るということではないが、願わくば学びたい。宗廟の事、如しくは會同、會同とは諸侯との会合、端章甫は正装、端章は黒色の端正な仕立てのもの、甫は冠、願くば小相にならん。點、あなたはどうですか、と聞かれ、瑟を鼓く手をやすめ、鏗爾はパチンという音、瑟を下において立って對えて、前の三人とは異なりますがと言うと、孔子は心配すること無い、それぞれが自分の志を言っただけといい、點が言う。莫春に単衣を着て成人五六人童子六七人、沂にゆあみし、雨乞いをする壇で風じて詠じて歸りたい。先生は點の気持ちと一緒だとおっしゃった。赤が言うのはその前の二人、子路と冉有の話を聞きながら、この人はとても頭がいい。孔子は礼に厳しいことを重々わかっているので、正装した衣装にこだわることで、その場をくぐりぬけた。そして、先の子路は謙虚さが足りないことも見抜いており、謙虚さを心得て答えているのは、頭が良い。しかし、曾�ﾙのものは質が違っている。自分でも言っているが、前の三人は政治の話をしているが、本来の人間の中にあるもの、自然のままに生きている。それでため息を孔子がつくのは、その時、孔子の心情はどんなものがあったのでしょう、成田君、と川那辺さん。赤の答え方は、前の二人に対して孔子の反応が良くないので、更に控えめに勉強させていただきますとし、孔子が理想を語れというに、子路は正直に答えたが、そうせずに孔子はその答え方に不満があった。曾�ﾙは他の三人と異なり、政治に参加する人ではない。子の曾参（曾子）の親父であるから入門、付いて来た人で、ここでは初めから瑟を弾いて、BGM代わりにしている。ついでに聞いてみると、他の三人のようには答えられないが、曾�ﾙなりに答えているところが良かった、と成田君。先週はこれは作り話という話をした。曾子の親父であるからそれなりにいい位置に置かねば、という鄭さんに、成る程、いいですね、ぼくもそれに乗ります、と成田君。これで論文の一つも書けます、ところで、孔子はどう思っていたのでしょう、童君、と鄭さん。孔子は曾�ﾙと同じと言った。あの時代は、孔子に深い政治への志はあるが、実際の社会はどれも厳しく・・・孔子は曾�ﾙの言葉を望んだものだが、最終の目標でなく、とりあえずの状態・・・古代ギリシアの教育の様子と似ている。とても自由な学問の雰囲気があった、と童君。来週は琴を弾いて読書会をしてください、と鄭さん。意見があると琴をパチンとして置く、と成田君。公西華が小相というのは、小相は禮樂をとりもつ人、孔子も自分が同じ仕事をしており、公西華の志には賛成している、と童君。上田さんはどうですか、と鄭さん。う〜ん、最後に、赤は小相どころか大相と言っており、三人の志を否定するものではない、晩年のことだろうし、政治的に活動はできなくなっており、政治をあきらめたのではないが、人間のあり方というか教育の方に気持ちが向いていたのだと思う、と上田さん。曾�ﾙを評価しており、言葉どおりだと楽しむことであるが、もう一つを考えれば、政治がよく平和になれば、老子でいうところの最高レベルの政治、国が良ければ私もこうしたいという政治的願望でもある、安澤さん、どうですか、と鄭さん。う〜む、私としては・・・周りに迷惑をかけずぽっくりと死にたい。西行みたいに・・・と安澤さん。ここでは孔子がもし分かってくれれば何をしたいかを聞いている。曾�ﾙは大人5〜6人、これから未来のある学生7〜8人と勉強に行きたいとした。それが孔子の気持ちと合致した。前の三人は政治、曾�ﾙは教育の方、と成田君。政治ばかりでなく、人とともにする。孔子先生に従ってやりますということかもしれない、と鄭さん。曾�ﾙのような内容はここしかないのでは?どうですか?個人的に孔子もたまにこういうことが言って欲しかったと思う。理想郷かもしれないが、曾�ﾙは案外知らずに、計算などはしていったつもりもないが、孔子も実際こんな気持ちがよぎるときもあったろうし、シチュエーションも堅苦しくなく、ポロリと出たような、おもしろいかなというところ、と川那辺さん。
三人が出て、曾�ﾙが残った。曾�ﾙは三人がおっしゃったことは何なのですかと聞くと、自分の志を言っているまでのことと答えた。先生は何故子路を哂ったのですか、と聞くと、國を治めるのに禮をもってするのに、子路はわれ先でへりくだる謙虚さに欠けているから哂った。求は邦のことですね。方六七十如しくは五六十里で邦でないものはいでしょう。赤の言うことも邦じゃないですか。宗廟、會同などは、諸侯のことじゃないでしょうか。赤が小相なら一体誰が大相か。赤なら大相になれる。曾�ﾙはどういうことを言われたのか分かっていない、分からないから聞いた。なんで哂ったのかも分かっていない。子路も冉有も赤も国を治める能力を持っている、子路は我先に走るところがあり哂っている。三人は能力があるが、曾�ﾙは何も分からず、種類の違う人が居る感じ、と川那辺さん。孔子が三人を認めているのはその通り。子路がしゃべった後に哂ったことが他の二人にショックであった。孔子が人の言うことを哂うことはないので他の二人にプレッシャーとなった。禮と譲が欠けているのが問題なのだが、他の二人は勘違いして、謙遜して邦という言葉を使わず言った、そのこ狡さを孔子は気に喰わなかった。曾�ﾙは自分の器が分かって言っていると孔子は認めた、と成田君。曾�ﾙが何故もう一度聞いているのか？その設定がおもしろい。三人がどうであったかを聞くのもおもしろい、と鄭さん。瑟を片付けるために残っているのは不自然ではない、と成田君。三人は先に失礼して、何もできない曾�ﾙに先生と付き合ってくれとばかりに、出て行った、と鄭さん。曾�ﾙが残っている理由は音楽道具を整理するためです、と童君。曾�ﾙが三人のことを聞く、孔子が何故曾�ﾙにくみしたか分かっていない。分かっていないから聞いた、アホだった。作り話にしては良くできている、史記に子路、子貢、顔回が順番に荒野で話をする場面の話と一緒でよく出来ている。あまり時間が経っていない時でないと書けない話と思えるが、と成田君。孔子家語に入ってよさそうなもの、上田さんどうですか、と鄭さん。成田君の邦の解釈でここのところがわかってきた、と上田さん。冠5、6人は5x6の30人、童子6、7人は6x7の42人で合計72の弟子と上手くできている、と成田君。冉有は50〜60里で壮大な数字、曾�ﾙは5〜6で身近で温かみがある数字、と成田君。暮春は、後には中国では三月三日で祭りとなった、と鄭さん。みそぎをする、と成田君。いいなあ水を浴びて一杯やりたいなあ、と鄭さん。曲水の宴、盃が流れて来るまでに歌をよむ、と童君。出来ないと言って、酒を飲むのが鄭さん、と成田君。なんでも盃が来るまでにできなければ、罰として飲まされるのだそうです。異乎三子者之撰はとても自負する言葉、宋代の人は狂とみた、このところは論語なかでも有名な部分、と童君。後の宋学では、身を修めることに重点を置いている。プラスの評価となっているが、恥ずかしくて言えない（三人のように立派なことは言えない）、が本筋。陶淵明を評価するようになった時代、士大夫の生き方として、すべてがすべて地位につけるわけでなく、ひとつのなぐさめとなった、と鄭さん。撰という字が使われているのはどうしてですか、と上田さん。撰はそなわっているだが、饌、発音は同じ、フルコースの食事、完全に揃っているとなる。お三人のように立派なことは言えない、となるが撰のこの使い方はあまりみない、と成田君。瑟を舍きて作ちとはどういう動作ですか、と上田さん。当時は椅子がなく、あぐらをかいて座り、その上に瑟を置いていたので、それを膝から下ろして、立ち上がった、と童君。中村（典）さん、どうですか、と鄭さん。先週から難しいところに来たな・・・ピントをどう合わせて良いのか？自分が思っているより自由な感じ・・・別の対位法があるみたいな・・・去年とは違う、自分が変わったのかもしれないが・・・妙に自由な感じ。是非について書いているが、色々な対位法、沢山の人があり、相対し方が色々あり、含みが沢山ある。三つ四つが交差しているような感じ、と中村（典）さん。

本日は成田君の登場で、リズム感があり締まった展開となりました。吉田神社の節分に繰り出しましたが、成田君は別件で一緒はできませんでした。京都大学時計台下に集合し、節分の鬼を見ようとしたが、一杯の人また人で何も見えず。沈さんが合流し、吉田山を抜ける途中、鬼が帰ってくるのを見る絶好のポイントがあり、童君しっかり撮影し、子供のようにお楽しみ。暗い山中を散歩し、茶屋を抜けて今出川、最後の階段で足を踏み外したガイド役の鄭さん。腰と首を痛め、アルコールを入れてはやく紛らわしたい一心。朋友書店で声をかけると高津君、仕事の途中、串八は満席、7時半に所用の安澤さん一杯も飲めず仕事に。厳平君が合流、二次会には沈さんのモンゴルの友人が合流、夜は更けました。来週の塾頭は川那辺さん。

2008年2月9日　顔淵1〜2
本日塾頭は川那辺さんじゃなくて、中村（典）さん。久方ぶりの雪にもかかわらず、結構な出席。寒いのでストーブで熱燗。

1)漢文音読、訓読ともに出来ないので二重苦、音符は左から右、英語の方が見易いので参考にしますが、全然わからなくて、よろしく。顏淵が仁を問いました。子は言いました。自分に打ち勝って、丁寧に対応すれば世界はよくなる。一日己に克って礼を復活させれば、天下は仁に帰する。仁を行うかは自分から発することで、仁は自分の中にあれば、他人から発することは不可能。自分に源をもっていなければならない。克己は打ち克つであるが教化においては間違いであると英注がついている。selfconquestとあるがここが分からない。己を克（せ）めて仁となすとありますがどういうことですか、と中村（典）さん。これは学究肌の顔回が仁とは何かを聞くのですが、先生は顔回に仁を実践しなさいと言っている、と上田さん。仁とは何ですかと聞いたときの答えが他の人の場合とは違った。仁に近いことを孔子は教えた。身近に答えをしたが、顔回には分かりにくい言葉で返した。克の意味が色々あるが一段と高いレベル、一番高いレベルの答えをした、と鄭さん。英語でgoodnessとありますが、と中村(典)さん。ここでは、もし英語で言うならならば、顔回はwhat is Jin.？と聞いたのでしょうが、孔子は、仁をなすための実践について答えている。その後いろいろな弟子が、仁とは何ですかと聞いているのですが、そういう人たちには孔子は、比較的わかりやすくピンポイントで答えている。とても面白い場面なんですね。ここは、英語でどうこう解釈せずに、漢字を見て想像しながら自分が仁とは何か、禮とは何かという概念を持って、読まないととても難しいと思いうのですが。先ほど、己に克つを己を責める・・・とおっしゃいました?と川那辺さん。朱子は勝つでみている、それぞれの時代でニュアンスが異なる、と鄭さん。英語の単語ひとつでこれを読み取ろうとするとわかりにくい。ここの文章は、とにかく難しいし、孔子が顔回に求めたものは、奥が深く、幅が広く相当レベルが高い。顔回が最後に、できるかどうか分かりませんが、努力してみますということは、その意味を理解していたのでしょう。と川那辺さん。どう実践してよいのか顔回はとまどってどうすればよいか聞き返すと、禮でなくば視るな、聴くな、言うな、行うなというのですが、その禮といっても当時の変化をした禮ではなく周公の禮を行えという強い調子のものじゃないですか、と上田さん。顔回は仁が何か分かっているが禮にかなうかどうかが問題。人間二人が仁。二人の人間がお互いを思いやって行うのが忠恕。とかそういうことは顔回は分かっているから孔子は言わない。仁を行うとは禮に復（か）えることと言った、と鄭さん。質問していいですか。英語では禮はnothing in defiance of ritual、宗教的な意味合いがある。音楽で言えば対位法（counterpoint、コントラプンクトス）、ある点が決まるとその対極の点が決まります、もうひとつ、和声法は音を調和させること、ハーモニーに当たります。対位法は中世の音楽、それに当たります。水平の沢山のラインをどのように一つの世界観に治めるかが問題です。仁と禮、対位法の法則では、ある方向の方に動くとき、何度を取ってはいけないか決めてある法則、宗教的、社会的慣習に反することを避けるというところを、和声法と思う。強い拍と弱い拍の関係の中で、してはいけない法則があり、音を調和させる法則。キリスト教的な表現。いわゆる西洋音楽はキリスト教音楽として解釈するしかない。ところで不敏と雖も請ふというところですが、と中村(典)さん。謙遜のことばでしょう、ところで何故英訳して考えるのですか、と鄭さん。今の若い人は英語のほうがわかりやすい、と安澤さん。私が理解する、己に克つというのは、自己の欲望を乗り越えて、それが礼ののりに則っているかということだと思う。仁と禮とのかかわり、顔回に対しては仁を禮と結び付けてみている、仁の下に禮がある。禮は仁の上にはない。他の人には説明できないが、顔回は禮をクリアーしているから分かる、と鄭さん。横のライン・・・イーブンな感じで説明している。根源的なことを聞いている。こういう質問をする人は賢い人、と中村（典）さん。ぼくらは学園紛争の世代で実感しているのだが、歴史を勉強するのは世の中を変革するためであり、自己を批判して実践をしなければならないと、厳しく迫られた世代。中国でも文化大革命で大変だったときがあったでしょう、孔子のここの言葉はそれに似たような厳しさがありませんか、と上田さん。ぼくは光州事件の頃です。と当時の情勢を教示いただき、良心を問われる厳しい時代、ここでは顔回が作っている理想の禮、正しいと思えば実行せよ、良心に適えば行え、良心に照らして実行せよという、と鄭さん。ミラー、鏡。自分と他を映す。顔回が孔子の鏡となって動く、カノン、エコーのような感じ、後半のところが残っています。顏淵がその詳細を聴くと、孔子は、禮に非ずば視ること、聽くこと、言うこと、動くことのないようにというと、顏回は、不敏ですがそれにつとめますと言った。と中村(典)さん。中村（佳）さんどうですか、と上田さん。視ることなかれとか色々言うが、禮にはずれた人とは付き合うなみたいなことになりませんか？自分の判断で行動、自分をコントロールする・・・頭の前の機能、人間の高次の機能、人間の人間たる機能を使っている、と中村(佳)さん。付き合うなとか言われてもなかなか難しいですね、社会に出て頑張っている高津さんはこれを聞いてどう思います？と川那辺さん。実際は現実的にむつかしい。実際の社会ではそれはいけない。正しい自分と正しくない自分、音楽の手法かもしれないが、欲望に克つこととは、音楽の対位法の意味と一緒かもしれないが、語るか語らないか、どれだけ自分をコントロールできるか自分を保つこと、良いところのみならず悪いところもみる。中村先生の対位法、対立してお互い存在するというのは良くわかるし、素晴らしい、と高津君。乗り越えるだけがすべてではない、禮に則っているかが問題。禮の普遍性、人間として持つべき普遍性にかなうかが問題。朱子学では、知る、心を正しくする、身をおさめる、家をおさめる、社会、国家となる。前提として自分の身を修める、知から政までを示す、と鄭さん。仁というところに共産主義、禮というところに革命と入れてよむと、この言葉の厳しさがわかるでしょう、と上田さん。奈奈さんどうですか？人でなく己と向き合うというところがいい、人に説くでなく、人に見せることが大事、と奈奈さん。禮、オーダー、美しいものはおおいなる法則にのっとりながらちいさな規則を乗り超えている。ぎりぎりで乗り超えようとしているものは美しい、と中村(典）さん。自分がしっかりしておれば、色々の雑音があっても同化できる。自分がぶれないから吸収できる。仁の中に禮がある。子夏と孔子が絵のことを話したとき、絵の事は素を後にする、禮は後かと言った。仁の後に禮がある、顔回は仁者であるが禮をしなさいと言っている、と高津君。仁は心に近い、禮は形式に近い。文と質なら、質が仁、文が禮、一日というがいつも自分との戦い。その重みがある、自分に天下が降りてくる、と鄭さん。自分に克つためにやりすぎになるときもある、のり（規則）のなか出来得る最高の表現を目指したい、と中村(典)さん。禮はお互いのこと、そのたががある、そこが現代世界に足りない。禮よりも個性、自分が表に出ている。経済でも自分が儲かればよいというのは禮にはずれる。利益をあげれば損をする人が昔は見えた。今はみえない、と鄭さん。

2) 仲弓が仁を聞いた。先生は、外においては重要な客がいるように振舞って下さい。民を使うには、大きな祭り、いけにえの祭り、神に接するように人に接してください。自分が好まないことを相手にしないで下さい。そうすれば邦でも家でも怨みが無くなる。仲弓は、私は敏くありませんがそのようにしますとこたえた、と中村（典）さん。大事な客を接待するように、祭りは祭事のこと、自分のしたくないことを他人にしないということ、顔回と仲弓は弟子の中で一貫して賞揚されている。安澤さん、子路にこれを言ったらどうしますか、と鄭さん。子路は仁について問われない、と高津君。子路は無頼、実行の人、と安澤さん。仁を聞くと孔子がびっくりする、と高津君。仲弓は犁牛（まだらうし）の子、親父さんが賎人であり後ろ指をさされるところがあった。古注では、大賓は国賓、大祭は國祭とみ、他国の使節と会見すること、民を力役に使ふことと想定するが、集註では一般的に他人と会うこと、民を使うことを想定しているが、この場合は古注の方がよい、在邦とは諸侯を、在家とは卿大夫を想定しており、そういう場で素性のことなどで容れられぬことがあっても相手（諸侯、卿大夫）に怨を抱いてはいけない、ということではないか、と上田さん。そうではない、仲弓は言葉は巧みではない、政治家として欠けているという評価もある。怨むは顔回と仲弓は実際どうだったかというと疑問がある、後の人が仁の普遍性を説明するために埋めて作っているのではないか。孔子の言葉は普遍性を持つ。欠けているからこうしなさいではなく、彼等はもう分かっており、出来ている。普遍的に言っている、今日は一杯入って酔ったかな、と鄭さん。トイレに忙しい上田さん。寒い教室も暖かくなりました。

来週は童君の奥様も交えて懇親会。11時に国際会館駅改札口に集合、買い物をして市原で料理を作って、一杯です。再来週は中村(佳)さんが塾頭です。今日は雪で寒い、おでんと日本酒だなと「一揆」へ、カラオケで夜が更けました。

2008年2月16日は童君夫妻を囲む懇親会。中村（佳）さんと安澤さんは、わざわざ仕事前に国際会館駅まで駆けつけ料理とお酒の差し入れ。奥様は趙婷zhao tingさん。マカオの科学工学大学で国文学を教えておられる。snow white白雪姫の研究もされたそうです。母が娘を殺すという話は中国ではないとのこと。美術や音楽を好まれる。料理人は高津君と川那辺さん。レストランに負けません。童君の琴に趙さんが歌、唐詩。別離の詩、また明日からは別離のお二人。滋賀県の遺跡から出土する琴と同型、どんな音、どんな弾き方、これで分かったと喜ぶ中村(典）さん。琴がお話をしているような奏法。料理の出来た頃に酒をもって現れた鄭さん。火鉢の燗酒係りの上田さん。上田さんのお母さんも一緒。東アジアは敬老精神が生きております。



岩倉の上田邸では安澤さんが合流。上田さんの奥さんの友人の山本さんも一緒。よく飲みよく話したが記憶の彼方・・・。

2008年2月23日　顔淵3〜5
本日塾頭は中村（佳）さん。本日も夕刻からの雪。韓君（同志社大学留学）も久方ぶりに復帰。

3) 司馬牛が仁を何かと問う。孔子の答えは、その口が重い、話がのろい、口数が少ない、ということ。司馬牛が言うことが、口が重い、口数が少なければ仁ですかというと、孔子が答えて、�｣をなすのは難しいから、言葉をいうときに控え目にならなくていられようかと答えたということなんですが、こんな風に問われたということは、司馬牛は口数の多い人だったということでしょうか？と中村（佳）さん。そうですね、為之難の之は�｣、司馬牛はよくしゃべるから口数を少なくすることは難しい。言之得無�｣乎は、今も即座に口数多く切り返しているからとても無理だということと思う、と上田さん。口数が少ないより言ったことに責任を持つ、言葉を選んで慎重に言え。分かり易く言わねばならない。自己弁護を兼ねていうのですが、と安澤さん。君子は何か、仁は何か。仁は�｣なり、同じ発音で伝える、同じ発音で意味を伝えるということはよくあるやり方。仁では行動が大事で、行動より口が先にでるのはダメで、自分の身を修めることが先、外面ではなく、言葉を少なくしてやるべきことをやりなさいということ、と鄭さん。不言実行か、と安澤さん。言葉が軽いと行いもそうなる、上田さんは言葉をすぐ返したというがそういうことではない、簡単に言えることではないから難しいの意味、と鄭さん。言葉でなく行為にあらわれる、自分の反応をコントロールするのは難しい、これを孔子が仁として考えていることは素晴らしい、と韓君。仲弓は言葉が足らず、巧みでもないが、孔子は君子、仁者に入れている。言葉が少ないが�｣、仁に似ている、義でも宜というのがある、と鄭さん。ある牧師が義は羊と我からなり、羊が私の上にある、そうして生きるのが正しいという話を聞いたことがある、と韓君。我じゃなくてそれは鋸で羊を宗廟の犠牲に奉げることです、と上田さん。義は、中国では自分を欺かないことを大事にしており、それが外に向かうと別の意味になる、と鄭さん。

4）司馬牛が君子について問うと、孔子は、君子は憂えたり、懼れたりしないと答えた。憂えたり、懼れたりしななければ君子ですかと問うと、孔子が答えて、内に省みて、心の中に照らして疚しいことがなければ、何を憂え、何を懼れることがあろうかと言われた。内に省みて、疚しいことがなければ、憂えることはないは分かるが、自分ではどうしようもないこと、力の及ばぬところで起こる、天災みたいなものもあり、懼れることがないというのは私には分からない、と中村（佳）さん。安澤さんどうですか、と鄭さん。何が怖いの、こっちが聞きたい。お前はとよく言われるが、疚しいことがなければ、憂えも懼れもない、怖がる必要はない、と安澤さん。前に勇者は懼れずとかあったでしょう、その時も中村（佳）さんは、自分ではどうしようもない、自分では予想もつかないことにすごくこだわっておられたでしょう、と高津君。天災とか、世界が異なり、違った価値観をもつとか、どうしようもないことには懼れが、と中村（佳）さん。信仰とかかわりがあり、自分の将来に不安を持つとか、疚しいこととは関係なく、病気とか懼れることはある、と韓君。そういう一般人の懼れをここで言っているわけではなく、君子とあるところが味噌、と川那辺さん。ここでは司馬牛が何を疚しく思って、何を懼れているのかが問題、と韓君。ここで言う懼れとは、君子とあり、対象が違う。自分でどうしようもない、例えば天災とか、そういったものではなく、普通の人間では到底できないレベルのことをいっているのではと川那辺さん。個人レベルで自分がちゃんとしていれば、なんとかなる。後に、古より皆死ぬ、民に信なくば立たずとあったような感じ。天災で死ぬのは仕方ない、と高津君。孔子は不可能なことは考えない、と安澤さん。懼れる感情は受け入れれば懼れにならない、全部受け容れてしまうと、そういうものだと分かり、懼れが結局教えてくれるようなもので、そうなればこれからどうしてゆこうかと人間は考えるようになる、と川那辺さん、相槌をうつ安澤さん。ぼくは、懼れるものは避けてゆく、受け容れるというのは素晴らしい、と韓君。中村さんは、前にもこの点にこだわっていましたね、と高津君。中村（佳）さんはその専門家、患者を看て憂え、懼れを分析される、職業柄どうですか、と川那辺さん。憂えや懼れの対象があるのが普通、だれにでもあることですが、対象がないと病的となります、と中村（佳）さん。対象のない不安はどうしようもない、と安澤さん。司馬牛を問うた、孔子が言うと、司馬牛は憂えた。内に省みては、天命にかかわる言葉、人によって判断されるのではなく、天に対して間違っていないという信念、天命思想。一般には死に対する恐怖であろうが、宋代では、仏教に対抗する意味から天命思想のごときものが出てくる。とくに、朱子学で重んじられた、と鄭さん。日本では、敬天愛人、西郷隆盛が有名、と安澤さん。ここでいう憂え、懼れは通常、司馬牛が、樹を抜いて孔子を殺さんとした宋の司馬桓魋の弟であり、兄は宋で反乱を起こし国外追放をされ、子牛は領地を返還して斉に亡命する。桓魋がその斉に亡命してきたために、牛は魯に逃げてきたという過去があり、それで自分は孔子の弟子となっており、それを負い目に感じていたことをいう、と上田さん。憂えと懼れの違い、憂えがなくなれば懼れもなくなる、憂えが懼れに変わるのではないか、鄭さんがよく順序について言われるが、憂えが来て、懼れが来る、順番的に来るのでは、中村さんは何で懼れるのですか？今日は突っかかりますよと戦闘体制の高津君。何でといわれても困るが、自分が疚しくなくても、何かこうよくないことが起こる。それを私は懼れる。川那辺さんがここは君子の話で、一般人の話ではないことは納得したのですが、と中村（佳）さん。中村さんは疾しいことがなくても懼れているのですね。必ずしも憂えから懼れじゃなくて、憂えがなくても懼れることはある、と川那辺さん。死を怖がる、生きることへの憂えがある。生と死を一字にして、上を木、下を根とみて、死生は一つ、死のみを怖がるのは片手落ち、と高津君。孔子は憂国の士、本人も憂えておられた、と安澤さん。外に対するものではなく内に省みること、天命のこと、外にもつのは愛と仁、と鄭さん。鄭さんも憂国の士、と安澤さん。いや、「夕刻の士」です、と上田さん。この名句？迷句？お座蒲団がたりません。

5) 司馬牛が憂えて、人には皆兄弟があるが自分は一人、誰もいないと言うと、子夏は、自分はこれを聞いた、死生は運命で定めがあり、富めるも貴いも天のさだめである。君子は敬しんで落ち度なく人と交わるのに、禮をもってすれば、世界は皆兄弟となり、君子兄弟をなくしてもどうして憂えるのか、と子夏が言った。司馬牛の憂いは、兄を亡くしたより自分が孤独になったこと、それを慰めている。兄を亡くしたことを憂えているなら、人類みな兄弟みたいに言われても慰めにならない、と中村（佳）さん。「四海ノ内誰カ朕ガ赤子ニ非ザル」日本の天皇もこの言葉を使われた有名な句、と安澤さん。子夏の言葉は有名だが、何を司馬牛が憂えたかが問題、子夏は牛より年下でしょう、先生じゃなく、仲間から慰められた、と鄭さん。中村さんのいわれるように、人類皆兄弟といわれて慰められたというものではないでしょう。兄の桓魋が魯の外郭の門外で死んだのは哀公14年（BC481）のこと、これは顔回が死んだ年。司馬牛は結局財産も兄も失った。子夏が言った言葉は先生の言葉であろう。先生は顔回や子路の死生をどうすることもできなかった。顔回の貧窮もどうすることができず、天が私を喪ぼしたと二度も嘆かれた。そんな憂いと懼れのなかでも、先生は「敬みて失無し」、失無しは自分を見失わないこと、人と一緒にいてうやうやしく禮を行われた。貴方も兄の死生や富貴をどうすることもできないが、先生のことを思い出してみるべきではないかということではないか、と上田さん。死生と富貴は自分ではどうこうできない、自分がしっかりして自分を持っていることが大事、しっかりしていれば人はついてくるよ、と高津君。私はここは兄弟のないことを懼れている。兄弟の仲の良いところをみて、兄弟愛を味わえないことを懼れている。心理学的愛を受けられないことへの思いでしょう、と韓君。愛もあるが、運命、天命を受け容れきれない。ここに名前が挙がっている人であり、レベルは高かったのでしょうが。どうも私たち日本人は、仏教的な考えが根底にあって、悪い行いをしなければ、絶対に不幸にならないと思い込んでいるが、不幸にもなる。誰からも好かれた人があっけなく死ぬ。不条理、それが受け容れられない。罰をうけていい人がノウノウト生きているとかあるでしょう。決められたものは受け入れるしかない。子夏は、孔子の運命が決して良かったものではなくても、先生がそれを受け入れていたということがよく分かっていた、人類みな兄弟よりも、人の運命の受容について語っている、と川那辺さん。己を責めること、己に克つは受け容れること、死を受け容れて、生を喜ぶみたいな、川那辺さんは顔回のレベルですね、と高津君。キューブラー・ロスに「死の瞬間」という本があります。余命のない人に接してきた彼女は、死を宣告された人の反応を、「否認」、自分がそうであるはずがないと思い、そうだと判明すれば、「怒り」、治るなら必ずこうしますみたいな誓いをたてて「神々との取引」を行い、取引は、西洋人に見られる傾向らしいのですが、どうにもならぬと「抑うつ」状態に陥り、うつは欝病の鬱です、最後に「受容」せざるを得なくなる、そこまでゆかずに、自分に起こる不条理を人がどう査収するか？それを思い出しました、と中村（佳）さん。伝導の書、ダビデの子、ソロモン王が老後に書いたものですが、その中に答えがあります。善の人が何故死ぬか？何でも時があるといいます。魚が釣られてしまうように、仕方のないもの。信仰の問題ですが、神は人が告白をして罪から逃れることを求めます。命はこの世で終わるものではなく、続きます、懼れ憂うことはない、と韓君。これより、愛と受容を求めて、恒例の脱線へ、仏とキリストと孔子先生の霊魂が如何思し召されたか知る由もなし。四海は海洋じゃありません、文明から遠く離れた暗い所、陸ですからご注意ください。最後を締めたのは鄭さん、兄弟のイメージを拡大して世界中が兄弟だ、これが後の人々に大きな教訓になった。人とどう接するかは敬してうやまう、そうすれば兄弟の愛を感じるようになる。特に、上に立つべき者のすること、司馬牛は個人レベルで聞いているが、「士」として人に施すレベルで考えねばならない。では、夕刻の士、雪の降りしきる中、最後に登場された中村（典）さんともども、韓君のカムバックを肴に一揆にて祝杯。隣席に韓国文化を愛する若い男女有りて、安澤さん、鄭さん、川那辺さん、韓君、大いに語る。来週の塾頭は韓君です。

2008年3月1日　顔淵6〜8
本日塾頭は韓君。本日は5人、誤認がありませんように。韓君訓読はむつかしいと、中国音で読んで、難しいといいながら解説。

6) 子張が聡明について聞いた。孔子は悪口とか、肌で直接感じるようなものに人は左右されやすいと答えた。そうしないのが聡明である、そういう感じですが難しい、と韓君。浸潤の譖、膚受の愬とはどんなことですか、と上田さん。浸みこむようにする悪口、肌に訴える言動のようなものには、人が動かされるが、聡明とはどういうことですか？直感できるもの、まわりのことを判断できる、空気を読めるようなことが聡明ですか、と韓君。同じことを二回言っていて、最初は明、次は遠と言っている、一つは聡明、では遠はどう理解するの、と川那辺さん。ちょっとむつかしい。遠は何かを見通すこと、前方が見え、遠くまで把握できること、そういうことじゃないですか？と韓君。そういうこと、と安澤さん。明哲は、聖書では悪を遠くする、悪を行わない、それが明です。知恵は神を畏れること、神の言葉を聞くこと、文字だけでは理解できない。信仰によって感じたもの、神を畏れ謙虚さを示す、傲慢とか自分が一番と思うと壁にぶつかる。そういうことから、知恵が生まれる。聖書はそういう具合ですが、孔子は人間関係、社会における冷静な対応のできる人のことを言うのではないか、と韓君。子張は自分が聡明と思っている人、その反対が子夏、この二人どっちが賢いか子貢が聞いたことがあったでしょう、と上田さん。ありましたね、と川那辺さん。子張は過ぎる、子夏は及ばずで、と上田さん。過ぎたるは及ばざる、と川那辺さん。子張は才気が溢れていて、ちょっと感情面でむらがあり、浸潤の譖、膚受の愬をしてはいけないと戒めている、と上田さん。これは、そういうことをしてはいけないといさめられているのですか？浸潤の譖、膚受の愬に振り回されてはいけないということでなく?と川那辺さん。両方の意味があるでしょう、と上田さん。子張がそういう人とどうして分かりますか、と韓君。子張に関する対話はそういうものが多い、と上田さん。中国の言葉に「未達失時、過而失察」があります、前は機会を逃す、後は観察力がないことです。と韓さん。毒入りギョーザ、漁船・イージス艦衝突事故の報道、浸潤の譖、膚受の愬が報道されますが、どう受け止めればいいのでしょう、と上田さん。しっかりとした自分の判断を持てば美味しいギョーザが食べられる、と川那辺さん。振り回されない人が明、と安澤さん。書経に「遠きを視るは惟れ明」というのがあります、と上田さん。遠と明は同列ということですね、と川那辺さん。深謀遠慮、遠慮なければ近憂あり、と安澤さん。混乱しているときは、主観的判断でみるものですが、一旦距離をおいてみると、正しいものが分かりやすい、遠い所から見れば判断しやすい、と川那辺さん。近くでは主観で惑わされるが遠くからは客観的、と韓君。同じものが二度でてくると後ろに重点があると鄭さんがよくおっしゃっているでしょう、ということは明よりも、上田さんも唱和して、"遠"に重きがあると川那辺さん。遠方に見えるのが明、私の説に惑わされないでください、と韓君。明と遠の違いが分らない、その場は解決できても、その後の問題を解決できない。大きい気脈のなかでみなければならない、と中村（佳）さん。敵方を惑わすために、情報操作を行う、明を不明にしようとする、と安澤さん。台湾の選挙戦、米大統領選挙、中傷合戦、そこまでやるか！！！孔子が見れば如之何？

7）子貢が政治について聞く。孔子は食べ物が充足し、軍備が充足している。人民に対する信用がある。三点を挙げた。子貢が三者の一つをやむを得ずして捨てざるをえないとしたら、と聞くと、軍備。もう一つを捨てるとしたら、食糧。昔から人間は死ぬから人民に信用を失えばやってゆけないと言っている、政治の一番重要なポイントを三つ挙げて、順番を弟子に教えている。人間として生きてゆくに上にも重要。人間がやってゆくには生存、食べ物は必要、食べ物がなければ、軍隊を拡充もできず、信用のことを言っても仕方ない。人の状態を冷静にみること。生きてゆくことが前提、豊かになった上で、信用が大事、と韓君。食足りて礼節を知る、と安澤さん。捨てる順序、これを逆の順序、一番最後に大切とされる信頼。私は信頼があれば生きてゆけると思う。信頼は金で買えるという人もある。ホリエモンみたいに、と相の手をいれる安澤さん。捨てるものの順番より、必要なものから考えてみればどうでしょう。まず信があれば、共に生きるには食を分かつことが大切、いさかいが起こるから取り締まる人間が必要、国でいえば軍隊。何を残すかの方向からもってゆく、信からすべてがついてくる、と川那辺さん。アブラハム・マズローの法則というのがあり、5段階の欲求、生存、衣食住、愛、安全、自己実現のようなものがあり、下の欲求が満たされると上のレベルにゆき、自己実現が最終のところになります、ところで、孔子の場合上に立つ人の考え方で人民を蔑視したようなところがあります、と韓君。自分を治める、君子の政治、国が乱れているから政治を行う心構え、士大夫の考えということ、と安澤さん。子貢は経済や外交に優れた人ですが、孔子は内政について子貢に答えた。信というものが何処かにあって、それを手に入れる、金で買うみたいなことはありえず、信は育成しなければ存在しないもの。乱れた国において、どうすれば育成できるかといえば、戦時中にあって軍費が足りないとはいえ、増税はダメで減税をして農民を養えという。これがしっかりした上で軍備をしてそれを守れ、そういう政治をすれば信が生まれるというのが前篇、今の北朝鮮に対して、孔子はまず農民を自立できるようにせよ、それから軍備だというだろう、ところが国が偽札、麻薬を製造販売と信など真っ先にほうりだし、食足らずといえど、軍のみ生存の要とみている、と上田さん。軍を捨てれば自分が危うい、と安澤さん。軍を捨て、食を捨ては、短期でなければ、民は逃げる、と韓君。信をつけるためには、為政者が仁、義、禮を行う人格者でなければならない、そういうことを言っているのですね、と川那辺さん。そういうことでしょう、農業のことを孔子は聞かれて、それは農業の専門家に聞いてくれといいます、君子が農業をして民を豊かにするのではなく、君子が農民を育てるような政治をするから農民が豊かになる、それを守る政治をするから軍備を整える、そこに信が生まれる、このことの重要性を子貢は、この対話のなかから改めて悟った。中村さん、どうですか、と上田さん。精神科からみればどうですか、と韓君。中村さんがサイコロ振れば、サイコロジー、と安澤さん。

8) 今日は二つしか出来ていなくて、と韓君。棘子成は衛の大夫、と上田さん。大夫というのはどのクラス、と韓君。諸侯には、卿、大夫、士となり、大夫は大臣クラス。文質というのがあって、文と質を対比すると文：外、形式、後進、君子、質：内、内容、先進、野人という風になるが、と上田さん。文質彬彬の文質ことですね、と韓君。そうです、当時は文に偏る風潮があり、棘子成は孔子が質を重要視していることを知っており、子貢も同意してくれると思い、君子は質のみ、文など必要なし、文が何になると言い放った。ところが子貢は、惜しいかな。夫子とは棘子成のことです、貴方の君子というのは。駟は四頭立ての馬車です。当時で一番早い、と安澤さんが相の手。そういくら早くても安澤さんの舌には及ばない。そこで安澤さんですかと、川那辺さんが相の手。文猶質は過ぎたるは及ばざる、どっちもどっちでしたね。質猶文ですから、文も質も同じものということです。虎豹の鞹、鞹とは"なめしかわ"です、それも犬羊の鞹も同じとなります、でも、虎豹の鞹と犬羊の鞹、鞹ということでは同じですが、これを同じといっては文質彬彬にはなりません、子貢は文と質のあり方、文質彬彬をこう説明した、と上田さん。文質彬彬をよく使いますが、意味がよく分かりました、弁証法です、矛盾する二つのものが統一し、一体となっています、質だけでなく文、外面と内面、あわせて君子、片一方だけでは足りない、統一して君子。質は文に現れる、文は質を載せている、内容と形式、両方を切り離すことができない、外と内でありながら一体化している。老子は長と短、大と小などを東洋的弁証法を用います、ヘーゲルの弁証法とは異なりますが、と韓君。駟が舌に及ばずとはどういうことですか、と中村（佳）さん。言ってしまったことはもう駟でも追いつけない、覆水盆に返らず、ですね上田さん、安澤さんの舌のことが出ましたが、と川那辺さん。言うてしもうたら、あかんやわね、ぼくは十分注意してますから、と安澤さん。君子の言う一言は取り消すことができない、と韓君。天文、人文というのがあるでしょう。天の意は星座やその動き、雲や雨や風、雷に現れる、その天に現れた文から天意を読み取る、それが天文学です。顔色というでしょう、目や口の動きやしぐさからその人の心を読み取る、それが人文学です。その人が口にした言葉からその人の心が読み取られてしまいます。どんなに早い馬車で逃げても逃げ切れません、と上田さん。文質彬彬はあまりいい意味でなく使われることがありますが、本来の意味が分かった、と喜ぶ韓君でした。
韓君は来週は討論会があり、その次は一旦中国に戻って査証の更新が必要とのこと、メドがいつ付くか分からないので初夏までは参加不能とのこと。一杯やりたいところですが、上田さんは所用とのこと、珍しく流れ解散。グッドラック、ジーザス韓君。ツワモノは安澤、中村タグのみです。来週の塾頭は中村（佳）さん。

2008年3月8日　顔淵9〜11
本日塾頭は中村（佳）さん。鄭さんは台湾での学会、童君は論文、韓君も学会と早春は勉学の季節。川那辺さんの友人、金善伊（キムサニ）さん、有朋自遠方來。大学では航空運航を学ばれ、教養科目で日本語を勉強。スチュワーデスとして世界を回られたが、伝統的日本が好きと、日本語を独学で習得。ソウルにご在住。論語読書会が如何なるものかと、到着早々お越しいただきました。

9) 哀公、有若に訊ねて、今年は凶作で費用が足りない、どうしたらよいかと言った。徹は、収穫の十分の一を課す周の税法、この時、魯の国では十分の二、そうじゃなくて、十分の一にせよと、有若が答えた。十分の二でも足りないのに、どうして十分の一にするのかと尋ねると、有若が答えて、百姓、人民が足りていれば、上に立つ君侯は誰と一緒に足りないというのか、百姓が足りないなら誰と一緒に足りようか、と言った。凶作で財政難の時に、有若が税金を下げろ言ったが、この時、哀公に仕えていたのですか、と中村（佳）さん。冉有が季氏の宰をしており、有若は若手の才人で、孔子亡き後孔子の座に門人が推したくらいだから、哀公も尋ねてみたのですかね、と上田さん。有若は孔子が言いそうなことを言っていますね、と中村（佳）さん。実際に哀公は有若の言うとおりを実行したのですか、と川那辺さん。冉有が増税策を行っていることを孔子が太鼓を鳴らして攻めよと言っていたくらいだから、それはなかったでしょう、と上田さん。言われても、それは出来ないでしょう、どういうことが出来たのですか、と中村（佳）さん。財政学の理屈では、ケインズは民間にお金がない時には、債権で国が払って経済を活性化させる、お金があれば税でとる、理屈ですが。貧しいものからとらなくてよい、とか、出るをはかって税を取る。しかし、それを続けると大きな政府となって借金がたまり、今度は夜警国家、小さな政府に向かう、と安澤さん。税制に至って、孔子が実際に政治を運営したことがありますか、と川那辺さん。司寇、法務大臣まではやってますが、経済運営はしていない。鄭の子産は合理的な税制運営をして経済を立て直したとされるが、孔子は経済政策というより、君主より先に農民が豊かになるような政治、人材の登用をせよというもの、楚や呉が圧迫を加え、小国が併合され、農民が流民となっているような世の中。今回は凶作での不足でしょう、減税で乗り切れない、技術的な方策がなければむつかしい、上田さん。孔子の考え方は分かるのですが、実際となるとどんな政策ができたのでしょう、と中村（佳）さん。戦争が行われている時に、実際の政策としてはどうですか？軍隊を養う必要もあり、兵を捨て、食を捨て、では守れない。きれいな精神論としてはいいのですが、と川那辺さん。孔子はガンジーじゃない、峡谷での会談では武力を背景に交渉をしており、三桓氏の武装解除を行っている、と上田さん。書生論、長期的立場として、儒教の財政論の基礎としてはいいが、目前の問題を解決はできない、と貝塚先生は書いておられる、当時は農民がすなわち兵で、農から分離された傭兵はないでしょう、日本では、織田信長からだが、と安澤さん。書生論といわれれば、孔子はどう反論する、と上田さん。ここは、そんな話じゃなく、有子は、いつも税をとりすぎていると言っている。宣公の時代から十分の二となっているが、二以上取っていることを暗ににじませて言っている。孔子は若い時に穀類の管理をして升目が正しく公平であったとか、家畜を殖やしたとかあり、精神論だけではなかった、と高津君。十分の一税は周の理想の状態の税、十分の二でも、その後の世界、今の世界であっても高すぎるとは言い難い、と上田さん。五公五民、六公四民とかいいます、と安澤さん。周という統一政権の時代じゃなく、戦国時代、現代でも各国が割拠しており、十分の一税では到底無理、孔子的にいえば世界政府として周のごとき政権が前提、と上田さん。

10）子張が、�ｺを崇めて惑をはっきりさせる、辨づるは見分ける、区別することを問うと、孔子は、忠信を主とし、まず行いそれから正義に移るのが、�ｺを崇めることと言う。相手を愛していると生きていてほしい、相手を惡んでいれば死んでほしいと思うのは当たり前のこと。ある時は生きていてほしいと思い、ある時には死んでほしいと思うのは惑い。まことに、富をもってせず、ただもっと異なる、結語の言葉ですが、富にはよらず、徳を崇くするのは異なるとは、とってつけたようなこと。詩にある言葉なんですね。ここで言っていることは、抑圧的また、相手を愛すれば生を相手を憎めば死んでほしいは極端な言い方、と中村（佳）さん。子張は前にもでており、浸潤の譖、膚受の愬、そんな辛辣なことをやってはいけないし、それを受けることも駄目だとあったでしょう、そういうところがある人なんですか、と川那辺さん。崇�ｺ脩慝辨惑という格言について、才人の子張は脩慝をとばして崇�ｺ辨惑を問うのですが、自分なら�ｺを崇め惑を辨つ自信があると思って先生ならどう返されるかと聞いた。次は惑いの中身が問題。自分を愛してくれる、自分を良く思ってくれれば、生きていてほしい、自分を憎んでいる、悪く思うのであれば、死んでほしい。そういう対応の仕方は惑い、子張は才人だがそういう性癖が顔を出す、愛憎でなく忠を以て上に仕え、信を以て友と接し、判断基準は愛憎でなく、義に移すようになさいと戒めている。子張としてはっと来たのでは。最後の部分はその例としてある、と考えてみたらどうか、と上田さん。というより、人を愛す、忠誠心で上に仕える気持ちが強く、篤いので、それがどこかで食い違うとなると一変する。愛することから憎しみに変わる。気持ちが篤いだけに、信が憎しみに転じる、忠信義があり、それは与え続けることが大事、そうすれば裏切りによっても転じることなく、惑うことなく与え続けることを忠告している、高津君どう、と川那辺さん。新婚さんだから、愛あまって憎しみ、なんてことまだないでしょう、と安澤さん。自分に対して良く思っている時生きていて欲しい、それが変わると死んで欲しい、極端だがと、そういう風に考える中村さん、ぼくにはなかって単に徳を崇くすると読んでいたが、子張の性格まで読み込むのがすごいですね、と高津君。孔子はその人の性格に従ってそうされるから、と中村（佳）さん。上田さん、詩の内容はどういうものですか、と川那辺さん。程子は、「誠不以富亦祇以異」は季氏第十六の十二の冒頭に置き、齊の景公が駟を沢山残したが民はそれを称すことはなかったが、伯夷と叔齊は餓え死んだが民はこれを今も称すと続くので、富じゃない、ほかのことで話が通じるが、これは、小雅、我行其野の一節「我行其野、言采其葍、不思舊姻、求我新特。成不以富、亦秖以異」（小雅）で内容が違う。結婚した妻を顧みぬ夫。自分を畜（やしな）おうともしない。野にゆき菜を采り里を想う。葍は大根、福をかけている。姻とは女の因るところ、婿の家、すでにその家に入った私を思はず、私に新しい特を求める。特とは元来は牡牛のこと、成獣。何のことか分からない。畜と特から、妻を家畜のごとくみなし、男の子が出来ずに捨ておかれる妻の嘆き、とみれば、富みじゃなくて、他のことに悩んでいる。以前は愛して生きることを願ってくれていたのに、子ができないともう見向きもしないという例として置かれたことになるのでは。意味が分からないが、子張等にはこの詩の意味はわかっていたのではないか、と上田さん。今となっては文章支離滅裂、と安澤さん。精神学的にはどうなるんですか、中村さん、と上田さん。人格障害という場合、普通は、良い所も悪い所もあって、良い時にはすがり、悪い時には相手を罵倒する。ころころ変わるのが人格障害。相手に依存している場合、捨てられないために、自分に引き留めるために、手首を切ったり、自分に目をむけさせるようにする、と中村（佳）さん。DV(ﾄﾞﾒｽﾃｨｯｸﾊﾞｲｵﾚﾝｽ)の場合、普通だったら双方的だが、一方的に暴力に耐えている人もある。骨を折られたり、あざをつけられたりやられまくったことを言うが、しばらくすると、ケロットしているが、また同じことが起こる、と川那辺さん。限界をこえた暴行事件になるが、夫婦のことだからとなると、そこで終わる。人格障害の人がDVになることがあるが、そうでない人のDVもある。配偶者でも、上司と同僚でもそうなる。ある関係の中でのみ発する場合もある、と中村（佳）さん。唯一、自分の気持ちを表せる人に対してという場合もある、と高津君。虐待からすると、無力化して、逃げ出すことすら考えられない、訴えられるが言わない状態というのもある、と中村（佳）。子張にそういうことがあったとかいうことは・・・と高津君。惑い、愛憎、生死という展開は、中村さん、高津君の言うように極端、異様、と上田さん。中国では簡単に死ねみたいなことを言いますか？と川那辺さん。喧嘩になればそうです、と高津君。それならそう極端でもない、と川那辺、中村（佳）さん。喧嘩のとき使う下品、粗野な言葉集というのがあって、それは口ではいえないほどひどいもので、韓国でもそうですよね、金さん、と安澤さん。そうですね、と金さん。孔子の学園でも精神障害とかひどい言葉遣いもあったのだろうな、と上田さん。

11) 齊の景公が、孔子に政治を問うた時に、孔子が答え、君が君として、臣下が臣下として、父が父として、子供が子供として、それぞれあるべき道、本分を守るのが政治と言う。それを聞いた景公は、善いことだね、ほんとうにもし、君が君として、臣下が臣下として、父が父として、子が子として本分を守らないなら、食べるものがあってもどうして食べることが出来ようか。君としての本分を守るように言ったのに、景公は守れているという風に解釈して、孔子の意図が伝わらなかった、と中村（佳）さん。人によって答え方を選んでいる、と安澤さん。言い返しているだけで、分かっていないということ、と川那辺さん。本分を全くせず、粟を食べている人、景公はどういう政治をしていたのですか？と中村（佳）さん。オオム返しをして実施するというタイプで、晏子のごとく、良き宰相に恵まれている間は問題はなかった。景公は孔子を高く評価して、領地を与え召抱えようしたが、晏子はこれを諫めて、実現しなかったけれども。だけど、宰相がよくないと、この調子であり、どうにもならなくなる。だから、君臣父子の関係を正すために、孔子が言ったことも通じていない。後の夾谷での好會のとき、孔子は景公の性格を見抜いており、宰相さえびしりと抑えれば勝負はつくと踏んで行動に出ることができた、と上田さん。自分がそういう風な人間と分かってちゃんとしていたら良かったということですね、と中村（佳）さん。

本日は金さんをお迎えしての読書会。今日は音楽の中村（典）さんがおられないが、彼女は対話を音楽としてとらえる人、その意味では、ネイティブの発音で抑揚やリズム、強弱等を聞き分けたいのでしょう。高津君にいわせれば、意味が分かって音読となりますから、やっぱり鄭さんですねとのこと。ジーザス韓君や琴の童君も今日はいませんが、金さんにはどう映りましたことでしょう。到着当日の夜にわざわざお越しいただき多感謝。
一揆で金さんを交えて一杯、安澤さんの韓国語も大分と回転があがりました。来週の塾頭は安澤さん、終了ごろに一時帰国の高井君が合流できるとのことです。

2008年3月15日　顔淵12〜16
今回の塾頭、安澤さん。上田さんと鄭さん、春の陽気に誘われて、昼間から宝ヶ池のほとりで一杯、場所を移して北野天満宮の梅をめでながら一杯、双方酩酊状態で参加。半年振りに中国より一時帰国の高井さんも来校。

子曰、片言可以折獄者、其由也與、子路無宿諾
安澤さん、「孔子が子路をほめて　片言、一言でとか、これは両方の話をきかず、片方の話だけを聞いて、裁判できるのは由にかぎると。そして一度引き受けたら必ずやり通す、その日のうちに承諾したことは、伸ばすことなく即時実行、正義勇断の人。解釈書の中には、普通なら両方の意見を聞いて、真ん中に立って判断するのが全うなのに、両方をきかずに裁いてしまうと、これはだめだという説もあるようだ。それと、片言を一言で、その訴訟を納得させるという解釈もあるようだ。」と。「片方のことだけ聞いてと、一言だけで判断するではずいぶん意味が違うけど、童さん、片言ってどういう意味？」と上田さん。｢とても短い、とても簡潔な言葉で決定するといった感じです。｣と童さん。「安澤さんが言う、片方が言うことだけで、一言で持って裁くということではないか。」と高津さん。「でも、裁きというのは、片方だけ聞いて成り立つの？ここをどう理解したらいい？」と上田さん。「片言とは、不完全な言葉。片＝偏　でも、子路の場合、片方で十分に判断ができる。また、子路一人の言葉であっても、正義のある人の言葉は意味が深い。」と童さん。「ここの片言が片方の事だけを聞いて判断するのか、一言でそれを裁いてしまうのか、それはどちらかはわからないけれど、これは孔子が子路を称えた言葉であり、と同時に戒めの言葉でもあるのではないか。孔子と子路の筏の話が確かあったでしょう。」と川那辺さん。「そうそう、その話で、孔子が本気で言ったことでないのに、子路はこうだと思ったら即やってしまう人。ここは、裏と表、褒める意味と戒める意味があると思う。子路みたいな奴に嘘はつけない。本当は一番だまされやすいのに、とにかくすぐに実行してしまう子路は、そのうちだませなくなる。やるといったら、やってしまう、そういう奴のいうことは、ものすごく信用ができてくる。国と国との約束事より子路の言葉の方があてになるというくらい。」と上田さん。「孔子はそんなことはできない。子路は直情実行型」と安澤さん。子路は、入門する時に、孔子に、勉強より竹槍の方が役に立つ、勉強して何の役にたつかと聞く。孔子は竹の矢に羽根をつけ、鏃（やじり）を磨けば、もっと深く入ると答え、子路は、それに納得して弟子入りした。子路は、人同士の付き合いにおいて、相手の言うことを絶対的に信じてあげる人、そしてものすごい行動力を持っている、ちょっとこんな人は珍しいなぁ。物事を何でも真に受けてやられると、ちょっと待ってくれよと、困ることがある。孔子と比較して、弟子はここが足りない、あそこが足りないといわれるが、ある意味で孔子にない物凄い力を持ったのが顔回や子路や子貢・・・そういう集団だったんじゃないか、偏っているけれど、それからすれば孔子はバランスがとれていた。次に出てくる文章が、上手くつながっている。孔子は子路を褒めていながら、ガツンと一発やっている。」と上田さん。

子曰、聽訟吾猶人也、必也使無訟乎、
「自分は、訴訟は人並みにやるけれど、訴訟のない世の中を作りたい。医者で言えば、病気を治すより、病気のない世の中を作りたい。」と安澤さん。「前の文章と上手く並べてある。私は普通の人と同じであり、両方の話を聞かないで裁くことはできない。子路の様にはできなくても、訴訟がおこらないような世の中を作るのが私である。根本的に解決していく。子路は、素晴らしいが偏りがある。」と上田さん。中村さん、「ほかの人と変わらないけれど、訴えが行われないようにしていくということですね。」と。「童さん、高津さん、必也使無訟乎は、どんな決意や気持ちがこもってる？」と上田さん。高津さん、「どうしてもそのときになれば、争うのではなくて、勝ち負けでなく、それぞれ一歩引く、と言った感じでしょうか？裁いてくれといわれたらするけど、互いに和解する方向へ持っていく。」と。「訓読では中国語のもつ、強い意味合いが分からない。そのときのその人の気持ちがわからない。」と上田さん。すると童さん、「必也は、必ずという意味でない。孔子は儒家の代表的である理想、訴えのない社会のために努力しますの表現。必也は、孔子の志。韓非子は、法律を非常に好んだ。全てが法律。後に、孔子の考えを批判するものだが、孔子は、法律は大切だが、あくまで道具。孔子の理想は法律でしばるものではない。」と。上田さん、「童さんが読むよう見ると、孔子の気持ちがよくわかる。中国語で読まないと、気持ちの入り具合が分からない。こうして、中国語を教えてもらいながらやるとわかりやすい。」と。「子路の考え方は、短期実践的、一方孔子は、長期的視野に立って、根本を正すことが必要だと言う。しかし、混乱した世の中でひたすら理想を説くというのは、厳しい現実と理想にどう折り合いをつけるかというのは、なかなか難しかったことでしょうね。」と川那辺さん。高津さん「自分のために使うには、論語はいい、しかし悪用したら、だめなような気がする。」と。上田さん「孔子の考えは、漢の時代になって実現しているけれど、孔子の言ういろんな政治思想というのは、あくまで周初のようなきちんとした政治あってのこと。乱れた世の中では、孔子のやり方は、受け入れられなかったのだろう。昔のギリシャの話、どんな独裁政治であっても無政府状態であるよりはまし。どういうことかというと、国家が運営できなければ何も機能しない、日々の安全すら保てない、一時のイラクみたいに。たとえ独裁政治であっても、人民はそれなりの生活ができる。修身といっても、国を運営できなければどうしようもない、孔子の頭の中の理想、周の政治思考、天命、民の安全、安定を図る。それをひと時も忘れない国の運営というものがある。天命を受け継ぐといった政治に対する強い姿勢。」

子張問政、子曰、居之無倦、行之以忠、
「その職にもっぱら、仕事に忠実であれと。子張は飽きっぽかった人だろう」と安澤さん。「忠と言う概念は、どう意味か？友に対しては、信。上に対して、忠。子張にしてみれば、自分の授かった仕事は、私の能力からすると少しレベルが低い。もう少し重要な仕事を下さい、自分が評価されていないと思うから、飽きる、忠を尽くさない。自分の仕事に対して、キチンとしなさい。孔子は人を教えることに対し絶対飽きることがないと強く言っている。」と、上田さん。童さん「子張という人は、飽きっぽい。あの時代官僚は、精一杯努力するけど、三日坊主だった。」高津さん、「子張も回りとよく似たタイプ。適当になっていく、誰でも。当時でも、今でも。」と。突然、深い春の夢からお目覚めの鄭さん、「政治家はきちんとこなさないといけない。それは子張にかぎってではない。政だけでなく、一般人の生活の中でもありえる、孔子は一生懸命教える。なにをしても全てを尽くす。飲むときも飲みつくす。それが、政ということ。たくさんのことを知るべき、礼のことを知るべき、それに外れたものは困るという感じ。今の概念とは違う。」と。上田さん、「人間社会を人間社会たらしめる、例えば、火がもたらされたことで、ものを焼くとか、調理する、酒や犠牲を供える、宮を建てる、いろんな段階があるでしょ。礼記、礼運というのにありますが。祭祀は神人和合、礼は礼儀作法とかそんなものでなく、人間を人間たらしめた、過去の伝統、それを踏んでゆくこと。それを外れたらダメ。」と。「実際の政の過程、人間との関係、礼と言うのは幅が広い。全て礼に関っているもの、そういうものの知識がそういった行いとむすびつけるもの。」と鄭さん。「そういう人間社会、国家たらしめる為の過程を尊重しなさい。本来の意味を無視した礼は意味がない。」と上田さん。

子曰、君子博學於文、約之以禮、亦可以弗畔矣夫、
安澤さん、「前にもこの文章がでてきているから、同じ意味だからそのまま次へいきましょうか」と。「いやいや、ちょっと違うよ。後ろの部分が違うでしょ。」と上田さん。「礼をもって、これを約すって？どう理解しますか？」と鄭さん。高津さん「現代の法律、決まりごと。しっかり学んで、それぞれきちんと約束ごとにそうような感じ、ですか」と。「知識が広いだけでなくて」と安澤さん。「そういった知識をたくさん持って、それが礼にそっているのかどうか、なぜそれにそって約さないといけないのか？後ろとつなげるとどういう意味？童さんどう思う？」と鄭さん。「大体わかりますが、なぜ礼をもってかというと、文というのは詳しい知識、そればかりで、礼のない人はだめということでしょうか。」と童さん。「亦可以弗畔矣夫はどんな感じ？」と上田さん。「とても難しい。なぜそんな言葉がでるのか。礼についてたくさん学べということを言っているのでは？昔のことを書いた文献。礼に関するものを勉強したら、間違いがないんだということが言いたいのでは。」と鄭さん。すると上田さん「例えば野球なら、打法とかいろんな解説が一杯あるが、プレーヤーはゲームの中でやって行かねばならない。打席にたてば、打てなければならない。解説とは違う。政治の現場でもその知識を活かさなければ意味がない。政治をやる場合、昔から授かってきた、息づいたものがあってそれに逆らってはならない。祖霊の教えがなかったらダメなんです。政治の場で機能する礼でなければ意味がない。」と。「礼のことをひろく学びなさい。政治理論よりも実践に生かせるかを言っている。」と鄭さん。

子曰、君子成人之美、不成人之惡、小人反是、
安澤さん、「君子は他人が上手く行くように、援助したり、心配したりするが、人の悪を助成しない。小人はその反対でやらない。」と。「善悪と言わず、善を美とし、美と悪で対比させているのが面白い。美は羊が子を生むこと、肥美、神に薦むべきもの、形が美しく、肉味の美をいう。善は羊神判で勝利を得ること、義は犠牲に用いて完美なるもの。孔子の場合、文のみならず音楽などにも造詣が深く、善をもってこずに美を持ってくるところがよい。」と上田さん。「その人の良さを生かす、それに反対のものはなくなる。小人は人の良くないところを大きくさせてしまう。人にわるいことをさせる環境を作る。この文章において、善をもってくるのは難しい。美は、視覚に訴えるもの。」と高津さん。童さん、「単純に考えれば美は、見えるもの。善は心の中。しかし、君子とあり、ここでは善と美は共通しているものだ。」と。「美と善　人の良さ、その人が持っている長所、君子はもっとそれを伸ばしてあげる。伸ばしてあげられれば、悪は自然と減る。善より美を選ぶと、もっと人の良さ。人を教えるときに、その良さを見つけて、教師ならば、導いてあげる。良さを成長させる。するとその成長によって、悪いところを忘れていく。」と鄭さん。

前述わけありの為、今回記録係は川那辺です。いつもは筆記に忙しい上田さんも任務からつかの間解放、お酒も入ってお口が全開。梅の香りを袋一杯に詰めて安息剤にお酒が手伝い、春の夢に陥った鄭さん。何事もなく読書会が続き、遠方から帰ってくる家族を待つ。
高井君との再会を祝して、夢多き旅立ちの春を祝して、四月からは10％引きの優待券までくれるといってくれた「一揆」で恒例の乾杯。どこまで夜が更けたか、朝を迎えたかは記録係の知るところではありません。来週、塾頭は高津さん、高井さんも参加予定。

2008年3月22日　顔淵17〜20
今回の塾頭、高津君。張君久方ぶりの登場、曲阜の孔子廟を訪問、感慨新たにされた模様。参加者も9名とよく揃いました。

17）季康子が、政について孔子に問をした。政と正は同じ発音。政治する者は、正しい心をもってしないといけない。貴方自身が正しいことをすれば、誰が間違った方向の政治ができるだろうかと答えた。これをみて思うのは、ちょっとずれるが、今の自民党と民主党のありさまだが、何をもって政治をするのか、国民の立場でなく相手を困らせるような政治をしている。これではいけない、政は正は色々な意味がふくまれている、これは政府のみでなく、誰に対しても言えることかと思う、と高津君。政を正で説明するのは論語によく出てくる。音が一緒。政と正、仁と人、義と宜、同じ音で分かり易くする。貴方が正しければ、上が正しければ、次と次も重なるが、上がしっかりすれば、自然とよくなる、と鄭さん。大人が見本を見せる、27歳の市会議員だったかな、押し入って女性にさわったとか、昔も今も変わらない、大人がしっかりしないと子供が・・・、ちゃんとした見本をみせないといけない。正は正直にあてはまるかな、と高津君。季康子が助言を得ようとしたが、孔子は馬鹿にしていた、上が正しければ、下は従う、貴方が正しくないから政治が行われていない。今の時代も、孔子の時代も一緒、季康子はそれなりにやっているが、孔子から見れば、よろしくないということ、と鄭さん。孔子が正しいというのは、魯では魯公が君主、季康子などは三桓氏で大夫、孔子も昔は司法大臣をやったことがあり、大夫クラス、何かあれば意見を求められる立場、季康子の下で宰をしていたのが冉有、ところが季氏が魯公を差し置いて八イツの舞をしたり、下が上をないがしろにしており、祭も政治も周公の秩序から随分はずれていた、それを正しくせよというのであるから、周公に復帰せよであり、この時代の現実とは合わない、と上田さん。日本の江戸時代でも徳川幕府は天皇を差し置いて政治を行っており、そういう時代の武士なら、ここの部分をどう注釈をつけただろうか？明治維新は王政復古となっている、と鄭さん。幕府でも水戸学では天皇を尊重していた、と安澤さん。季康子も孔子に意見を聞きに行っている、無視をしていたわけではない、と高津君。季康子には、冉有が係わっている、晩年の孔子は弟子が一番多いとき、（役職にはついていないが）、実際には力を発揮していたのかもしれない。それだけに、ここのような言葉が弟子の間に残った。孔子はこのくらいのことが言える立場にあった、と鄭さん。

18、19）を一緒にやります。季康子が盜みを心配して孔子に問うた。孔子は答えて、貴方自身が貪欲でなければ、奨励をしても竊むことがなくなる。季康子が政について孔子に問うた。もし道にはずれた者を殺して、道を守る者にすればいかがでしょうか。孔子は答えて、貴方が政治をするにあたって、何故殺す必要があるのか？貴方が善を欲せば人民も善くなる。君子の�ｺは風、小人の�ｺは草、草に風があたれば、必ずなびきます。この二つと最初をつなげて考えると、季康子に対する批判が並んでいるが、上に立つ者、見本を見せなければいけない大人が、きちんと心しなければいけないこと。下の人は上の人を見て行動する。これは、君君たり、臣臣たり、父父たり、子子たりに通じる、と高津君。奈奈さんここのあたり、どうですか、と鄭さん。孔子は、一貫して君がきちんとすれば動くと言っている、分かりやすいのは風と草の譬え、と奈奈さん。現代は国民教育によって、一般人のレベル、知識人のレベルが上がり、政治家よりも優れていることもあるが、昔は上のみが教育がありすべては上で決まる。だから上に見習うのが当然のこと、今とは異なる、と鄭さん。この時代、新興の呉や越や楚の軍事圧力を受けて、昔からの小国が併合されてゆく時代、戦乱で農民も流民化しており、盗賊も増えている、この時に上が貪欲でなければ盗むことはないと言って、盗賊が無くなるものではない。無道のものを善をなせばなびくと放置できるものではない、後の漢の時代、昔の周のような統一された、平和が確保された世では孔子のやり方は機能するが、この時代では乗り切れるものではない、それでも孔子がそう主張するところがすごいのだろう、と上田さん。孔子も大司寇（法務大臣）のとき政治を乱す者として、少正卯を殺している。現実が分からなかった訳ではない。理想的には正しい、理想があるから模範として読まれる。実際の場では、本当にそうかは問題、童君どうですか？と鄭さん。今の三つは季康子にとっては、順番の問題。正すことが出来ない、盗人が多くなった、無道の人を殺した、だんだん事態が悪くなっている。孔子は手厳しい非難をしている、と童君。深刻化している、そういう風に読み取れるのは、後の弟子がそう順番を定めたから。そう配列されたもの、と鄭さん。盗む云々について、私の本の解説では、季康子が国を盗んでいると、孔子が大袈裟なあてつけを行っている。季康子はピンときていない、と言っている、と安澤さん。小さな盗みより国を盗むというのはよく出てくる話、国を盗めば、泥棒にはならない、と鄭さん。孔子の考えでは季康子が国を盗むという感覚はない、陽虎は政権奪取を行い国盗りであるが、季康子にその危険を感じるものではなく、役割を正す方向、と上田さん。不欲は税金を取り立てないこと、盗むは税金を多くとること、と安澤さん。不欲は不欲盗のこと、民のために政治をしている人はいるのか？と鄭さん。いない、自分のことを考えている、と安澤さん。国が貧しくなると盗賊が増える。貧しい状況をなんとかしなければいけない、盗賊を殺すだけでは何にもならない、と高津君。北朝鮮のキムジョンイルに言わなければならない、人々を豊かにすることが先決、別のことをする政治ではダメ、と鄭さん。鄭さん、多分殺されてますね、と高津君。共産党の社会主義は民のための政治が目標でしょう。今の中国は政治家のほうが豊か、中国では権力に富がつく。賄賂が横行し、悪い政治システムになっている、と鄭さん。物を頼む人が支払え、それは賄賂ではなく一つの中国風システムというところもある、と安澤さん。

20）子張が士、仕事をする人はどうしたら達、通じる、分かるようになるかを問うた。通達した人といえるかを聞く、先生が、通達とは貴方はどういうものかと聞き返すと、子張は、邦に居ても必ず評判が聞こえ、家に居ても必ず評判のよいことと答えた。孔子は、それは達でなく聞、評判のよいことである。通達は、正直で、正義を愛し、人の言葉をよく考えて、顔色を觀ることができ、回りに気を使って、邦に居ても必ず達し、家に居ても必ず達することができる。一方で評判のよいという人は、うわべでは仁者で、行いが違う。現在について疑をもたず、邦に居ても評判がよく、家に居ても評判がよい。聞と達があり、聞は名声とか、人の評価に気になる人。達は基本的に行動的で色んなことができることを意味している、と高津君。川那辺さん、聞と達、スポーツや芸能界、政界ではどうですか、と鄭さん。政治家は分からない。スポーツの選手は海外で通用する一流の選手は達。評判だけのボクサーもある。それは本人だけの問題ではなく、そうさせる、のさばらさせる雰囲気を作る。芸能人は聞なくしては成り立たない、と川那辺さん。わざと話題を作って記者会見させる、と安澤さん。士は達を目標にしてがんばる。士は今では学者にあたる。目立つことをやる人は多いが、達の人は少ない。白川（静）先生は達、と鄭さん。達は仁者に近く感じられる、と高津君。達は人と接した時に、見極める。聞は自分のすべきことをせずに、外に合わせる、と鄭さん。邦というのは諸侯のレベル、家というのは宗族のレベル、そこに名前が聞こえているであるから、たいした人物となると子張は思っている。私のことをブッシュ大統領が知っていたら、これは相当のことである。しかし、それは聞であって、達ではないという。質は文質の質で内面、それが直っすぐで、義を好んで、相手の言葉を察っし、顔色を觀て、相手を慮ばかり、人に仕える、達は相手を認め、自分を磨くことにある。それを相手が認める所に達が成り立つ。しかし、仁者のごとき顔つきをして振舞うが、やることは仁とは違っている。ここに居りて疑わず、とは、そこを、人も指摘しないし、自分も気付いていない、けれど仁者という評判はある、と上田さん。人を判断するとき、いかにも仁者らしく振舞っていても見極めができること、上に立つ人はその見極めができなければ出来ない、前の話と一緒、と川那辺さん。今も昔もそこは変わらない。会社でも社長に覚えめでたい者、順々につながっており、断ち切れない、と安澤さん。音楽の世界ではどうですか、と鄭さん。音楽はスポーツに近く、人気のみでは無理です。ショー音楽の世界ならそういうもので動くが、クラシックの世界では実力がなければ、起こらない。美空ひばりさんも生きているときは色々問題が起こっていたが、死んで時がたってみると、とび抜けたものが残っており、それが分かる、と中村（典）さん。昔は公演をやくざが取り仕切ることがあり、山口組の資金源となっていた、と安澤さん。クラシックとポップスの違いは、と高津君。それこそ、経済的にはこの二つは1億市場と何千億市場の世界。クラシックは経済的に潤うということはない。カラヤンみたいな人は居たが。最近ではそういう人は居ない。社会貢献とかボランティアなどもある、と中村(典)さん。中国では女性の于丹の論語が売れている。彼女は聞ですか達ですか、と鄭さん。中国の研究者は批判的、現代人の考えることを論語で説明した、と張さん。于丹がたまたま読みやすいものを出したら全国的に読まれるようになった。一般人には分かりやすい。研究者からは出鱈目と指摘されるところがある。聞を目指した訳ではないが、大ヒットして有名になった、と鄭さん。朱子も通俗性があったのでは、と高津君。通俗性のみではなく、根拠を一般人にも分かりやすく説明しており、そこは異なる、と鄭さん。聞と馬鹿にされるけれど、実際のところ聞となる人はそれなりのものを持っている、と上田さん。中村(佳)さん、どうですか？と鄭さん。聞はテクニック、スキルだけの人。時代を超えて残るとなると、それだけでは無理。オリジナリティー、表現のモチベーション、ドライブが無いと無理、と中村(佳)さん。居之不疑という表現には時代を超えたもの、不安をもったもの、マイナスを担っているが進んでゆこうとする、相反するイメージを持っている。聞の人はそんなに悪いものでもない。研究に感性が高かった場合、大欠落をもっていたりすることがある、と中村（典）さん。亀田兄弟のことだが、基礎は出来ているが周囲にも問題があった。達者は最後には勝つ。自分の名を売ることは国のためにはならないことがある。政治家の場合には、生活者に影響を与えることがある、と高津君。そういえば、中国では極端な格差が生まれ、チベットの暴動とあいまって不気味な展開をみせている。多くの農民が都市に流入してゆくことは今後も避けられない。貧農は農村からも追い出され都市での民工míngōngとなる。農民と民工の生活を安定させることが出来ねばただごとではすまなくなる。と恒例の脱線がスタート。人口の1割がリッチと言っても1億人、日本人全体がリッチというすざまじさ。大概は党幹部や地方の役人、経営者。7割の不満との抱き合わせ（当代中国十大階層）。どっちも噴出せば巨大台風。地方の役人が中央に進出するために、地方の農民から収奪して賄賂を用意するは昔と変わりなく、農民の反乱により天命改む（革命）のはじまりとなるのも歴史の教訓。湖主席や温首相が綱紀粛正、格差是正へ懸命の努力をなさるというも、解き放たれた流れをとどめることは至難。利を求むること突出、礼の精神は見果てぬ夢。于丹の論語が大ヒット。かつての明のごとく、揚子江を中心とした海運を背景に貿易で築かれる巨万の富、東南アジアやインドへ向かうルート確保、チベットを押さえることは避けられず、それには中国寄りのダライラマを誕生させねばと、輪廻を操ることすら辞さぬ勢い。周辺の北朝鮮、韓国や日本はまるで隋、唐時代に抱いた危機感を思い起こさざるを得なくなっている・・・・と時局放談。
来週の塾頭は童君です。一揆では4月前というのに、1割カット。多謝。

2008年3月29日　顔淵21〜24
今回の塾頭、童君。沈さん久方ぶりの登場、明日の鄭さんの引越しに備えてのこと。

童君、前回の補足。在邦必聞在家必聞の家は普通の家ではなく、大夫の家、政治の所、家と邦は政治の所。

21）樊遲、從いて舞雩の下に遊びて曰く、敢へて�ｺを崇くし慝を脩め惑を辨つを問う。子の曰はく、善き哉問ふこと、先に事へ後に得る、�ｺを崇めるに非ずや、其の惡を攻めて人の惡を攻むること無くば、慝を脩むるに非ずや、一朝の忿に其の身を忘れ以て其の親に及ぼすは惑に非ずや。いいかな、事を先にして得るを後にする、�ｺを崇くするにあらずや。その惡を攻めて人の惡を攻めることなし。一朝の忿に其の身を忘れ以て其の親に及ぶ。樊遲との問答。この人は、雍也第六20）、樊遲、知を問ふ、仁を問ふに見える。史記、孔子世家では樊遲は孔子より36才年下。從って遊ぶは、孔子の後に従って参加している。舞雩の下に遊ぶは、一時的なアミューズメントのみならず、そのプロセスに教育のチャンスがある。舞雩は先進第十一25）にあるように祭りの場、魯の北東の南。質問の内容は三つ。�ｺ、慝、惑。以前別の弟子が顔淵第十二10）で、子張が同じことを問うた。ここで注意が必要なのは慝。上の匿まうと下の心から成り、意味は自分の心の深いところの悪、脩めるは悪の除去の意味。孔子の答、いいかな、行動を先にして生まれる利益を後にすること、それこそ道徳を進めることではないか。自分の欠点を責め、人の欠点を責めないこと、それこそ欠点の除去ではないか。一朝は朝の意味だが、一日の意味。短い時間の怒りのために、我を忘れて乱暴して親に迷惑を及ぼすこと、惑いではないか？皆様の意見はどうですか？と童君。いい質問をしたと孔子が言ったのは何故？と鄭さん。樊遲は三つの問題、自分、自己の利益をかなえることじゃなくて、全部君子としてのポイントに質問。まず、いいかなと言った、と童君。子張が質問したときには、いい質問をしたね、などとは言わない。子張への答は分かりにくいが樊遲への答は分かりやすい。顔淵だったら、いい質問だね、などというだろうか？と鄭さん。樊遲は質問する前に「敢えて」と言っているが子張は直接聞いている、「敢えて」には先生に対する尊敬の気持ちがある。そこが違う、と童君。遊びに行ったとき、「敢えて」は結構重い。この場合、孔子の答が分かりやすい。樊遲が登場するときは、他の弟子とは異なる。普通は、よい質問したとは言わない、と鄭さん。仁や知も問うている。今回は事を先に・・・と高津君。樊遲は先生の御者でもあり、魯の郊外で斉軍と戦った魯軍の左軍を率いていた冉求の車右を務めていた。斉が攻めてくるが、軍は溝をこえようとしない。樊遅が、「溝がこえられないのではない。冉求の命令に信用がない。三度（命令を）徹底してください。」ということで軍は斉軍に突入し勝利を得たという話がある。樊遲は武勇の人だが、文は苦手。そんな樊遅に飽きることなく教えるのが先生、と上田さん。孔子がいい質問をしたと言い、樊遲は先生の言葉が分かった、しかし、その次の仁と知については分からなかった、と鄭さん。〜に非ずやと聞き返しているが、最後惑の所は非惑と惑一字で終わっているのはどうしてか？と高津君。樊遲はあまり文がない人、荒っぽい人。すぐに自分を忘れてしまうことを言う、と童君。惑を区別できるじゃなくて、惑いであると忠告しているということか、と高津君。弟子の惑いはそれぞれ異なり、子張の場合は異なり、先生の答の違いは、弟子の教育の高さ、弟子の性格をよくみている、と童君。子張と樊遲の惑いに差がある。子張は普遍的なもの、樊遲は樊遲その人特有の惑い、と鄭さん。将来をみての助言、人と人と接する時、目先だけみなくて良い方法を見るように、孔子があきらめずに指導している。樊遲は私に似ている、と沈さん。沈さんは子路だよ、と鄭さん。普通の人は樊遲みたいな行動をしている。松下幸之助も人をみて社会教育をしている。会社が全体的チームの力を発揮するようにしている、と沈さん。沈さん、ここの場合と比べ経済的なことをするには、人脈を作る現実はどう？と高津君。中国は樊遲、日本は信用が大事、品質を重要視する。中国は目先の利益、すごく伸びているみたいだが、バブル。今年は株をやる人が破産する。日本には明治からの蓄積がある。日本は失敗したが、法律を進めてしっかり出来るようになってきた、と沈さん。中国人とアメリカ人は似たところがある。日本人は勤勉でいいものを作り資産を作るが使い方がわからない、アメリカ人は頭のよい人間は資産を作るのではなく運用する人間と考え、中国人は勤勉に働くものに働かせあとでごっそり手に入れる、品質だけでは・・・と上田さん。そうですね、良いところもあるが、細部こだわり遅れるところもある。スピードの韓国、品質の日本、コストの中国、と沈さん。一朝の怒りは樊遲のみの問題じゃなく、あの時代の共通の問題、匹夫の怒り。韓信は怒りを抑えて、股くぐりをしたが、大を成し、大将軍となったが、一朝の怒り（で身を滅ばす）ことが共通的な意味となっていた、と童君。

22）樊遲、仁を問う。子の曰はく、人を愛せ、と。知を問ふ。子の曰はく、人を知れと。樊遲、未だ達せず。子の曰はく、直きを舉げ諸の枉れるに錯けば、能く枉れる者をして直からしむ。樊遲、退きて子夏を見て曰く、�ｸに吾、夫子に見えて知を問うに、子の曰はく、直きを舉げ諸の枉れるに錯けば、能く枉れる者をして直からしむ、何の謂いぞ。子夏が曰く、富かなるかな言ふこと。舜、天下を有ち衆に選びて皐陶を舉ぐるに不仁者遠のく、湯、天下を有つや衆に選びて伊尹を舉ぐるに不仁者遠のきぬ。樊遲が問うが、孔子の答は、はなはだ短いので、樊遲はその内容が分からない。更に尋ねると、正直な者を挙げ用いてこれに官爵を授け、多くの邪悪な者を捨てて用いなければ、邪悪な者は己が用いられないのは邪悪の為でと知って、邪悪を去って正直に移るものである、とのたまはく。樊遲はまだまだ分からず、もう一回質問すると恥ずかしいので、子夏に会った。子夏は文学が上手、樊遲にとって子夏はすばらしい先輩。直きを舉げ諸の枉れるに錯けば、能く枉れる者をして直からしむ、について昔の名人を引用して解釈、皐陶は司法大臣の役になった人、伊尹は殷の時代の湯の宰相、誰でも知っている歴史上有名な代表、大臣になったあと、不仁者は遠ざかった。子夏の解釈は古代の人材抜擢に関するもの、もうひとつのポイントは、孔子と哀公の問答にもそういう言葉がみえるが、直きを挙げて曲れるに置くの思想は、孔子の一貫した主張。皆さんどうでしょう？と童君・皆さん、如何でしょうだよ、と鄭さん。鄭さん、如何でしょうか、と童君。樊遲が子夏に尋ねたのが面白い、と鄭さん。孔子も樊遲が仁と知について問われ、一瞬どう答えたものかとまどったのではないか？結局分からなかった、と上田さん。樊遲にはこれ以上ない答、愛人、知人、非常にわかりやすい、と鄭さん。前の方は長く、今回は非常に短い、どういうこと、と高津君。樊遲はあほらしい、馬鹿らしい、となったのではないか。孫弟子の時代にはそういう受けとめ方となっていたのだろう。樊遲には分かりにくかったことを、子夏が歴史上の人物で分からせた、と鄭さん。分かりやすすぎて分からなくなった。急に簡単な答が返ってきてとまどった。子夏の答は、孔子の答と一緒ですか、と高津君。同じでしょう、と童君、鄭さん。良い人は残り、悪い人は去ってゆく、人を知ること、先事後得とかかわる、と鄭さん。子夏の答で、樊遲は理解したでしょうか、と童君。三者の会話で我々は分かりよくなった、と鄭さん。皐陶や伊尹は書経を読まねば分からないから、分かってなかったかもしれない、と上田さん。文章の前後を見れば、歴史上の人物を詳しく知らなくても何が言いたいかは分かるでしょう、と川那辺さん。直きを挙げて曲れるに置くの思想は漢代から解釈しにくいところがある。子夏は比喩で解釈を行っており、直接の解釈ではない、と童君。子夏の答から、我々もよく理解できる、前回の所（為政篇19）では色々な解釈となる、と鄭さん。錯をおくと訓じているが、研ぐことで曲がっているものをごしごし研いで真っ直ぐにするという矯正するようなことで、上に置けば下がそれに自動的に感化されるというものではない。書経の堯や舜典で舜が後妻やその子の殺されそうになっても孝を尽くすといった異常なほどの孝があってはじめて堯が使えなかった人が舜に仕えたとか、そういうすさまじさがある、と上田さん。

23）子貢友を問う。子の曰はく、忠にして告げて善く之を道びく。不可ならば則ち止む。自ら辱むること毋かれ。道は同志、友人について、朋友の間、欠点があれば言ってあげる。相手が変わらない場合、自分があきらめる。孔子は友情にも限界がある、限界以上に導くことはできない。六朝時代に仲の良い友人、管寧（ｶﾝﾈｲ）と華歆（ｶｼﾝ）、毎日酒を飲み、本を読み、労働して同じ床に眠る。ある日、一緒に耕していた時、金塊をみつけ管寧は見ないまま耕し、華歆は見ていた。ある時、外を綺麗な馬車が通り、美女が乗っているのだろう、と鄭さんの合いの手、管寧は本を読み続けたが、華歆は外へ見に出た。華歆は戻ってくると、管寧はナイフで席を半分に切って、もはや友人でないとした、割席断交の話がある。昔の中国の士大夫は、ここの孔子の言葉と同じく手本とした、と童君。管寧は華歆に忠告して導いたのか、孔子は飽きずそうしたが、と高津君。孔子は三回とは言わなかった。ずっと導くのは弟子との間のこと、友人同志はそうではない、と童君。今の人なら金塊を見つけたら拾って二人で分ければよい、となるがここのところは子供にどう教えればよいか、と鄭さん。華歆って三国志の華歆ですか？華歆は後で有名になるでしょう、と高津君。管寧は学者として有名な人です、と童君。これはつくり話。若い時にそういう性格があった、一人は学者、一人は政治家として成功している、と鄭さん。忠告とは本当のことを告げる、心からのアドバイスか、と高津君。忠は心を尽くすこと、告げるに真心をもって知らせ、方法まで示して導く、それでも不可であれば、やり続けると自分も沼にはまってしまう。高校生くらいのころには朱に交われば朱くなるとあり、切るべき、と鄭さん。二人とも良くならない場合には割席断交です、と童君。共に学んでも、共に導くことはない、必ずしも同じ道を行くとは限らない。志がちがっていても共に学ぶことはできるが、志が違えば、それはその人の人生、それを変えることはできない。その人から学ぶことはできるけれど、と高津君。古代人では、友人に関することは今と違って、非常に大事です。孔子の時代は今とちがって沢山の友人がいるということはなくて、一生の間の友人で非常に大事です。現代人は悪い場合、何も言わないし忠告もしない。そうではないから、悪いところがあれば必ず言う。彼が変わらない場合、個人としてはたいへん面倒くさいことになる。問題、子貢はだから質問した。深刻な心中の葛藤があります、と童君。友といっても古代中国の友は正しい正しくないのみの関係ではない。刎頚の交わりとか、正しくなかろうが、悪いことをしていようが一旦友となれば、とことん裏切らないみたいなことがあるじゃないですか。忠告といっても善悪のことを言うばかりじゃない、と上田さん。義理と人情です、と沈さん。志を一緒にするのが友、最初から志が違っているものではない、良い政治を目指すもの、と鄭さん。

24）曾子が曰く、君子は文を以て友と會し、友を以て仁を輔く、とても有名で理解しやすい言葉、普通は孔子が言ったと考えているが、曾子の言葉。京都大学の「以文會」もここから来ている。最終の理想は皆仁をもって、違うレベル、レベルは違うが、鄭さんように高いレベルの人と会うと私、自分の仁のレベルも上がる、と童君。えらく褒めてくれますね。順番があります。友というのは酒の友ではなく、文をもって友となる。友によって仁が豊かになる、と鄭さん。心は一杯の時間でしょう、と沈さん。鄭さんは酒を以って集まるですね、と高津君。料理には塩がないと！論語には酒がないと！と沈さん。

来週は午後一時に読書会をスタート、その後は出町で買い物をしてお花見です。泉屋博古館見学もその次にやりましょう。来週の塾頭は川那辺さんです。沈さんは明日の鄭さんの引越し手伝いで本日は泊り込み。上田さんと三人で高野で一杯、ラーメンで一杯。眠たい引越しとなりました。日曜日は高津君も参加。我らが論語会の孔子先生といえども、引越しは苦手の模様。「先生、一体何をもたもたしているんですか？先生が出来ないなら、わたしがやりますよ」と。孔子先生、反論する余裕もなく、鬼のような声にせかされ、雨の中、本と衣服に埋もれ、夕方までに部屋をすっからかんに清掃出来ましたのは、奇跡的でした。新たな部屋で荷物に囲まれ、またもや酒を以ってここは友を労う。お疲れ様でした。

2008年4月5日　子路1〜2
今回の塾頭、川那辺さん。国際会議場大西さん参加、上田さんの後輩といえど、半年違い。

1）子路が政治について問うに、先生は率先してやりなさい、周りの人を労いながらやりなさい、とおっしゃられた。もう少し詳しく教えてくださいと言うと、倦むことなく、怠けることなく継続しなさいとおっしゃった。子路は、直情、実行の人。言われなくてもやれる人。周りの人に思いやりを持ちなさいと苦言を呈し、それをずっと継続しなさいと言われたのであるが、子路がどう思ったのでしょう？言われてしまった、というぐらいのところですか。政治をやるには当たり前のこと、部下、下の者には、思いやりを持って導かないと信頼関係がうまれず、組織力として強くなれない、優れた才能も必要だが、労う気持ちを大事にするようにと言った。童さん、どうですか、と川那辺さん。顔淵14に子張が政治について問うて、孔子は同じ内容を言っています。倦むことなかれ、同じ言葉を言いました、と童君。精神科医の立場では、奈奈さんどうですか？と川那辺さん。労うは、人を動かすに必要です。患者さんはもともとあまり来たくないのですから、来たことをほめ、言ったことをほめ、心配したことをほめ、質問してくれたことをほめ、労うことをしないと人は動きません、と奈奈さん。そういう風にふれると、患者さんに変化がありますか？と川那辺さん。ほめてあげないと来ない、そういうことがよくあります、例えば老人など介護しておられるとき、家族をほめてあげないと、介護ができなくなることがあります、と奈奈さん。中村（佳）さん、どうですか？と川那辺さん。大変そうにしているときは、本来他の人がやる仕事でなくても手を貸すとか、上の人が率先してやってゆかないと、下の人は動かないことがあります、と中村（佳）さん。安澤さんどうですか、と川那辺さん。率先垂範とご苦労さん。同業団体の上の人、人徳があります。車のタイヤを換えているとすぐ人が手伝いに来る、自分もそうありたい、労うといえば、山本五十六語録「やってみせて 言って聞かせて やらせてみて ほめてやらねば 人は動かず」、と安澤さん。新しく来られた大西さんどうですか？と川那辺さん。倦むというのは、いやになる、怠けること、ここは、これだけ見ると、分かっていてもすぐ忘れることがある。それを続けること、継続が大事、と大西さん。中村（典）さん、音楽の場合はどうですか？と川那辺さん。音楽はそればっかりで出来ている。作曲をしていると・・・曲をかくけれど弾くのは私ではない、弾くのが自分である場合もありますが・・・ベートーベン以降は分業体制が出来上がって、それまでは作曲もして演奏もするということはよくあったのですが、労いなくしては何一つ動かなくなりました。論語のここのところを読んで、改めて、労いがないと何事も動かないことを感じています、と中村（典）さん。鄭さん、全体的にどうでしょう、と川那辺さん。政治は前回からの議題。孔子の答は弟子によって違うが、子路が聞いたときの答、倦むことなかれ、がポイント。これは子路に結びつく、顔回は学びて倦まない。子路には続けなさい、顔回は口に出す前にやるが、子路の場合は口が前に出る、どういう場面でこの対話が行われたのか？何か特別な状況ご存知ですか上田さん？と鄭さん。いや、知りません、と上田さん。子路は政治家として挙げられる人、次の仲弓と比べると、また言えることがある、と鄭さん。

2）仲弓が、季氏の宰相となったとき尋ねた。有司は役人、政治をどうこうするかを考えずに、役人について考え、少々過ちがあっても赦して、人材を登用しなさい。そうすれば人材がついてくる。貴方が優れていると思う人を採り上げなさい。知らない人については、周りの人がほっておかないでしょう。仲弓については、人材登用について指示をしている。優秀と思う人間はいいが、分からなくても他の人が推薦してきてくれると、またよい人材は自ずとやってくるということでしょうか。孔子は、仲弓に対して絶対的信頼感をもっており、人々を集める力を持っていると孔子は認め、他人がほっておかない、よい人脈がついてくると認めている。政治のテクニックではなく、政治をする人との係わり、心根について話している。少々の失敗を赦せる心の広さについていい、それもまた、組織力を示すものだとみている、安澤さんどうですか？と川那辺さん。急に言われても・・・順々に来てからに、と安澤さん。順番になると構えるでしょう、と川那辺さん。前のことは心構え、これはもう少し技術的なこと。転勤した場合、今は人事異動のときですから、違う部署に移ったとき、担当者をポジションに配置して、小さな過ちを大目に見て、優秀な人材をあてる、組織掌握のノウハウ、と安澤さん。雍也篇４）にあるが、仲弓の父は賎人であり、犁牛（まだら毛の牛：農耕用の牛）の子と称され、孔子はその徳と才を評価したが、懸念する声があった。孔子は上の評価を先に考えず、使う役人の人選の方を先にして、賢人、才人を選ぶようにと助言している、と上田さん。仲弓は身分が低いが徳を持つ人。孔子からすれば政治家に入っているものではない。政治家からは物足りないとされていた。仲弓自身も心配していたが、孔子が推薦して仕事をさせた。仲弓は政治に自信がない、それを役立てるため・・・子路なら自分で動かしてゆくだろうが、役所に居る者を上手く使えということ、と鄭さん。奈奈さん、どう思われます？と川那辺さん。単にほめるだけでなく、理解者を見つける能力があった。優秀はチームワークとしての優秀。人を信じてそれを集めることが出来る。寛容さもある。人になかなか信用を・・・受け容れるのは難しい、と奈奈さん。大西さん、職場ではどうですか？と川那辺さん。上も下もあてがいぶちで、自分で選べるというものではないので、と大西さん。昔は長官のみ派遣し、これを官といい、吏、役人、は地元で採用する。官が吏を登用してゆくのが中国のスタイル。任命権があり自分で変えることは可能、と鄭さん。日本でもそういうことはある、と安澤、奈奈さん。若い優秀な大蔵官僚が税務署長として傷がつかないように育てる。官僚の育て方などは中国から来ているのでは、と安澤さん。聖徳太子の時代に取り入れている、遣隋使や遣唐使などは中国のシステムを導入することが目的、三年毎に交代させたり、生まれ故郷には行かせないなどがある、と鄭さん。中国の銀行で仕事をしたが、支店長は自分の好きな人を選ぶことが出来る。他の人は推薦による。人間関係の上手い人が出来る、と張さん。童さん、どうですか？と川那辺さん。仲弓が季氏の宰として、自分の先生にどういう相談をするか。仲弓に対して三つあげる。仲弓は三つの意見を聞いて、二つ出来ると思った。第三のアドバイスは難しいと思う。第三の問題は中国の歴史で一番難しい。人材の選択。孔子から漢の時代までは、有名人の推薦によった。それから唐以前まではキュウホン・・・推薦と共に使う、科挙制度以前のもので九品制、門閥制、と鄭さんのコメント・・・このやり方は宋代に自分の好きな人で能力のない人を使ってどうしようもない事態となるのですが、それはここの孔子のアドバイスによるとされました、と童君。自分の知る人を登用するは、知識人層の厚さ・・・有名な先生の所に人が集まる・・・春秋戦国時代、とくに戦国時代になれば斉の稷下に知識人が集まった。孔子もそれを狙ってあちこちフォローしていた。目の前の正しい人を使えば人材が集まってくる。孟子の時代には遊説するということが行われていた、と鄭さん。中村（佳）さん、どうですか、と川那辺さん。優秀な人がいもづる式により、その人に見る目があるとなれば人が集まる、その眼力があれば、人が集まる。前半の小過を許すはどこまで許してどこまで見逃してよいのか難しい、と中村（佳）さん。致命的なものはダメだが些細なことはいいのではないか、と安澤さん。仲弓は自分に小過がある。仕事の出来る人に対して仲弓は自分の徳にかなう者と仕事の出来る者について、こだわりを・・・徳ばかりを見ずに、政治上のことが違うので、と鄭さん。中村（典）さん、音楽で小過はどうでしょう、と川那辺さん。小過は許すべきもの、小さいミスはよくある。CDでも残っているものがあるが、大きな流れが大事と思う。デジタル時代となり、録音の中で直してしまったりするが。大きい小さいでは小さいとき、許すべきものです。最終本番がうまくゆくように・・・と中村（典）さん。仲弓は徳の人で、仲弓からすれば徳に関して役人の至らなさがどうしても気になる、孔子はそのことを懸念して、小過を赦せとアドバイスしている、と上田さん。CDではミスは直せますし、直していますね。小過は野放しにするのではなく、繰り返さないように話し合いに持ち込み、きちんとして納得させることが・・・小さなものが大きくならないようにまで含めているのではないでしょうか？張さん、如何ですと川那辺さん。そのとおり・・・中国の研究者はアジアの人々が論語のやり方を使い力をつけてきた、小龍（アジアの経済途上国）、中華精神といわれてきた・・・と張さん。儒家的なものがあると言われてきたが、個人的には、漢字文化圏というものの思考かと思う。中国は共産主義といわれてきたが、そうではない、漢字文化が根底にある、と鄭さん。日本でも論語とそろばん、というのがあります、と張さん。明治の渋沢栄一ですが、そのころとの時代が違う、上の者が率先して垂範すれば下の者がついてゆく時代、今の時代は上の者がそうしても、下の者がそれをみて自分もそうしますか、知らん顔してます、これではむつかしい、と鄭さん。だいぶと脱線気味、そろそろ花見の時間です、時計を指差す上田さん。

来週土曜日は所用の人が多く、10日、木曜日に変更。お間違いのないように。塾頭は安澤さん。いざ、出町、賀茂川へ、10名。いずこも青シートの群れ。簡易シートも売り切れ状態。交渉の安澤さん、お帰りのカップルからシート2枚をゲット。お尻が滑る土手から孟母三遷、桜下の平地に移って韓国語、中国語の歌もでました。トイレも満開、夕闇にぼつぼつと流れ解散、トリは川那辺、奈奈、安澤、鄭のカルテット、昨年の雨とちがって、暖かい花見となりました。

2008年4月10日　子路3〜5
今回の塾頭、安澤さん。お花見あけの日程変更で、本日はカルテット。

3）子路が尋ねた。衛の殿様が、子、孔子をひきとめて、政治を任されることになったら、何から手をつけますか、何を先にするかというと、先生は、必ずや名を正さんか、混乱した名目を正しくしたい、と言った。子路は、これだから困ります、先生の迂遠なことは、よりによって何を正しくするのかと尋ねると、相変わらず野蛮だな、お前は、君子は分からないことは知らん顔をしているものだ。名目が正しくたっていないと、話の筋がとおらない。話の筋がとおらないと、政治が成功しない、政治が成功しないと、禮樂、文化は興ない。文化が興らないと、裁判が公正でなくなる、裁判が公正でないと国民は手足を伸ばして休息できない。君子は名をつけるときに、言葉ではっきり分かるようにし、これを言えば必ず行うこと、君子は軽はずみなことをしない、と貝塚先生は書いている。名を正さんかとはどういうことか分からないなあ。名目を正しくする、吉川先生は名称を整頓すると言っているが、と安澤さん。この衛君は出公の輒（ちょう）、衛では、太子蒯聵が母の南子を殺そうとして、失敗して亡命。靈公は弟の公子郢（えい）を後継としようとしたが、郢はNO、靈公亡き後、南子も郢を推すが郢は拒み、蒯聵の嫡男輒を後継とし出公とした。名を正すとは、郢を除き、晋に亡命していた嫡男の太子蒯聵か、その嫡男輒か、正しい後継者とは誰なのか？を正すもの。この話は弟子達が先生がどっちに味方されるかやきもきしていたとき、子貢が伯夷、叔齊に例えて先生の意向をはかり、どっちにも味方されない（述而篇14)と関連し、結局孔子は両方とも正しくないとみていた。孔子もどっちが正しいか言えなかったので、分からないままにしておけとしたが、子路は孔子が出公を補佐することを願っていたし、公を補佐するラストチャンスとみていた、孔子がそうしないので、子路単独でそうして、出公のために死ぬことになった、しかし、歴史背景を抜きにして、一般的に読むことができるのが論語、と上田さん。歴史的背景を知ると限定されてしまい影響力がなくなる。それなくして読めば名文、と川那辺さん。普遍性がなければ残らない。それがその時代の話でしか通用しないものであれば、残らない。後の人には、名目のことは分からないし、名称を整頓といっても分からないが、と安澤さん。知らないことは黙っているべき、子路に対して言ったものと思ったが、孔子自身を含めてのことですか、と大西さん。知るを知るとなし、知らぬを知らぬとする、と安澤さん。子路は出公の家来？と大西さん。昔からの家来じゃない、子路の妻の兄が衛の人、孔子が霊公に就職するために衛に行ったが孔子を中傷するものがあり、実現しなかった。霊公が死んだときが就職のチャンスで、子路にすれば出公から申し出があり、これを補佐するかしないかの決断一つだが、孔子は名が正しいかどうかとまわりくどい話を持ち出す、子路は先生が決められないなら自分が決めると突っ走った、と上田さん。宰となった、と安澤さん。孔子は??を正しいとみていると書いてあるが、と大西さん。どっちも正しいとはみてない、色々な解釈があるので、これが正しいというのではないが、自分はそう思っている、と上田さん。孔子は弟子を苛々させる人、頭の中は素晴らしいが、実践となると慎重派、たとえ最後のチャンスであっても自分が納得できないものに対しては動かないと川那辺さん。

4）樊遲が穀物の栽培について教えてほしいと言った。稼は田畑に穀物を作ること。それを聞くと先生は、老農、篤農家には及ばない。圃は野菜の栽培、それを聞くと、老圃、園芸家には及ばないといわれ、樊遲が出てゆくと、何とつまらない人物だろう、小人という言葉を使っている。政治家が禮を大切にすると国民は彼を尊敬しないものはなく、義を好めば、国民は彼に服さないものはない。信を好めば国民は誠実でないものはなくなる。本当にそうなると、四方の国民が幼い子を襁負、背負って集まってくる。どうして稼、農作をする必要があろう。生産業をしなくてよいと言っている。どういうことですかね。政治家は政治をやっておればよいということか、と安澤さん。樊遲が利口な人でないと前にも言われていたけれど、樊遲の気持ちは分かる。世の中を治めるには、下の人と同じ気持ちでしてゆかねばならない。そういう気持で聞いたが、樊遲は聞く相手を間違えた。孔子は根本をしっかりしておれば、あとはついてくるという考え。こんなことを言われて樊遲はどう思ったのだろう？それからすれば今の政治家とは違う、反対、と川那辺さん。大根一本いくらか知っていますかとやられる始末。何故、樊遲が孔子にそれを聞きたかったのか？何故ここにそのことが載せられているのか？穀物と野菜作りを分業していた？と安澤さん。樊遲もそうだし弟子も聞きたかった問い、他の弟子なら"ならば先生は何をする人ですか"とか問うかもしれないが、樊遲がすっと出てしまって、場としてはばつの悪いもので、孔子は残った弟子相手に、いいわけがましく、説明することになった、と上田さん。樊遲がそこでさっと出て行ったということは、樊遲もなかなかの大物じゃないですか、色々悪く書かれているけれど、思い切りもいいし、好感がもてる、と川那辺さん。情ですがどうしてこの字が使われていますか？まことなら誠、とか真とかありますよね、と上田さん。情は誠実、誠実を働かせて行動する、今の我々でが情実の意味でよく使われるが、当時は"まこと"の意味、と安澤さん。真情、真情を尽くさぬものはなくなる、と大西さん。友情は友にまことを尽くす、愛情もある、と安澤さん。信に対する情、信あるものに対して、こころを尽くすようなもの、と大西さん。ここのまことは正しいとか真実とかいうものではなく、心を問題にしていることになりますかね、と上田さん。孔子は若い頃、鄙事に能力を発揮した、貧しかったので何でもしたと言っており、農作業の重要性は分かっていた。精神的なものは大事。生産も大事。現在では、効率と生産が大事にされるが、精神的なものがなされていないので、問題が起こっている、と大西さん。農業の重要性は分かっている。孔子は農業技術ではなく、農民が安らかに農業をして暮らせる政治を行うことが自分の役割とみている、と上田さん。両方が必要、と大西さん。土台さえあれば、自ずとそうなってゆく、政治がきちんとしていれば、農業もきちんと成り立つ。人材の話も一緒、仲弓が自分が知らない人材についても、いい人材を選べば、いい所にはいい人材が集ってくるとあった。君子は何をすべきか？それは土台であり、それがしっかりしていれば、人は磁石のようについてくる、と川那辺さん。

5）詩三百を暗誦していても、これに政治の要務を任してもうまく果たすことができず、外国に施設として派遣されても、一人で対応できなければダメ。暗誦しているのみではダメ。正しく応用して感情を表現できないとダメ。貴族階級の教養、宴会でも詩に託して相手を説得していた。詩を例にとって交渉を行った。知識があっても使えなければどうしようもない。インテリゲンチャ、評論家がいるが、それをもってなんとか出来ねばダメ。平安時代などの日本では歌、江戸時代は川柳、百人一首もあるか昔はよく覚えさせられた、と安澤さん。今でも学校でやらせてますよ。十首くらいだけれど。でもこれは、詩文をもって外交をしていることをいっているのでしょう。詩を暗誦しているだけでなく、深く理解して体得することで外交手段のひとつとしてやっていた時代なのでしょう？と川那辺さん。胡同の理髪師の映画、北京の胡同に暮らす93歳の理髪師チンじいさん、淡々として顔剃りをする。必要以上の代金を出され断ると倍増しの料金を出されたが何も受け取らず帰る、結局は金のために散髪しているんじゃない。この世代にはそういうものが残っているが、若者は金、金、金で精神的な核となるものがない、と安澤さん。日本でも論語の影響が日常生活に今でも残っており、詩や書経、禮、それを受け継ぐ論語の影響は中国の根底にある、と上田さん。文化大革命で否定されて消えてしまった、と安澤さん。始皇帝が焚書坑儒をしたが、一時的だった、毛沢東も同じじゃないか、と上田さん。政府レベルではダメだが、民間では、本屋では論語は売れている。詩はコミュニケーションを行うための素養で、それがないと話が通じなくなる。相手もそれがすぐ分かるから、あいつはダメだなとなる、長い話を簡単に伝えるとか、と合いの手の安澤さん、そういうこと、鄭さんが研究しておられる部分だが、北宋時代の朝鮮と中国の外交では漢詩でのやりとりができないとダメだったらしい、と上田さん。中国では、かつては、共産主義といっても毛沢東選集とか年寄りには何らかの精神的なものがあったが、最近はそういう精神的なものがなくなり、論語を勉強して人間になる、のような動きになっている、と安澤さん。人間が動物のような生活から火を用い料理をしたり、犠牲を用いて祭りをしたり、薬を用いて病気を治したり、そういう人間社会をつくるシステムを禮とみ、書経では民の安寧をはかるのが政、そういう長い伝統が中国にはある、と上田さん。例えば、朝鮮通信使の歴史の中で、雨森芳洲がいる。朝鮮語を学ぶことは勿論のこと、漢詩の素養にたけており、朝鮮人と漢詩のやりとりをして信頼を深めたと聞きました。そういった詩文のやりとりが、当時の外交手段としてなくてはならないものだったのでしょう。ここで言っている詩というのは、単なる暗誦して勉強するだけのものでなく、詩文を通してこちらの意志を伝え、また相手の気持ちを取るといったところまで体得してないと、意味のないものだったのでしょう。私は、詳しいことがわからないのでと川那辺さん。そろそろ、時間となりました。来週の塾頭は川那辺さん。

2008年4月19日子路6〜9
今回の塾頭、川那辺さん。成田君の先輩、南京大学二年の留学を終え、京都大学で宋、元の詩文を研究する稲垣君、本日より、訓読の助っ人として参加。

前回の詩三百のところ、鄭さんが詳しいとか上田さんがおっしゃってましたが、何かありますか？どんなこと？詩文の交換とか・・・ということで鄭さんのコメント。孔子は自分の子供にも弟子にも、詩を勉強しなさいと言う。学而篇でも子貢が切磋琢磨を引用すると、共に詩を論じることが出来ると話が進む。春秋左傳においても、外交の場で詩が引用され、孟子の時代になると王様を説得することや遊説において、ものすごく詩は引用され、長い話を一言で終えることに用いられたりする。ながながと説明することなく、話を活かすことができた。もうひとつ、詩には地方の歌があり、地方の事情が歌われており、その歌を集めると、どの地方にどんな不満があるかが分かる。地方の事情を察するためにも集め、応用された、と鄭さん。それは昔の話ですか、と大西さん。昔から孔子の時代に至るまである。詩は王朝のものは早くからあるが、民間のものは遅い。風、国風というのがあり、風とは諷、そしる、いましめる、風刺するという意味がある。水戸黄門が諸国、民間を歩き回って実情を聞くという感じ、詩がその役割を兼ねた、と鄭さん。朝鮮通信使のことだが、中国と朝鮮の間でも往来があり、遼東半島の境まで出迎えてソウルまで二週間くらいかけて案内するが、詩の上手い人に接待させ、ずっと詩文を交換している。外交には大事な素養であった。日本では、雨森芳洲でなく、新井白石の評価が高かった。白石は唐詩を勉強しており、風格のある唐詩を作った。また荻生徂徠が中国音で漢文を読むことを奨励し、その弟子たちが通信使の接待役になると漢詩のレベルが急速に上がり、朝鮮側がびっくりすることになった。ありがたがって朝鮮側から漢詩をもらっているのみであったものが、伊藤仁斎や荻生徂徠以降日本の漢詩レベルは高くなった、と鄭さん。

6）先生がおっしゃいました。政治を行う人間が正しくしていれば命令しなくても行われ、上に立つ人が正しくなさなければ、たとえ命令しても従わないでしょう、これはそのままのこと、孔子が一貫して言っている。子は親の背をみて育つ、素晴らしい上司の下にすばらしい部下がいる、いつの時代でもそうなる、安澤さんどうですか、と川那辺さん。油断してると･･･最近では専門家の責任といえば、構造計算の姉歯事件、大阪の田中弁護士の詐欺事件、公認会計士ではエンロン、そういう人達が無茶をしている、政治もそういうことで困ったものだ。ほっとすることもあるが･･･大阪の地下鉄で子供が漢字テストの練習をしていて、大きくなったら何になりたいのか勉強ばっかりして、というとスポーツと返ってきた、と安澤さん。奈奈さん、子供を扱っておられ、子供とその親、子供と学校という環境のなかで、親や学校が間違っていないと思っていてもおかしくなってゆく、正しいことをしているつもりでそうなってゆく、どうですか、と川那辺さん。正しいことを追求しておかしくなる。学校の先生の子供によくそういうことが起こっている、正しいことを追求する、本当のこと、正のみを追及する、ではなくて妥協点を見出す、落としどころを知る、ということがないと問題が起こる。正義の追求が戦争を引き起こすこともある、と奈奈さん。調和、バランスが必要、と安澤さん。稲垣さん、正しいについてどうですか、と川那辺さん。アメリカは9.11以来正義を掲げているが、民族、文化で正義は異なる。明らかに政治的なものも入り込み、正しいといっても妥協が必要なのかもしれないが、一人の人間としてみれば、正しいということはあるのではないか。人を殺すは正ではない、しかし、人を殺すを正とみる極めて少数派により正当化されることはあるが、違和感がある、戦争が正しいとは思えない。自分が生きてきた環境のなかで、正しいと信じられること、文化、民族を超えてあると信じる、と稲垣君。ここでの正は、前回の名を正すの正、君君、臣臣、父父、子子のごとく、その場にふさわしいこと、政治家としての政（まつりごと）、政治家としてあるべきものをしっかりもつこと。これを孔子が弟子に向けて言ったか、政治家に言ったか分からないが、自分が正しく行えば、従う、風と草の譬にもあった、と鄭さん。童さん、どうですか、と川那辺さん。ここでのキーワード、一つは正、一つは命令の令。孔子からみれば、正＝令だが、あの時代の指導者からすれば、為政者にとって命令は大事なもの。中国全体の歴史においては、正しくなくても令する、その令に従わせること、命令は大切なもの。私が正しい、民の安寧を求めるだけでなく、行われなければならない、と童君。戦国時代以降、秦の始皇帝は力で統一し、命令すれば従わねばならないのが現実。実際の政治では、それが現実だが、道学といって、孔子の言葉を信じる人々の政治、現実離れした政治を行うことになり、大きな問題となった。韓国でも、兵を養うことは災いを養うこと、などといって戦争に敗れることになる。正＝令は理想であって、現実ではない、と鄭さん。孔子が理想とする周公は、自分自身を正しくし、正しい命令権も握っていた。孔子は身正しいのみをあげており、周公の思想とは異なる、と童君。

7）先生がおっしゃいました。魯と衛の政は兄弟のように似たり寄ったり、とはどういうことですか上田さん、と川那辺さん。魯の始祖は周公、衛の始祖は康叔、武王の弟。成王のとき、武庚禄父が乱を起こし、周公旦がこれを討滅して、康叔を衛の君とし、康叔にくりかえし殷の衰滅の原因を説き、戒めた。魯と衛は共に周公に関連する国。魯では、三桓氏が勢力をもち魯の公室が衰えたのが孔子の時代、霊公亡き後、萠刀耳貴（かいかい：荘公）とその子（出公）と相続争いで公室が衰える、成り立ちも乱れているさまもよく似ているということかな、と上田さん。共に悪くなった、と鄭さん。お互い似たり寄ったりということです、と童君。

8）先生が、衛の公子荊についておっしゃいました。きちっと部屋に居る。少しく集まると、いささか集まる、丁度良いころあいに集まる、もう少し集まると、うまくそなわった、もっと室が満たされると、これは素晴らしいと言った、これは何のことかわからない、蓄財のことか税のことか？上田さんどうですか、と川那辺さん。孔子は農業をするわけではないが、農業がきちんとできるような政治をするべきとしていた。自分は部屋にいて直接手を下すことはないが、豊かになってゆく、経済について、公子荊がそういうやり方をしている、と上田さん。そのときそのときの満足感がよい。経済を一挙にどうこうではなく、順序をふんで国を保つ、熟成させるやりかたが上手い。苟、完、美という三つの感じがいい、中村（佳）さんどうですか、と川那辺さん。段階的というよりは控え目な感じ。だんだん室に集まるが驕る訳では無い感じ、と中村（佳）さん。大西さん、どうですか、と川那辺さん。完は他にないような言葉、と大西さん。ここは孔子が公子荊を評価している。家に居て満足していた。彼は満足することを分かっていた。政治家として、富に関して備わってゆくこと、上に立つべきものがどうすべきかを分かっていた、と鄭さん。孔子がプラスの評価をしている。凡人だったら、苟は"かりそめ"だが、ここでは"いささか"、しばらくたまると、苟か完はそろった状態、こんなもんでしょう。物理的満足ではなく心が喜ぶ状態、苟か美は、これくらいで気持ちいいかな、よしとする、非常に好ましい、苟があることで控え目になる、と稲垣君。少（しばらく）して完という言い方、よくなるという言い方、これ以上はないだろう、と鄭さん。人間の欲望は際限なくなるが、完が完璧でなくて、足ることを知っている言い方、と稲垣君。孔子は衛で仕官する予定であり、衛の大夫達がどういう人間であるかを見定めていたということがあり、そういう目で評価をくだしている、と上田さん。善く室に居るとは、どういうこと、と大西さん。善居室shan ju shiで善、室に居る居方が善いということに力点がある。公子で大夫とあり、室はそういう仕事をする場所のこと、と上田さん。室の物事がよく分かっている、衛の公子だから・・・成長することにより、政治家として、室、物をどう扱うか、をよく知っていた、と鄭さん。居は二つの読み方がある。よく室におれり、貝塚先生は、よく室をたくわう、室は家と家財、と言っておられる、と安澤さん。室が家と家財というのはかなり無理がある。朱熹は何も言っていない、と稲垣君。他の本では、住み方を心得ている、石高に応じた住み方をしている、とある、と安澤さん。室に代わる言葉とは何ですか？家はすまい、他に代わる言葉がない。室は大夫としての政治を行うことに関係し、室の状態が善くなっていること、と鄭さん。自分の領地の経営、部屋でなくて住まい、やかた、それがよくなってゆく、と稲垣君。老子でいうところの、足るを知る人、顔回のような人、と鄭さん。荊は公子でしょう、公子てどういうこと、と声がする。この時代複数の女性に子供を産ませており、公子といっても色々あり、大夫ではあったが詳しくは知られていない、事績が知られていないとは活躍をしていなかった、と声がする。孔子は衛では讒言する者があり仕官ができなかった、もし、孔子が仕官しておれば、彼を使ったろう人物じゃないか、たいした人物、と上田さん。無いのに有るように言う。ほとんどないのに、いいのではないかとする人、と稲垣君。顔回とまで言うのは言い過ぎではないか、老子の足るはわかるが、と大西さん。

9）先生が衛に行かれ、冉有が御者をつとめた。先生が人が多いなあと言われると、すでに人は多いですよ、この上何を与えればいいでしょうと聞くと、これを豊かにしなさいとおっしゃった、すでに豊かです、この上何を与えればいいでしょうと聞くと、教育を加えてよくしようとおっしゃった、と川那辺さん。既には仮定として読まねばいけない、と鄭さん。既には終わったことで、仮定ですか、と川那辺さん。既には、使い方がわかれるが、ここでは、それが成ったからにはどうしましょう、豊かになったなら何を加えますかとなる。それは文脈によって決まる、と稲垣君。人が多くなれば何をくわえれば、豊かになれば何を加える、ということですか、中村（佳）さんどうですか、と川那辺さん。前には兵を捨てよ、食を捨てよとありましたが、ここでは豊かにしてから教えよ、ですか、と中村（佳）さん。多い、人が集まるのは平和なこと。次に何をもってくるのかなと思うと・・・十分な立場に置かれれば、勉強しなければならない？と川那辺さん。順番がある。国において人々がにぎやかだが、富んでいない人も居るので豊かにしなければならないとある、と安澤さん。既にがそういう意味とは誤解していた。既に人が多いのに、既に豊かなのに、どうも孔子の認識がワンポイントづれている印象があり、冉有が大丈夫かなと思っているという印象だったが、そうではないということか、と上田さん。もし多ければどうするか、もし富んでいることになれば次の段階として何をするか、と稲垣君。庶矣哉だから多かった。ここからは冉有が一般的な話として、もし多ければなにを、もし豊かになればなにをと聞いた、と鄭さん。ある条件が発生した次の段階をどうする。〜のことなら次はどうかの構文、日本語でのすでには、已の字が用いられ、すでに起こったことをいう、と稲垣君。訓読で読むと分からないが、漢文で読めば"既"があり次に"何"がくればセットで、何以下に力点があり、既以下がそれの条件となる、そんなもの、だから中国音で頭から読んでゆくことが大事。食、兵、信を捨てるの構造は、やむを得ず〜を捨てねばならないとすれば、の構文、と鄭さん。

稲垣君が加わったこともあり、さあ一揆へ。馴染み客もおり、鄭さん、安澤さんはそっちで盛り上がり、稲垣君と奈奈さんも人生相談、電車が無くならないうちに帰らねば、と最終電車にあわせましたが、一人で3時までがんばっていた御仁もあったようです。あくる日は、安澤さん、北京放送を聴く会を植物園で行うとのこと、中村（典）さんはコンサート、来週も大阪で予定されているとのこと、春四月は忙しい。

2008年4月26日 子路10〜15
今回の塾頭、中村（佳）さん。童君は聖火リレーの件で長野へ、沈さんはどうかな？怪我がなければいいのですが。

10）先生がおっしゃいました。もし私に政治をさせる者があれば、一年あれば十分、三年あれば成すこと有らん、完成する、十分出来あがる？充分の自信と、使ってもらえない無念の思いがある。成すこと有らん、てどういうことですか？と中村（佳）さん。仮にも私の言っていること、孔子が言い続けていることは一年もあれば・・・三年あれば完璧？と川那辺さん。紀綱を敷く、政治の筋道、原則を定めるのに一年、それを現実化して治めるには全部で三年という風にみられている、と上田さん。安澤さんが京都市の市長になったら一年で、三年で出来上がりますか、と鄭さん。採用されないので、採用するものがあれば出来るのにという思いがにじんでいる。仁の政治か・・・と安澤さん。仁の政治は三年では無理、と上田さん。三年は決まり文句、結果を出せる、成果をあげるメド、と安澤さん。司馬遷は衛で用いられなかったときのこととしている、と上田さん。歯がゆい、残念な気持ち、と中村（佳）さん。孔子も採用されるテクニックを身につけないと・・・しかし、それをしないのが良かったかな・・・しかし、採用されないと事実上役に立てない、テレビの評論家になってしまう。そこそこでやめておくというのもいい、言い過ぎて命を落とすということまではしないよな、と安澤さん。登用されなかったことがこういう言葉になっているが、魯を出る前は登用され、中都の宰となり一年で成果をみせつけ、中央政治で大臣となり、斉の国が警戒をして美女軍団を送って阻止したため、孔子が他の国に出て行ったことがあった、と鄭さん。厳しいことを言うなら、美女軍団を止めることができなかったことに孔子の力不足があるのでは、と安澤さん。三年は三年の喪、三年、三ヶ月は区切り。成るとは先週人が多い、豊かにする、教育するとあったこと、成すの内容。史記世家では、孔子が三ヶ月政治をしたら、魯の国の政治が動いたとある。能力があったが敵を作ってしまう、既得権を持つ人々に損害を与えることがあった。王安石が民のために制度を変え、それは小泉さんどころじゃないのだが、既得権者達から結局退けられることになる。王安石は孔子の再来とまでいわれたが、もし、登用されていなかったら、孔子のように名を残したかもしれないが、登用されたために、周りの人から行き過ぎと批判され、悪い政治家のイメージが残った。孔子は登用されないのがよかった、と鄭さん。孔子の政治がおこなわれれば、そういうことになったのですか、と中村（佳）さん。衛では孫の出公のときは名を正す、今回、霊公のときは使ってくれと随分姿勢が違う、と大西さん。霊公の時は六万粟で孔子を雇うということで衛へ行くが、中傷されて実現しなかったときのこと、出公の時は後のこと、放浪のさなかで、衛の後継ぎ問題のときで事情が違っている、と上田さん。先進篇25）で子路が三年あれば 民に勇有らしめ、義にいざなうと言って、先生に笑われた話があった、孔子も子路も政治に自信があって、三年は一つのメドであった、と鄭さん。

11）孔子が、善人でも邦を百年治めておれば、殘に勝ちて殺を去つ、とは乱暴者を抑えて死刑をなくすことができる、とありますが、全くこのことは本当のこと、と言っている。善人は聖人ではなく、素質はあるが学問が十分でない人とありました。本人なりに努力を続け、百年となれば後継者を作ることを含めるのであろうが、殘に勝ちて殺を去つ、とは世情が落ち着いてその結果こういうことになる、そういう言い方をしているのでは？百年も比喩的な意味？と中村（佳）さん。百年は長い、政治を担当するとなれば二十年くらい、と安澤さん。善人でも邦を百年治めれば・・・というのは孔子の言葉でなく一般にいわれていることだが、実際にはないこと。夷狄で民が従順で聖王が居ないがよく治まっている邦が東の海の彼方にあるという伝承があり、筏に乗って東海に出るとした（公冶長篇7)）話があった。孔子はそのような邦であるなら三年で成しえようという自負があった。本当にそうだなは、実際ありえないなあ、と上田さん。政治をするのがまことにむつかしい。誠には本当にむつかしい。善人百年はむつかしい。それでやっと正しくなる、孔子は三年というが現実にはむつかしい。次に出てくるが、王者があらわれたら一世で成る。時代に対する嘆きが入っている。中国王朝では、国を興した王の三代くらいから盛んになる。創業から次の時代にゆくには、創業の功臣を殺さねばならなくなる。政権を安定して子に引き継ぐには邪魔になりかねない功臣を除かねばならなくなるのが通常。二代、三代かかり、そこから繁栄する、後の漢、唐や宋、明となってもそうだ、と鄭さん。創業者、創業のときの番頭を二代目で抑え、三代目でダメになるというのも多い、と安澤さん。とばっちりを受ける民はたまったものじゃないですね、と中村（佳）さん。周では天命を受けるとは民の安寧をはかること、とそこのところを代々くどいほどに戒めている、と上田さん。尚書、書経の世界。創業者として苦労して得たものを、怠けて怠らぬように教えている、無逸篇を何度も読ませる、後には論語がその役割を果たす。孝経と論語、帝王学となる、と鄭さん。天命というのは殷の時代は天帝の嫡男としての地上の帝が天帝の意向を占って確認して政治をすることだが、周になって民の安寧をはかることを天から託されたという風になる、と上田さん。民衆の支持があって文王が王になる。民が味方となることによって王になる。子の武王が殷の紂王を討つのも民衆が殷から周に傾いたことがベースにある、と鄭さん。それほど民のことを想っていたのですか、と中村（佳）さん。人々が文王を頼り、文王は天下の2/3を有したといえども殷を討つことはしなかった。子の武王は殷を討つのであるが伯夷と叔齊は文王の葬儀もせぬうちに武力で殷を打倒するのは善くないとして、二人は文王の徳を慕って諌めたが容れられず餓死する。それを再評価したのが孔子で、政治の原点として、民の安寧をはかるということが引き継がれている、と上田さん。

12）もし、善人の上の人、天命を受ける王者が居たら、世にして一代をすぎて仁の世界になるだろう。王者が出ても一代はかかる。王者、天命のことですか？と中村（佳）さん。天命を得て王となる人、孔子も天命を得ていると想っているが、王ではない。孔子は現代にまで至り、聖王以上だが王ではないので聖人とされる、と上田さん。天命とは何かといえば、文王のように武力じゃなくて民がさせる、民が立てさせること、と鄭さん。10〜12、この三つがならんでいるが、現実に絶望している、自分だったらこうという想いがある、と中村（佳）さん。周の文王は王者か、と大西さん。そうです、と上田さん。孟子にゆくと孔子とは少し変わり、武王を評価する。夏の最後の王、桀を倒した殷の湯王も評価する。民が願って討った。倒したことを評価する。民がそれを願ったのだとする。孔子は王朝を倒すことは遠慮していたが孟子にゆくと倒したことを評価する。日本では孟子を読むな、天皇を倒すことになると吉田松陰が言っている、と鄭さん。

13）もし、自分の身を正しくするならば、政治をするにおいて十分できる。自分を正しくすることが出来ないならば、どうして人を正しくすることが出来ようか、これはそのとおりと思う、高津さんどうですか？と中村（佳）さん。そのとおりですね、と高津君。何難之有、何の難しいことがあろうか、いや、ない。何有は何ら難しいことはないの意、と鄭さん。哀公や季康子が身を正すことを考えてくれればいいのだが、それをせずして無道を殺して有道に就くとか言ってもなあ・・・と嘆いておられる、と上田さん。

14）冉子が朝から下がって、帰ってきて、何故遅いのかと聞くと、政が有ってというと、それは政治ではなく事務的なこと。政は君主の教令、事は臣下の教令。孔子の立場では、君主の教令では、直接用いられていなくても、直接話しを聞くはずである、ということですが、孔子の身分はどういう身分ですか、と中村（佳）さん。冉有はこの時季氏の宰をしており、朝は季氏の館で冉有はそこで遅くまで仕事をしていたが、孔子は冉有が季氏に肩入れしすぎていると思っており、注意しようとしたのであるが、冉有は政、つまり、魯公の仕事で遅くなったと言い逃れようとした。ところが孔子はかつては大臣までしていたので魯公の大夫であり、用いられていないとはいえ、相談を受ける立場にあり、冉有の嘘を見破っている、と上田さん。朝出て帰ってくる、二人は同じところに居たのか、と安澤さん。そういうことになるが、実際はどうだったのですかね、と上田さん。孔子と季氏とは対立しているのみか、と大西さん。いや、弟子の就職先、と上田さん。妥協しているのでしょう、と大西さん。三桓子の軍事力、財力を国に帰属させようとして分断していいところまでゆくが最後のところで結束されて孔子は失敗、権力を魯公に集中させたいが、三桓子を合わせると魯公を上回る。それで放浪し14年して帰って来るのだが、弟子の数も多くシンクタンクみたいなもので、孔子を雇うのは大変だが弟子を雇いたいとなった。冉有は頭が良く、季氏が政治を動かしており、それに乗ってゆこうとする。それを孔子が批判する、と鄭さん。弟子を通してコントロールしているが、仕切れない部分がある、と安澤さん。公職を退いているが、魯公や季氏が聞きにくるので、政治の動きは読めていた。その政治の場以外で冉有ががんばっているとは、季氏に尽くしているというところ、と鄭さん。

15）定公が聞きました。一言で邦を興すような言葉がありますか。孔子が言いました、一言での言葉、そんなものではないが、それに幾（ちか）い言葉はある。こんな言葉があり、君主となるのはむつかしい。家来であることもむつかしい。君主であることのむつかしさを知っていれば、一言にして邦を興すに、幾いのではないか。逆に、一言にして邦を喪ぼす、それはあるかと聞くと、孔子が言う。そういうものではないが、それに幾いものがある。こんな言葉がある。君主であることを楽しむのではなく、自分の言ったことに人が従う、背くことがない、それを楽しむ。もし善いことに皆が従うのではそれはそれで善いが、もし、善くないことで従ってゆくとしたら、一言にして邦を喪すに幾いね。一言で邦を興すとは面白いことを聞く、と中村（佳）さん。定公って誰ですか？と鄭さん。定公は孔子が斉から帰ってきてから仕えて、中都の宰から大臣までなった時の魯公。孔子も目覚しい働きをしており、定公は孔子がどんな見解を持っているか聞いたのであるが、孔子は非常に慎重に答えている。それも自分の言葉でなく、こういうことが言われていますと人の言葉。遠まわしに君主であることの難しさを自覚することを求めた。善い事をしても言いなり、善くないことをしても言いなり、自分の言うとおりになることを楽しむではなく、君主であることを楽しむようでなくては邦を喪しますよとやんわり言っている、と上田さん。幾をアテテと訓じているのは当てにすること、幾はそういうことになることを期待する、期でもある。実は定公は孔子を買っていたが、定公のこの態度、一言でできるような政治を求めているがそれはない。これが女楽につながり、孔子が魯を出るが、貴方がしっかりしないからこうなるということ、と鄭さん。孔子は普通はっきり意見を述べるものだが、非常にまわりくどく言っている。分かる相手であればずばっと言うのだろうが、鄭さんのおっしゃるように結局魯を出ることになるのがここにもあらわれている、と上田さん。君たることより、人が逆らわないことを楽しむ、韓非子にも出てくる話し、命令に逆らうことのないことの楽しさ。孔子が慎重なのは、この時定公とは君臣関係、上下関係がしっかり出来ていた時、公の立場をよく考えなければならない立場で言っている。一番使われていた時期であり、公をあやつる必要もあった、と鄭さん。不亦善乎の意味は？と大西さん。学而篇に不亦楽乎あるように反語、楽しからずや、いや大変楽しい。善からずや、いや大変善い。善いことをして違うことがない場合は、善からずや、いや大変善い、と鄭さん。上田さんは善いことでもいいなりになるようでは善くないだったが、そういう解釈もありかと思ったが、と大西さん。それはない、善いことをするに違わない、は大変善いこと、しかし、善くないことに違わないのは邦を喪ぼす、と鄭さん。丁度時間となりました。

来週3日はゴールデンウイークでお休み。10日は塾頭は童君。新しい人も増えたので、この時から、また学而篇から音読をします。1時間くらいをそれにあてて、残りを訓読と解釈にあてます。鄭さん珍しく、書き物があるからと帰宅、では一揆へ。

2008年5月10日　子路16〜18
本日より学而篇より音読。安澤さん、上田さん、川那辺さん、中村（佳）さん、順々に学而篇を読み、仕上げは高津君。為政篇まで全員で。子路篇の訓読は稲垣君。今回の塾頭、童君は今週は行けないので来週に、と。中村（佳）さん、先週の続きでおねがいします。

16）葉公が政を問いました。孔子は、近くに居る人は喜んで、遠くに居る人は、それを聞いてやってくる、ようにすればよいというのだが、どうしたらそうなるのかを聞きたかったのに。この時、葉公がいた所はかなり荒れていたのですか？と中村（佳）さん。孔子は葉公を頼って蔡の古都、負函（ふかん）を出て葉に入った。蔡は楚軍と呉軍の緩衝地となり、葉公が駐留して政治を行うのですが、蔡国は亡国となり、民は流民と化していた。井上靖さんの孔子の主人公が負函出身となってました。まずはその民を安心させること、人々がそこに戻ってくることを進言した、と上田さん。孔子の答えからすれば、葉公は、これができなかった、と鄭さん。民の心をつかめていない。自分のために政治をしている。民の問題を解決することをしていない、と高津君。春秋戦国時代の政治の基本は、自分の国の民が喜ばないと民は逃げる。そうなれば、税金はすくなくなり、結局国力は落ちる、と鄭さん。そんなに簡単に外へ行けたのですか、と大西さん。日本のように海で隔てられているのではなく、境界線も無いので、と鄭さん。日本では、土地に貼り付けられてペアになっているが、中国ではある程度共生している、と安澤さん。民を土地につけることは、中国でも大切、農作業が出来なく、徴兵ができなく、では国が成りたたない。葉公のやり方では。それが欠けている。孔子は中村（佳）さんがおっしゃるように具体的な方策は述べていないが。聞かれれば色々答えただろうが。孟子の時代には斉王が色々福祉政策を行うが人が増えないことを嘆いて、孟子に問うが、文王の例を引き合いにして、こうすれば人が集まってくると説いている。人が多くなることが一番の狙い、と鄭さん。

17）子夏が?父の町の宰、取締役となって、政を聞くと、孔子は早く成果をあげようとするな、目先の利益を追うな、早く成果をあげようとすると達せず、目先の利益をみると、大事は成らない、という。原則はそうだが、実際の政治ではスピードが、完璧さより速さが求められることもある、安澤さんどうですか？と中村（佳）さん。そうきますか？最近老人の医療費負担問題で福田政権は支持が得られていなく、人気が落ちている。小利は少数の人の利益？少数無視？というよりどうでもいい事か。大事でないことを、というか、それを見分けることが大事、と安澤さん。子夏は子張とよく比較される、子張は大言型だが子夏は些細なことにこだわることがあり、宰になるに際して、そこを忠告している。仲弓が道徳的な人で、宰になるに際して、人の小過を大目にみるようにと言ったのと同じ、と上田さん。高津君、速さと小利、この二つの文書のかかわりをどう思いますか？と鄭さん。目先の利益より、長期的政策をとるように言っている。速さと小利は近い意味が込められている、と高津君。早く得ようとするのは小利、大きな成果はすぐには得られない。結局は一つのことを言っている、と鄭さん。利にはいいイメージがない。目先の利益であるが、それより細かいことと大事の対比がおもしろい。人生一般にも通じ、朱熹は学問を薬を煎じる事に例える。丹薬はすごい炎で煮るが、薬を完成するには弱火でじっくりする、強火で一気に料理しても、美味い、きちんとした料理にならない、薬も人もそれだけでは、きちっとしたこが出来ないと言っている、と稲垣君。ここでは政治について言っている。教育政策をたてるときには次世代を見据えねばならないが、早く成果を出そうとすると、目先では成果が上がっているようにみえてもそうはゆかない。ゆとり教育と言ったり、それを改めたり、と鄭さん。教育は百年の計、と稲垣君。子夏については、我々もそうだが、そういう立場になると早く成果をあげたい、不安や焦りからともかく何かを得たいということになる、近くが喜び遠くから来る、というのも実行するとなるとむつかしい。自分が困ったときには、含蓄のある言葉、と言い聞かせることになる、と上田さん。

18）葉公が孔子言った。吾が黨には、村には、非常に正直な者がいて、父が羊を攘（ぬす）んでごまかそうとした時、子がそれを知らせた。孔子は、吾が村の正直者はそうではない。父は子をかばい隠し、子は父をかばい隱す、正しいことはその中に在る、と言った。これは内部告発、子が父を訴えるとは、家庭関係がうまくいっていないときに起こる。なかでの信頼関係、お互いの関係がうまくいっていない。それを善くないと孔子が言っている、と中村（佳）さん。葉公は何故自慢話的に言っているのですか、と鄭さん。攘（ぬす）むというのは、羊の方から紛れ込んだのをそのままいただくことで、出かけて盗むとは意味が違う。葉公は楚の人で、楚は自らを南蛮と称すこともあり、中原の文明国よりは厳しい社会秩序がある、と上田さん。子が父を告げたのは何故か？裏から見ると、法が厳しく行われて、子がそれに従うくらいと葉公が自慢している。法がゆきとどき子供さえそうです。孔子からすれば、父子で密告するとは政治の目指すところではない。それでは、近い者は喜ばず、遠くからも寄ってこない、と鄭さん。葉の地は法家思想を実践していたことになる。葉公の自慢気に孔子は一発かまして言っている。孔子がたしなめた、ともとれる、と稲垣君。隠すというのは儒教においてはどうですか？と高津君。孟子は仁というものは自分の身内から、我が家の老人を奉る、それが行き届くと、外の人にする、墨子のような博愛を否定する、自分を愛することから始まる、と鄭さん。自分を愛するは言い過ぎ、名を正す、人倫の順序を言う、君臣、親子の基本関係が出来ていないじゃないですか、と稲垣君。孔子は、子路には片言で訴訟を裁く能力があるが自分には無い。訴訟を起こさない政治をするべきと言った。父を説得して羊を返すとか、父が罪を犯さないような解決方法を求めている、と上田さん。子にかばわれると父は罪の意識を感じるもの。それを斟酌し、情を交わすことにより平和的に解決を目指す。何でもかんでも正直に言えばよいというものではない。父子の間で成り立つような関係を、他人にも及ばせるならば、近い人は喜び、遠い人も来る。自分を愛することから人を愛することへ、と川那辺さん。父子の愛、父をかばう絆のある子は分る。国を治めるは家を治めるから始まる。それは分る。しかし、一言で国を興す、喪うのところで、正しいことを言って誰も逆らわないのはいいが、正しくないことを言っても誰も逆らわなければ国を喪うというのがあった。ここで正しくないことを隠すというのは違和感がある、と高津君。かばわれるというのは、実際は身にしみる、信頼関係があればなお一層のこと、と川那辺さん。儒教では家庭、親子の絆、つながりから広がってゆく。隠すは意味がある。川那辺さん、高津君、両方、おっしゃることに意味がある。ここでは、例をだして、これが直である、とは言わずに、その中に在りはぼかしており、隠すは悪いこととは違う、そういう言い方もある。広がりがでてくる、と稲垣君。葉公は国家レベルで直を考える。孔子は国家より父子関係が先であると考える。舜とその父の関係、継母やその子を含めて舜を殺そうと色々悪い事をなすが、結果的にどうしたかというと、舜は目をつぶって許した。父母が過ちを犯せば、遠まわしに諌め、聞いてくれないと退く、諌めを何度も繰り返さないというのが儒教。葉公のようにすることは家庭崩壊につながる。直は、その中にあり、と鄭さん。こうして話を聞いていると、直にはなかなか深い意味がありますね、親には泣く泣く従う、君には見限って去る。儒教は善に死せとは言わない、と稲垣君。儒教というと忠君愛国のイメージだがそうでない、と安澤さん。忠君愛国は朱熹以降のこと。楚辞集注の中で、主君に相手にされずに死ぬのですが主君を想う屈原、それを忠君愛国とした。朱熹の論語集注は簡便な小冊子として広く読まれて、全国的に流布し、その過程で忠君愛国の言葉が広がったもの、と稲垣君。儒教＝忠君愛国というマインドコントロールを解いてくださいね、と安澤さん。四書集注は簡便で科挙試験のために必須の書となった。朱熹の書は最初は発禁だったけれど、死後爆発的に読まれた。四書集注は政治の教科書、楚辞集注は作文の教科書となった、と稲垣君。四書とは、と大西さん。大学、中庸、論語、孟子の四書。忠君愛国は北宋時代の杜甫からでており、彼が人民のために詩を書いて嘆いた（春望：国破れて山河あり・・・）ことが評価され、思想家のように評価され、忠君愛国者とされた。1225年の南宋時代になって、科挙試験において朱熹の文章が模範答案とされ、受験者は皆、朱熹のテキストを読まねばならなくなった。これはモンゴルの時代、漢族に戦争には勝ったが、国家運営には漢族のやり方を学ばねばならなくなり、結局朱熹が採用され、明でも清でも同じこと。日本には科挙試験がないため、朱熹を批判的に読むことが出来た。韓国でも同じだが科挙試験ではともかく朱熹をそのまま覚えねば試験に通らない、そのために、そのまま受け容れることになった、と鄭さん。ところで陽明学とはどう違うのですか、と安澤さんの質問が続く。どんどん脱線するのが恒例。朱熹では性即理なのですが、陽明学は心即理です。性は天来のもの、理は道理の理。人間の生来の性は理というのが朱熹。陽明学は心、情を肯定的にみる、どういえばいいかな？と稲垣君。朱熹は心には性と情があり、性は生来のもので理、情は人間の欲や迷いがあり学問をして正しくせねばならないものと考える。陽明学は、人間は色を好めば、金も好む、しかし、それは朱熹とは異なり、捨てる、否定すべきものではなく、どうコントロールするかが問題と考え、心即理とした、と鄭さん。陽明学ではそのため好き勝手するものが現れ、それではいけないということで清では考証学が興った、と稲垣君。王陽明は朱熹のように四書に注をつけることをしなかった。朱熹はそのことで王陽明と比較にならないほどの影響力を持つに至った。注をつけるといってもそのもとは論語。孔子を私が一番理解していますですから、結局、孔子に帰る、と鄭さん。最後の質問、日本の儒家では陽明学者は誰ですか、と安澤さん。朱子学派は藤原催窩、林羅山、陽明学派は、中江藤樹、熊沢蕃山、吉田松陰、石田梅岩、伊藤仁斎は朱子学から新古典主義に、荻生徂徠は自分が一番と思う人、なんでも政治に結びつけて解釈する人、と鄭さん。石田梅岩から渋沢栄一につながってゆく、頭が整理できてきた、と安澤さん。

まずは一揆へ、終電で北大路へ、看板寸前の店のマスターに声をかける安澤さん。奈々ちゃんと四人の夜は更け、三人組は更に赤提灯でもう一席。来週の塾頭は童君です。

2008年5月17日　子路19
前半は、学而第一より八佾第三まで音読。好hào犯上、好hǎo作亂者。道dào千乘之國、この道は導の義でdǎoとするが朱熹はdào。父沒觀其行xìng、xíngではない。遠yuàn恥辱でyuǎnではない。有酒食sì でshíではない。大車jū無輗、chēでもいいがjū、将棋の駒では車jūが今でも使われている。女rǔ弗能、nǔ女じゃなく汝rǔ。王孫賈jiǎ、gǔではない。告gù朔之餼でgàoではない。殷人以柏bó、朱熹の注をこまかく見ればそうなります、と稲垣君。上田さん、乎hū、與yú、矣yǐ、使民以時shíをきっちり発音してください、語尾が尻切れになってます、と鄭さん。鮮はxiǎnで少ない、xiānで新しい、鮮矣xiǎn yǐ三声が続くと発音はxián yǐとなる、と稲垣君。まずは漢文のまま中国音でなれることが先決で、発音のこまかいところは参考程度でやってください、と鄭さん。高津君、童君はお手本朗読。子路第十三の訓読、言不可以若是其幾也は言、以て是（かく）の若く其れ幾（あて）にすべからずなり、とするが不幾乎一言而興邦乎は、一言にして邦を興すに幾（ちか）からずや、でないと意味が通らない。幾（あて）にすべからず、だと意味が違ってくる、と稲垣君。本日の塾頭は童君。先週の続きでおねがいします。

19）樊遲が仁を問う。樊遲は論語の中によく見ることが出来る。ここで樊遲は仁を求め道を問う。孔子の答えは、仁は人の心、どんな時、どんな所でも仁がないことはない。何もしないときには、容貌を荘重にして、放恣に流れないこと。仕事には、その心をもっぱらにして、怠り、ゆるがせにしないこと。人と交際するときは、忠誠を尽くすこと。禮樂、道義の低い所へ行っても、これを失ってはいけない。「樊遲、仁を問ふ。子の曰はく、人を愛せ、と。知を問ふ。子の曰はく、人を知れと。樊遲、未だ達せず（顔淵篇22））。」、「樊遲、知を問ふ。子の曰はく、民の義を務め、鬼神を敬してこれを遠ざく、知と謂ふべし。仁を問ふ、曰はく、仁者は難きを先にして後に獲る、仁と謂ふべし（雍也篇20））。」があった。樊遲のことは前にもやりました、樊遲には縁があります。孔子は人と人の関係、孔子の道徳のシステムの中に人を中心として、恭、敬、忠の三つを失ってはならないとする、と童君。



忠を忠誠というと、日本人の場合、ロイヤリティーとなる。日本語の訳では真心、本来の心とすべき、と稲垣君。樊遲には孔子はやさしい言葉で教える。何故、樊遲は三回もでてくるのか？同じ人が別の所で、別の言葉で出ているのは何故か？と鄭さん。同じ人でも、質問した所、時も違う。孔子の答えも違う。共通点はある、人を愛す、人を知る、必ず人というキーワードがある。儒家は神も鬼も考えず、人と人の関係を中心とする、と童君。何故、何度もでてくるのですか、と稲垣君。樊遲はクレバーじゃない。農民の仕事を質問しました。孔子は答えたあとで怒った。君子は、恭、敬、忠で行うべきものです、と童君。愚かだから何度も聞いたとなりますね、と稲垣君。二説あります。貝塚先生は、意味が分からないので孔子は抽象的でなく具体的なことで樊遲に話した。穂積先生は、孔子は弟子の深度に応じて教えてゆかれた。最初は具体的なことから、徐々に抽象的なことへ。子供の教育においても、そのときは分からなくても先にすすむ、全体を終わって返ってみると分かることがある、と安澤さん。子供が分からなくても、ぶつけてやると、成長したときに、はっとわかることがある、と稲垣君。樊遲が何回も出てくるのは、童さんがさっき言ったようにクレバーでないところが、キーポイントではないでしょうか。皆は仁について知りたいがプライドがあり聞けない。顔淵のような弟子ばかりでないでしょうし、もっと仁について具体的に知りたいと思っていたでしょうね。そこで、樊遲が、何回も孔子に聞くことになった。その答えが、わかりやすいものであれば、編者が意図的に何度も入れたとも考えられるのでは。樊遲の食いついてゆくところは評価に値する。プライドの高い人は聞けない。こういう人間がいないと・・・出来は悪いかもしれないが、器は大きい、また、孔子は樊遲をかわいがっていたのではなでしょうか、と川那辺さん。川那辺さんのおっしゃるように、樊遲を使って周知させる、その意図はあると思う、と高津君。樊遲は孔子の御者であり、斉との戦で冉有の車右として冉有を叱咤し、命令をきちんと出させ斉軍を破る功績のあった軍人でもある。なかなかの人物であり、孔子に農業のことを聞いて、答えがないと分ると、言い訳するでなし、すっと出てゆくあの思い切りのよさは普通じゃない、残された先生が弟子に言い訳がましく説明していた、と上田さん。不可棄也は、夷狄に行っても棄てられることはない、恭、敬、忠、三つのことを棄ててはならない、の二説がある。三つを忘れるなが普通だが、樊遲が左遷されたとしても、三つのことを忘れなければ、評価する人が現れる、ということになる。個人的にはこっちをとりたい、と安澤さん。そういう所に行っても、その三つは大事。たとえ文化の無い未開へ行っても、その三つは棄てることができない、と大西さん。ここで重要なのは夷狄。樊遲に人を愛すとあったが、具体的に人と接するときの答えを教えた。夷狄に行ってもという深い強調、これさえしっかりすればいいのだということが重要、と鄭さん。必ず君は評価される、ととれる、と安澤さん。夷狄という言葉は、中国古代の歴史においては、華夏（かか）に対する、夷狄関係です。華夷関係という上下関係ですが、血統とか出身ではなく、恭、敬、忠に心服するならば中国人とみなす。中国出身でも、これに心服しなければ夷狄です。北狄と華夏は外交関係はなく戦いのみです。東夷は華夏によって滅ぼされ、南蛮にあたる楚との間の交渉や戦いが夷狄として認識されます。楚は青銅器においても、華夏とは別のレベルで高いものがあり、野蛮人であるが別の形で文明が高かったのです。ここでいう夷狄というのは東夷、北狄ではなく、楚のことが頭にあります、と童君。孔子は葉公を通じて、楚の昭王に任官することを狙っており、一旦は実現しかけたが、宰相がそれを止めた話があった。子路や子貢や宰我のような弟子を持つ孔子に土地、俸禄を渡せば、いづれ大勢力を築き大変な脅威になるということであった。樊遲は優秀な軍人でもあり、楚、つまり夷狄に行くという可能性があったことになる、童君の話から、そういうことも考えられる、と上田さん。ここは、鄭さんのおっしゃるように、極端な例としての夷狄。具体的な場所ではなく、人の住まないような世界でないところへ行っても、この三つは必要なもの、というところが本旨。楚をさすことになるのかもしれないが、と稲垣君。



さて、話は、華夏の青銅器と三星堆遺跡出土の青銅器の関連について、相互に影響しあったのか？南の青銅器が華夏の青銅器より優れており、影響を与えたということがあるのか？楚や呉、越につながる稲作中心の長江文明の独自性は？と、まとまりがつきそうもなく広がったのですが、文字でもって歴史を記述するとなれば、殷、周と華夏の優位性はゆるがない、青銅器に文字を記しているが南の青銅器に文字は記されているのか？とは鄭さんの言。華夏の春秋にあたる楚の梼兀（とうごつ）というのもありましたが、征服されると消されてしまいましたから、焚書坑儒みたいなものでとは稲垣君。会稽の禹、都広の野、堯の娘を下ろした所が長江流域、天地の交通を断つ三苗など、色々な形で南の話しが取り込まれている、と上田さん。と脱線は続きました。本日は、樊遲で盛り上がりました。童君と樊遲の間の見えざる糸の強さは何なのでしょうか？来週も塾頭は童君、よろしくお願いします。

2008年5月24日　子路20
前半は、学而第一より佾第三まで音読。発音の続編。中村（佳）さん、皆さん読んでもらってますからということで、今日は学而第一、為政第二の音読。皆さん、ピンインを見ないで、漢文テキストに慣れてください、と鄭さん。衆星共之の共は拱gǒng、gòngではない。道は朱子はdàoとするが導の意味だからdǎoでいいのではないか。是謂能養yàng、yǎngではない。省xǐng其私、反省で、県名の省shěngではない。周而不比bì、bǐではない。不如諸夏之亡wú、無と同じ、wángではない。告朔gù sù之餼羊、gǎo shuòではない。魯大tài師、この大は太tài。儀封人請見xiàn曰君子之至於斯也吾未嘗不得見jiàn也從者見xiàn之、喪sāngは失うの場合sàng。

本日の塾頭は引き続き童君。前回の復習。恭、敬、忠に心服するならば中国人とみなす。中国出身でも、これに心服しなければ夷狄です。唐の時代は東夷は朝鮮半島の高句麗、新羅、百済、それから日本です。唐は東よりは西との外交関係を重視し、都も西に移動する。ウズベキスタンとか〜スタンのつく国、その彼方はペルシャ、ペルシャはアラブ人に征服され、アラビア人がユーラシア大陸を往来する。世界史的にも大きな戦いでした。アッバース王朝Abbāsīyaが興り、その先が東ローマ帝国でした。唐は東から西へ、アッバース王朝は西から東へ。面白いことに唐の大将軍は朝鮮人の高鮮芝、アッバース朝と5日戦い敗北する（タラス河畔の戦い）、これ以降、唐は撤退をすることになる。朝鮮半島の人が、大学の教育システム、儒家になり登用されて、と童君。補足すれば、高鮮（仙）芝は、高句麗の人、唐は高句麗に負けたことがある。唐は新羅を高句麗の裏から攻めさせ、百済と日本をも白村江で破る。668年に唐と新羅は高句麗を制圧し、高句麗の知識人を唐に連れてゆくということになった。高鮮（仙）芝は将軍となって西方の征伐を行うのであるが、高句麗は騎馬民族、馬を使ってゲリラ戦を行い唐を苦しめた。唐はそれを使って将軍とした。大学を設立して、異民族の優秀な者を集めて教育をした。科挙で儒学が浸透してゆくと、軍はだんだん弱くなり、西から撤退し、都も洛陽へ開封、南京と東、南に移ってゆく。当初は西のランクが高かったが、100年もたてば、外交の中心が東に移ることもあった、と鄭さん。もう一つは阿部仲麻呂、遣唐使として中国に来て日本に帰れなかったが、中国名は朝衡、安南節度使となった。李白とも親交があった。五胡十六国の時代には、古典を読まないものを夷狄とした、と童君。

20) 子貢が問う。何如なるものを士と謂うべきか。子の曰はく、己を行いて恥有り、四方に使して君命を辱めざるを士と謂ふべし。曰く、敢て其の次を問う。曰はく、宗族が孝を稱し、郷黨で弟を稱すもの。曰く、敢て其の次を問う。曰はく、言必ず信があり、行を必ず果す、硜硜然として小人なるが、そもそも亦以て次となすべし。曰く、今の政に從う者は何如。子の曰はく、噫、斗筲の人、何ぞかぞえるに足るや、ということですが、語の意味をいくつか見てみます。恥は悪を行うことを恥じること。元々中国人は恥を大事にしていた。でも、とても現代の若い者はそれは持っていないと思う。宗族今の家族よりもっと広い。漢代の辞書では、宗族は父親の親類、郷党は周の制度では12500戸を郷、500戸を党という。硜硜然は当時以降、儒家の解釈が色々あるが、一般的には、小さい石、堅い石をいう。鄭玄、じょうげん、は、いい心があまり開かれない時に発する、という。斗は中小をいれる、筲は十二升をいれる竹器。心に容れるところが少ない人に例える、と童君。恥、最近の若者のことを言うが、ところで童君はどうですか、と鄭さん。私はもう若者ではない。人と交わりて忠、別の人に対する親愛の情、他人の身になって考えることから生まれる。今の若い人は欧米に習っているが、欧米の古典にはその心があるが、今の欧米人に習って、他人の身になって考えることがない、と童君。ここでいう恥とはどういう意味と思いますか、と鄭さん。己の志、行はずを恥じる、とされる、と上田さん。志を行うことができないことを恥となると、自分のやっていることを自分で分かっていないというのも同じところがある、と高津君。自分が行って恥あり。日本語の恥は、正しくないことをしていると知ること。こっちは、自分が行ったことに対するもの、自分が頭で考え、口に出したことを行っていない、そういう反省の心。自分を驕ってはいけない、と鄭さん。士に関する道について述べた。国士、上士、下士、士に関する色々な言葉がある。東洋の歴史では重要。恒産がなくとも、恒心のあるひと。諸侯、大夫、士、庶民というのが周王朝の社会構造。士は国にしばられず、魯がダメなら斉に行くとかありえた。恭、敬、忠の心。春秋時代には貴族、諸侯に代わって大夫が実験を握り、魯では三桓氏が実権を握り、被支配階級であった人物が次第に大夫政治に参加してくるようになる。魯の政治のなかにも士が台頭してくることは、孔子の時代の風潮。子貢が行う質問の背景、と童君。恒産とは常にある俸禄。恒産がなくても恒心を持っているのは士。孟子の言葉。民には食を持たせないと恒心は持てない、腹を一杯に満たすことが先決。しかし、士は志をもって行う、と孟子が王に説明する、と鄭さん。士が大夫政治に参加するが、子貢は〜をして士というべし、かを聞きたかった。日本では室町時代末期、下克上にあたる。知識人を政治に参加させること。士の必要性があった、と童君。子貢が次を問うのは何故か？最後に今の政治に参加している者を聞くと、その器でないという、その心は何か、と鄭さん。子貢は、「己を行いて恥有り、四方に使して君命を辱めざるを士と謂ふべし。」のところでこれは子貢、お前だなと言ってほしかった。で次はと聞くが、それでもない、次はと聞くがそれでもない。もうそれで士はおしまい、それ以下はない。困った子貢がでは、今の政治をするものは、と振ってみると、ろくなものはいないとあり、そこでもない。己を行いて恥有り、そこがあれば先生は子貢を一番最初にあげた士としたのだろう、と上田さん。子貢は外交において君命を辱めざるを士に充分値するが、己を行いて恥有りには及ばない。物を動かし投機をして大儲けをしたり、商売上手であり、己を行いて恥有りは顔回には相応しいが、子貢には合わない。宗族における孝、郷党における弟という枠の中でおさまる子貢でもない。斗筲の人は器の小さい人。斗は10升、筲は12升、バケツくらいの大きさ。君子は器ならずとあったが、斗筲は小さいことを言っている、と鄭さん。宗族における孝、郷党における弟、孔子の時代には人材を選択する方法として、完璧なものはなく、皆が貴方を孝、弟と称するところから択ぶというのが高い確率であった。政治に参加する可能性も高くなる。今の中国でも、高学歴で優秀であっても、宗族、地域社会で称されることがないと、政治家になることはむつかしい、と童君。科挙制度が整う隋唐以前は、これを使っていた。堯や舜の時代でも、民のなかから優れた人を持ち上げることがテーマ。後には、上から択ぶということもあるが。孔子の場合においても、弟子が多く集まってくる、そこから政治に参加してゆくということになった、と鄭さん。
もう一つゆこうかといえど、お時間が来ておりました。中村（典）さんも久方振り、コンサートの合間、川那辺さんと連れ立って雨の中、一揆へ。タクシーで先回りの鄭さん、安澤さん。New　Yorkから来たご夫婦とメニュー談義。顔を見合す大西さんと上田さん。帰りは結構な雨で濡れました。来週の塾頭は高津君よろしく。

2008年5月31日　子路2１〜22
前半は、学而第一より里仁第四まで音読。無適dí也でshìではない。適には"せき"と"てき"があり、"せき" shìと"てき"díとなる。適、丁歴反、反切といって丁（tei：dǐng）の子音、歴（leki：lì）の母音をとり適（teki：dì）の発音とする。声調は時代の変化があり、díとなる。省は悉井反、悉（xī）井（jǐng）だから省（xǐng）となる。訥nè於言、惡wū乎成名。



惡はニクムwù、イズクンゾwū、アクè、となる。入声はフクツチキ、アクのクが入声、と稲垣君。

本日の塾頭は高津君。
21)子のたまわく、中行を得てこれに與せずば、必や狂狷か。狂者は進みて取り、狷者は為さざる所有り。中庸の人を得て組みすることができないなら必ず狂者か狷者にする。狂者は進んで取るところがあり、狷者は節義を守ってなにもしないところがある。狂と狷がよくわからない。狂も狷も同じようなところがある。狂は文字どおり、狷には狷急と狷介の意味があり、狷急なら狂とかわらないように思える。中行は中庸の人、その人が真ん中とすると左右、左派と右派と対極に狂狷を置くのが普通ですが、狷急と考えれば狂と同じ意味となり、対極とは別の意味で考えることになり、よく分らないので教えてほしい、と高津君。中行があり狂狷となれば、対極とならないとおかしい、高津さんが両方同じというなら、言わんとするところは変わってくる、と稲垣君。中行とは誰のことですか？その人が中行を得ているのか？中行を持った人と行動しなさいという例えですか？評した人が中行を持っているかどうかということですか？と高津君。中行の人とは孔子自身のこと。狂は志が高いが行いがともなわないとされ、狷は節を守り分をわきまえ、やってならないことはしないとされる。狂は紂王の過ちを匡さんとして容れられず、狂となりて殷を出る微子を連想させ、周公の政を復興するという志を抱くが行いがともなわない、狷は三桓氏のやることには断固何も組しないというようなタイプを想像しているのだが、と上田さん。不得中行は何のためか?特定人物の評価か？自分が一緒に行動する時にどういう人か？もう一つの解釈は、弟子から、国を治めているとき、いい人物がいないかを問われ、中行がいいと答えるが、中行がいなければ狂狷を登用しなさい、となる、と稲垣君。狷のせざるところあり、何もしない、狷介・・・と高津君。朱熹は節と義をいれている、穂積氏は狂は善を進取、狷は不善をなさないとしている。貝塚氏は狂は積極的な人、狷は妥協しない人とみている、と安澤さん。これは、自分を見極めて、自分が分ったうえで、バランスよく行う人を得なさいよ。狂であれば狷、狷であれば狂を用いなさい。狂と狂、狷と狷であれば居心地がいいかもしれないが、別のタイプを択びなさい、そうしてバランスをとりなさいということでは、と川那辺さん。音楽では和声、対位法があり、このようにすれば最も調和するという体系があるが、もしそういう表現が得られるなら、極端に勢いがあること、静謐なことがよい、という感じがある、と中村（典）さん。狂にしろ狷にしろ悪いイメージがない。中行はバランスのとれた人。そうならなかったらどうするか？弟子の評価において用いる方法、同じ事で、子路と冉有では答えが違う、一人は親に聞け、一人はとりあえずすぐやれ、性格によって異なる。顔回のように中行がとれればいいが。孔子は狂を否定していない。今の人は狂にして直きがないといい、孔子の狂には直が含まれる。狷は懼れてやらない。狂狷と共にすれば、彼らを導く、自分のやる仕事があると孔子はみている、と鄭さん。中行が得られない場合の次善として狂狷、中村(典)さんは狂狷を悪いものではなく積極的に解釈されており、鄭さんだ弟子を例えてみておられる。孟子は狂と狷の差、狂の方がよいとみている。朱子の注の孫引きとなるが、孟子は狂者も得られなければ、狷者をとれと三段階の順序をつけている、と稲垣君。個人的な好みでは川那辺さんの意見がいい。先進篇で師（子張）と商（子夏）のどちらが勝るかで、師はやり過ぎ、商は及ばず、というのに似ている。狷急、せっかち、にあたるのか狷介、自分に正直で正しくないことをしない、となれば狂の反、どっちか分らない。中行而與之の之は何か？□の人、中行でない人、□に狂か狷がくっつく。必ずとあり、狂がつくと、進取、後先考えずにするから事が悪化する。狷急も一緒、狷介だったら事は悪化はしない、どう狂狷を考えればいいのか・・・必ずや狂狷というのは絶対狂か狷しかないという感じ、と高津君。必ずや狂狷というのは絶対狂か狷でしょう、と稲垣君。高津さん、□の人はどういう人を考えている？と川那辺さん。孔子は補佐をする人、また弟子を教えるが、国を乗っ取ることなどは考えず補佐するのが役割。□の人を補佐する。狷の人が補佐すれば悪くはならない、と高津君。師も商も悪くなく、足らないところを補う、それによって中行のバランスをとる。足らないところを指摘しているのでしょうが、この対話のシチュエーションがわからない、と川那辺さん。これを政治家にあてはめるのか弟子にあてはめるのか？どっちも良さをもっている。陳で放浪している時、帰ろうか、帰ろうかとあった。弟子を狂簡と言っており、狂簡だから帰って教えるという。このときどうして狂だけで狷はないのか？朱子に聞くと、狷ではなく狂の性格あるものと共にするとなっている。狂狷は、過ぎるも及ばずも、両方をたてている、と鄭さん。必ずしもプラス、マイナスの評価でなく狂者、狷者のそれぞれの特徴を言っているだけで、事実としての傾向のみを言っている、と稲垣君。中行は、狂も狷もあってなおバランスがとれているということで狂狷の無い状態ではない、と上田さん。狂であって直でない、と言っており、古の人の狂は直を持っていた、と稲垣君。問題は政治家かでし弟子か、どこに向けて言ったのか、と鄭さん。鄭さんは弟子でしょう、與之は、一緒に居るは政治のみでは困難、と稲垣君。中行は顔回、狂狷を別の弟子にあてはめたが、狂は子路かな・・・孟子のなかでは、色々な政治家をたてているのだが、中行は孔子、狂狷を伯夷、叔斉、柳下恵、伊尹等々をあげ、一方に偏っている、としている、と鄭さん。狷介は、日本語ではとっつき悪のい人だが、中国語では耽直、狷急はせっかち、せわしない、狷介はプラスイメージ、日本語では、隠居して、こもって、意固地な感じで正直者のイメージがない。古典と現代語、日本語と中国語の差を考えねばならない、と稲垣君。狂は志を貫こうとする、それが過ぎる、と鄭さん。貫くじゃない、やりたいことを曲げない、志を曲げたくないじゃないか、と稲垣君。志は正しいのみでなく意思、昔の狂には直が伴う、と鄭さん。狂は、周りの規範からはずれるところがある、と稲垣君。皆から認められた狂がありますか？と大西さん。魯には狂簡のものが居り、彼らには可能性がある、教えればまろやかになる、と鄭さん。意欲、やる気みたいなもの・・・と大西さん。狂というと子路のイメージ、と鄭さん。志には志向と方向性がある、ここでは、意欲、やる気がいい、と稲垣君。

22) 子のたまわく、南人、言ありて曰く、人にして恆無くば、以て巫醫を作す可らず、善いかな。其の�ｺを恆にせず、或いはこれ羞を承（すす）む。子のたまわく、占わざるのみ。孔子がおっしゃった。南人、南の人が言いました。人が恆、一定したもの、がなければ、占いとか医者の治療を受けられない、と言って、それはその通り。その徳を恆にしなければ、羞をうけることになる。だから占うまでもない。巫は卜筮のこと。南人は楚の人。これはどういうことを言っているのですか？と高津君。朱熹でさえ読めていない、と稲垣君。南人をほめたのでしょうか？と高津君。童君が説明してくれたように、華夏の南は南蛮の楚。作は、恆の無い人が巫醫になれない、あるいは巫醫にかかれないの二説がある。高津君は前者だが、巫醫になれない方と思う。巫は鬼�~に交わる所、醫は死生の寄する所とされ、巫は工（呪具）を以て鬼�~に交はり、醫は矢（呪具）を殳（う：打）ち病魔を祓う。こういうものに対するには自分のやることに確固として動じないものを持っていないと、やってはいけない。この南人の言葉を善しとする。次は易の言葉、孔子は易を研究して詳しかったのだが、恆無き人間が占っても羞を受けるだけであり、やめたほうがよいという。孔子の言葉は善いかな、と占わざるのみのところだけ、と上田さん。そんなことですか？自分の言うこともやることも、ころころ変わる人は巫にも醫者にかかっても治すことができない。バランスのだめな人は羞をかく、占うまでもなく、あたりまえのこと、という風に思ってたのですが、と川那辺さん。それは、古注と新注のちがい、と大西さん。恆のない人間は巫醫となってはいけない。人にして恆なくば、巫女や医者になってはいけない。確固たるところがなければ、当たるも当たらぬも八卦、治るも治らぬも・・・というのはいけない。恆が共通する。易の言葉を引いて、徳に恆なければ羞をすすむ、と徳行がなければ、自分から羞をさらすことがある。その次が読めない。占わないだけだというのは、話がつながらない、と稲垣君。南人の恆という場合、何が恆かはない、易の場合は徳という。現代中国語では、占わなければそれでいいとなる、と高津君。巫女となると東北の"いたこ"のごとく通常の人ではつとまらない。医者に関しても、祟りとか呪詛されるとか医術だけではない能力、祈祷で祓う能力が求められた。殷の時代は帝の行動を天帝に伺うために占いをした、周は文王が八卦を六十四にして易を用いた。天意を読むのであるが、先生は易の研究を随分されたが、自ら占うことはされなかったのだろう、と上田さん。孔子は易の木簡を繋ぐ革が三度切れるほど読んでいる。宋の時代は士大夫は毎朝占いをしていた。不可は条件が許さない、〜しない方がよい、〜してはいけない、で出来る出来ないではない、出来ないは不能、と稲垣君。羞と恥はどう違いますか？と中村（典）さん。恥はこの間は志を行わないこととなっていた。羞はやったことがまちがっていることをはじている、と上田さん。辱というのもあり、来週までに調べておきましょう、と稲垣君。今日の二つと次とはつながりがありませんか？技術的なこと、ピュアなこと、では君子はどう？というテーマにつながりませんか？と中村（典）さん。鄭さん、今日はえらく静かですね、と高津君。ずっと聞いているが、よく分からない。恆は、どこでも、そういうこと。占いとかでなく、当たり前のこととして重要。南蛮の人も言っている。士大夫も恆がないとダメ、巫醫という卑しい身分でもそう、易でもそう、ということではないか、と鄭さん。それで話が通る、巫醫は卑しい身分でいいのですね、それでも恆が重要、易でも、だから士大夫でも、と大西さん。上田さんの恆のない人、それが占ってはいけない、というのもいいかな、と高津君。
大分時間が過ぎました、来週は三つを結びつける中村（典）さんに塾頭をお願いします。西陣小学校はライトアップが終わり、見ている時間はありません。本日の一揆は黒ネズミ四匹、珍しく赤色はありませんでした。

2008年6月７日　子路23
前半は、学而第一より公冶長第五まで音読。

本日の塾頭は中村（典）さん。遅れてしまいまして・・・コンサート二つがやっと終わり実は音読の方もテキストと解釈の方も考える時間がなくて・・・解釈には色々な本があり、それぞれの傾向があり面白いのですが、男女でも違うでしょう・・・中国の古典では性善説と性悪説がありますが、自分は女性なので・・・自分がどう読むかといえば、性善説で読んでいる。いままで読んできて先週が最も面白かった、そして今日は最も有名な、君子は和して同せず、小人は同して和せず、です。私は子路がどういう人か分らないレヴェルで恥ずかしいのですが、性善説で読もう、字のとおり読もうとしています。一番最初に読書会に伺ったときは、全部が漢字で高校以来苦手でどうすればいいのか悩み、英語のテキストをもらって英語のように読めばいいのだ、自分の性質にあわせてやればいいのだとやっと納得しました・・・テキストの中の南方の人、先進的でない人のことですが・・・過不足無くバランスをとっているのがよいということが分った。今日は
23) 子の曰はく、君子は和して同せず、小人は同して和せず。ですが君子は人と調和しますが同じじゃないような・・・小さな変化を一杯もって、それぞれが違う方法をとっているようでも調和している。それがいい状態。小人は同して和せずは同じ意見。平行線みたいな形をとるが一つの場所にとどまれない。建設的でない感じ。音楽では、非常に分りやすいのですが、ハーモニー、和声学、ある音に対してどんな音を作るか、一つの音に対して一つの音楽となるか？調和しないはそれでない状態、一つの表現になっていない、いくつかにバラけている感じ、調和しなければならない。多分反復とか同じ音形を繰り返すがひとつにはならない。小人は、人が小さいと訳すのだろうが、もう少し違ったように訳したい、と中村（典）さん。音楽はとても良い例え。君子は音楽の中では一人一人が違うが、一緒になると調和の音楽ができる。小人は、皆とてもよいが、実際の音楽となると君子より下手。同というのは小人が・・・古代の政、中国では、国家の大事のあるとき、大事をわきまえず互いに合同する。とても大事なことが国家にあるときには君子は自分の意見をあげる。大事なとき君子は同じじゃなくて、いい意見、いい言葉を言う、と童君。同じは全く同じじゃなく、それぞれの役割があり、そうしないといけない。西洋音楽では三つの音で一つの音となる。三つの音で一つの和音、それを同時四つで調和させるのが和声法、音のゆくえは東西南北が決定されるように場所がはっきりしている。絶対同じにはならなくて、〜をしてはならないという決まりごとを超えない範囲で和声をつくる。モーツアルトの場合にはそれを超えて、名曲となるのですが、彼は文字を覚える前に、音について訓練を受けており、ある最高地点に若くして達しており、調和して則を超えないというものは備わっているが、更にそれを超える表現をする。そういう音楽的表現になっている。よい表現は同じ意見でなく、違う意見であって、建設的に進行してゆける。小さな少数意見を容れてゆけるのが君子、と中村（典）さん。この言葉は、当たり前のこととして、誰にでも、どこでも引用される。それは普遍性があるからで、音楽にも、人間関係にも、料理にも説明ができる。あまりにも普遍性があり、自分に都合よく解釈ができる。和と同は異なる。同は一色しかない。君子と小人は何ですか？孔子のもともとの解釈にもどってみるとどうですか、と鄭さん。料理の例えでいえば、塩、砂糖、醤油が入り調和して美味くなる。小人は自分の利益を出したい、自分のことを強調して、同じ鍋でもバランスを考えずにやるのが小人、と高津君。極端な表現の中に、むしろ小人的表現とよんでいいいところにも芸術的なものがある。美術、絵画において、赤という色のみで、少しずつちがう赤を使う・・・色のコンポジションですが、小人が悪いこととばかりみるのではなく、小人にもいいところがある・・・小人から君子の間を行き来している感じ。私はなんでも良く解釈するくせがあり、より良いという風に、相対的にみてみたいのです、と中村(典)さん。善悪は別々ではなく調和がとれている関係。悪には善が反映されている、太陽と月、陰と陽、このバランスがとれていることが大事で、君子と小人のバランスがとれていることが大事、と高津君。私は善悪どっちかを切り捨てるみたいなことにはピンとこなかった。一年間論語を勉強して、漢字を克服する前には、左右とか善悪とかはコントラストが効きすぎて近寄れなかったが、一年かかってそれが１ミリくらいの差と考えることもできると考えると、納得できるようになった。日本人には古来、恥の文化が大きく、それをとりはずしてその差を小さくしないと・・・君子は至高、絶対とは思わない。もっと違った解釈、君子を文字通り、ロゴスの中心として、理想として、そのとおり読んでみたい。君と子を別々に読む。子は師匠かな、君子とつながっている場合。君を貴方という意味にみると気が楽になります、と中村(典)さん。日本に来たとき、日本語では、君は貴方より尊敬語かと思った、と童君。君子は道理に従う、不合理には付和雷同しない。小人は利益ということだが、利益が道理に入っておればいいのではないか、と大西さん。ロゴスの理、利益の利の二つがかみ合っていればいいですね、と中村（典）さん。君子は根拠のあるポリシーをもって折れどころを持つ、小人は折れどころが無いという風に思っており、こんな解釈をされており、ビックリ、勉強になります、と奈奈さん。小人が個性を主張する場合も受け容れられる。そういう場合もあることはいい、と中村（佳）さん。今日は山歩きで来るのが遅れ、どうしようかと思ったが来てよかった。君子はgentlemanで英語では距離をおいて見る、自分をみつけ、付和雷同しない。小人は英語ではどういいますか？common peopleです。ぼくはcommon peopleです。君子は比べず、とか君子は器ならず、ともありますが、もっとふあっとしたものでもいいのでは、と安澤さん。音楽家、芸術家は社会の中では、社会の安寧を願う、それを司るマスコットみたいなもので・・・昔は、神楽、お囃子で社会の中にあり、近代では演奏家や教師ということになりますが、音楽はその日、その時間にそこに居ないと出来ないことで、確実性が必要です。社会の安寧がないと出来ない職業です。それと関係する職業、個人を超えたところがきちんとしていないと困る、そういうことを願います。common peopleの感性は重要です。オーケストラは20〜100人が集合して舞台をつくります。代替のきかない状況にあり、弦の人が多く管楽器はペアくらい。バイオリンは弦が切れることがよくあります。その時は後ろの人のものをもらいます。一番後ろの人は舞台袖に置かれた予備を使います。独奏のときは、コンサートマスターのものを使い、後ろから順次まわし、一番後ろの人が舞台袖に置かれた予備を使います。JRの列車事故の場合には、そういう準備がなくて時間と時間がぶつかってしまった感じ、と中村(典)さん。和と同の話がずいぶんでたが、君子と小人をどうとるかで解釈が異なる。一般に君子は徳のある人、小人は徳のない人。小人のイメージが悪くないという話になっているが、それは小人を一般の民とみて、対立概念でなくなっている。小人は利を求める。君子は上に立つもの、小人は和せないから和せるようにしなくてはいけない、と鄭さん。今の時代、君子という形で上に立つということはあまりない、と中村(典)さん。孔子は上に立つ人間に向かって言葉を発している、と鄭さん。絶対的権力者というものが限りなく少なくなってきているのが今の時代、と中村(典)さん。日本では庶民が論語を読むということから、全体を導くということがあるが、中国では君子のあり方を問うもの、と鄭さん。江戸時代から寺子屋で町人や商人、子供まで読んでますから、と安澤さん。それは、それぞれがいい言葉を学ぶ、政治の部分をあまり読まない。中国では政治とのかかわりから発信されている、と鄭さん。誰にでも通用することを言っているから、と大西さん。君子に近づくことが目的、政治を行うというより自分を高める読み方、と中村（典）さん。江戸時代には武士が政治に関して論語を読むことがあったが町人や商人が読むとなれば異なる、寺子屋となれば、政治とは関係しないと鄭さん安澤さんの話に、寺子屋で学ぶ人たちも政治家を志望していたのでは？孔子は出世しなかったからこそ論語が生まれたのでは？聖書と同じ構造、と中村(典)さん。先日、中村(典)さんのコンサートに伺って、今おっしゃっている意味は良く分かる。その時に演奏されたナビとカサヌヒ。ナビはフルート、打楽器。打楽器の中には一つ一つ音の異なる風鈴があり、そこへ大太鼓、シンバル、木魚みたいな音が入ってきて、同と和が混ざり合って音楽になっていて、そこには同と和に差がない。フルートと言っても、目を閉じて聞けば、尺八や篠笛のように和楽器としか聞えない音を出しながら、同から入り、途中から、打楽器がバラバラに始まる。そのうちそれが妙な調和となって和になってゆく。カサヌヒは弦楽器の音楽。バイオリン、チェロだけ。バイオリンもチェロも本来の音が出せない、奏者なかせの旋律。意図的に本来の音色の良さをださせないようなスコア。楽器の腹をたたくような奏法もありがちなものでない。この曲もはやり、それぞれバラバラに同が始まって、和になったかと思うと最後には爆発するような音楽。芸術で、同と和、小人と君子の違いを説明するのはとても難しい。それで、一般人の私としては、君子と小人の違いは何かと言われれば、私は小人、君子は理想。小人の私は群れる。同調することによって孤独と恐怖感からのがれてようとする。でも、心から願うのは和すこと、和すには信が必要。信頼は暗黙のもの、口に出して言うものでなく、暗黙のうちに和すもの。和すには、互いの足りない部分を指摘したり、又それを受け入れるだけの信頼関係がないと成り立たない。人の一生の中でそのような人とはそうたくさん会えるわけでなく、そういう人に会えたらいい。和すは憧れ。小人は下、君子は上、芸術ではそれが簡単になりたちにくい、と川那辺さん。小人common peopleもいいものと思う。西洋音楽は神＝理想が普通の人々に重なってくる。とことん個人の自由が尊重され、それゆえの激しい厳しさがある。政治や歴史とは違う。ピカソが嫌いと感じるなら、それはそれでまったくよい。芸術とは権威や矛盾を越えたところにある、と中村（典）さん。芸術はどう感じるかでいいかもしれないが、小人的なものではなく、絵自体が調和されているものと思う、と高津君。集合的意識につながっており、（後年）沢山の人がいいというものが残ってくる。それまでの価値観ではよしとはできないものを一つの白熱した調和の中に人の手で置く、と中村(典)さん。先週中村さんが前の二つとの関連をいっておられた。中行、人にして恆無くば、との関連だが、中庸ということと関連する。これは人対人でなく、自分のこころのなかで、喜怒哀楽というもので心を乱されるとき、どうその中を保てるかという面もある。孔子は天命を得たというとき、天われを喪ぼせりというとき、その振幅は大きかった。禮の用には和を貴しとなすともあり、同というものより和に重きを置くが、同と和の違いも分かりにくい。同は利とか喜怒哀楽などわかりやすいものをいうのであろうが、和は中と関連してとらえられるようだ、と上田さん。中庸の話だが、發して皆節に中（あた）るこれを和と謂ふ、とある。和は同とは違う、区別をいいたい、と鄭さん。前回上田さんが狂狷あっての中行といわれた。夜と昼あっての一日。君子と小人両方あってよい。ぼくはベートーベンは君子と思う。社会と調和しない行動をしている。社会と同じことをしていてはベートーベンはない。ベートーベンが自分のものを持っており君子となった。そのことをやって和をつくりだした、と高津君。おおっ！高津君。今日は来て、よかった、と鄭さん。ベートーベンは生きている間は付き合いたくない人。ひとつとして同じものは作らず。耳が聴こえなくなるくらいテンションが高く、まさに白熱、爆発している。一言でいえば機能というものがあること。ある音響的状況があれば次にどうなるかということが問われるが、極端なところではずしておきながら、それが機能のある状況を作り出す、爆発するような状態になってます、と中村(典)さん。君子は仁、義、小人は利、と白板に大書の鄭さん。
今日は中村（典）さんが作曲家として大いに語られ、今日はなんとしてもはずせないと駆けつけてきた高津君が盛り上げてくれました。最後に、同と和、区別がつきにくいものです。同が重要でない訳はありません。同が必要なものとは何でしょう、と中村（典）さん。科学だろう。科学では再現性、同じことが再現されねばならない、と上田さん。今の世の中では異同を明確にする科学の精神が求められ、同は必須です。そこに奈奈さん曰く、医学ではサイエンスだけではダメでリージョンが必要。どうやら、生命や精神を扱うような場合、サイエンスだけでは十分でない。和が必要です。和をもたらすものは何でしょう？芸術？倫理？宗教？この勢いで来週も中村（典）さん塾頭をお願いします、と鄭さん。鄭さんは今月末に台湾へ。来週は同様ですが、6月21日は16時からスタートし、19時くらいから送別会の予定。本日珍しく鄭さん一揆組に合流せず。もう一つの会合に出た稲垣君が合流。恥、羞、辱談義。稲垣vs安澤、稲垣ｖｓ中村（典）と盛り上がっておりました。

2008年6月14日　子路24〜25
前半は、学而第一より公冶長第五まで音読。大西さん、食sìを問う。吾食shí西瓜だが、使役となる場合、吾食sì西瓜於我児、の食は飼sìとなる。羞、恥、辱の違い。羞は気はずかしさ、面目のなさ、もともと、ささげる、すすめるからきて、プレゼント、贈り物の義。後漢の許慎の「説文解字」によれば、恥は辱なり、辱は恥なり、で同じ意味。辱は身心が害を受けること、恥は名誉を傷つけられることに用いられる。羞恥は心のやましいこと、赤面し、面目にかかわる。侮辱、あなどり、しいたげる、が最大のはじ。恥辱、羞恥の順。鄭さん、大きな西瓜を持参。冷蔵庫のものをほおりだして冷やしてきた。包丁も紙皿も持参。音読で渇いた喉を潤す。半分で充分な大きさ、今年の初物と馳走になる。
本日の塾頭、中村（典）さん見えず。ここはひとつ稲垣君に。
24)子貢が聞いた。郷人は里の者、集落の者、すべてが好むというのはどうか、いいものかと聞くと。それでは不十分という。村の者がすべて惡むはどうかと聞くと、不十分である。むらの正しい人、いい人たちが好み、正しくないものが惡むにはかなわない、となりますがどうですか？上田さん、と稲垣君。里仁篇に、仁を好む者はそれでよい、不仁を惡む者は仁を爲す、とあり、不善を正すということを孔子は重要視している、と上田さん。郷人とは何か、と稲垣君。村人のイメージ、和して同じず、同は一色になること、それはよくない、大衆的なものではよくない。子貢の求めに対する孔子の答えが違う。子貢にすればよい評価を与えることができればよいと思ったが、孔子はそうでない。皆を喜ばせればいいのではないかと言ったが、孔子は十分でないとする。似た表現があった・・・必察者・・・孟子だったかな・・・と、鄭さん。子貢の聞きかた、村の人がこの人がいいと言ったらどうですかと聞いても、それではまだダメと言われ、それなら全く反対から、皆がダメといったらどうですかは面白い。善者が好み、悪人がその人を惡（にく）んではじめて仁者。善者が好むだけではよい人、そのうえ、悪人がその人を惡むが真の善者、二重に慎重にみている。一面だけではなく二面からみて善者を示している。子貢の聞き方は、そういう答えを引き出すような聞き方となっているのでは？と、川那辺さん。意図的にそういう答えを出さしている？朱熹は世論、公論があるという。公論があれば、思考を同じくするものが集まり、良し悪しを品評する。その物事をよいと思う人も、悪いと思う人も両方ある。善者がよいといい、悪者もそれをよいと思うことがあるとき、苟合、そういう適当な行いがある。論理の遊びでよくはわからないが・・・善者が好み、悪い人がそのことを憎むなら、そこには誰でもよしという中味が存在していないこととなり、惡なる者が惡み、善なる者が好まないときは、よいとする實がない、と言っている、と稲垣君。

		皆好む	皆悪む
郷人	善者	好之	不好之	好之
郷人	悪者	不悪之	悪之	悪之
		苟合 ：適当にあいづちをうつこと	無可好之實：全くいいところがない	ベストの組み合わせ

子貢の言葉、問いと孔子の答。何故そうなったのか？政治政策を皆が好めば十分ではないか、皆に合わせて喜んでくれればいいのではないかと子貢がいう。孔子は一般人がついてこれなければ、それでいい、皆の好きだけではよくならない。悪んでも必ず察し、好んでも必ず察し、と鄭さん。見たところ悪い政策でも正しい政策であればよいですか、と稲垣君。郷人が皆分る分らない、でなく、分らせる必要もない、その上にたつには一般人から背くようなこともやらねばならない。子貢は誰でも喜ばせようとする、と鄭さん。皆が幸せになる政治ではなく、正しいものは正しく、正しくないものは正しくないということ、と稲垣君。しっかりした人には、よいものはよい、悪いものは批判するような政治の心構えが必要、子貢に対して、貴方はあわそうとしているのではないか、と鄭さん。川那辺さんのおっしゃるように、子貢の聞き方が面白い。皆が好むといことで合格点かときくと、十分でない。ならば、皆がいやがることになってもやる、これで合格でしょうときくと、まだ上がある。善者は好み、不善者には恐れられる、不善者を正すというところがなければならない、と上田さん。政治をして人気があがればいいのか？それじゃない。じゃあ皆が悪めばいいのですか？先生のおやりになることもそういう方向のところがありますよ。悪まれて本当にいいのですか？分っている者がおそれるようでないといけない、と鄭さん。そう強く読まなくてもいいのではないですか。村人全員が好きであればいい。いい人、悪い人両方をうまくあつかっているが、悪いことをしているのかもしれない。いい人が好み、悪い人が嫌うことを目指してほしい、と高津君。鄭さんがいつも言うように、後ろに重点がある、不善者惡之にポイントがある、と上田さん。次は鄭さん、お願いします、と稲垣君。

25) 子の曰はく、君子事え易く説ばし難し。これを説ばしむに道を以てせずば説ばず。其の人を使うに及びて、これを器とす。小人事へ難く説ばし易し。これを説ばしむに道を以てせずと雖も説び、其の人を使うに及びて、備を求む。分り易い、君子と小人、事（つか）えやすいが説（よろこ）ばせるには難しい。道をもってしなくてはいけない。君子は適切な人を択んで使う。小人の場合は、事（つか）えにくいが説ばせるのは簡単。道でなくとも説ばせる。人を使うときには器に会う事を求めるより、すべてを備えていることを求める、責任を自分でとらない、と鄭さん。事はその人の下で働くことでいい？と稲垣君。そうでしょう、これは職場の話として一般人には馴染みが深い。君子の方は、部下の器に合わせて仕事をさせ、うまくゆかないときはカバーをする。小人の方は、部下に任せておいてうまくゆかないと、何故そこまでやらないのかと部下の責任にしてしまうタイプ、と上田さん。ここでは後ろに重点があるとはなっていない、と稲垣君。私も経験があるからよくわかる。上司のタイプをみるのに分り易い。オールマイティーにやっておけば、この上司、あの人なら、どうでてきてもなんとかなる。オールマイティーではなく、自分の長所をよく知って任された時に、その上司をそう簡単に説こばせることは難しい。分って仕事がまかされているだけに・・・、と川那辺さん。小人のような上司の場合、オ−ルマイティーに対応できるようにしておくということですね。説こばせるとは、ごまをすっておけばいいくらに思ったのですが、違いますね、と稲垣君。あまり、良い表現でなないけれど、適当にうまくころがせるようにしておくということです、これは使われる身からみたものですが、結局は君子からすれば、立派な人をつかむには、どういう器かと見極めねばならない。使うとする人間を満足させるにも、道に沿って使うようにしないといけない。君子のあるべき姿を求めているのではないかと川那辺さん。備えるを求めるというのは川那辺さんと一緒の考えですが、器にひっかかる。君子は器ならず、子貢が器といわれ、何の器かと聞くと、瑚�lと言った。器にはいいイメージがない。人徳を備えている人を、君子が君子を使うとき、器が問題。小人は責任を押し付ける、君子は器が広い、失敗したときも責めない、自分の責任にする。小人との比較になっているが、器之、とすると君子は君子を使えない、そこにひっかかる、と高津君。君子と小人の比較だから、君子が君子を使うときは別。君子は器でないというのはどんなことにも備えができていること、と鄭さん。器は使い方、大きさはきまっている、と高津君。子貢が瑚�lという瑚�lは立派な器、ところが君子は決まった器でなく、どこでも応用できること。ここでは他と違って、実際の仕事の話で抽象的なことではない、と鄭さん。自分には器とならず、人には器とする、と大西さん。君子はコントロールができること、相応しいことに人を使う、子貢は立派に使える人であるが総合的にやることには欠けている、と鄭さん。使われるより、使うほうになりなさいですか、と稲垣君。使われる方、人を使うにはその器をみなければならないが、使う立場ではそれだけでは困る、と大西さん。及其使人という言葉が入り、具体的な話となっている。いつもの抽象的な終わり方とは違っている。それぞれの意見をまとめて比較を試みてくれる稲垣君、君子は器之、小人は求備、器は度量の広いこと、大西さんは、器量に応じて使うから器、自分は君子のようになりたいが、他人にはすべてを求めず、その器を求めるべき。高津君は相変わらず、器となれば、君子が君子をつかうときの矛盾をかかえたまま。鄭さんは備えるを求むとは君子を求めること。君子は小人でも器に合わせて使う、君子が君子を使うはなし、小人は君子をつかうことができない。大西さんは、器の中に君子という器があっていいのでは・・・すっかり「器」談義と化してまいりました。高津君のこだわりに端を発するが、論語を読んでくれば器にひっかかるというのはありえること。もし、この場に子貢がおり、器之とは、どういうことかと孔子に聞けば、どう答えたものだろう。子貢は瑚�lと言われた。孔子が亡くなったとき、子貢のみ六年の喪に服した。まさに、立派な瑚�lそのもの。孔子がどかんと真ん中にあって子貢のよさが引き出されている。子貢は孔子亡きあとは、そこから去り、自分が真ん中に入ることはしなかった、論語の編纂にもかかわっていない、と上田さん。総理大臣は何かに優れているより、優れた人を上手く使える人。大臣にはそれぞれの大臣として能力のある人を使う。総理はいちいち自らやるのではなく、おおきな観点での方向性を示すことができなければならない。孟子が鄭の子産の政治を批判している。彼は人を船で川を渡すために自ら懇親の努力を果たしている、しかし、国民一人ひとりに自ら恩恵を施すことは出来ない、橋を作って渡れるようにするのが政治である、と鄭さん。なるほど、と稲垣君。
さて時間も回っております、今日は参加者が少なくて来週の予定が徹底しますか心配です。6月21日は午後4時から読書会スタート、6時過ぎに終え、午後7時から三条神宮道の明日香７５１−９８０９で鄭さんの送別会といたします。月末で鄭さんの査証は期限ぎれ、来月におれば入管の檻の中でしょう。縲絏之中で天生�ｺ於予、桓魋其如予何てことでしょう。
http://map.yahoo.co.jp/pl?type=scroll&lat=35.0061446&lon=135.78518458&sc=3&mode=map&pointer=on（明日香周辺地図）
三条通りと神宮道の交差点西北に赤提灯がぶら下がっています。地下鉄東西線の東山三条駅から北側歩道を東に向かいローソン、酒屋さんを越えれば赤提灯がみえます。２階の席になっているはずです。

2008年6月21日　子路26〜27
前半は、学而第一より公冶長第五まで音読。久方ぶりに沈さん登場。
本日の塾頭、急遽、またまた、稲垣君。

26) 子の曰はく、君子泰にして驕らず、小人驕りて、泰ならず。
泰は泰山という山、大きいこと、おおらか。ひとに驕ることがない。小人は驕って、おおらかではない。君子と小人の対極の表現。論語によくあるパターン。泰と驕の比較。自分の心のもちよう。驕は他人に対して優越感を持つ、に区別できるかもしれない、と稲垣君。いい説明をしました。論語の中に、君子、小人を述べる言葉が一杯あるが、君子と小人は絶対的に変わらないものではなく、ある条件のなかで、君子が小人、小人が君子に変わることができる。泰にして驕らずといえば君子、驕りて泰ならずは小人、しかし、両方に変わることができる。聖人でも小人たることがある、と童君。条件によって変わる、はビックリした。君子と小人は対極に居るが、君子は器ならず、周にして比ならず、色々言い方があったが、君子と小人が決まっているのではなくて、条件によって君子になったり、小人になったりする。偉い人でも小人の性質を持つことがある、と鄭さん。君子の理想像があるのでなく、泰とか驕でないとか、周とか比とか、泰だが比するみたいな取り合わせのことですね、だけれど、良いところばかりとれば、理想の君子像ができるのでは、と稲垣君。聖人になります。しかし、すべて揃っている人はいないので、またその境界も明解にはできないし、そこを往ったり来たりする、と鄭さん。絶対的状態ではなく、あるときには君子、あるときには小人になる、絶対的概念ではない、と童君。よいところを集めると聖人、孔子の弟子もこのあたりは君子、このあたりは小人とあてはめることができる。ここでは、泰と驕をふたつならべて、ポイントは驕るなということ、君子は驕ってはいけないということ、と鄭さん。考えはゆっくり、行動は素早く。日本では何でも早く速く、日本では泰がない、と沈さん。これは、そういうことより、人に対してどういう態度をとるかの問題、泰は落ち着くではなく広い心で受け容れる姿勢、と鄭さん。君子と小人は受け容れると競う心の差、と稲垣君。喜怒哀楽を中すというのがあった。驕るは高ぶりコントロールができない状態。童君がいうように人の心の中では、それがコントロールできないときは小人、それができるときは君子。大概の人間は小人状態でそれがちゃんとできるときに君子になる、と上田さん。準備ができておれば泰でいられるが、準備ができていないとそこにはゆかない、と大西さん。驕るは自己評価の低いこと。自分として哀れなこと。自分を知っている人は受け容れることができる。自己評価の高い人は批判を受けても、すぐ反応せず、受け容れることができるもの、と奈奈さん。色々な上司のもとで働いてきたが泰で驕らない人は少ない。でも自分もだんだん下から中になってきており、そうならないようにしなければと思っている、と中村（佳）さん。こんな場面を思い浮かべます、例えばノーベル賞をもらってもひょうひょうとしている、たまたまと言って、自分はこれだけ大変なことをやりましたみたいなことはおっしゃらない。大きな評価を得ていてもあくまで通過点に過ぎないみたいな。泰は泰山の様に高い目標を持つ人、そういう人は、こんなに大変だったじゃなくて、たまたまというかこういう結果だったのですみたいな、そういう大きさというのは、余裕というのは、「そうしなければらなない」でなくて、自然とにじみ出てくるもののような気がするして、君子とはそういう人のことかなと思いましたと川那辺さん。聖人は周公とか孔子自身、君子は孔子の弟子でもなれる。子賤を君子哉若人、魯にはこのような君子が沢山いると孔子は言っている、と稲垣君。

27) 子の曰はく、剛毅木訥仁に近し.
剛毅木訥の人間は仁に近い。君子を色々な方向から説明するが、ここでは仁を剛毅木訥の要素で説明している、と稲垣君。安澤さんがどこに行った？ぼくは剛毅じゃないが木訥ですの安澤さんに説明してもらいたいのに、と鄭さん。沈黙は金というのに似ている、自分の考えを出さずに寡黙なこと。顔回はじっと聞き、自分の考えをださない、沈黙の人、と沈さん。木訥と沈黙は違う。沈黙は、例えば皆は戦えとしていても、これはダメだと思うと僕なら沈黙する、これが沈黙、木訥は人として純粋な状態、孔子は知識ではなく知恵をもって、純粋な状態で人に対する。仁と君子は大きな関係がある。剛毅木訥の四つの要素から代表される気持ちを持っているのが仁の状態、と童君。木ボク訥トツ、語尾がフクツチキは入声、木訥は押韻されているので別々に切り離してはいけない。押韻には句頭韻と脚韻があるがこれは句頭韻。剛毅と木訥で読むべき、と稲垣君。程子の解釈は四つの概念、だから二つの派がある、剛、毅、木、訥、と剛毅、木訥、と童君。剛は岡（鋳型）をリ（刀）で裂いてはがす、断ち切ること。毅は豙、霊獣を殳（殴打）して呪能を高めることで、強く忍び果敢に決断する。木は、質朴なこと。訥は言少なくして意のあらわれること。仁に近いで仁とは言っていない、剛毅木訥は次の子路とあわせて読むべき、と上田さん。仁に近いは仁ではない。孔子が弟子を評価するとき〜であるが仁ではない、否定的よりは肯定的であるが・・・剛毅木訥は子路というのは面白いが、木訥は仲弓、剛毅は子路、訥が仲弓、木が閔子騫、剛が子路、毅は誰かな、と鄭さん。ひょっとして、四つには順番があるのでは。四つそなわっていれば仁に近い、あるいはその一つでもあれば仁に近い、あくまで、仁とは言っていなくて近いですから・・・バラバラにして考えると、剛、毅、木までの人は、何とか見つけることはできても、訥な人とはどういう人か、これはなかなか見つからない、と川那辺さん。巧言令色に対するのが訥、と大西さん。訥の代表は仲弓、近仁ということを言っており順番つけにはむかない、と鄭さん。そうですね、仁だとは言ってませんから、すると近仁のであれば、一つでもあればいいのかと思った、と川那辺さん。樊遲はどれでしょう、と童君。樊遲は木だろう、と鄭さん。剛は表にでる、毅は内面の強さ、と沈さん。鉄でいえば硬さと粘り、と鄭さん。木は切り出したままの木、と大西さん。我々の世界では寡黙はポジティブではない、それでは伝わらないから、と奈奈さん。訥はネガティブなのかポジティブなのか、なかなか人によって定まりません。孔子の時代でも剛毅木訥な人は時代遅れの概念で、子路など剛毅だけど粗野、仲弓なども口下手と陰口をたたかれてたのでしょう、それで孔子が剛毅木訥は仁に近いと擁護をしたのかもしれません。



本日はここで稲垣君の鄭さんを送る古琴の演奏。流水は伯牙と鐘子期の知音。寄せれば返す、とどまりてはながる、湧きては咆える、はねてはふせるごとき調べ。席が低いと我が会のバイブル論語を尻に挟み恐縮の呈。梅花三弄、簫の曲を琴で演奏できるようにしたもの、春眠暁を覚えずというのがあります。冬の寒さに蕾をふくらませる梅、ぽつりと咲くと芳香をはなつ、風吹けば思い起こせよ梅の花、三弄（たわむれる）ください。これは前菜でメインディシュは王維の陽関三畳、渭城朝雨?輕塵　客舍青青柳色新 勸君更盡一杯酒 西出陽關無故人、雨が気を洗い　柳が青々とするこの日に　もうひとつもうひとつと杯を重ねる　ここを出ればもう酒を酌み交わすことはあるまいから・・・・、階上の音合わせの騒音なにするものぞ、激しくも、いとおしくも弦をすすめる稲垣君でありました。二年でここまでとはただものではありません


さて一路、明日香へ、安澤さんは二階で論語を独（読）書。高津君も直行。着いたところでママさんに手招きされ、見せられたのが大きな鯛。泰です。後藤さんが中央市場から持参され、料理長が焼いてくださったとのこと。多々感謝。豪華な鄭さん送別の宴席となりました。それぞれに肝胆相い照らし、まずはお開き、


続いて三条京阪の近くに移動、勸君更盡一杯酒。気がつけば東の方があけており、沈さんは一番電車で奥さんの待つ宅に急ぐ。鄭さんは29日関空より台北へ。西出関空無故人は昔の話、下宿は京都に置いてとのこと、盡一杯酒の日はそう遠くないかもしれません。28日もあることですから。来週の塾頭は川那辺さん、よろしく。

2008年6月28日　子路28〜30
前半は、学而第一より雍也第六まで音読。雍也第六については、大tài簡乎、好hào學、今也則亡wú（無）、使shì於齊（使者となる）、爲wèi其母（なす）、衣yì輕裘（着る）、且角jué、角は入声、古くはjuéがjiǎoに替わった、角色jué sè（脚色）に古い音が残っている。其舍shě諸（捨）、從政也與yú（歟）、費bì宰、亡之命矣夫fú、一箪食sì、非不説yuè、今女rǔ畫、澹臺滅明tán tái miè míng、t.t.m.m.韻がふまれていることに注意、以上shǎng可以語yù上shàng、樊遲問知zhì（智）、遠yuàn之、知者樂yào水仁者樂yào、五wǔ教jiào也の反切でwiàoだがwiはyとなりyàoとなる、施shì於民(動詞)、と稲垣君。
いよいよ鄭さんは台湾へ。携帯が通じない、と稲垣君。そりゃもう解約でしょう、と川那辺さん。雨模様であとは、大西さんと上田さんのカルテット。本日の塾頭は川那辺さん。

28) 子路問いて曰く、何如なるを斯れこれを士と謂ふ可きか。子の曰わく、切切、偲偲、怡怡如たる、士と謂う可し。朋友には切切、偲偲。兄弟には怡怡。
子路が先生に士を尋ねた。先生が答えるには、人に対しては懇々と親切であれ、楽しくにこやかにしていなさい。友達に思いやり、兄弟には楽しく仲良くやりなさい、と云う。子路は士とはどういうものかを聞いたのに、この答えには“はあ〜？”という気になった、と思います。子路は性格上、篤い熱情を持った行動派。もっと堅いものを期待していた。しかし、粗野なところが見え隠れするので、孔子は、敢えて、気持ちのこまやかさについて言った。逆から言えば、そういう性格をもっている人なら、子路のような篤い意識と行動力を持ちなさいと孔子は言っただろう。人間は完璧ではなく、正と負があり、経験と学習を通してバランスよくなる。孔子は指導をする立場だけれど、自分も完璧でなく、弟子との問答を通して自分自身も精神的バランスをとっていたのではと思う。これを読んで私に置き換えると、人の言葉を受け容れる器、人の要求に応じられる柔軟な器を持つ必要があるなぁと考えましたが、大西さんどうでしょう、と川那辺さん。すごいですね、そんなことまでは分らない。最後に言われた聞くことの出来る器はどこから来るのですか、と大西さん。子路は粗野なところがあり、言われたくない部分、人は、足らない部分を指摘されると反撥しがちなので、そうならない気持ちが必要。そして、ここで厳しい指摘をしつつ、孔子は子路に期待しているのだろうと思うし、だからこそ心のどこかにそういうものを持っていないといけない、ということ、と川那辺さん。それは実行するのは難しいところ、と大西さん。単なる思いやりを持って、兄弟仲良くだけでなく、裏にメッセージがある、と川那辺さん。はあーと思ったというのは僕も分る。孔子が何故こういう言い方で教えるのか、この形容詞を使うのか。如何に生きるのかは、自分の学説を整理している。100％分る言い方はしないで、弟子の性格に合わして、ピンポイントで、全貌は見せない。抽象的で、相手が深く考え、弟子がそれを聞いてまた考えるようにしている。仁や知でなく、士を問うたのは子路らしい。粗く、勇敢な子路、子路らしい勇ましい答えを期待したであろうが、孔子は反対のことを言った。剛ではなく、柔和で返したところにギャップがある。でも、どういう含蓄があるのかは分らない、と稲垣君。はあーと思ったというのはそうだと思う。子路は自分では士だと思っていたと思う。片言とか、ばっさり切るところや、琴の弾き方もそうであり、弟子が嫌ったという話があったので、もっと相手と心を通わすようにといわれ、自分には合わないなあ、いささかも納得はできなかったのではないか。若いときの話か、晩年の話かわからないが、晩年には孔子との間が衛の後継者問題以降離れており、納得はしていなかったのでは、と上田さん。孔子から、自分の期待した答えをもらうのは難しい、と稲垣君。顔回に対しては認めている、と大西さん。切磋琢磨の子貢のように、孔子も意表をつかれると、自分の思っていたところを超えるとほめる、と稲垣君。孔子から“お前は士だ”と言ってもらいたいなどと思っていたのか？それはないのでは、と大西さん。子貢だって士を問うているが、士と言ってもらえないので次、次とどれに該当するかを気にしていた、どう見られているか気にしていたのではないか、と上田さん。筏に乗って海に出るといえば付いてくるのは子路と云われて子路は喜んでいた、子路に関しては別格の思いがあった、と稲垣君。孔子にとって良い相方、年齢もそう離れていなかったでしょう？このことでも、意表をつくことが妙な愛情表現、悲壮感はなく、ポイントをはずした言い方は、子路にたいする愛情の深さがある、と川那辺さん。筏にする材料がなくて孔子がほっとするくらい、と上田さん。そんなこと書いてましたか？と大西さん。材をとるところなからん、で結果的に孔子がほっとすることにはなりますかね、鴛鴦yuān yāng双声語、叮 噹 tīng tāng畳韻、怡怡yí yí連綿というが、擬態語、擬音語で説明している。すごくやさしい感覚的な言葉で説明していることに留意すべき、にこにことかそういう表現、と稲垣君。切々とは、と大西さん。懇到也、物事に密着している、懇ろ、かゆいところに手が届く、と稲垣君。偲偲は、と大西さん。詳勉也、詳しく勉めるですか、もうひとつ・・・と稲垣君。励ますみたいなことは？と大西さん。現代中国語辞典では、切磋し励ますですね、論語があって、そこから来て、お互い磨き合うから偲偲の意味となったのかな、と稲垣君。懇ろにする、仲良くする、との間にあり、切磋し励ましあうとしているのではないか、と上田さん。士と言っておいて、その後に、朋友と兄弟に分けるのは何故か、と大西さん。人間の関係として、友達と兄弟が基本、友達とは、与えるのみでなく、持ちつ持たれつ、お互いがそうであること、兄弟に怡怡は何が何でもそうし続けなさい、無条件にし続けるものではないですか、と川那辺さん。友人と励まし合う、はどこから来ますか、と大西さん。現代語では切磋琢磨の意味がある、と稲垣君。友人と家族では関係が違う。友人の場合と兄弟の場合には人間関係に微妙な差がある、と川那辺さん。父子の情、兄弟はそれに次ぐ。友人は横のつながり、父子、兄弟は上下の関係がある、と稲垣君。怡怡とは、と大西さん。和悦也、とある。杜甫の詩に怡然敬父執　問我来何方、にこにことして父親の友を敬い、どこからいらっしゃいましたかと尋ねてくれる、の怡怡、と稲垣君。

29）子の曰わく、善人民を教うこと七年、亦た以て戎に即く可しか。
善人でも人民を教えて七年もたてば、兵役に従事させることができる。どうしてこういうことを云ったのか？一つは腐敗した世、善人すらと私は読んだのですが、上に立てる人がいるのに育っていないことを嘆く。それともうひとつ、上に立つ人間を育てる側の孔子は、もし君子が上にたてば、顔淵篇にあったごとく、子貢に、食を足し兵を足し民これを信ずこと、と言っていたが、民の生活の安定、十分な軍隊、生計の安定を図ることを言い、どれを捨てるかの場合、まず軍隊で、生活の安定を必要とし、次には、食を捨てる、それは人はいづれ死ぬものと、最後に残るは信、上の人間を信じることが出来ねば、国の安定はない、としていた。ここで言いたいことは、善人ですら教える事が出来るのに、上の立つ人間は根本において人を教える必要があるのに、君子はどうして、民から信じられ、民の安定をはかり、軍備まで至るように教えないのか。教えるは単に教えるというより、民に何を教えるか？お互いの信頼が一番大切。私の言う信というのは、仁に近いもの。善人のやっていることはそこまでは至っていない。君子には別のやり方があり、君子のあり方を考えるように言っている、と川那辺さん。善人すらとおっしゃているが、善人がと読める、稲垣君。ここで考えないといけないのは、善人と君子の違いはなにかということ。私が思うのには善人は生まれながら道徳的、知識もあり立派な人であるが、君子は集団を統率する人望、知識の上に徳性、表現力、判断力、創造力、決断力が必要。それを持っている人、善人でもひとを教えて七年、では君達はどうなんだ、次の句とつながっていると、川那辺さん。

30）子の曰わく、教えざる民を以て戰う、是れこれを棄てると謂う。教えていない者を戦場へゆかせたら、人を捨てると同じ。民に何を教えねばならないかを言っている、と川那辺さん。善人民を教えること七年また戎に即く可し、善人、郷党の善人、ちゃんとしてまっとうな人、七年教育すれば、兵隊となれる。顔淵篇のことは川那辺さんのおっしゃている通り、ここで戦争が出てくるのは、国を治めることの根本ではない戦争がでてくる。これは、誰かが戦争について問うたのを、善人が国を七年教育すれば出来ます、戦争に勝つ軍隊を育てることが重要なのではなく、川那辺さんがおっしゃっているが君子のあり方のことで、もっといえば、すべての人が仁をもってなるにはどうすればいいか、これは聖人のあり方、徳に即く可し。善人があがっているのは最低限の能力を持つ人。戦争が政治で一番大切でないことをあげて、もっと程度の低い国について言っている。食えもしない者を戦争に駆り立てるのは自ら国を滅ぼすことになる、と稲垣君。ここで教えるのは何を教えるのか、と大西さん。教えない者を用いるのは民を棄てるとある。単なる軍事教育ではない。何を教えるか？孔子にとって軍事は一番ではない。民の生活を整え、信頼関係があってはじめて事がなる。軍事訓練だけでは、忠誠心も何も生まれない。自分を高めることがなければならない。そうでなければ、戦死しても空虚なことになる。きちんとした信頼ある君子の下で、人間としてどう生きるべきか分かれば、自ずから忠誠心、自分の国を守る意識も生まれてくる。戦争で倒れても、自分が生きた証を持てる。深い結びつきと力は信頼関係から生まれる、と思いますが大西さんどうですか、と川那辺さん。いや、そのとおり、と大西さん。集註では、孝弟忠信を教える、人としてのあり方、川那辺さんの云われるように君と臣の間の忠信、民との場合は食を満たす、といった信だろうが、と上田さん。教は教化。堯や舜、周公が持っていた君子の立派な徳で、教化すること。仁というか、そういう徳目で教える。善人、ただ良いだけの人でも七年かかる。正しいやりかたで民を教化するなら、人を食べさせることが出来る。どんな国でも七年あれば、軍事は出来る。孟子だったらこう云うだろう、民に仁義を教えれば、国は無敵となる。軍事教育ではない、富国強兵を言っているものでもない。これぞまさに民を棄てる。以不教民戰是謂棄之！バシッと投げつけるような言い方。許せないという孔子の強い気持ちが伝わる、と稲垣君。

まさに子路篇に相応しい、ストレートな直のある狂で終わりました。2500年の彼方から発せられるこの音yǐ bú jiào mín zhàn shì wèi qì zhīにズキッと来るのは今日のカルテットばかりではありますまい。上から聞える優雅なブラスバンドの爆音にも負けず、二時間半の熱論。読後定例会は、男組トリオで鄭さんが居なくなった一揆で、新たなる門出を寿ぐべく、乾杯。来週、塾頭は安澤さんお願いします。

2008.06.30

岩倉紙芝居館　古典館　論語読書会 　上田　啓之
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