論語読書会　その４
メンバー 鄭墡謨（京都大学博士卒2008.07より台湾大学） 成田健太郎（京都大学　2007年9月より中国留学/帰国） 高津友明（劉鵬）（朋友書店） 沈相�ｺ（京都大学留学/星光商事（株）） 上田啓之（国際会議場/定年退職） 安澤英治（行政書士） 川那辺恵津子（主婦、韓国文化研究会より） 高井龍（立命館大学　2007年9月より中国留学/帰国） 中村典子（作曲家） 童嶺（南京大学文学部、京都大学留学/帰国） 張伯承（仏教大学留学） 角☆掛奈奈子（精神科医） 大西保（国際会議場） 稲垣裕史(京都大学） 寺澤一美（病院言語聴覚士） 稲富雄亮（立命館大学中文） 津布良春輝（京都大学聴講生） 岸本史子（立命館大学日文）	2008年7月5日 　≫　　　　　　2008年７月12日 　≫ 2008年７月19日 　≫　　　　　2008年７月26日 　≫ 2008年8月2日 　≫　　　　　　2008年8月9日 　≫ 2008年8月23日 　≫　　　　　2008年8月30日 　≫ 2008年9月6日 　≫　　　　　　2008年9月13日 　≫ 2008年9月20日 　≫　　　　　2008年9月27日 　≫ 2008年10月4日 　≫　　　　　2008年10月11日 　≫ 2008年10月18日 　≫　　　　2008年10月25日 　≫ 2008年11月1日 　≫　　　　　2008年11月8日 　≫ 2008年11月15日 　≫　　　　2008年11月22日 　≫ 2008年11月29日 　≫　　　　2008年12月６日 　≫ 2008年12月13日 　≫ 2009年1月8日 　≫　　　　　 2009年1月15日 　≫ 2009年1月24日 　≫　　　　　2009年1月29日 　≫ 2009年2月７日 　≫　　 　　　2009年2月12日 　≫ 2009年2月19日 　≫　　　　　2009年2月28日 　≫ 2009年３月７日 　≫ 　　　　　2009年３月12日 　≫
2008年７月5日　憲問　1〜2 前半は、以為第ニより雍也第六まで音読。擬態語、擬音語のことであるが、鴛鴦yuān yāng双声語、畳韻語の例はもっと適当なものとして、蜻蜒qīng tíng、怡怡yí yíは聨（連）綿語。宰我zǎi wǒ宰予の予の音だが yǔ yúの二つあるが、名前と字には関連があり、yǔは与える、yúは"われ"であり、zǎi yúであるべき。諸葛亮（名）、孔明（字）の場合、亮は"あかるい"こと、孔は"はなはだ"、明は"あかるい"で、非常に関連がある、と稲垣君。本日の塾頭は安澤さん。 1) 憲、恥を問う。子曰わく、邦道有れば穀す。邦道無きときに穀するは恥なり。 前にも似たようなものがあった、原憲が恥についておたずねした。国家が道徳にかなっておれば、俸給を受けるのはいい。国家に道徳が行われていないときに俸給をもらうのは恥である。今の世の中、食べ物の偽装、賞味期限の改竄、口止め料をもらってやっている。吉兆でも従業員は知っていた。邦のところを会社に置き換えれば、会社が不正をしているとき、給料をもらっては恥だが、給料をもらって生活をしなければならないのだから、これをどうするかの問題。内部告発というのもあるが・・・と安澤さん。三重県では賞味期限切れのものを食わされたとかありますねえー、と高津君。貝塚先生は、孔子の時代には、そういう場合国を変えることができる、他で職につくことができたとしておられるが、転職できなければ、現実問題どうするか？鰻でもひどすぎる、と安澤さん。中国産の鰻が三河産となっていたり、スーパーにゆけば、真っ赤な字で中国産と敢えて書いて売っていた。苦肉の選択というのでしょうか、何もかも正しいことを言えばよいかとなると、そうともかぎらない、見ていたが買う人がなかった、と川那辺さん。嘘をついて口止め料を払っているのとは・・・、と安澤さん。嘘はついていない、道には正直だが、中国産と潔白だけれど、消費者は誰も買っていない。表示は難しい。鰻に限らず、こういうことは一杯ある、と川那辺さん。近江牛というが、滋賀県で子牛などみたことがない、どこかで育てて持って来るのが一般的、実際何で決めるかが、と安澤さん。生まれた所より、育った時と肉の質によるのでは、と高津君。今の世に照らし合わすのもいいですが、本題に戻って、ここは、原憲がどんな人であったかを知ってから、解釈すると深く読み取れるんですね。私は、原憲のことはよく分らないのですが、上田さんが、まとめておられる資料の中に、「邦に道あろうが無かろうが、禄を得ることしか考えていない、それは恥かしいことだなあ、と士官して禄を得ようともしない原憲に、それはそうだがと半ば同意しつつも、少しは録のことも考えろ。」と孔子がおっしゃっていると書いておられるので、上田さん、少し原憲について説明していただけませんか、と川那辺さん。原憲は恥について尋ねている。荘子に子貢が草深い庵に住む原憲を訪ねる話がある。落ちぶれた原憲の格好を恥ずかしく思う子貢に、原憲は私は貧（ヒン）であるが病（ビン）ではない、病とは道を学んで実践しないこと、と言い、子貢が恥じ入ったという。原憲は邦に道が無いときに穀すことはありえない人、道があっても穀すことをしない、ちょっと行過ぎたところがあり、顔回が貧困で死んだこともあり、孔子はそういう心配をしていたのではないかと思った、と上田さん。雍也篇3）に、原憲が宰となったとき、これに粟九百を與えたが、断わり、孔子は、もらっておけ、近所の人に分けて与えたらよいとした話がある。ストイックな原憲を憂慮して、受け取れとしたのかもしれない。邦に道無ければでは、伯夷、叔斉が武王の覇業を、王道でないことを恥として首陽山にこもって餓死したという例もある。憲問篇は道徳、政治で無く道徳のことに注目している。それを政治、経済でもって答えてゆく。その温度差、違った角度、何か屈折した思いがある、と稲垣君。そういうジレンマに陥ったこと、川那辺さん！ありませんか、と安澤さん。そんな、ジレンマとか・・というか、最初この漢文だけを見て考えると、分かりやすい言葉だなと思ったのですが、上田さんの書かれたものを読んで、これは深い意味があるなぁと思って。原憲には、独特のストイックさがあると思いますが、顔回とどう違うのか。孔子にとって顔回の死がこたえており、原憲にもそういうことを言ったのかな、と川那辺さん。原憲は荘子の中では隠者みたいな生活ですが、孔子は隠者の生活ではなく人の世の政治の中でのこと、と上田さん。原憲をどうして政治の場に引っ張り出すかだ、と安澤さん。穀することをしなくて政治をしている期間、モラトリアムの期間というのはあるのですか？考えている時期。顔回は亡くなってしまったが、（原憲には）いざというときには出てきて欲しい。孔子の道徳的なところを勉強している人は、おいそれと出てゆけなくなる。どうしろと言っているより、もし俸禄をもらって出てゆき社会的パワーを持つようになれば、恥のところはそんなに重要ではなく、邦に道のところに重要性がある。打って出て欲しいのに出てくれないのが原憲、と中村（典）さん。邦に道がある云々は論語の中にいくつかある、孔子の時代、弟子、士大夫の中には、だいたい二つの種類があった。一つは自分の人生のために働く、二つ目は孔子のように道徳第一と考えた人。あの時代は、政治や社会が変わり、古典的世界は破れ、新しい士大夫レベルの力が強くなり、70〜80％以上の士人は戦国時代の縦横家、俸禄のために働く人、孔子のような人ではなく、孔子は道徳を持ってから俸禄のために働く。実際孔子のような人はあまり多くない。孔子の弟子の一部も俸禄のために働く、孔子はそれを嫌った、と童君。これは孔子の"ぐち"ですか、と高津君。童君は二つのパターンとしましたが、仕官をしないというのをいれれば三つのパターンになります。中国では仕官と隠逸が対立する概念、前近代詩人を通じての問題。普通に読めば、道があれば仕官、文脈に中では、このやり取りが行われた場を考えれば、上田さんの話は面白い。全く同じでなく、シチュエーションが異なり、何箇所かに分けて置かれた意味がある。ことばが生成された場を考えると深く読める、と稲垣君。ここで急遽、携帯をかけるために教室を出入りしていた安澤さん、鞄を抱えて急用と退去、塾頭蒸発となりました。中村（典）さん、ではと塾頭役に。 2）克、伐、怨、欲、行はずんば、仁を為すといふ可きか。子の曰はく、以て可とすは難し。仁則ち吾知らざるなり。 原憲が言った、勝ち気や自慢や怨みや欲望がおさえられれば、仁といえますね。むつかしことといえるが、仁はすなわち、私には分らない。私には、克、伐、怨、欲がよくわからないが、違うシチュエーションですが、チベットのダライ・ラマの所に関西の人が会いに行き、仏教のことを尋ねておられた。とても会いたくて、チベットに行かれ会われた。仏教って何ですか？といきなり、原点、30代の女性だが、英語もそのためにものにして、原点を質問されたときのダライラマの返事が、私も一生懸命やっているが、いまひとつ、良く分らない。というのを思い出した。よくやっている人は、よく分らないという。孔子は仁の大家、体現するのは弟子。概念をやっている人は、私は本当はよくわからないは、非常に納得した。それに近い。それが仁でしょうかと言われると、分らないは、オネスティーで感動する、と中村（典）さん。これはそういうニュアンスではなく、克、伐、怨、欲の行われざるは、原憲その人自身のこと、それこそは仁ではないかと聞きたかった。孔子にしてみれば、そうかもしれないが、それは実行するのが難しいでしょ、これが仁がどうかはわかりませんね。とわざとぼかした答えとした、と川那辺さん。克は例えば、二人の間、ゲームをするとき、必ず彼に克つという気持ち、伐は、そのような人は自分のいいポイントを誇ること、自分のいい点を言う人は伐となる。克、伐のこの使い方は現代中国人の80〜90％は分らないでしょう、と童君。克が勝ち気というのはちょっとずれる。春秋左伝では、○国克×国で、○国が×国に打ち克つ、倒すことを意味する。伐は征伐など戈があり戦うことであるが、朱熹は、自矜、心の中のことで自らをほこることとしている。怨は他人を怨む、欲は自分の欲、二つとも自分の内面。先の二つは、他人より上にゆくこと、後の二つは、内面にくすぶること、可以は虚字、助字。可は可能ではなく、許可を表す。〜してもよい。日本語で以ってすべしと訓じると〜すべきみたいなものとなるので注意が必要、可以為仁矣となっており、質問形ではない、彼のポリシーとして仁と言えると思っていた、質問形なら、可以為仁夫、と稲垣君。原憲は克、伐、怨、欲を自分は実践していると思っており、だったら仁を為していることになりますねと内心自信があった。孔子はそれができれば仁を為すと可以、そういえるが実際行うとなると難しい。仁則吾不知也とは原憲、お前はそれができていない、前段とおなじく気負いがあると言ったことになるのでは、と上田さん。むつかしいと思う、仁は私、誰にとってにもの私、私はそれを知れないくらいの概念、二人居ないと出来ないこと、一人では分からないこと、と中村（典）さん。原憲は自分は出来ていると思っているが、そうではない、と稲垣君。そうだと思います。原憲はそう思っていた。しかし、孔子からみれば気負いがあり、原憲の前で老人が安らぎ、友人が信じ、子供がなつく雰囲気はない、仁を為すにはなっていない、と上田さん。孔子から言わせると、「原憲、貴方を見ていると分からなくなる」というのもある。私の仁の概念が分からなくなるとぼかした感じ、と川那辺さん。知らざるというのは、分かっているつもりだろうが、わかっていない、という言い方になっている、と稲垣君。稲垣さんが雍也篇3）で、子思（原憲）がいらないといったとき、孔子が与えた。仁は山とか静とかいいますがそれがヒント。原憲は自分自身を高めている、自分の周囲で困っている人に施すことが出来る仁者は山。前にも言ったと思いますが、山があることにより、色々なものが生まれる。色々なものを生かすことも出来る。仁者は生かすことが出来るイメージ。知者は、水、流れてゆくが、下にゆくと汚れてゆく。自分を高め、なおかつ、文質淋淋、人に施してゆく、与えてゆくことが大事。孔子はよく、仁者かどうか分からないと言う。その人自身のイメージはあり、それなりの評価はしているが、本人が仁かどうかは分からないと言う。自分自身を高めるだけではいけない、そのことを一貫して孔子は言っている、と高津君。「おおっ、高津君！」とどよめきが走りました。そう考えると、原憲の言う克、伐、怨、欲は、自分を高めるよりは、自己満足レベルのことになる。負のことについて言っている。悪いものを排除する、否定、悪いことをしなければ仁、これにはうなずかない。仁は包容力がなくてはいけない、大変で云えないことを、それでは仁でないし、そういうことも出来ていない、と稲垣君。原憲の場合、確かに金に対する欲はないが、我が強い、それは結局、欲なんですね。余裕がない、顔回ならそういう言い方はしない、と川那辺さん。顔回は貧を楽しんでいるところが違う。本人は至ってそう思っていないところが原憲とは異なる、と高津君。原憲はいっぱいいっぱいと感じ、と川那辺さん。来週、塾頭は高津君です。 稲垣君、来週の論文発表準備で家路に急ぎ、高津さん、自宅の愛妻のもと。童さん、ＰＣの向こうの愛妻の下へ。安澤さん、途中蒸発。川那辺さん最近余裕なく、家路に急ぐ。上田さんと中村さん、夕立の上がった蒸し暑いアスファルトの上をとぼとぼと・・・・・と思いきや、一揆で中村（典）さんの鑑真和上の音楽、中国語が音符となって駆け巡る体験を、ビール片手に拝聴の上田さんでした。鄭さん、無事に台湾へ到着。いい環境で暮らしていると上田さんに電話あり。 2008年７月12日　憲問　3〜5 前半は、以為第ニより雍也第六まで音読。本日は音読の師匠なし、なんとか声を出して辿りつきました。本日の塾頭の高津君みえず。では川那辺さん、よろしく。 3) 子の曰わく、士にして居を懷う、以て士と為すに足らず。 居は安楽、安楽を思えば、士というものではない。前にも士についてあった、ここでは士は安らぎとか、定住とかを求めてはダメではないが、自分も決して安楽を求めて定住したのではなく、諸国を放浪をしていた。それを考えて、士はかくあるべきと言ったと思いますが、大西さんどう思われます、と川那辺さん。いや、そのとおりでしょう、と大西さん。佳永さんどうですか、と川那辺さん。やることをやって結果としてあるのはいいが、それだけではダメで、それを目的としてはいけない、と中村（佳）さん。士というのは、自分で士と思うのですか、役職ですか？役人?政治家?議員？と中村(典)さん。士大夫という言葉があったが、卿、大夫、士とありそこには上中下の区別があり、農夫にも上中下があった、役職でもあった、と上田さん。わざわざこういうことを孔子が云うということは、そういう人が多かった、ファミリー的な人が普通だったということですか、と中村（典）さん。ここでは、士が求めるものはファミリー的な安住ではなく、心のハードル、このあたりでいいかの線引き、寝る場、おいしい食事、いい着物でもなく、安楽な線でおさえるのではなく、そのハードルを下げて容易く生きるような、適当な線でやるような政治ではないというハードルの設定・・・ファミリー的でなく、心と志の問題。孔子の生涯がそういうものでしょ、と川那辺さん。そこに登場してきたのが高津君、遅れましてすみません。前回童君が言っていたように、当時は古典的な世界が崩れ、士大夫政治が行われ、魯でも魯公でなく三桓氏が士を使って政治をする、陽虎のような家臣が政権を握り孔子に参加を呼びかけるということすらあった。童君が縦横家と言っていたように、ほとんどの士は俸禄を求めて参加しており、孔子の言うような士は少なかった。そういう意味で、わざわざ言っていることになる、と上田さん。八佾篇で孔子は、冉有に季氏は泰山で祭りをする身分ではないと止めるように言っていたが、季氏の下で働く冉有が止めることはできないと言った。それが「居を懷う」になる。自分の働く口を考えて、やってはいけないことを止めないのは士として如何か、という話ではないか、と高津君。子路20に「斯れ之を士と謂ふ可き」とあった。自分が満足しないこと、自分に安住しないこと、と大西さん。士というのは究極の選択をする人、今で言えば、火中に入り人を救助する消防士、これは非常によく分る形、役人とか政治家はもっとがんばらねば、議員さんもがんばってほしい、と中村（典）さん。士は為すことあるの志を持つもの、居を懷う、郷党、家庭など自分の安逸を求める、ではなくて厳しいものと言っている、と大西さん。消防士は地震に際しては、自分の家庭はおいて職場に集まり、仕事を先にする、究極の選択をする、と中村(典)さん。そうじゃなく、作曲でいえば、何処でも誰にでも受ける曲、適当に作っておいて、それをこれくらいの報酬で続けてくださいということでする音楽家、それを続ければお金はもらえる。中村先生の場合は、決して安楽、安逸を感じることなくやっておられ、本当の耳を持つ人に訴えておられるでしょ。未来の姿、自分の目指すもの・・・それが如何に高いかが問題で究極の選択というものでないのでは、と川那辺さん。何処でも誰にでも受ける曲というのは難しい、私は士は、究極の選択に関係するように思う、と中村（典）さん。究極の選択には限らない。学校の教師、同じ講義を続けるのではなく、今の時代に合わせて変えてまとめてゆくのが、教育における士。自分の中で常に良くしてゆく、向上してゆくことを言う、と中村（佳）さん。ベートーベンに通じること、究極の選択ではなく、自分の姿を追求する。周りにあわせることなく、常に自分のもの、当時もすごい音楽家は一杯いたが、守りに入らず、ベートーベンは自分を追及した。それが士、究極の選択とまでいう必要はなく、自分の志を尽くすこと、と高津君。孔子は食べ物にもうるさく、住む家とてそれなりのものであったはずで、それ自体を悪いとはしていない、それにこだわるなら、不足以為士、といっている、と上田さん。士は選択判断するとき、幅を持って臨機応変に動く、と川那辺さん。さて、ここからは塾頭は高津君。 4) 子の曰わく、邦に道有れば言を危（たか）くし行を危くす、邦に道無くば、行を危くし言孫（したが）う。 邦に道が有れば言葉を厳しくし、行を厳しくする。邦に道が無くば、行を厳しくし、言葉をやわらげる。言葉に気をつけなくてはいけない。上田さん危とはどういうことをいいますか、と高津君。危wēiは、同音で巍（高大なるさま）、威（人をおさえて服せしめる力）がある。孫sūnでなくxùn遜（差し控える）と読ませている。危冠は帝が正しく冠をつけること、危坐とは端坐することで、天子の威厳をあらわしている。邦に道有ればとは堯とか舜とか周の文王とかが危言危行しているようなもので、家臣も危言危行でよい。そうでない場合、周公が成王の摂政をしていたとき、成王は周囲から周公が政権を奪おうとしていると讒言され、どうにもならなくなったことがある。成王を支え続け（危行）るも言葉は控えて耐えておられた。武王が病のとき周公は自分が身代わりとなってでも平癒を祈願した文を金籐にいれておいたのが明らかになると、成王の疑念も晴れて、周公を用いたという故事がある、それを孔子は念頭に置いていたと思う、だからこのような用語となったのではないかな、普通だったらこんな言い方はしないのではないか、と上田さん。邦に道が無ければ、行をきちんとして言葉を慎みとある、言葉を慎むというところに重点があると思う。例えば大阪府の橋下知事ですが、大阪に道がない、ああいう人が出て、行いは正しいと思うが、ひっかかるのは口、ある程度口を慎まないと、口で失政してしまう。孔子はそういうことには、神経質におこなっていたのではないでしょうか、と川那辺さん。公冶長篇5に仲弓は言葉が下手であるとあった。（危行言孫とは）実社会では反抗することがむつかしいでしょ、そんな人続かないし、消えてしまうでしょ。上が許さないから、と大西さん。抹殺されずに継続し続ける人は周りの人にとっては脅威的な人、孔子はそれくらいのことがないといけないと言っている。見せ続ければ、何かが変わる。それに耐えるのが人の苦悩、と川那辺さん。孔子は自分の言っていることが実現できない、仕官も無理であると思ったのが、荒野で囲まれた時であったと思う。万事窮しているのに、小人は乱れるが君子は乱れないと孔子は琴を弾いて詩を歌い、弟子に不満がたまり、次々に孔子が意見を聴くということがあった。それ以降、教育や歴史や易を学ぶという方向に変わっていった。自分の言うことが受け容れられない現実にあって、孔子はあるべき姿については変えることはなかった。実現されてはいないし、現実的には無理といわれても、変えようとはしなかった、と上田さん。冉有は止めることが出来なかった。それが現実だが、結局魯が滅びる原因となった。システムがきちんと出来ていないと崩れる。それをきちんとするのが士大夫であるべき。孔子先生自体は色々出来たのではないかなあ・・・邦に道がないときに行を危（たか）くするのは、周囲の流れに流されないこと、と高津君。 5) 子の曰わく、有�ｺ者必ず言有り、有言者必ずしも�ｺ有らず。仁者必ず勇有り、勇者必ずしも仁有らず。 徳のある人はふさわしいよい言葉を持っている。よい言葉を持っている人必ずしも徳があるとは限らない。仁者は、勇気を持っている。勇者は必ずしも仁があるとは限らない。巧言令色鮮矣仁、徳のある人は、言う人は必ずそれなりに乗り越えた、自分なりの哲学を持っており、その人が言うのは、人に合すのではなくて、他の人に自分の考えを言い、影響を与える。人に合わせて喜ばしてみても、その人が徳を備えているのではない、利がある。仁者のイメージによるが、仁者が自分自身を捨てて他人を救う、そういうことが出来るなら、勇気のある行動。ただ潔い猪突猛進、暴虎馮河のイメージの人は潔いが仁を備えていない、仁者はむつかしい。自分の命と引き換えに何かを・・・伯夷、叔斉は、世に出ず餓死したが、仁を求めて仁を得たのは、自分たちを犠牲にして、政治がうまくゆくのを求めた・・・仁者はなんとなく・・・むつかしいなあ、説明しようとすればするほど・・・うまくまとまらない、と高津君。巧言令色鮮矣仁、巧言令色鮮矣徳、徳ある人は言、仁ある人は勇あり、童君前に言ったように、一つ一つだけに対応しているのではなく、色々同時に兼ねているように思う、と川那辺さん。互文という、と高津君。一つだけ持っているのではなく、徳もあれば善もある。言葉通りで分かり易い文章と思いますが、大西さんどうですか？と川那辺さん。書いてあることしか分からない、と大西さん。これは次の文章でそれにあたる人を説明することになっている。言というのは堯とか舜の言葉、その言葉には堯舜の徳があらわれている、言とは心に思うことを言葉にしたもの。次に禹が出てくるが、洪水対策に全土をかけめぐって民を困難から救った王、民の艱難を身をもって救う勇というものが想定されている、高津君のいう自らを犠牲にして他人を救うというところがある、仁者の勇をそういう風にみている、と上田さん。自分の立場をどういう風に律するか、民のことを考えて、今一番困っていることを解決することにより、皆が認めて王になる。孔子が言っていることは、今の人達は季氏が泰山で祭りをして自分の権利を主張しているのに認めている、それに孔子が不満を持っている。そういうふうに厳しく云うが、立場をわきまえてきちんと行うことが大事と一貫して言っている。民に支えられている。後の時代に荀子がおり、最初は唐の李世民の言葉と思っていたのだけれど、水能載船亦能覆船、荀子の言葉、水は大衆、船は国を治める人、支配者、そういう考えで民を治めないとダメ、と高津君。洞爺湖サミットだが、世界の人々が一番困っている問題を解決しようとしていない、と上田さん。どういうこと、と大西さん。原油の高騰は新興国の需要増と米国は投機資金の規制に触れさせなかったし、食料の高騰におけるバイオ燃料問題にも触れさせなかった、泰山で祭りをする季氏を止められなかった冉有みたいなサミット、と上田さん。冉有って誰のこと、と高津君。福田さんだろう、と上田さん。と脱線を始めました。だけど、そうなるには、各国との事務レベルでの交渉の積み上げでそうしかならなかったわけで、首脳がそこで勝手なことを言える訳がない、非現実的なことを言っても仕方が無い。民が一番困っている問題。欧米は民主主義というがどうなんだろう、中国では周の時代から民の安寧をはかるが原則。そうです、まさに、李世民の水能載船亦能覆船です。だけどそれは革命でしょう？そうです、中国は革命です。孔子ならどう言うだろう？非現実的、そんなこと言っても無理ですと言われても、かくあるべしと言っていたのではないか。一番の問題を政治家が面と向かって取り上げないサミット。サミットはもともと石油ショックを如何に解決するかで始まったのではないか？近年これほどはっきり世界の人々が共通して困った問題というのは珍しい、暴動すら起こっている。しかし、アメリカに遠慮して、世界の首脳がそれを回避してサミットを行った、何のためのサミットなのか。憤懣が鬱積する。後世の物笑いの種ではないか？・・・ さて、来週の塾頭は？童君がやってくれます、と高津君。7月25、26日に国際会館の乾杯の夕べで花火が上がります。26日の土曜日は午後3時から読書会を初め6時前に移動して宝ヶ池で花火を見ましょう。昨年もそうですが、船着場で見ます。8時前に打ち上げとなりますから、おつまみとビールを調達する時間はあります。そういう予定ですので、よろしく。残念ながら当日、川那辺さんはコンサートで欠席。さて、本日一揆は大西、上田コンビとなりました。 2008年７月19日　憲問　6 前半は、以為第ニより雍也第六まで音読。おさらい、以為篇、錯cù諸枉、cuòではない、措cùからくる。大車jū、chēではない。八佾篇、相xiàng維辟bì公、相は助ける義、宰相、辟はpìの場合に注意。不與yǔ祭、あづかるの義。去gù告gù朔sù之餼羊、去qǔはとりはずすの義、魯大tài師、大は太tàiのこと。請見xiàn、者見xiàn、得見jiànとなる。從zòng者で、置くの意味あらくる、從うcóngではない。於喪sàng乎、喪sàngは失う義、喪sāng式とは異なる。比bìは人間が前後に並んでいること。比較の比はbǐ。里仁篇、造cào次の造は至る、改造の造はzào。無適dí也無莫也義之與比bì、適は嫡dí男、からきて、一番主になること。主とすることも、嫌がることもない、義のみ親しむ。林放fàng。曾子曰唯wěi、返事の場合、唯一の場合はwéi、唯はきちんとした返事、普通は諾nǔo,唯々諾々の諾。大西さんが質問された一箪食sì一瓢飮の件、食shíは食べる、吃飯のこと、食sìは食べさせる、給○○吃飯、それからご飯のこと、箪は入れ物で箪に入ったご飯を食sìとする。童君が箪と瓢の図をみせてくれる。一箪食一瓢飮は顔淵の代名詞、一箪食一瓢酒は陶淵明のこと、と稲垣君。本日の塾頭は童君。 6) 南宮适、孔子に問いて曰く、羿射を善くし、奡舟を盪かす。俱に其の死然るを得ず。禹と稷、躬ら稼して天下を有つ。夫子、答えず。南宮适、出ず。子の曰はく、君子なるかな若き人。�ｺを尚ぶかな若き人。 南宮适は南容、以前にでてきた人（公冶長篇2）。孔子は南容が好きであった。羿は夏時における諸侯、君。弓の名手、日本で言う弓道、とても弓が上手い人物。夏の天子の相を殺して、その位を奪った。しかし、すぐに羿の大臣の寒浞（かんさく）に殺される。寒浞も弓が上手かった、このころは皆、弓が上手かった。奡は、今は使わない漢字、陸上で船を動かすほどの力の持ち主。暴力的人物。羿と奡は暴力的人物、禹は道徳的諸侯、弓は出来ない。船を押す力もない。天下の庶民を理解するやさしさを自らに課して天下を有（たも）った。孔子からみれば代表的な儒家。そういうことを南宮适がいうから、孔子は何もいわない。南宮适が外に出てから、ほめたのだが何故か。中華の人は、人の前で、貴方はいい人というようなことを言わない。儒家は、いない時に、いいポイントを言う。不言人之蔵否、悪い人の場合には、その人の前でいう、と童君。死然は死―然となっており、熟語として読むべき。蔵否、善悪を人前で言わない、人物批評を人の前でいわないというのは後漢以降の士大夫徳目となった、と稲垣君。両人とも非業の死を遂げたとあるが、どこからそうなるのか？死然とはどういうことか、と安澤さん。死に場所を得なかった、吉川幸次郎先生は、倶不得其死然、ともにその死を得ざるがごとく然り、きちっとした死を得られなかったとされた、と稲垣君。畳の上で死ねなかった、と安澤さん。然は焉と同じといっている、と大西さん。人は皆死ぬが、ある人は殺される。老衰して死ぬのは自然。暴力的将軍、羿と奡は人を殺し、自分も殺された、死、然るを得ず、と童君。ここは羿、奡、禹、稷の人物像が分からないとどうしようもないし、前二人は勇はあるが仁がない人の例、後二人は勇あって仁ある人の例え。前の話とつながっている。羿は10個の太陽が出て人々が旱魃に苦しんでいるときに、太陽を九つ射落として救った人物、他にも人を食う怪物などを退治し、仁者の素質はあったのだが、奥さんとの関係でおかしくなって、家来の寒浞に奥さんを寝取られ、殺される、その寒浞と夫人の間の子が奡、結局勇はあるが暴力的な人間と化しまともな死に方をしなかった。禹は水が山を越え天にこぼれだす大洪水の後、全国を駆け巡って排水に従事して国土を回復した人、そういう人物に例えて南宮适が徳と言、勇と仁を説明したことを孔子が高く評価した、と上田さん。これは質問じゃなくて、〜ですねと言っている。羿、奡と禹、稷がそういう人物と分かっているとすれば、言うまでも無く、分かりきったことで、孔子がそこまでほめることではないのでは、と川那辺さん。当時は童君が言っていたように、士大夫政治が行われ、下克上のような風潮にあった。そこで、南宮适が当時では忘れられたような古代の人物を引き合いに出して述べたことを評価してのこと、孔子が周公の政治を持ち出して非現実的と敬遠されたようなもの、だがそこを孔子は評価したのでは、と上田さん。これは自信をもって言っている、質問のようだが、そうでなく自信をもった言い方、と童君。憲問篇2)で原憲が、克伐怨欲不行焉可以為仁矣と言ったのも同じような感じで言ったもの、そのときは突き放された答えであったが、ここでは、孔子は何も言わず、南宮适が出て行ってから言った、と稲垣君。〜矣はどういう感じですか、と川那辺さん。〜ですね、羿は二つのシステムで評価がある、儒家のシステムでは暴力の人、庶民の神話のシステムでは英雄。太陽が10個出て九個を落とすのですが、最後の太陽は助けてくれと云うことで残した。太陽には烏が居る、これがその図と二枚の図を回覧する童君。 三本足の八咫烏（やたがらす）だろう、と安澤さん。全部の太陽がなくなると困るから、堯が羿の弓矢を一本抜いて九本にしておいたという話もある。東の果てに湯谷というのがあって、朝に太陽が湯浴みをしてから上ってくる。太陽が動くのは太陽が烏を載せているからという人もあれば、車で引っ張っているという人もある、と上田さん、羲和、羲（ぎ）と和（か）という御者のこと、義和団の義和じゃない、二人の人間と、稲垣君。奈奈さんどうですか、と童君。人が居なくなってから評価するというのは中国では今でもそうですか、何故そうなんですか？人前で良いといえばいいのではないですか、と奈奈さん。現代世界では世界中どこでもほめる、99%そうでしょうが、孔子の時代は人前でほめることはよくないとされた、別のひとの前で言う、と童君。言と行をつつしむ、人前で悪くいうのもよく言うのもよくない、他人をほめると、あいつはあっちについているといらぬ憶測もされる、と稲垣君。それは、づるいやりかた。あいまいで居ることがいい、保身の結果そうなる、と奈奈さん。臣下の方は悪いことは悪いというべきとされるが、君主の側がほめたり、けなしたりするのは、えこひいきとかうとんじるとか余計な問題を引き起こすとかでは、と上田さん。誤解を招くからというが、結局はあいまいにしておく、保身でしょ、と奈奈さん。君主はあほでもいい。家臣がしっかりしていて、下が君主をいい方向に動かすことが大事。トップはあほ、何もせずに、部下が盛り立てるもある。ここでは神話が導入され、仁と勇のたとえ話となっているが、何故神話的例えを出すのか？昔話には裏がある。外交で詩が用いられるときでもそうだ。例えば、金がないから援助が欲しいとはいわず、それを示唆する詩を引用する。できなければ、そういう詩を読んで対応する。それでもなんとかしてくださいというなら、そういう詩でせまる。それに応えるには、友誼を示す詩でもってする。そういう婉曲な外交が成り立つ。衞の靈公が亡くなった時その子、蒯聵を王にするか孫の輒を王にするか、孔子がどっちを推すのか？冉有は子貢に先生の意向を聞いてもらった（述而篇14)。子貢は伯夷、叔斉の話を持ち出して、怨があるかどうか聞き、無いという返事を聞いて、それが、このお家騒動についての孔子の答へとなっていた。ここの神話がどういう意味となるのか、と稲垣。洪水は禹の前からの問題で、禹の父である鯀（こん）が土壌を産みだす息壌を天帝から盗んで用い、あと一歩のところで天帝にみつかり罰せられ死ぬことになる。鯀は悪党のごとくされるが、民が困っているのを救うため、見つかれば死ぬことを分かっていながらこの挙に出たもので、ギリシア神話における人間に火をもたらして罪を得たプロメテウスみたいなことになるのだが・・・殺されて三年たって、その腹から生まれるのが禹。河から龍が河図を背負って現れ、これは排水図の役割を果たすのだが、それで水を引かすことができたとされる（書経―堯）と上田さん。最後に一言、顔淵のことですが、孔子が顔淵をほめるときは、必ず別の人の前でほめていた。それから中国の神話では人間が神を殺すことがあるが、羿が太陽神を射殺しているのだが、日本の神話ではそういうことはありますか？と童君。これまた、脱線。ギリシア神話じゃ英雄が神を殺していないか？イーリアスじゃどうか？英雄のうしろには守護神がついているから、人間対神じゃなく、神対神みたいなところがある。羿は太陽神を殺したことになるの？中国の神話は、火を使うことから、煮炊き料理をすることを教えた先人、家に住むことを教えたとか、薬になる草を教えたとか、人間らしい生活をいかにしてできるようしたか、つまり禮の根源的なところから説き起こすところがある。それからすると、日本の神話は出来上がったところから、神さんの服装、装身具からしても整っているから、随分新しい時代に出来上がったものをいただいているのでは？日本では死んだ人が神になるでしょう。日本は万世一系、天皇家だから、革命の中国とは違いますよね？そういう意味では決定的なのは殷王朝を武王が討ったことかな。文王には出来なかったこと。だから伯夷と叔斉が武王を止めようとした。それが起こったのが中国、起こらなかったのが日本。日本でそこまでけたたましい人間は織田信長であったかもしれませんが部下に殺されてしまいました。 さて、来週は午後3時から読書会、6時から宝ヶ池へ繰り出して花火観賞です。童君、3時は西陣小学校ですから間違いなく。来週の塾頭も童君お願いします。一揆では安澤さんのお知り合いの法学者のグループが先客、奈奈さん安澤さんはこの件で、、稲垣君中村(典)さんは古琴で盛り上がっておりました。 2008年７月26日　憲問　７〜８ 稲垣君古琴のＣＤと楽譜を持参して、中村（典）に。楽譜は珍しいもので、中村さん感激。こりゃ、中国に行かなくちゃ。中村さんから「川のほとりのこもりうた」の楽譜とＣＤをいただきました。ボロディン風で万能細胞、演歌でもなんでもアレンジＯＫとのこと。前半は、学而第一より雍也第六まで音読。おさらい、公冶長篇、妻はqì。宰予の予はyú。大夫はdà fū 現代中国語でdài fū といえば医者。三思の三はsàn 。足恭の足はzhù、将ショウと樹ジュの半切り、シュ。と稲垣君。本日の塾頭も童君。 7) 子の曰わく、君子にして仁ならざる者有るか。夫れ未だ小人にして仁なる者有らざるや。と童君。不―仁となっているのは続けて読む、不仁者有るか、と稲垣君。これは、仁のむつかしいことを述べたもの。小人にして仁なる者有らずとは、仁は決して偶然に得ることは出来ない。孔子の思想からすれば、仁は必ず自分自身で追い求めるもの。求めずして得られることはない。君子〜小人〜はよく並べてみえる。小人は、あるときいい事をやったから仁とはいえない、仁は人の一生をかけて追い求めるもので、一回のうちによいことがあっても、仁とはいわない。管仲は天下のために夷狄を討ち中原を守った偉い大臣。八佾篇では、「管仲の器小なるかな」、「管氏、また、樹して門を塞ぐ」、「管氏、また、反坫有り」、と管仲は90%君子なのですが、不仁なところがある。皆さんどうですか、と童君。仁は、今いいことをした、悪いことをしたなどと、一時的なものではなく、恒にあるもの、一生あるもの。管仲は分不相応なことをして、仁者らしくないところがあり、君子にして不仁ということを童君は言っているが、管仲は君子ですか、と稲垣君。管仲がいなければ、我々は夷狄の服装をさせられていたと孔子が言っているように、中華を守った人物、とても君子的な人物です、と童君。ぼくの感じでは、管仲は君子とはいえなのではないか。ここの文で言っていることは明白だが、君子は仁者になりやすい、小人であって仁者であることは聞いたことがない、この二つをどう関連させるのかとなると、と稲垣君。逆に、仁者は君子といえるのですか、と中村（佳）さん。仁は恒常的なもの。以前君子と小人について話していたときに、君子はあるときにはそうでないこともある、という見方をしていた。君子は完璧なものでないが、仁者は絶対仁者、と稲垣君。君子と小人は相変わるが、仁は儒家の最高で理想的なもの、孔穎達（くようたつ）は管仲を政治家として君子とみており、君子にして不仁者とは彼のこととみている。不特定のように書かれているが、80〜90%は特定の人物を指している、ただ現代の我々には誰か分らないが・・・、と童君。孔穎達は唐初の博士。論語があり、それに注をつけるのだが、代表的な注は後漢の鄭玄（じょうげん）、注を補完するものが何晏（かあん）の集解（しっかい）、皇侃（おうがん）の義疏（ぎそ）、唐初には諸本が乱れていたのを孔穎達にまとめさせて出来たのが論語正義。紙に印刷された本が出来るのは宋代のこと、それまでは、図書館で石徑（石に刻んだもの）から写し取るようにされていた。朱子は論語と注と疏を一括して一冊の本に要約したため、爆発的に売れた。そうすると他の本は読まれなくなり、消えてゆく。皇侃の義疏は日本で残されているのが清朝になって逆輸入されることになった。その孔穎達がここの人物は管仲としたということだが、具体的な言及はあるの、と稲垣君。前の続きからすれば、君子とは南容とみるべきではないか。後に孔子は管仲を仁者とみており、ここのモデルとするにはどうもしっくりしない、と上田さん。次に愛之とありますが、之とは小人のことと思います、この三つはセットで読むべきです。小人は身分が低いということで、女性も入る。自分でない方のことを言っており、そういう人を愛することとつながっていく。身分がよく徳を得た人は愛して労する、次は小人で対になっているのでは、と中村（典）さん。君子は道徳レベル、士は社会身分。一握りの貴族を除けば、あとは民というのが大雑把な社会構造、と稲垣君。貝塚先生は、小人は被支配階級の身分の劣った人と書いておられる、と安澤さん。小人は器の小さい人、一般人のこと。身分ではない。身分が低いなら鄙でしょう、卑は心のこと、と稲垣君。この時代は童君が言っていたように、士大夫の政治が行われ、士というクラスが政治に参加するようになってきている。普通政治にかかわるのは、姓のある人々（百姓）で祖先がしっかりしていて廟を有する貴族であるが、孔子教団もそうだが、士のクラスの優秀な人材が大夫にとりたてられて、政治に参加してゆく。それらの中での君子、小人であり、周王朝では、小人とは、その父母が農事の勤労をすれど、その艱難を知らず、気ままでぶしつけで、わがままにも父母を侮り、「昔の人に教えてもらうことはない。」というがごときである。王たるものは、あくまでも慎み深く天命を鑑み民の生活の安寧を計ることにより、天より国を享（う）くることができるものである、と君子の心得を教えた。姓のない民、黎民のなかで君子、小人はない、対象外じゃないか、と上田さん。貝塚先生が被支配階級という言葉を使っておられるが、これを書かれたのが昭和の40年代・・・あの時代を反映しているなあ、と安澤さん。 8) 子の曰わく、これを愛しては、能く勞すこと勿からんや。これに忠にして、能く誨すること勿らんか、と童君。焉はこの場合訳さず、忠にして、能く誨、とすればいい、と稲垣君。ある人、もし本当に自分の赤ちゃん（子供）を愛する場合、偉い人物にするために、色々のことをさせ、苦労させなければならない。もし、よく自分の王に忠であるなら、偉い王にするためには、諌める、諫言してこれを導かねばならない。言うことは易しいがこれを行うことは難しい。子供のとき、あまり何もさせず、コンピュータゲームを飲み物を置いてやらせてきた子は小皇帝と呼ばれる。そのような愛は子供にはよくない。本当に偉い人物にさせるには、子供のときから色々苦労させねばならない。唐には魏徴（ぎちょう）という大臣が居て、太宗によく諫言した。太宗はこの大臣が嫌になり、殺してやるとまで皇后（長孫皇后）に言ったが、皇后は本当のことを言ってくれる大臣とした。後、魏徴が死んだとき、太宗は魏徴は私の鏡のような人物、鏡がなくなったと悲しんだという。魏徴のような人物は珍しい。太宗は名君となり、中央ｱｼﾞｱでは「天可汗」の称号を得た、と童君。文人としても有名、詩も絵もよくした、と安澤さん。蘇軾、蘇東坡が、愛して勞せしむること勿きは、禽犢の愛なり。忠にして誨うること勿きは、婦人之仁と言っている、と童君。愛而勿勞、禽犢之愛也。忠而勿誨、婦寺之忠、前半は孝、後半は忠と朱子は解釈。寺というのは宦官のこと、と稲垣君。君子、仁なる人は社会のリーダーシップをとる人なので、当然のことながら一般人を愛することが第一義。より完成された人なら、当然小人、一般人グループを愛する場合には、親が子にさせると同じく、すべてその子が出来るようにすること、そうしないではおられないのではないか。それが仁の人の条件になっている。小人は英語では、gentlemanでない人とある、と中村（典）さん。愛之の之は吉川幸次郎先生は學而時習之の之と同じく、何かはっきりしたものを言うのではなく、ただリズムを充足させる場合があるとされる。愛すればねぎらうことなかろうかいやねぎらう、忠すれば、真心があれば誨えないことがあろうか、いや誨えるとされる、と稲垣君。これは愛と忠が対になっており、忠に力点がある。愛はこの場合学問を愛す、学び習うことを好むという意味で、労すはいたわるでは次の忠ならば誨（おし）えるとは意味がつながらない。顔回は「勞を施すこと無し」と人をわずらわすことをしなかったが、孔子は好きな以上はどんどん苦労をさせる、わずらわす。まして忠、心からそう思うのであるからには、誨は諭して教えること、誨えないではおれようか、という孔子の強い気持ちをいうのではないか、と上田さん。誰に向かって言っているのか、と安澤さん。弟子達と思っている、と上田さん。朱子を読んでいると、自然と孝と忠と解釈してしまうが、愛と忠でみるというのは原文に近いですね、その方が意味が分かりやすい、吉川先生もこれは道理を問うというよりは、自分の心境を言うとみておられる、と稲垣君。愛と忠では、愛は危険はないが、忠するは危険が伴う。魏徴も皇后がいなければ殺されていたかもしれない。実は、太宗は高句麗遠征で敗北をするが、魏徴と皇后の死後のことで、二人が生きておれば、この戦争は起こさなかっただろうと悔やんだという、と童君。鄭さんが言っていたことだが、漢代に論語が国学となってから、論語の注は太子に教えることを考えて付されたもの、科挙試験が行われるようになって、受験する人間に必須の書と対象が変わっていった。江戸になれば寺子屋、明治になれば論語と算盤と注を付す対象が庶民にまで広がっている。我々の会では女性が読んでおられる。注もつけられた対象を考慮して読まないと、状況が違っているから・・・我々は我々なりに、中村（典）さんが三つセットで読まれるというのもいいのじゃないかな、と上田さん。労すはしんどい、労さずはしんどいとは思わない。好きでやっているから労は関係ない。忠をもつことで、その人を教えるは、自分に忠実に行う、相手に指摘する形になる。行動からすれば、結果として同じようにあらわれるのではないだろうか、と高津君。忠を持つだけではなく、誨えることで発揮される、と安澤さん。労すは西洋風にいえば、自立させるようにさせること、と中村（典）さん。労す、làoは、苦労させる、朱子はそっち、ねぎらうではない、吉川先生間違っているかな、と稲垣君。 さて、本日は花火観賞。稲垣、童君は自転車、高津君、安澤さんはバイク。では現地6時半集合。両中村さんは所用でお別れ。ライフでおつまみとビールを調達して到着すると6時半を回っており、安澤夫妻がすでにお待ち。奥様、IFACの会議でルームアシスタントをされたとのこと。上田夫妻がその会議の担当、いやーなつかしい、1980年、28年前にお会いしていたのです。しばらくして、高津君、ちょっとおくれて童、稲垣両君、それぞれ飲み物つまみ持ち寄りで花火待ち。ひゅーと光があがってドバンと音が山や池や会議場に跳ね返り、光の帯が夜空を染め、じりじりと消えてゆく。圧巻はスターマイン、どっどっどっと下の方から次々に打ちあがって、光の輪が同時に数個炸裂、最後にどんと一発大玉が開く。音と光が目前にあり、ビール片手に見上げれば、おおっと手の一つもたたきたくなる。そよそよ風もわたってきて、花火は夏の風物詩。高槻から川那辺さん、これから向かうとの携帯電話、京都駅の美味しい「たこ焼き」とともに参上。翻訳話にも花が咲く。高津君の奥さんも合流とのこと、安澤さん迎えにゆくと席をたち、なんやかやで10時くらいにお開き。 童君は8月中旬に帰国、8月9日に送別会、よってこの日は午後4時からの読書会、7時すぎから宴会とします。 2008年8月2日　憲問　9〜11 稲垣君は童君を伴い帰郷。中村（典）さんは、音読の途中で仕事の呼び出し、お盆がちかづくときぜわしい。高津君が少しおくれて、これで音読の調子にリズムがでてきました。本日の塾頭は中村（佳）さん。 9) 子の曰わく、命を為るに、裨�ｪ、これを草創し、世叔、これを討論し、行人子羽、これを修飾し、東里子産、これを潤色す。 鄭の国で命令を作るとき、裨�ｪが草稿をつくり、世叔が討論して検討し、行人は外交官でいいのですか？子羽が添削して、東里の子産が潤色、優れた文章にした。討論するは検討するで、一人ではできないので、実際はどうだったのでしょう、と中村(佳)さん。討論は部下と検討ですからスタッフがいたのでしょう、と上田さん。この四人、皆が集まって、検討をしたのでしょうか、と中村（佳）さん。そういうことがあったでしょうが、ここではそれぞれが個別で行っているのでしょう、と上田さん。今でいえば、稟議を回して練っていた、と安澤さん。裨�ｪという人は静かなところで考える方がいいので、郊外に子産が連れ出したという話がある。裨�ｪが方向性を構想し、それを世叔と部下が色々な角度から検討を加えて形にし、行人は外交官、使者を掌る長で外交の立場、相手国の事情を考えて損益をととのえ、潤色は今ではあまりいい意味に使われないが、ここでは君命としての体裁、重々しさや美しさを整えたのでしょう、と上田さん。文章につけこむ隙がないようにした、と安澤さん。前の文章とも関連しており、能力ある人間を労して、良いものにしてゆく、孔子の場合では多彩な弟子を労して誨えるで、鄭のこのようなやり方を調べて、参考にしていた、顔回は他人を労することをしなかったが、と上田さん。他の人がやってくれるので、安心して自分のことが出来た、と中村（佳）さん。左伝に子産は能力ある者を使ってそうのようにしたと記されている、外交文書を作るに衆知を集めた、と安澤さん。夏目漱石の小説「行人」はここからきているとされるようです、と中村(佳)さん。 10) 或は、或る人ですか、子産を問う。子の曰わく、惠人なり。子西を問う。曰わく、彼れをや彼れをや。管仲を問う。曰わく、この人や。伯氏の駢邑三百を奪い、疏食を飯いて、齒を沒するまで怨言無し。 或る人が子産のことを聞いたら、先生は恵み深い人と答えた。子西を聞くと、あの人、かの人ですかと答えた。管仲を聞くと、このひとは伯氏の駢の村三百を奪い疏食を食べて、生涯怨みごとを言いわなかった。子産は宰相の子産、恵み深い人。公冶長篇16)に「君子の道四つ有り。其の己を行うや恭、其の上に事うるや敬、其の民を養うや惠、其の民を使うや義。」と孔子が評価している。子西という人は、孔子が用いられようとしたとき邪魔をしたので、ああ、あの人か、と言った。管仲については、この人は伯氏から三百戸も駢の村を取り上げ・・・と中村（佳）さん。曰人也は、人なり、でこれは管仲が人物であるという意味で、孔子が評価をしていることです、と上田さん。伯氏はそのような仕打ちを受けたが、生涯怨みごとを言わなかった。これは次の「貧しくて怨み無くは難し」と関連していて、奪われた伯氏が怨みごとを言わなかったにあたる。伯氏のこと、その次が管仲にあたるとは限らないが・・・子産は仕事ができるのみならず、下の人に対しても出来た人、恵みが深く、人のことがわかっていた。子西はどういう人ですか？と中村（佳）さん。孔子一行が陳と蔡の間で窮したことがあり、子貢を楚に派遣して難を逃れた話があったが、孔子は楚の昭王に仕えようとしていた。昭王もそのつもりで孔子に土地を与えて召抱えようとしていた。それに諫言をしたのが子西。王には使者を送るに子貢のごとき者がいますか？いない。軍を率いるに子路のごとき者がいますか？いない。補佐をなすに顔回のごとき者がいますか？いない。周の王も、楚の王も最初は小さな土地を与えられたことに始まりますが、今優秀な弟子を抱える孔子に土地を与えれば、軒を貸して母屋を取られることになりかねません、と諌めて、孔子を召抱えないようにした宰相。孔子としてもいいようがなく、或る人もそれがよく分かっていた、童君が言っていたように、或る人とは誰かは当時の人には分っていた、今となっては分らないが、と上田さん。この三人が何故くみあわされているのですか？組み合わせが妙、何故この三人なのですか？と中村（佳）さん。それも何かあったのでしょうが、分らないのが残念、童君とか稲垣君がおればなんとか言ったかもしれないが、と上田さん。最終まとめ役、三人とも宰相。その国を支える重要人物。この三人の評価を聞きたかった。管仲は有名、子産はよく分からない。横山光輝の漫画の史記を読んでいるが、一人の人材でその国が強くなったり、弱くなったりする、そういう人が評価される時代のこと、と高津君。童君が士大夫政治と言っていたが、諸候じゃなくて士大夫で名宰相が政治を行う時代、子産は小国である鄭の政治を刷新した。有能な人物を使っただけでなく、公冶長篇16))でみたように、税制改革を行い最初は不評であったが、公平に行われ、三年たつと税収も上がったが畑も増え民が喜んだとされる。法を用い、合理的で現実的で国も民も富ました。管仲は高津君が前回言っていたように、八佾篇22）で管仲の器小とか、儉でない、禮でないと厳しい評価をしていたが、ここでは人物であると評価している。幕末に尊王攘夷と言ったがこれは管仲からくる。斉王を覇者にした管仲は、周王をたて、夷狄を討ち中華の伝統を守った。あるいは斉王が泰山で祭りをしようとしたのを止めた、これは季氏がやったのを孔子が止められなかったものだが。管仲を仁者としている。ところで、貧しくて怨み無くは難しを中村（佳）さんは伯氏とされた。関連していると思うが、管仲もかつては貧しく、伯氏が怨みごとを言わなかったのは、管仲が伯氏の心を分かっており、伯氏も管仲に心服していたという事情もあり、伯氏が該当するとは思うが、管仲とみることもできる、と上田さん。管鮑の交わり、と安澤さん。貧乏であった管仲を斉王の公子の補佐役に紹介したのが鮑叔。二人の公子がおり鮑叔がもう一人の公子の補佐役をしていた。王位継承争いで管仲は鮑叔の公子を弓で射殺す。実は死んでいなく、油断をしたために帰国が遅れて、逆に追われる身となり、管仲の仕えた公子は殺され、家臣は殉死するが管仲は死ななかった。鮑叔は公子に斉王であるだけなら自分で補佐できるが、覇者となるには管仲の補佐が必要として管仲を宰相に推薦する。斉王は管仲を用いて覇業を成し遂げる。子貢や子路はこのことで管仲は仁者でないとすることになるが・・・管仲は、貧しかったときの苦労を忘れず、常に国を富ませることに心を砕いた仁者とされる、と上田さん。論語のなかで、それほど評価の変わる人は他にいますか？と中村（佳）さん。斉王に対する反発もあり、そうせざるを得ないところもあったと思う。管仲が北方で戎を征伐して、その帰りに、燕公が斉王を見送って、燕の国境を越えたことがあった。諸侯同士の見送りは国境を越えてはならないことになっており、それに気付いた管仲は、王に進言して、その場所（斉の領土）を燕に与えて新しい国境にした、このことで名誉を高めた。そういうことをする必要がある時代だったと思う、と高津君。 11) 子の曰わく、貧しくして怨むこと無きは難し、富みて驕ること無きは易し。 貧乏でいて怨むことないのはむつかしい。富んでいて驕らないのは易しい。前半は伯氏のこと。學而篇15)に「貧しくして諂ふなく、富みて驕るなし。何如。子の曰わく、可なり。未だ、貧しくして樂しみ、富みて禮を好む者に若かざるなり。」ともあります、と中村（佳）さん。貧しくして怨むこと無き、といえば伯夷、叔斉かな、と上田さん。貧とは金銭のみならず心の問題でもある。金持ちが満たされている訳でもない。その人のライフスタイルにもより、家庭の問題でもある、と奈奈さん。富みて禮を好む者という場合、子貢のことを考える、その反対は顔回、雍也篇9)に「一箪の食、一瓢の飮、陋巷に在りて、人其の憂に堪へず。囘や其の樂を改めず、賢なるかな囘は」とあり、対照的な二人ですね、と高津君。貧しくして怨むこと無きは難し、は分るが、富みて驕ること無き、も同じくらい難しい。精神面、金銭面で余裕のある人が知らずに、意識をせずして、人を傷つけるということが起こっている。それをうまく包み隠そうとしても、むつかしい。現代社会はそうなってきている。孔子の時代なら、金銭面で貧しくても精神面でなんとかできていたことが、現代では、金銭面では恵まれていても精神面を充実させることがとても難しい。目の前に食べるものがあるか、ないかの　貧と富の孔子の時代背景と現代では解釈に隔たりを感じる、と川那辺さん。ぼくが始めて日本に来たとき、日本が裕福なことに驚いた。毎日肉が、鶏肉だけれど食べられて・・・と高津君。小中学生のころ、映画では、アメリカの家庭ではシステムキッチンがあり、冷蔵庫や冷凍庫があり、それで夫婦喧嘩をしているのを見て、何が不満なのだろうと訳がわからなかったことを覚えている。ともかく、水道といっても山からひいてきた水をタンクに集めて分配する簡易水道、コンクリートの洗い場で風呂は薪でたく生活。今じゃ日本は途上国からみれば、かつてのアメリカの状態、日本人の日常生活の仕方が途上国の人々を傷つけることがあるというのは分る、だけど、ここで貧しいは経済的なもの、と上田さん。満たされているというのが当たり前になると、ありがたみを忘れてしまうと、安澤さん。昔で読むのと、今で読むのとでは異なる。孔子の時代は精神的には幸せな時代、現代はそうではないと高津さん。中国では富める者は財物を贈るが、貧者は言葉を贈る、貧者は負担を求められない。日本と違って、豊かなことは貴とされた、貴は中と貝からなり、中は分かつ、貝は財物で、還流させること、豊かな人には、やらねばならないことがあった。欧米資本主義でもそうで、拡大再生産、独り占めしたり、溜め込むことは嫌われた。日本人はうさぎ小屋に住んで将来不安と溜め込む。ところが、国富は巨大だが、それを世界に還流する意識に乏しい。中国人はこの点ははるかに上手い、と上田さん。キリスト教の宗教的な理由もある、と奈奈さん。恒例の脱線。 来週は午後四時から読書会開始。五時から始る夏祭りと重なる為、自転車やバイクなどは一旦乗り入れれば途中で出すことは難しいので、ご遠慮ください。童さん送別会の場所は安澤さんオススメのオオタヤ？丸太町で商工会議所の斜め向かいです。予算は、3500円位。6時半から移動して7時過ぎからとなります。一揆では、奈奈、安澤組、川那辺、上田組みでトークがはずんでいました。 2008年8月9日　憲問　12 本日は西陣の夏祭りで、二階の教室に場所変更。童君、成田君と一緒に現れる。Narita comes back!中村（佳）さん、奈奈さん、大西さんははじめて、安澤さんは忘れるわけがない。高井君は実家に帰っているでしょう。中村（典）さんは、大文字国際交流音楽祭０８（17日）の準備で大忙し。 音読は八佾第三から述而第七。jī qī 、zī cī 、zhī chīの違いについて、安澤さんの質問。jī qī 、zī cī 、zhī chī は無気音と有気音だが、同じīだが音が異なる。jī qīはiの口形だが、zī cīはiの形でuが入り、zhī chīはiの形でriに近い。回はhuíと表記されるが実際の発音ではheuíとeが入る。酒jiǔはjioǔとなる。誰何shuí héはshueí hé 、sheí héとなる。述而第七の注意点。好と知、與についてはすでにみたとおりで省きます。識zhì之の識は記憶する意味でzhìとなる。以上shǎngもすでにみたようにshàngではない。舍shě之は捨shěからくる。馮píng河は憑依と同じ、人の名前ではféngとなる。憑依の憑の意味は依に近い、こういう熟語は近い意味をもっていることを知っておけば、辞書がなくても想像はつく。齋zhāiは斎戒沐浴の場合。飯fàn疏食sìもすでにみた。枕zhèn之は動詞の場合。亡wú而爲有は無wúに同じ。不射shè宿は反切、食shí亦yì、shìがshèとなった。童子見xiànもすでにみた。君取qù於呉の取は娶qùからくる。和hè之は動詞の場合。不孫xùn儉は遜xùnからくる。元は一字、後に意味を分けるために遜が作られた、と稲垣君。 5時になると祭りの太鼓が響いてきます。ブラスバンドよりはましか。本日の塾頭は急遽、童君、最終講義です。ええっ、何も準備していない。ま、いいから、読みもってやってみるのもいいでしょう、記念に。 12) 子の曰わく、孟公綽、趙、魏の老と為せば則ち優、滕、薛の大夫と為るべからず。 孟公綽という人物は魯の大夫。家老と一緒の意味。大臣としても老寄りの人、大老といえる。孔子が人を使うかたちに関する議論。あの時代、魯の国は、人を使う道はあまりよくなかった。滕、薛という二つの漢字は、小さな国の名前。孔子には孟公綽に対する不満があった。成田さん、どういうことですか？と童君。孟公綽がどういう人か分らないので難しい。趙、魏の老と滕、薛の大夫の違いが重要。趙、魏は晋の中の有力な貴族、趙、魏、韓の二つで、晋の力が弱くなるとそれぞれ独立する。晋にある半独立国家、国の中の家老レベル。逆に滕、薛は独立国であるが、領地は狭く重要ではない。趙、魏の宰相として出来るが小さな独立国では無理である。趙、魏の宰相として出来るなら滕、薛でも出来ると考えるのが普通だが、孔子は滕、薛では別という考え方、と成田君。短い文章であるが、いくつかの専門の言葉がある。孟公綽という人は魯。このころ晋はまだ存在しており、趙、魏、韓三国の大夫で強い力を持っていた。孟公綽を趙、魏の老では適切な人、滕、薛では適当でない人。孔子の人材を使うことに関すること、適材適所、稲垣さんどうですか、と童君。だいたいそういう事。新注とは朱熹のもの、それ以前は古注、古注によれば、孟公綽はよくわからないが、魯の大夫。大夫ということでは滕、薛の大夫と同じ身分というところかな、と稲垣君。孔子が適材適所で人物を送るとして、孟公綽が小さな国には向いていないということは、孟公綽は人として、どういう所に良いものがあり、どういう所が足りないのですか、と川那辺さん。斉の主君を弑した崔杼の話があったが、春秋左氏傳によれば、崔杼が率いる斉軍が魯の北辺に侵入したとき、孟公綽は崔杼に主君を弑する心があるので、すぐ立ち去るから心配に及ばないと、大局を見る目があったと伝えている。また、次に、不欲の人ともでてくる。自分ですべてを行うには向いていないが、下に人材がいるなら大局を示して使うことが出来る人という意味、と上田さん。中国で、上海市長なら出来るが北朝鮮でやれといわれてもなかなか難しい。上海市長は勤まっても北朝鮮では無理。普通なら北朝鮮でも勤まると考えるが、それは間違っている、と成田君。朱熹は公綽蓋廉靜寡欲而短於才と述べている、と稲垣君。どっちが良い悪いでなく、向き不向きのこと。上場企業と中小企業では、必要な人材が異なる、向き不向き、と安澤さん。大学教育でもそうで、大学により学生のタイプが違う。体育会系だと、大きな声で何度もぐるぐる読ませて教える、静かなところでゆっくり教えるに向くものもある。孟公綽に対して朱熹にはマイナスの評価がある、と稲垣君。春秋時代にはまだ小さい国が存在していた。朱子の注釈によれば、大きな国より小さな国の運営はもっと難しい。遠い古、夏殷周から春秋そして戦国となるのですが、古代封建国家は春秋時代では残っている。小さい国はギリシアでいうところの都市国家、砦、城壁で囲われただけの国家で、このレベルでの国家運営管理は難しく、戦国時代にはすべて壊れ大国に吸収されてしまう。面白い話があります。殷周革命で周の武王を支えたのは、姜子牙（太公望、呂尚）ですが、子牙は小さい仕事では失敗ばかりで、奥さんは毎度金がなくて困っていたが、まてまて、いまに大人物になると称していた。奥さんは笑って馬鹿にしていた。小さな仕事では失敗続きだった子牙は周の文王に見出され武王を輔けて本当に大臣となり斉を開いた、と童君。この奥さんは馬という。馬は子牙を見限って去るが、出世したことを知り、復縁を迫る。そのとき、子牙は盆「お椀」の水を庭先にこぼして、この水は盆に返らずと言ったそうな。先の真直ぐな釣り針を垂れていたため、56年間一匹も釣れなかったそうであるが、子牙が釣ったのは文王であったとのこと。太公望の由縁。武王が殷の紂王を討とうとしたとき、占いは不吉と出、大風、大雨となり家臣が脅えるも、率先したのが子牙であった。老いてから芽の出る人の代表。童君、最後に敬老精神、敬矣君子哉若人。 さて、一路、おおた屋へ。安澤さんは自転車で、川那辺、中村（佳）、奈奈さん組と稲垣、成田、大西、上田組はタクシーにて分乗。安澤さん二階に座敷を確保。高津君は仕事を終えて参加。童君と我々の友誼に乾杯。成田君の帰還に乾杯。童君の本に寄せ書き、持参の「不知火」、ポットの番茶で割ると結構いけました、新製品、番茶割童風。日本の思い出は悩殺。殺は毒殺の殺でなく、忙殺の殺、殺すでなく、程度が激しいこと、非常に悩ましいこと。さて、安澤さんの音頭で歌謡会。成田君の中国国歌、中華民国国歌にはビックリ。留学の成果ですかね、寮に門限があると早々に再見、次回、8月23日（土）の塾頭です。店のアルバイト大学生に読書会にリクルートせんと張り切る安澤さん。世話方ありがとうございました。 2008年8月23日　憲問　13〜14 童君は帰国。夏休みでマカオから帰京の奥さんと南京で再会とのこと。鄭さん、台湾より来訪。沈さん、奥さんの南春蘭さんと一緒で登場。1976年文化大革命の嵐過ぎて、春の蘭のごとく生まれてこられた。遅れてきた高津君、鄭さんと沈夫妻をみてビックリ。 中国では1998年以降大学が倍増、今では大学を出たけれど職が無いという時代を迎えているが、台湾でも同じ。台湾では受験者8万人に対して受け入れ枠が8万6千人、全員入学可能、7点で合格したという笑えぬ話があるそうな。就職難は中国以上。日本と同じ道をたどっている。入学枠に満たず、良い、優秀な学生を海外から集めようとするが、彼等は米国に流れ、集まるのはランクが一段低く、全体にレベルがダウン、米国帰りは海亀というそうな、亀は帰のこと。音読は八佾第三から述而第七。本日の塾頭は成田君 13) 子路、成人を問う。子の曰わく、臧武仲の知、公綽の不欲、卞莊子の勇、冉求の藝の若き、これを文（かざ）るに禮樂をせば、亦、以て成人とすべし。曰はく、今の成人は、何ぞ必しも然らむ。利を見て義を思い、危を見て命を授く、久要、平生の言に忘れざる、亦、以て成人とすべし。 子路は成人とは何かと聞く。成人とは日本では20歳以上の人をいうが、そうではなくて完成された人、完全な人物、パーフェクトな人とはどんな人ですかと問う。臧武仲の知恵、公綽の不欲、卞莊子の勇気、冉求の藝、藝とは色々なことができる多才、多能のこと、それらを兼ねて、文を飾ると読んでいる。文°（去声）はwèn で動詞、。文（平声）wénは名詞、文章の意味だが、もともとは飾り、文様のこと。動詞では、かざる、あやなす、飾りを付ける、あやをつけるとなる。禮樂をもって飾りをつけたら、その人は成人、完全な人といってよい。臧武仲は臧孫紇（こつ）、次の次にでてくる人なのでそこでみることとし、公綽は前にでてきた孟公綽。卞莊子はどういう人か分からないが、勇猛さのある人。古い言い伝えでは、母が生きているときは逃げてばかりいたが、母が死んだ後は戦では逃げる敵を70人殺して死んだと云われる人、当時は卞莊子といえば、勇猛な人と知られていたのでしょう。冉求は子有、冉有、よく孔子に叱られる弟子だが、実際の仕事で活躍している、仕事の出来る人、これらの四人の良さを全部集めて禮樂を飾り付けると完璧な人となる。そこにまた曰がでてくる。もう一度言い加えるのが曰の後の言葉。今の成人は、どうしてそうでないといけないということがあろうか。どうかといえば、利益を見たら義、正しい道理を考える、目先の利益に騙されない。危うい場面に出会えば、自分の身をなげうってでも危うい場面を助ける。命が一字で人命となることはあまりないので、命は上からの命令、与えられた命令を最後までやりとおすという注釈もある。久要の要は要°（去声）はyào で動詞、必要とする。。要（平声）yāoは名詞、要求の要、ここでは約束の意味、久しい約束、ずっと前の約束。平生の言、平生とは今より前の時間、それまで以前に言っていた事を、それを忘れない。それであれば、成人でよい、曰以降は、それを言直して、今の成人は、こういうことが出来ておれば良い、というところ、と成田君。前段と後段の言葉の関係はどうみますか、と稲垣君。それはむつかしい、子路が問うたので答えたのだが、前段の答えでは、しまった、これでは子路が勘違いをする恐れがある、あまりにも理想が高すぎる、後段では、古の聖人ならそうだが、今じゃそういうことでなくてもいいなあ、人として基本的なことが出来ておればよいのではないかと言直した、と成田君。同感だが、朱熹の注では、後段は子路の言葉としている。それはよくなく、成田君のようにとりたい。子路の顔色をみると、分かりにくそうなので、レベルを落とした言い方をしたと思うが、一番初めの言葉の朱熹の解釈、蓋し子路の及ぶ可き所に就きて之を語げん、子路に出来そうな言葉で後段で言ったとみており、一番の理想を言うより、一段落とした、更にランクを下げて言ったということだろう、と稲垣君。理想的というのではなく、四人の例は卑近なもの、誰もが知っている人物をひいており、知、不欲、勇、藝、全部を備えるのは無理。子路の顔色は分からないではなく、目がキラキラしており、俺がやってやるとやる気になっている、勘違いしそうになっている、と成田君。子路が君子でなく成人を問う、それがもつ意味は何か？結局成人とは何か知、不欲、勇といった質と禮樂を備えて、成人と君子とどう分けるかということ。何故、子路は成人を聞いたか。禮樂をもっていない・・・ここにもう少し問答があって言葉が補われていたとしたら、とてもおもしろくてここだけでも子路は小説になる、と鄭さん。子路は自分は成人の資格があると思っている、孔子は子路にその質はあるが、禮樂に欠ける、文質彬彬の文に欠けると見ている。しかし、後段の言葉は孔子のものというにしてはどうもよく分からない、成田君の解釈で全体像がつかめるのだが、と上田さん。後段は子路の不満の言葉のようでもあるが、その次の言葉（以て成人とすべし）に重さがあり、そうとはいえない。弟子達はこれを孔子の言葉として残した、と鄭さん。見利思義、見危授命、久要不忘平生之言は子路のいいそうなこと。子路の言葉としてとってもおかしくはないところがある、と稲垣君。亦可以為成人矣は孔子の言葉、と鄭さん。孔子の言う成人、子路に欠けているものを取り上げており、子路のバランスが崩れている事、モーターを作っているが、部品がセットされユニットとなり完成するが、全部バランスよく結合されておればいいが、うまく結合されえいないと不良品となる、人もバランスが崩れると、成人、完成した人ではなくなる、と沈さん。前で例をあげているのは子路に欠けている所を挙げたものではない。子路に欠けているのは・・・子路は四つのことも禮樂もあると思っている。勘違いを起こさないように、勇の方を深く分解して説明している、と稲垣君。何故成人を聞いたか？成人は政治に携わるときに理想的な人は何か・・・知、不欲、勇、藝プラス禮樂を備えたのが完璧な政治家の資質。後段のところは今の子路にできること、子路に合わせて、こういう資質があれば、いい政治家になれると方向を教えた。知、不欲、勇、藝は政治を行うための資質、と鄭さん。そういう風にぼくも最初に感じていたが言葉にならなかった、子路のことであり、現実に政治にかかわるものです、と稲垣君。久要不忘平生之言は何故ここに、と大西さん。一旦人に言ったことを違えない。利は目先、義は本質、信は人間の大本。質の核の部分、今の世には質が欠けている。子路はそれを持っているとみてもよいし、追求しなくてはならない、今の世への失望と期待がある。子路はそれを持っている、と成田君。見危授命の命は人の命でないと意味が通らないのではないか、と稲垣君。自分が人の上に立って、危うい立場となっても命令をまもる、と読めなくはない、と成田君。子路は結局授命で死ぬ、それを考えれば、ここに授命がおかれたことも分かる、と鄭さん。 14) 子、公叔文子を公明賈に問いて曰わく、信なるか、夫子は言わず、笑わず、取らずか。公明賈對えて曰く、以て告げし者過てり。夫子、時にして然（しこう）して後に言う。人其の言うもの厭わず。樂しうして然して後に笑う。人其の笑うを厭わず。義にして然して後に取る。人其の取を厭わず。子の曰わく、其れ然り、豈に其れ然らんや。 先生が公叔文子について公明賈に質問した。公叔文子は公孫拔、衛の国の大夫。孔子は衛に長く滞在した。公明賈はおそらく公叔文子の家来と思われる。信なるかは本当ですか？夫子は先生、おたくの先生（公叔文子）は物を言わない、笑わない、人から物をもらわない。と聞くと、それは教えた人の間違いです。しかるべきときにはじめて物を言うから、他の人が嫌がらない。楽しいときにはじめて笑う、だから他人が嫌がらない。そうしなければならない道理があってはじめてもらう、他人はだから嫌がらない。愛想わらいをしたり、もらって悪いときにもらったり、べらべらしゃべることはない。其れ然りは、それはそうでしょうね、と同意。豈は否定、強い否定、そんなことはないでしょう、一旦同意してから、本当にそうですかね、と聞いたことになる、と成田君。豈は強い否定に限らない。朱熹は蓋し之を疑うなり、とし軽い否定、疑問の否定。8〜9割は反語であるが、疑問詞とも読める、現代語の嗎、そうですかくらい、と稲垣君。どうして強い否定となるのか、と鄭さん。認めたくなかったから、と成田君。孔子が公叔文子に、本当ですか？と聞く気持ちは何なのか、と鄭さん。衛は孔子を雇おうとしたことがあり、孔子も衛の人物を調査しており、公叔文子がどういう人物か見定めようとしていた。公叔文子は霊公にねたまれるほど富者であったとう話があり、不言不笑不取でどうして富者となるのか確認をしてみた、答えを聞いて、そうかもしれないが、成田君のいうように豈は強い否定で、おかしいなと思った、と上田さん。言われたことはそうでしょう、と、ところが本当にそうなんですかという二つの気持ちがある。否定。それは聖人のやること、と反問している。孔子は評価を知っていて疑念をもって聞いている。最後はそうですか？という疑問形。公叔文子と「文」と諡（おくりな）のついているのは良い評価、しかし、公明賈の説明の言葉は孔子にふさわしい言葉、本当に（公叔文子は）そうですか、と聞いている、と鄭さん。高津君どうですか？いや、むつかしいですね、と高津君。疑問であれば、それに対して答えが続いていいはず。続けることができるでしょうが、孔子にこう言われて、公明賈は物が言えなくなった。世間が作った言葉、それを公明賈がおきまりの言葉のように言っている。本質的に公叔文子が出来ているかとなれば、むつかしいこと。おそらく孔子は公明賈が当然そう言ってくると思っていた。家来のそういう態度をみれば、公叔文子のことも分かる。孔子が本当にそうか、言うと先が続かなくなる。続かなければ、結局はそれまでのことと分かってしまう、と川那辺さん。なるほど、マニュアルどおり以外のことには対応ができない、マクドナルドの接待マニュアル似ていると稲垣君。待ち構えていたのは、公明賈も同じ、また、聞いてきたなと応じたのであろう、と成田君。春秋左氏傳、襄公29年条に呉国の太子が衛国を訪れた時、遽伯玉、史狗、史鰌、公子荊、公叔発（拔）、公子朝に会い、「衛に君子多し」と言ったという話が記されており、公叔文子はそれなりの人物と思うが、不言不笑不取、不取でリッチということに孔子は納得していない、と上田さん。 門限ある成田君、日曜日仕事の大西を除いて久方振りの鄭さんと一揆へ。大粒の雨が来襲、バイクの高津君、自転車の川那辺さん、稲垣君はずぶ濡れ、鄭さん、沈夫妻、上田さんは大西さんの車でラッキー。川那辺さん、春蘭さんのガス抜き。台湾では米国帰りが多く、英語が必要とのこと。同じく英語で仕事のレベルアップを考える沈さん。安澤さんが、"やっぱりここか"と、駆けつけ三杯のウーロン茶、飲み終わるとまた飛び出しと忙しい。最後は北大路の赤提灯で鄭さんママに”久しぶり”、お客と一緒に歌、上田さんもチンカラホイカラで夜が更けました。 2008年8月30日　憲問　15〜16 音読は八佾第三から述而第七。一yīの発音について、テキストではすべてyīとなっているがyìであったりyíであったりするのはどういうことか、と大西さん。一yī以貫之、之一yì邦と結構悩ましい。一yì杯bēi茶、一yí个gè人、一yí座zuò山、一yì把bǎ椅子と量数、量詞の場合（１、２、３・・・と数をかぞえる）には次の語の声調によって変化する。平声、上声の場合yì、去声の場合yíとなる。日本人向けの親切なテキストではそれに応じて表記を変えるが、中国では発音すれば自然とそうなるため、いちいち表記を変えず、yīのままにしている、と稲垣君。本日の塾頭は稲垣君 15) 子の曰わく、臧武仲、防を以て魯に後を為さんことを求む。君を要せずと曰うと雖も吾は信ぜず。 先生がおっしゃった。臧武仲（臧紇）は防という自分の邑をたてに、魯に跡取りを残すことを要求した。主君に対して脅さないといっても、そんなことは信じない。防は地名、臧武仲が封じられた邑。魯では孟孫氏、季孫氏、叔孫氏が有力三家、論語正義には左伝によれば、孟孫と臧孫は仲が悪く、季孫は臧紇を可愛がった。孟孫の親（孟荘子）が死んだ時、臧紇が弔問に行くが家に入れなかった、孟孫は季孫に臧紇のことを訴えたが、季孫は応じなかった。その後に、孟孫は臧孫を排斥しようとし、孟孫が季孫に臧紇のことを訴えると、今度は季孫が怒り、臧孫を攻撃するよう命じた。臧紇は出奔する。出奔した後に防に逃れて、主君に魯に残っている者に家を継がせてください、そうであれば防を差し出すと頼んだ。そのエピソードを聞いた孔子は、頼む体裁をとっているが、脅しをかけている、見た目には下手にでているが、脅しているに等しいという。要は前回成田君が説明したとおり、文字通り読めば、君を要（もと）めず。要は後、宋代になると、出来の悪い皇帝の下で、悪い臣がはびこる時、君を要するとして出てくる使い方、成田君補足などあれば、と稲垣君。前回では臧武仲の知、知恵者の代表として出ていた。一方では知力を認め、ここでは批判をしている。押さえている土地を、そこを根拠地としてやるとちらつかせて、ある意味では力を使う。このやりかたをここでは厳しく批判をしている。個別の事案では批判しているところが面白い、と成田君。斉の荘公が晋を攻めて戦果をあげたことがある。晋の有力な卿同士の内紛があり、片一方が斉に逃れてきた機に乗じて攻めたものだが、臧武仲が亡命して斉にきたとき、斉候は田土を与えるとして、このことを自慢気に語ると、臧武仲が貴方のやり方は鼠にそっくりだ、昼は隠れて夜に動き回る、しかし宗廟は避ける（相手の内紛につけこむことはできるが、それ以上のことはできない）と応え、斉候を怒らせたという話がある。孔子は臧武仲が上手く断り話をしたとその知恵をほめた。しかし、外国では通用したこの知恵は国内ではひんしゅくを買った。季武子の嫡妻には子がなく庶子で年長の者ではなく年少の者に継がせたく、家来にそれを上手く運ぶよう命じようとしたが、断られてしまったとき、臧武仲がそれを買って出た。酒宴を開かせて、最初に年少者を紹介して跡継者と印象付け、一段落してから年長者を紹介した、これは禮に反するもので、逆効果となり、季武子すら困ったという。孔子も配慮が足らないと批判をしたということが左伝にある。防の件も左伝に記されているが、読めば、主君を脅すというようなニュアンスはない。跡継を認めてもらえれば、防を渡し亡命すると恭順している。多分当時の人もそう思っていたのであろうが、孔子はそうじゃない、騙されてはいけない、そうして脅すのが臧武仲の知恵だということになる、と上田さん。亡命して帰ってきてと、そう簡単に事が運ぶのか、と大西さん。臧為を後嗣にということで、家族や家臣は残っており、国は異なっても姻戚関係で結ばれていたりで結構行き来があったのでは、と上田さん。自分は亡命しているが、臧氏の邑であり、状況が変わればカムバックする。一つの国の主君が必ずしも絶対的権力をもっているわけでもない、と成田君。当時の邑とは城壁で囲まれた都市であり、邑と邑の間は何も無く、中継地点となるから、どっちに寝返るかで状況が変わる。防は臧武仲の本拠、子飼の家来がいる。地域定着型、その土地に根付いている、と稲垣君。前に褒めておいてここでは批判する、そこはおかしいところ、と大西さん。同じ弟子でも、褒めたり貶したりというところがある、と成田君。憲問篇は人名が沢山出てくる。歴史上の人物の評価が続いているが、どうしてそれらがここに入ってくるのか？流れ的にどういう思いがあるのか？何を意図しているのか？評価がころころ変わるというのは、聞いていて逆に、生きている人で評価が変わるのはいいが、歴史上の人物でころころ変わるのはどういうことなのか？読んでいて気持ち良く入ってこない。どうしてこういうことをしたのか・・・と川那辺さん。臧武仲の話は紀元前550年のことで、孔子が生まれたのが前551年とされるので、孔子が生まれた頃の話。桓公とか管仲とかは前650年とか我々からすれば幕末、明治維新で西郷、竜馬、慶喜を聞くようなもので、当時の人にはいわずともよく知られた人々、ある定まった評価があり、それを前提に話がなされており、そこが分からないと何のことかさっぱりわからない。徳川慶喜をどう評価するかは時代によっても変わる、孔子は当時の評価に対して非常に復古的な観点から異を唱えており、先の条では子路や子貢でさえ納得しがたい見解となっている、と上田さん。子路が孔子の評価をつかめていない。孔子の言うことを具体例でつかみたいが、具体事例については、それは違うという風にでており、当時の弟子も困った。八佾では禮の決まり事について云うが、それに似たような感じ、と成田君。感想を聞かれた奈奈さん、感想といわれても・・・ 16) 子の曰わく、晉の文公譎りて正しからず、齊の桓公正しくて譎らず。 これは解釈の分かれるところ。ぼくは朱熹の解釈には賛成しない。晉の文公と齊の桓公は春秋の五覇の二人、周王朝の権力が衰える、日本でいえば、天皇家が衰え武家政権になったようなもの。武力、経済力がある王が盟主となって、会合で主導権を発揮し、指示を与えるようなもの。譎は朱熹は詭、詭計、いつわりの計、詭弁、騙くらかしてうまく物事を進める。文公は計略を用いて正しくなかった。桓公は正しくやった。桓公をほめている。文公をマイナス評価した。古注では、詐也、とする。ぼくはそういう読み方をしたくない。孔子は褒めた人物を次では批判する。両面をみて評価する。単に褒めるだけではおかしい。晉の人達はこれを権也、と読む。権謀の権。権だと事情が異なる。可適也不可与権、権は物事をうまく運ぶ、機転を利かすことが出来る。晉の文公は機転を利かし、正しくなかった。齊の桓公は不正はしなかったが機転を利かすことが出来なかった。二人の長短をみている。次の条では子路はこういう言い方をしたから違う評価をした。子路の期待を裏切るような意見を出した。ここでは両方をわりと公平に評価している、と稲垣君。奈奈さんどうですか、といわれ、そうとしか、と奈奈さん。どっちが良い悪いでなく、五覇の一人として、一長一短。稲垣さんの説明を聞けば、そうかと思える、と川那辺さん。譎とは晉の文公が覇者となって、諸侯を河陽に集めて会盟をするに、力不足から諸侯が来ないことを危惧して、周王に河陽で狩りをしてくれるよう手配した、結果的に周王を呼びつけたことを孔子が怒った、と司馬遷が記している。一方桓公は葵丘の会盟に周王から臣下の作法抜きで賜物を受けようとして管仲に止められている。晉の文公は大変な苦労人で、人間的には齊の桓公より出来た人、管仲あっての桓公、おそらく当時の人も文公が不正で桓公が正という見方はしていなかったと思う。孔子は臣下が周王を結果的に呼びつけたという行為によって文公を糾弾している、孔子特有の批判、と上田さん。上田さんも朱子と同じく譎は"いつわる"ですね、と成田君。文公の"いつわり"を孔子が糾弾したと司馬遷が記している、と上田さん。それは司馬遷の見解で孔子が本当にそうであったかは確認ができない。譎は融通を利かす、柔軟にでてゆくと読んでみてはどうですか、と成田君。そこにビールとおつまみ片手に鄭さんが登場。明日の夜の飛行機で帰ります、一杯やりながらやりましょう。文公は苦労人、17歳で亡命、19年たって本国に帰国。36歳で王になって8年で死んだ。8年であせったという見解もある、と稲垣君。齊の桓公も晉の文公も、様々な評価はあまりなく、歴史上の評価は高かったが、孔子は柔軟に対応し、諸手をあげて賛成に対して留保をした、と成田君。正、不正と文中にあり、そういうことはいいにくい。孔子と違うところを一般人が評価していることに不満があった。孔子は桓公を評価した。それは違うと子路や子貢が反応する。当時は両方ともすごく評価していたが、それを見分ける必要がある。分けるには、正、不正で分けた、と鄭さん。子路、子貢は桓公ではなく管仲への評価で疑問を持っている。正しいということになると、この時代は覇者が全体をまとめてやるということだから、そもそも正しいことではない、と成田君。孔子は桓公をプラスで評価しているが、孟子になれば、覇者はすべて批判の対象、桓公は周王朝をたてたことを評価したもの、と鄭さん。春秋戦国という時代にあって、周公の政治を復興せよということは、今の日本で天皇制復興を主張するようなもので、誰だってそれは無理、非現実的とわかっていた。後に、漢帝国ができてやっと現実的なものとなった。それくらい非現実的な批判を孔子がしている、よくもまあ、続けられたものだ、と上田さん。孔子が春秋に注釈を加えたということはそういうこと。歴史書でありこれは一般庶民には関係ない。孔子の評価も孟子の時代になるとくつがえってくる。漢が出来るまで現実性がなかったというものではない。既にその土台が築かれていたはず。論語が今にまで伝えられているというのは、漢に至るまでも広く読まれていたことによる。その後も読まれ、そして一番よく読まれたものが残ってゆく。その最たるものは朱子のもの。これは科挙制度とからまり、爆発的に読まれた。とまあ論語の普遍性について鄭さんの置き土産。門限を気にする成田君。索引作りで忙しい稲垣君。 今日は白木屋にしようと鄭さん。自転車で川那辺さんと先行、着いてみるとカルピス三つとビール2本。鄭さん、川那辺さん、奈奈さん、カルピスと惣菜、合いません。大西さんと上田さんはビール。鄭さんもビールにくらがえ。最終電車に間にあいました。明日の夜は台湾の鄭さん、張さんによろしく。 2008年9月6日　憲問　17〜18 音読は雍也第六から述而第七を全員で、学而第一を各人一条づつ音読。おかしいところを稲垣君が矯正。抑與之與yì yǔ zhī yúの発音が難しい、と大西さん。日本人は2声と3声の区別ができない。3声には全3声と半3声があり、全3声は文末のときのみで、文中では半3声。yǔは∨でなく＿とは低く抑える感じ、2声は／一気に１声の高さに上げることが肝要。道千乘之國の道についてdào dǎoいづれで読むか？成田君の解説。現代語では道dàoと導dǎoに分かれているが、昔は導という字がなく、道の上声dàoが道、道の去声dǎoが導の意味であった。昔、子音には無気音、有気音、濁音の三つがあったが、現代では濁音はなくなり、上声の濁音は去声に変わっている。前にも言ったが、平声は現代語の1、2声、上声は3声だが濁音は4声になる。去声は4声となる。道の上声はその意味では4声dàoになる。道千乘之國の道は導くの意味だからdǎo、だが道（濁音）の上声ということならdàoとなる、とややこしい。本日の塾頭は成田君 17) 子路が曰く、桓公、公子糾を殺す。召忽之に死す。管仲、死せず。曰く、未だ仁ならざるか。子の曰わく、桓公諸侯を九（ただ）し合せて、兵車を以てせざるは管仲が力なり。其の仁に如かんや、其の仁に如かんや。 ここは次とつながっているので、一緒にやってしまいます。 18）子貢曰く、管仲は仁者に非ざるか。桓公公子糾を殺す。死する能わず、又これを相（たす）く。子の曰わく、管仲桓公を相けて諸侯に霸たり、一に天下を匡しうす。民、今に到りて其の賜を受く。管仲微かりせば吾其れ髮を被り衽を左にせん。豈に匹夫匹婦の諒を為するか、自ら溝瀆に經れて之を知らること莫きが若くならんや。 17）子路が言いました。桓公、公子糾を殺しました。公子糾とは誰かといえば・・・斉の桓公は最初から将来を約束されていたのではなく、斉の国の跡目争いで兄弟が争い、斉を亡命、他の国に一時的に世話になり、その国の実力者の後ろ盾を得て、自分の国にカムバックするのが理想プランなのですが・・・公子糾は名のとおり公子、継承候補の一人、別の国で活動。桓公が非常に国外で勢いを得て、いけるというときに、公子糾が邪魔になり殺す。召忽も管仲も公子糾の家来。召忽は主君が殺されて殉死する。殺した相手に仕えることは出来ず、仕えるのを恥であるとした。管仲は死ぬどころか、桓公に仕え、之に仕えて、桓公を相（たす）けて、覇者とするに一役買った。子路が、未だ仁ならざるかと聞いた。ここで曰がもう一度でている。解釈としては、子路が一度話し終わってからもう一度話した。あるいは、子路の科白の一部としてみることもできる。その可能性としては、論語の編纂者が、その前に一呼吸をおくために入れたと考えられる。未だ仁ならざるかは否定詞ですが、不仁ともできるが、不仁は悪いこと、全否定となる。未仁は部分否定、仁とはいえないくらい、そういう点においては仁とはいえないのではないか、と聞いた。それに対して先生は、桓公は諸侯を九（ただ）し合せて、朱子は九jiǔを糾jiū、糾合の糾、まとめて合わせるの意味、諸侯をまとめあげた、とみる。その方法として、兵車を使わない、兵車とは戦争に使う車、普段の車は乗車、当時は諸侯が集まり盟約を結ぶとき、牛の耳を切りその血を互いにすする、ここから牛耳るという言葉が生まれるのですが、会合の方法には二つあり、戦車、兵車で集まる場合と、乗車の場合があり、ここでは管仲は兵車を以ってせずですから、乗車でまとめたとなる。兵車の場合にはまとまらない場合そのまま戦争となる、あるいは、軍事力が一目瞭然であり、兵力で圧力を加えることになる。管仲は兵車でなく平和的にやった。それは管仲の力である。管仲は桓公を補佐してうまくやった。其の仁に如かんや、だいたいの方向としては、その仁とは管仲の仁、其の仁に及ぶものがあろうか？管仲の仁はすばらしい。子路が管仲が殉死しなかったことで非難めいたことを言ったが、先生は管仲を仁とした。続いてそのことに関連していますから、 18) 子貢は、管仲は仁者ではないんですか？桓公は公子糾を殺し、管仲は死ぬことが出来ず、なおかつ桓公を相けた。相°xiàngなら宰相となったでもよい。管仲は桓公を相けて諸侯に霸者として号令した。桓公が諸侯をまとめるのに、補佐として尽力し、天下を一つに正し合わせる。そして民は、今に到るまでずっとその賜、恩恵を受けている。もし、管仲がいなければ、私は髮を被り、被りとは中国の人、知識人は、髪を必ずのばし、一つにまとめて冠をかぶる、中華文明を享受している人の誇り、習慣となっている。髪をたばねず、ざんばら髪にしている、着物を合わせるのに左を前にするのは中華文明にいない人、蛮族の風習、そういう野蛮の風習、そういう野蛮の風俗に染まっていた。豈若〜のようにどうしてあろうか。当時上流貴族は一夫多妻だが庶民は一夫一婦。諒（まこと）をするとは、自分たちの愛情を証明する。自ら溝瀆に經（くび）れては、溝瀆は水路、川のこと、そこで首をくくる夫婦、一緒に首をくくる、誰もしらない間に、自分たちの愛情を証明するために首をくくって死ぬ、心中みたいなもの。そういうものとは違う、召忽が殉死したこと、殉死すべきことであったのか、下賤の者が心中するようなものでよくない。ということですがこの二つあわせて、皆さんはどうですか、と成田君。曰未仁乎の意味が分りにくいし、子路が言ったとするなら、何がいいたいのか？どうもここにひっかかる。当時の世評では管仲は桓公を覇者にした実力ある名宰相で出来た人物ではあるが仁者とは見られていなかったのではないか？未だ仁ならずかは子路じゃなくて、世人の曰という風に読むことはできないのか？と上田さん。それでは乎が何故つくのかが問題、子路の言葉で、成田君のいうように部分否定、理想的な仁には達していない、と稲垣君。子路がそんな質問をするような人とは思えない、と上田さん。吉川先生は未だ仁ならずと曰くや、という読み方はできるが神経質な読み方、普通に曰くでいいと云っておられる。未仁乎のニュアンスは現代語では?没到じゃないか。高津君どう、と稲垣君。いやあ、と高津君。管仲を仁の点から見るというのは当時の人にはあまりなかったのではないか？論語を読んできたが八佾篇では管仲は器が小さい、倹約をしない、禮を知らないと批判され、憲問篇で評価が一変し、ここでは仁者となっている。弟子にしてもこの点受け容れがたいところがあり、この問答となっている。ここでは、孔子が個人の道徳的資質ではなく政治の観点から管仲のあり方に仁があるとしている。孔子の独自の観点ではないか、前に高津君が仁は人を助けるようなことを言って・・・と上田さん。管仲は禮でないとか、色々言っているが、前にも言ったように仁者は山のように人を生かすもの、管仲が兵車を用いないがここでのポイント。この人のやったことは殺戮を行わなかった、また不満を力で抑え込むようなことをしていない、その功績を孔子が評価している。当時はすぐ戦争をしたが、そういうことがなかったことを仁者としている、と高津君。ここの仁の議論と世間の評価を分けて考える。世間では管仲を評価するむきがあった。賛否両論があった。管仲が生き延びたことは批判の対象であるが、生き延びて政治的評価を得たこと、その管仲が仁かどうかは、周辺の人々の思いで行った議論、と稲垣君。孔子はよく仁者かは分らないと言う。召忽は忠、善に入るが、仁かと聞かれれば分らないと言う。未仁乎は言い方としてはなんとなく理解しにくい。乎と聞くところに落ち着きがない。未仁矣とかなると、何故乎となるのか、と高津君。先生と弟子の問答であり、乎と聞くのが弟子としてのルール、と成田君。かなり婉曲な、子路もおそるおそる聞いている。孔子は最上級で答えを返している。子路は管仲が死ななかったのは仁者とはいえないのではないか、管仲は仁者でないと思っている。政治的には管仲の功績を認めない訳にはいかないが、と稲垣君。当時の一般的意見として管仲がどう思われていたかといえば、管仲の評価は高かった。器が小さいとかあったが、倹約家かとか聞かれると、管仲が？とんでもない。倹約家なんかじゃない。禮を知っているかと聞かれると、とんでもない、禮を知るどころではない。孔子に聞いたのは、優れた人という意識があって聞いてみたものである。倹約家であるか？禮を知っているか？とは聞くが仁であるかどうかで評価するのは一般的ではなかった。孔子が仲弓のことでは仁であるといっても口が上手くない、と批判を受けたごとく、当時仁は軽いものであった。孔子は基本的なところで、仁をもちあげたかった。子路が聞きたかったのは、仁がどういうものであるかを、管仲をもってきて、あえてアラを指して、こういうことがあるが仁でありますまいかと聞いた。孔子は、その聞き方は管仲の全体像を見ていない。その点では仁であるとしたが、多分子路が聞こうとしたことに答えてはいないし、最後の如其仁も意味がつかみにくい、管仲を評価しようということであるが、と成田君。管仲の評価は高かったが、マイナスの評価もあったのは事実。子路は管仲が仁であるかの方向で質問している。管仲は仁となっているが、子路は仁とは何かを考えるようなタイプではない、と稲垣君。子路のイメージは、孔子の仁を素朴に追い求めていると思う、と成田君。樊遲はどうですか、と高津君。そこまでのこだわりは樊遲にはない。管仲を仁とするのは、孔子にしては淡白、こんなに簡単に仁をみているのは・・・この次の条もそうで、後の人の手が加わっている感じがする。論語の後半部分であり、斉の国の人がかかわって、脚色したのではないか？大きい声ではいえないが。子路の問いで、孔子の少しヒートアップした答えが返っている、と成田君。管仲を仁とすることは、顔回が生きておればどうだったか分からないが、子路や子貢ですら受け容れ難いものがあり、当時の人々にとっては尚更そうであったと思える。これは菅仲の道徳的資質のことではなく、政治的に成し遂げたことを仁と評価して、それも、その仁に如かずを二度繰り返しており、これは朱子も称揚しすぎで疑っているくらいで、周公の政治を善しとするようなあり方を孔子が強調しているとしかいいようがないと思える、と上田さん。管仲を仁にしたことで、ますます仁が分かりにくくしている。如其仁であって是其仁ではない。それは仁のごとしとも読め、これが仁とは言っていない。管仲は善や忠は足りない。仁は山のようなもの、山がなくなれば、生かせるものもなくなる、その人が居ることで、救われることがある。能力をもって、どれほど世の中に生かせるか。戦いではなく禅譲において行うこと、武力を使うと善はなくなる、と高津君。編纂者の意図は、このあたりは孔子の人物評が並んでおり、孔子からみた管仲の評価を載せたかった。仁を政治にどう生かすか、ここではでかいスケール、実際の社会の中で実現したもの、個人的なものでなく、匹夫匹婦のレベルでは表しえない功について述べている。溝瀆に經れては狂者の格好、老荘の徒を連想させ、溝瀆、ドブでありその中に野垂れ死にする。溝に転がっているから誰も知らない、と稲垣君。ここは管仲を評価する流れ。子路であっても子貢であっても管中に対しては善や忠にという点では欠落していると思っているはず。孔子の管仲に対する評価が今まではとは明らかに違ってきているのを聞いて、子路が欠落している部分は飲みこめないままにも、仁というのはひょっとして、こんなことなのか？という気持ちが心の中にありながら、未仁乎、これは私には仁とは思いにくいですが、ひょっとしたらこれが仁なのですか？と聞いたような。それに対して、孔子も子路分かってくれたか？そうなんだよ、これこそ仁なんだよ、というニュアンスが感じられる。仁が茫洋としており、忠や義のようにはっきりしていないだけに、この問答には、いろんな含みがあるような気がすると川那辺さん。子路が答えを引き出している、と成田君。 18)の非仁者與は流れからすれば子貢が管仲を仁とするとはそれは間違っている、正しくないと喰って掛かっているように思うが、仁者じゃないんではないか、と反問しているようにも読め、どうなんですか、と上田さん。どっちともとれる。仁者なんですね、だけどこんなこともありますよ、と孔子の潜在意識をくすぐっている、と成田君。どっちやねん。どっちでも読めるでは読む人に確定的には伝わらず、それでは困るんじゃないか、と安澤さん。質問者の気持ちが色々な形ででてくる。樊遲は単純に聞く、孔子も単純に返す。子路や子貢となると、巧妙というか、関係が近いのでくだけた形、孔子の性格を推し量って質問することができる。召忽については、死者に鞭打つような言い方をしていない。管仲と召忽を比べた作戦がよくなかったかもしれない。孔子は答えている間にヒートアップしている、と成田君。一旦肯定してまた否定ではなく、子貢は言いきった方に賛成する。伯夷、叔斉は武王に反対して餓死した、それが背景にあって、管仲が死ななかったことを取り上げた。子貢が孔子に伯夷、叔斉を聞いたとき、仁を求めて仁を得たと孔子が答えていた。戦えば乱れる、それをせず天下のために自分の命を絶ったのでしょう。それと比べた、と高津君。衛の後継者に関して先生が関与するかを聞くために、子貢が巧妙にその意向を聞きだした話。比較で仁をとらえるのではなく、その時おかれたベストの選択としてみるべき。管仲は死なずに居ることがベスト、伯夷、叔斉は死んでベスト。一筋縄ではゆかないところに原因がある、と成田君。ますます仁が分かりにくくなる、と稲垣君。自分の才能でなく、国民を治めること、自分の知恵で政治を行うのでなく、民の生活をよくするという風なところ、堯や舜のようなことが評価の対象となっているのではないかと思う、と高津君。 と管仲の仁をめぐっては、子路、子貢の問い方が疑問、反問の形で、何故そんな形をとったのか？それぞれの一家言、なかなかユニーク。斉の僖公と衛の公女との間の子が諸児（襄公）、小白（桓公）、魯の公女との間の子が糾、系図を黒板に記す稲垣君。襄公は暴君で弟の小白を鮑叔が莒に亡命させ、召忽と菅仲は糾を魯に出奔させた。襄公が無知に殺され、その無知が殺され、莒から斉に戻ろうとする小白を弓で射たのが菅仲。腹を射られた小白は死んだふりをして、棺に納められて斉に戻る。小白を殺したことを魯に報告して、油断している隙に、小白は斉で即位して桓公となり、魯を攻めて、糾を魯に殺させ、召忽と菅仲の引渡しを迫り、召忽は自害したが矢を射掛けて命中させた張本人の菅仲は死ぬどころか・・・召忽が川に身を投げたという話しがあるというと、それはここから出たことでしょうと返ってきた。匹夫匹婦は召忽そのものではない、諒とは小さいまこと、諒解の諒、信より一段低いもの。溝瀆での庶民男女の心中、同情をさそう死に方、と孔子の言葉のなかに庶民男女の心中の例えが出てくるのも珍しい。気にならんか？匹夫匹婦とは庶民（われわれのこと）。それが心中するとはただごとではない、ちゃうか？よっぽどのことあっても死ぬというのは普通やない。そこんとこ気にならんのかなあ、と安澤さん。時間がきてしまいました、来週の塾頭は高津君。 本日一揆は安澤さんと上田さんの二人。溝瀆に經れることなきよう早々に、といっても終電1本前。安澤、赤ひげならぬ黒ひげを談ず。 2008年9月13日　憲問　19〜21 成田君、論語の熟語より、16通りの音声組み合わせの例を8個づつ抜き取り、発音練習用に編集。これは素晴らしいと感嘆する安澤さん。2声3声、3声2声の発音はやはり難しく、3声は低く抑えて、2声は高くあげて、と苦戦の大西、上田組。shēng とshēnの発音の違いを問う大西さん。舌が喉の奥で気道を防ぐ絵shēngと舌先が上歯の裏につく絵shēnを描いて説明する成田君。高津君に実際の発音を願う、あまりそういうことは意識して発音するわけじゃないので、と乗り気でない高津君。南方系はあいまいで童君なんか、ちゃんとしてなかったのでそう神経質になることはないと稲垣君。時間がかかってあたりまえ、と安澤さん。本日の塾頭は高津君。ヘルプに入る成田君。 19) 公叔文子の臣、大夫僎、文子と同じく公に升る。子、これを聞きて曰はく、以て文と為す可し。公叔文子が部下を大切にしているという話だそうです、と高津君。順を追って説明してください、と成田君。大夫僎という家臣がいて、公叔文子と一緒に公、朝廷に昇進、公の直接の家来に昇進した。先生はそれを聞いて、公叔文子と文となすべしとおっしゃった。文というのは何ですか、と高津君。文は諡（おくりな）、死んだ後におくる名前、その人を尊んで諡する。色々あるが「文」はレベルが高い。以前、孔文子が出来る人で、生前色々やっていたが何故「文」といわれるかという問い（公冶長篇15）に、「敏みて學を好み下問して恥じず。」と孔子が答えており、最高の評価。文は元来、あや飾り、文様、人間のつくりだした文化、文明の全体を文という。個人が身につけている教養も文、人間として身につけている華やかなもの、華やかであるから「文」、と成田君。ここでは孔文子と異なる形と思う。下に聞くことを恥としない、知らないことを知らないとする、聞くことを大切にして、その人を高めてゆくことになる。常に勉強、学習してゆくことであるが、ここでは、自分の家臣と一緒に公に従う、家臣を推薦した、自分と同じ位にもちあげたのであって、「文」の範囲が違う感じがする。普通では自分と同じ位にするのは嫌であり、徳があるのかな、徳という感じ、と高津君。徳にも色々あるが、総合的にみて死んだ後に「文」をつけるのがルール。孔文子も公叔文子も同じレベルでみている。下の家来の実力を認めて上のクラス、自分と同じところに上げてもくやしく思わない、その方向性は似ている、と成田君。孔子はよく仁ではないというが・・・と高津君。諡には「仁」はない・・・と成田君。自分の部下を公に升すとは今の会社じゃ、有能な社員をどこかに推薦すること、どの会社も有能な者を置いておきたい。よそにもっていったというのがすごい、それを「文」というんだろう、と安澤さん。公叔文子の臣とあり、公叔氏という有力な勢力にいる有能な大夫、その大夫を己のもとにおいておくことを恐れて霊公に推挙したと義疏にあるが、自勢力拡大ではなく、衛公のために用いたことを孔子が評価したのではないか、と上田さん。大夫僎は階級としては実は大夫ではない。この人の場合、本名の上に大夫をつけるのは、僎先生という意味。僎という本名で呼ばれるのは、そんなに偉くない階級の人。自分の家の中の利益を求めるより国全体の利益のために、自分の部下を推薦したところを評価された、と成田君。14)では孔子は公叔文子に疑念を抱いていたが、ここではよい評価をしているのは・・・と高津君。前回孔子は公叔文子を評価していないとしたが、方向転換をしたい、公明賈に対する批判であって・・・と成田君。同升諸公の諸はどう訓読するのか、と大西さん。後藤点では諸（もろもろ）を同じく公に升すとなるのですが、同升之於公の之於が諸と発音されて、こうなっており、これを同じく公に升すの意味、と成田君。ここは死後の公叔文子の評価、前の条(14)では生きている頃、かなり近い所でバッティングしている状態での評価、ここでは死後の諡名に対するコメンタリーとなっている。「文」を諡名としている。周の文王、武王にもあるごとく、よいことをしたものには「文」がつく、武力を行使したものには「武」がつく、武王の音楽は美を尽くすが善は尽くさないとされる。孔子はここでは最高の諡｢文｣を素直には認めていない、「文」としていいのではないか、くらいで管仲の時のように、手放しでほめているものではない、このときは孔子もテンションが高かったのであるが、と稲垣君。世の中の評価を肯定して、文であることの理由を求めた、と成田君。この一点に関しては｢文｣とみている。己が己がでないところを評価している。文とは元来外に見えるもの、外に見えるようにしたことを文として評価している。外に燦然と輝く感じ、控え目で落ち着きがある輝き、と稲垣君。周の文王はきらびやかなものを残している。公叔文子の場合は一般にはあえて見えにくいところを敢えて顕彰している、と成田君。諡名は誰がつけるのですか、と大西さん。公叔文子の場合は、衛の霊公の家来であり、残された家来たちが相談して殿様に伺いをたてたのではないか、と成田君。官僚がそういう・・・と大西さん。当時は官僚というのはなく家来たちが相談してというスタイルではないか、と成田君。哀公、霊公の哀や霊も諡名、その治世の実績や性格によってつけられ、哀や霊はあまりよいものではない、後には｢文｣は最高のものではばかられ、貞恵文子などと二字、三字とされた。王には無いが家臣には忠、孝などもつけられた、と稲垣君。 20) 子、衛の靈公の無道なるを言う。康子が曰く、｢夫れ是（かく）の如くんば奚（いかん）してか喪（ほろ）ばざる。｣孔子の曰わく、｢仲叔圉は賓客を治め、祝鮀は宗廟を治め、王孫賈は軍旅を治む。夫れ是の如くんば奚してか其れ喪ばん。｣ 先生が衛の靈公の無道について話していましたが、季康子がそれなら、なんでその国が喪びないのでしょうかと聞くと、孔子先生がおっしゃった。仲叔圉が賓客、外交を治め、祝鮀が宗廟、祭事を治め、王孫賈が軍旅、軍事を治める。三人の素晴らしい人が、そのようにしていたので喪ばなかった。仲叔圉は孔文子のことですね。祝鮀、王孫賈は前には（雍也篇14)、八佾篇13)）ぼろくそだったのに、ここでは評価している。その人達がかみあって上手く行っている、となって季康子・・・と高津君。季康子は孔子より若くて、孔子が放浪から魯に帰ってきたときの季氏の長、孔子とは活発に議論している。季康子が孔子に聞きたかったことは何か＜と成田君。その国が喪んでいないその理由、ひとつは事情を知らなかったことがあろうが、理解できていなかったこともある。季康子は正しいことを言われてもはむかうみたいな立場にあるように思われる。孔子は衛を評価していないが国が支えられていることは認めている、と高津君。孔子は衛の霊公をくそみそに言っている。そもそも霊公の話をするのは、悪い見本を示して、何故国が喪びないかを季康子に尋ねた。家臣さえしっかりしておれば国は喪びない、季康子に立派な家臣を使いなさいと示した、と成田君。今でいえば、外務大臣がしっかりしているですが、現代では経済や財政が大事というが、この時代はそういうものが大事ではなかったのか、何故ここにはでてこないのでしょう、と中村（佳）さん。それは大事ですが、何故でてこないか・・・とっさに聞かれて、答えとしても完璧なものにならなかった・・・それぞれの部門を任せる人がいればよい・・・と成田君。外交、祭事、軍事、宗廟とは、と高津君。孔子は宗廟を大事にする、（内政の）儀式として残っている、外交と軍事、両方とも外交にかかわるなあ、と稲垣君。国の大事は祀と戎にありとされ、祀とは祭祀、戎とは軍事。祭祀とは犠牲を捧げて神や祖先を祭ることだが、これは税の起源であり、租税、財政につながるもの、宗廟とはその象徴。孔子は衛では成田君が言ったように色々ひどい目にあっている。雇われるはずだったが、そうならず、南子に会わされ、宦官と一緒に車に載せられなど結局衛を出た、しかし、雇われる前提で衛の人材については詳しく情報を集めて人定めをしていた、と上田さん。宗廟と財政はちょっと離れている、宗廟のことは周禮に記されている、禮に関して一番重要とされるものだが・・・ここでは孔子の適材適所の考え方がでている、と稲垣君。孔子が霊公のことを言うのを、うっとおしいなあ、いつまで続くのかと季康子は思っていた・・・と高津君。一種のとんち問答みたいなものがある。孟子となると頓知問答がでてくる。そういう遊説家のようなものが感じられる。社交の場で知的な問答をしている、二人のかけあいがある、と稲垣君。公明賈がそのくちで、孔子は口達者は嫌いだが、孔子もやろうとすればできたのではないか、孟子になると雄弁、孟子にくらべれば孔子は訥弁、と成田君。戦国時代となると、王との会見であり、人材を見抜くことであり、雄弁でなくてはならなくなる。科挙試験にもそれは引き継がれることになる。策に問題が出されそれを御策という、それに策を書き込む。対策と云う言葉はそこからくる、と稲垣君。試験となればカンニング、替え玉。科挙試験では誰の答案か字から分らないように一度別人が書き換えて審査に回されるとか、それをくぐりぬけるために何文字目かにある特定の字を記してわかるようにするとか、母が娘に、あるいは父が女装して娘に化けるとか、双子だったらわからない、試験監督として、あまり詮索するとセクハラで訴えられるとか、安澤さんと稲垣君の解説が続く。 21) 子の曰わく、其の言を怍（は）じざれば、則ち之を為（す）ること難し。 先生がおっしゃいました。自分の言葉にはじを知らないようではやるにも大変むつかしい、と高津君。かみくだいて言えばどうなりますか、と成田君。出来もしないようなことを軽く出来るみたいに言わないようにする、と高津君。星野ジャパンみたいなことはしないようにする、と中村（佳）さん。朱子の注ではそうなるが、古注は異なる。自分の言うことに対してはずかしいと思わない。自分のやることに確固たる自信がある、言うことに対してやましいところがない。そういうことを成し遂げようとするなら、其のときにも必ず内容がともない、その決意があるからこそ、その言うことをはずかしいとは思わない。そのことをこれ怍じざるは、則ちこれのすること難ければなり。個人の好みでは古注が好きだ、朱子はきまじめすぎるところがある、と成田君。新説をうりだしてはどうか？と安澤さん。新説は奇説にしかなりません、と成田君。其言之不怍と読めば成田君のいうように確固たる言い方になるなあ、そういう風にも読めるんだな。為之也難はどうなるんかな、と上田さん。古注では、内有其實則言之不慚　積其實者為之難也とする。内にその実が有れば則ちこれを言うこと慚じず、その実を積むはその難しさを実行する、為之也難はそれをすることは難しいとなる、と成田君。吉川先生はその読み方には不自然さがあるとしておられる、と稲垣君。貝塚先生は、それを言うときてれないほどの自信がないと、それを実行することは難しいと読むが不自然さがあるとしておられる、と安澤さん。どっちにしても、言ったことに対する責任を言うのでしょう、と高津君。怍じる方向が逆になる、新注（朱子）では自分を知らないことを怍じる、古注では自信のなさを怍じる、と成田君。次の条と関連させると成田君の説はなんかあてはまってくるなあ、と上田さん。成程、孔子が哀公に不敢不告したことを其言之不怍とみれば、つながりますね、これは今まで指摘されなかったところ、前後を関係付けて読む本会らしさがでました、と成田君。丁度時間となりました、次回の塾頭は安澤さん。 本日珍しくも川那辺さんは風邪でお休み。安澤、高津、稲垣、大西、上田で恒例の一揆へ。ではまた、来週。 2008年9月20日　憲問　22〜23 高井君登場。来年春まで京都、その後は広島になるとのこと。奈奈さん、大西さんとははじめまして。成田君の発音練習表にて順次発声。麻雀やってるみたいだなと稲垣君。川那辺さんｚｈに苦戦。奈々さんsi、ci、zi。上田さん2声3声、3声2声の発音に難。本日の塾頭安澤さんは山歩きで間に合わぬと連絡あり、成田君がリリーフ。 22) 陳成子、簡公を弑す。孔子、沐浴して朝し哀公に告げて曰わく、陳恆、其の君を弑す。之を討たんことを請ふ。公の曰わく、夫の三子に告げよ。孔子の曰わく、吾が大夫の後(しりへ)に從へるを以て、敢て告(もう)さずんばあらず。君の曰わく、夫の三子者に告げよと。三子に之きて告ぐ。可（き）かず。孔子の曰はく、吾が大夫之の後に從へるを以て、敢て告さずんばあらず。 朝（平声）は朝廷の意味でcháo朝夕の朝はzhāo、夫（平声）は“かの”、例ので fú　成人男性、夫（おっと）の意味ではｆū　、大夫dà fū。文末の〜かはfúで、疑問、詠嘆。逝者如斯夫は詠嘆。陳成子は魯の隣、斉の国の有力者、本名は陳恆、簡公を弑した。本来の君主は簡公、家臣が下克上で君主を殺すことを弑すという。そのニュースが斉から魯に伝わってくる。沐浴するは体を清め入浴して髪と体を洗う、体を清め身ぎれいになり、朝廷に参内する。時の魯の君主哀公に物を申しに行く。哀公に言った科白、陳恆が君主を弑した。哀公が陳恆と言うのは、一国の君主が下の身分のものを名前で呼ぶことによる。君主を殺したので討伐することをお願いした。哀公はあの三子に会うように言った。魯の三氏とは、季孫、孟孫、叔孫の三つの家、家長を氏とする。あの三方に言ってください。決定権がないからあの三人に言ってくれと云う。孔子は大臣のはしくれ、末席にいる以上、敢て申さずんばあらず、申し上げないわけにはゆかない。公は貴方はかの三方に言いなさいと云う。孔子は三氏、御三家に行きそのことを言う。聞かず、拒否された。それに対して孔子は、大夫の末席にいる以上申し上げないわけにはゆかないと言った、ということですが皆さんどうですか、と成田君。前回、前の条と関連しているということだったがどうですか、と稲垣君。これは上田さんに答えてもらったほうがいいでしょう、と成田君。この話は左伝にもあるが、左伝では、哀公は孔子に成算はあるのかと聞き、孔子は斉の半数は反対しており、魯がこれに加担すれば勝てると言ったとあり、哀公は三氏ではなく、季氏（季康子）に聞いてくれと言ったが孔子は断ったともあり、論語とは違っている。一般的には、大夫の末席にいる以上申し上げないわけにはゆかないというのは仕方なくといった消極的な意味あいで解釈されているが、そうではない。言っても無駄で、聞いてくれないことは分っているが、本来はこういう事態では家臣を討ち、斉の君主を立てるのが諸侯の務めであり、そうしなければやがて哀公もそういう運命になるという、大夫として当然申し上げるべきことを言っている、三氏のような有力な大夫ではない、大夫の末席にいる私が敢て申し上げる、前条の「之を言ひて怍じざる」にあたる。現実的でなく、言うだけ無駄と言われようがはずかしがることではない、という強い意思のあらわれと思う、と上田さん。「之を言ひて怍じざる」の解釈は、新注は人が言葉を言うだけで実行に至らない、有言実行とはむつかしい。古注は言葉を言ってやましいところがないのは難しい、自信をもって言う。それを怍じない、そこがここに関係している。前後が関係しているという読み方からすれば、前回は新注で解釈していたが、古注だと関係させた場合にはしっくりくる。大夫で仕方なく言うではなく、謙遜して言っている。先進篇７）で顔回が死んだとき、父が棺椁（棺は直に屍を収め、椁は棺の外郭をいう）の椁を頼んだとき、自分の息子のときもしなかったと断り、「吾大夫の後に從ひて」と言うのに似ている。たいした身分でもないが言上いたしますとなる、と稲垣君。最初は古注が好きだったが、前後を関係させるのが良いと思った。孔子の考えはなんとなく思っていたが、編集した人がイメージを連ねるために置いて、それがつながるならそれでもいいと思う、と成田君。婉曲なやりかたで、直接かかわりがあるとは書かない、と稲垣君。不敢不告の語感はどういうものですか、と上田さん。中国語独特の二重否定、〜することができない、気がすすまない、と成田君。敢は勇気がある、不敢はその勇気が無い、と稲垣君。ということは消極な意味合いになりますか、と上田さん。そうではなく、何か物理的な、精神的な障害があるがそれを乗り越えてやる、出来るかもしれないが出来ない。君主に申し上げないでいることは、自分との間に垣根となりそれはできない、と成田君。中国では二重否定で自分の意思を言うことが多い、と高井君。憲問40)で子路が石門で晨門、門番のこと、晨門に、どこから来たかと話しかけられ、子路が、孔門から来たと答えると、晨門が孔子、そいつは出来ないと分かっていてやる者だというのがあるが、それに当てはまる、と成田君。何気ないエピソードが引かれるとき、具体的な例となっている。そうすると読みやすい。孔子は詩を引く。孔子が例証するやりかた、孔子の言葉をエピソードで例証している、と稲垣君。吾、大夫之後へに從ふを以て、敢て告げざることなからむなり、と孔子が言ったとき、誰に対して述べたのか、と高津君。君の曰はく、と続いており、哀公に言ったというのが流れ、と成田君。哀公にそんなことを言えたのかな、と高津君。それしかないでしょう、と稲垣君。これは孔子の不満でしょう？それを直接哀公に言うのですか？退出してからでしょう、と高津君。言葉の上では不満をおさえて言っている。三子に言えというのは不満、と成田君。新注では孔子の独り言とみていると、稲垣君。最後にもう一回言いましたね、朱子の注では去ってから言ったものとみてますか。独り言か、哀公との会話の一貫としては考えにくい。孔子は三子に言うということを予定しており、そういう前提で言っている、と成田君。左伝では、孔子は季康子に会っていないし、退出してから人にその言葉を言ったとなっており、論語とは違っている、と上田さん。会っていないとは書いておらず、辞したで、行かなかったとはいえない。左伝は後のことであり、論語にあるとおり、三子のところへ行ったとみるべき、と稲垣君。孔子は当時71歳くらいで斉と戦うといっても年齢的にも、魯の状況では戦争をするのは物理的にも不可能。そんななかでも孔子が言ったということは世の中に与える影響があった。パフォーマンスを含めてやっている。それは斉に対してもプレッシャーを与え、陳恆の斉における評価にも影響を与える。実際は陳氏が斉の政権を押さえ、孔子が望んだこととは逆のコースを辿り、春秋から下克上の戦国の時代に入ってゆくことになる、と成田君。哀公をもって春秋が終わり、それ以降は戦国、と稲垣君。 23) 子路、君に事（つこうま）つるを問ふ。子の曰わく、欺(あざむ)くこと勿(なか)れ、而して、之を犯せ。 君に仕えることを質問。先生は欺いてはいけない。しかし、それを犯せ、犯せは今の感じでは悪いが、思い切って踏み込むこと、自分の主君を偽り、お茶をにごして自分の思い通りに主君を動かすのはいけない、その領域に踏み込んで意見をしなさいということですが、そうですか、と成田君。ここでいう君子（君との間違い）とは衛の出公のことと思う。子路は当時60歳を超えており、出公は蒯聵の子で年少であった。この後継者選びについて、孔子はどっちにも加担しなかったが子路は出公に加担することを望んでいた。その出公に仕えるに子路が質問した答えなのだが、そういう年少者とてきちんと説明して、言うべきことを言って仕えなさいという。現実的ではない忠告というより、子路はやりにくくなり、その死につながったのではないか、と上田さん。朱子が子路の性格からして、君主を犯すは子路にとっては難しくない、欺かないは難しいとみている。欺かないを考えてから犯せとなる、と成田君。それはおもしろい、と高井君。子路が暴走しないように。これを犯せに重点を置きたい。欺くな、一歩近くで犯せ、顔色を伺わず、而はそれを累加させる表現。積極的に、顔色を伺わずに諫言してゆきなさい。直球勝負、内角に直球を投げるのは勇気のいること。孔子は実践しており、子路に対してこれを貫いていることは大きい、と稲垣君。子路が死んだ経緯だが・・・衛の蒯聵が母の南子を殺そうとして失敗し亡命し、霊公の死後、南子らは蒯聵の弟の郢（えい）を立てようとしたが本人が固辞し、人々が蒯聵の子を立て出公となったのはすでに見た。その蒯聵に姉、皇女伯姫、があり、これを娶ったのが「文」と称された孔文子。そこに生まれたのが孔悝（こうかい）。ところで孔文子が死ぬと、近習の美男子、渾良夫が伯姫と通じ、渾と伯姫は、蒯聵と密約し、その帰国に協力する。女装した蒯聵一行が衛に侵入し、孔悝を脅して抱き込もうと図る。これに気付いた家老が出公を逃がしたが、孔悝は楼台に閉じ込められる。急を聞いた子路が駆けつけると城門で子恙に会い、もう無理だからやめておけというにも拘らず、救助に向かい命を落としたとされる。こういう複雑な情勢を乗り切るに際しての孔子の助言は、子路の行動を後手にまわらせ、死を招く結果となった。君を出公とみてのことなのだが。子路が君に仕えるというのは出公しかなかったと思う、と上田さん。君は君主に限る必要はない。季子の長であってよい。子路は出公に直接仕えていたのかどうかは分からない。直接に意見を申し上げるは特殊なケース。出公の有力者の部下というのが穏やかな登用、と成田君。出公とすることは不可能ではないが、編集者がこういう兆候でとか、〜とかがあれば分かりいいが、そこまで言い切ることは出来ない。一般的なもの、一般的として君に仕えるを聞いた。誰かを限定しているかはわからない。子路の性格は決まりきっており、子路の死を考えざるをえないが、ここは一般的なものをはじめに押さえておくべき読み方、と稲垣君。これは八佾篇19)の定公に、「君、臣を使うに禮を以てし、臣、君に事（つこうま）つるに忠を以てす。」と言ったのによく似ている。言われたままにするのではなく、自分の意見を述べる。しかし、仕えるには忠を以てしなければならない、と高津君。ここでは、君子、君主のあり方、家臣のあり方がテーマになっており、実例をもってみてゆくということが続く。その脈絡のなかで孔子のあるべき姿を実践しようとすると如何なることが起ったのか、と上田さん。欺くことなく犯す、これは真心を尽くさないと出来ないこと。それがなければ、当然進言することは出来ない。むつかしく考える必要は無く、まごころ（忠）を尽くしなさい、顔色をみてではなく、言うべきことを言いなさいと言っている、之を犯せ、而して欺くこと勿れとは絶対にならないでしょうと川那辺さん。 門限に備えて席を立つ成田君。来週の塾頭は？高井さんでしょうと高津君。では、高井さんよろしく。自動車で駆けつけの大西さん、今日は飲めません。一揆まで高井君と上田さんは便乗。高津君はバイク、稲垣君は自転車。川那辺さんは自転車で帰宅。中村（佳）さんと奈奈さんは一揆までお話、奈奈さんのみ一足おくれて合流。高井君カムバックで乾杯、奈奈さんの絶妙の突っ込みで、稲垣ｖｓ高井トークのテンションが上がりました。似た者同志。終電はどこへやら、グッドモーニング。 2008年9月27日　憲問　24〜25 成田君の発音練習表にて順次発声。7〜8割くらいは出来るようになったかな、と稲垣君。泰伯第八の音読。遠暴慢、遠鄙倍の遠（去声）は遠ざけるでyuàn、遠いはyuǎn。好勇の好（去声）はhào。天下有道則見の見（去声）は現の意味でxiàn。不與焉の與（去声）は参与する、あづかるの意味でyù。並列で一緒にする場合はyǔ。文末の疑問詞は歟yú。�閨i間）然の間（去声）は間をあける、さしはさむでjiàn。と成田君。本日の塾頭は高井君。 24) 子の曰はく、君子は上達す、小人は下達す。 先生がおっしゃいました。君子とは上に通じて行く、上は朱熹によれば天理、人間の根本に従う。小人は下に達する。下は人欲、これに従う。里仁篇16）に君子喩於義小人喩於利、君子、義に喩(さと)り、小人、利に喩るとあるごとく、君子は義に向かい、小人は利に向かう。利は財、お金、朱熹は人欲としている。これをつなげて考えるとよい。君子上達し、小人下達のそれぞれのさすところは、そういうところ、如何ですか、と高井君。朱熹は「君子は天理に循う。故に日々に高明に進む。小人は人欲に徇（したが）う。故に日々に汙下（おか）に究まる。」とのべ、天理と人欲が進むきっかけとみ、達する対象とはみていない。君子は高明、小人は汙下でこれも達する対象ではない。里仁の方も、義に喩る、利に喩ると、その前に於があり義を喩る、利を喩るという喩る対象となっておらず、君子と小人がどこに行くのかが分からない、結局どうなるのかが分からない、と成田君。トートロジーになっているということだな、と稲垣君。達は顔淵篇20)で、「子張、士何如ぞ、斯れこれ達すると謂ふ可きかを問ふ」の中で、子張の言うことは聞こえる（人に知られる）で達ではない、達は「達は、質直にして義を好み、言を察して色を觀、慮りて以て人に下る」と述べている。雍也篇6)では、「賜や達、政に從ふに於てか何ぞ有らむ」と子貢は達であると言っていた、と高津君。朱熹は達の注として、事理に通じることと言っている。子路は決断力があり、子貢は事理に通じ、冉求は色々の才能があるというところ。ここでは何処に達するかを言っていない。朱熹も高いところに達す、地べたの低いところで、至らない、と稲垣君。方向として上下でなく、達を行う場所が上か下かを言っている、そもそもレベルが違うということ、と成田君。出発点が一緒で上、下ではなく、そもそも認識が異なるということ、と稲垣君。他に何も意見がないようですから、次にゆきます、と高井君。 25) 子の曰はく、古の學ぶ者は己の為にす、今の學ぶ者は人の為にす。 古の人は自分のためにしているが、今の人は人のためにしている。自分のためとは、修身、人格を治める、人のためとは、人に見せて知らしめる、人々から如何に見られるかということです。學者は學ぶ者でとらえたほうがよい。孟子にも似たようなものがある。孟子曰人之患在好為人師（人の師になりたがる）、人格形成をしなければ駄目だということ。懐古主義で、現実否定ではない。如何ですか、と高井君。懐古主義というとロマンチックで無思想のようだが、中国人の古（いにしえ）はもっと現実的。太古に理想の社会があり、それを再現する、どの時代にも古というものがあり、それを模倣して、模倣することで伝統ができ、それだけでなく、また新しいものを生むことができる。伝統を守り、新しいものを創り出す、温故知新、今も生きている考え方、古をして今を見つめ直すこと、と成田君。昔の学ぶ人が自分のため、自分を高めるは分かるが、今の人が人のため、それを人に知られるとするのはどうしてか、有名になるということか、と安澤さん。爲政篇18)に子張が、祿を求めることを聞いたとき、先生は、多く聞いて疑はしきを除いて言へば尤（とが）が寡（すくな）くなり、多くを見て殆（あや）うきを除き、愼んで行えば悔（くい）が寡くなる。祿は其の中に在ると言っている。人格的なことを学べば祿は自然についてくる、そういうことがいいたい、と高井君。古（いにしえ）の学者は自分の為にする、これは上達、今の学者は人の為にするイコール下達。人に見せるため、小手先だけでうまくする、根本が分からなくても出来る。ここのところ長々と述べる文が続いたが、ここは以下も含めて簡潔な表現になっている。人にみせるは人欲、古の人間は天理、根本的にものを知り、全体像をつかむ。そして学問を楽しむに通じるイメージがある、と川那辺さん。いや、素晴らしい。まさに本会ならではの読み方。上達、下達には全く納得します。朱子云々よりは、はるかに素晴らしい。これを知る者、これを好む者に如かず、これを好む者これを樂しむ者に如ず（雍也篇18）にも通じている。知ることで満足する、知るだけでなく、その良さを認識して楽しむ、積極的に生かす、と成田君。学而篇1) 人知らざるも慍みず、また君子ならずや。人の己を知らざるを患えず、人を知らざるを患う、にも通じる。天理や汙下は孔子の時代にはないもの、論語でいえば、仁、道。それで読むべき、修身のみでなく、政治につながる学問の視点も必要。孔子の時代は学問は政治のために行う、世のために学問をするからみがある。毛沢東も文豪であった、と稲垣君。唐代の韓愈もそのことを意識している。今は、世の中とうまくやってゆけなくても、古人の志を受けて自分は一生懸命に勉学に励んでいる。天命我を欺かじ、いづれ政治に参与できると言い聞かせていた。いつの時代でもそういう人がいた、と高井君。われわれも論語読書会で学んでいるが、これは己のためか、人のためか？それが問われることになる、と上田さん。今の世、事故米、五歳の子供殺した犯人が捕まらない・・・起こっていることが滅茶苦茶。古い話だが、明治天皇が「世の中の 人の司となる人の 身の行いよ 正からなむ。」と言われた、上の人が自己抑制をしなくてはいけない、自分の力を実現するのが、自分のパワーを行使することばかり考えている、と安澤さん。学者と読むのではなくて、学ぶでよいのではないか。学者を比べているのではなく、古の学と今の学の比較。自分を深め、自分を高めるが古の学。人の為は人に知られるじゃなくて、今の学、今の文化は当時の文化と異なるように、孔子の時代でも古と今とは文化が異なっており、今の学を知らないでおれば自己満足に陥る。今の状況を見て、古（いにしえ）の学で自分を高め、今の学で人に役立つように勉強する、どちらも大切なのでは、と高津君。ぼくもそう思う、だから人の為とは人に知られるでは分からないと質問した、と安澤さん。言葉だけをとらえれば、そう読むことは可能。しかし、論語のスタンスは古（いにしえ）となれば良いだが今となると劣るとなる、と成田君。論語には民に由らしむべし、知らしむべからず（泰伯篇9）とか、また古注などでは偏りがちな解釈になる。教育の手本とするなら、理に適った解釈も必要と思う、と高津君。中国人的な解釈、朱子はあの時代に哲学思想を使って説明をした、今の世なら今の世でそういうことがあってもよいのではないかと思う。朱子が論語を捻じ曲げているという批判もある、と成田君。高津方式、朱子方式両方の読みが出来る。この文だけをみれば、孔子が高津君の意味で言ったのかもしれない。古注の人や朱子は、この文がここに置かれていること、あるいはここに置いたことにより、そういう読みを伝統的にするようになった。人に知られるでなく、人の為にすは高津君のようにも読める、と稲垣君。為人民労働、と安澤さん。安澤さん、中国人より中国的、立派な中国共産党員じゃないですか、と高津君。人民の下にあって人民に奉仕するのが本来の共産党、と成田君。現実には共産党員は人民の上にたつ、と稲垣君。文質彬彬然後君子（雍也篇16）、古と今は文質のように両方そろって彬彬、と高津、稲垣君。高井君、人に知られると訳したのはどうしてか、と安澤さん。人の為でないとすれば、自分の為ではないから、人にのし上がるという解釈になってしまう、と高井君。己の為にす、自分の中に人格を完成する。目的が自分の中にある。人の為にする学問は人に知られる、人がその能力を知り、召抱えてくれる、目的が使う所の人、トップの目的に自分がそれに乗っかる、そういう勉強をすることになる、と稲垣君。古と今を同等と読むことは可能かもしれないが、孔子の言葉としてはそうはならない。古の学とは先王の道を学ぶこととされ、稲垣君が言うように政治にかかわるものであり、周なら王、魯なら魯公に仕えることを学ぶもので、魯で季氏など三氏の為に働く、あるいは陽虎のごとく下克上で政権を奪取するようなやり方に加担することを否定するもの。次ぎに出てくる蘧伯玉は邦に道があれば仕え、邦に道が無ければ（学）を巻いて懐にする、使わず仕えない、そういうあり方と上田さん。隠者みたいなことで、老荘の教えのようになる。現代なら論語が古の学とすれば今の学ならパソコンとか今の時代に合わせて人の役に立つことを学ぶ必要がでてくる。だから、ここは古の学が良くて、今の学は駄目みたいなことではなく、その両方が必要だと思うと高津さん。時代によって解釈もかわってくるから、高津さんが得てきた今までのいろんな情報や知識の中で解釈しようとしたら、時代に合わせて人の役にたつことを学ぶとなってもおかしくはない。でも、今も古注や朱熹の解釈が根強く残っているというのは、古のものには、何か今の自分たちが振り返って学ばなければならないものがあるのではないかと思う、と川那辺さん。鄭さんが居ないので言うなら、誰に向かって言っているかは書かれていないが、弟子に対する強い叱責のようなもので、三桓氏に合わせるような今の政治をやめよとしている、時代の流れ（春秋から戦国時代）からすればそうならざるを得ないが孔子はそれを否定している。現実離れしているけれど、と上田さん。私が鄭さんをやりましょう、学問は政治に参加することに直結して考えねばならない。為己、自分の能力を人にみせびらかさず、人に知られないことを遺憾と考えない。世の中が乱れておれば使うべきではない。冉有のように色々な所で孔子の考えに反したものを、自分の能力で実現するようなあり方を弟子に対して叱っている。自分の能力が見られていなくてもできるのが君子。以上鄭さんから、と成田君。泰山のことなど孔子が季氏を止めよとして冉有が従わなかったことなど分かるが、古によることで、人に押し付ける、古をほめるために言うのは分かるが、由らしむべし、知らしむべからず、そういう風なマインドコントロール、それだけを引用して否定するようなやり方には危険を感じる、と高津君。凝り固まった朱子学では、異なる意見をもつと殺されることもあり、そのつもり積もった歴史があるから、高津さんが否定したくなる。論語の使い方が間違っていた。色々な読み方を認める空気があれば、大変なことにはならず、世の中に活かせる、鄭より、と成田君。人は人民としても、他者、他人でも認めるところがみそ。学問をしているが、教授に認められるように、親が安心するようにと、自分のためのはずがそうでなくなっていることがある。上役や家族のために使われているということはあるなあ・・・と稲垣君。読書会でもあるときは、自分の為、あるときは人の為、と成田君。時間となりました。来週の塾頭は安澤さん、よろしく。 安澤、稲垣、高井、大西、上田で一揆へ。参加者リクルートで電話攻勢の安澤さん。為己の場合は己に対する自信というが、己がこうしないと誰がするという気概があり、為人は人任せ、そういう気概がない、と酒場での延長戦。そんなことは読書会では一言もなかったのに！そりゃー、酒が入って出てくる話もある。勢い！勢い！飲んだ勢い。大西さんのつっこみではずむ高井君。忘れられた"ほっけ"の為に、終電までに終わらず、またまた午前様。それにしては冷え込み、厠通いの上田さんと高井君。半袖、短パンの稲垣君、酔いがぶっとんだことでしょう。 2008年10月4日　憲問　26〜28 安澤さんの電話で久方振りに登場の寺澤さん。前日に渋抜きした丹波栗、ことこと煮たマロン、ご馳走様中村（佳）さん。成田君の発音練習表、雍也第六から泰伯第八まで音読。本日の塾頭は安澤さん。 大西さんの質問にたいする回答と成田君。 乎fū　　 　　　純粹傳疑　純粋に疑問 哉　zāi　　　　純粹反誥　言っていることと逆の答えを予想する。行くのですか？行かない。 歟（與）yú　　要求證實　証拠を要求する。　何故するか？しないか？を要求する 耶（邪）yé　　要求證實　歟か耶か、それは方言による　　以上は言語学者　王力氏による。 女弗能救與　救う（止める）ことは出来ないのか、何故止めることが出来ないのか 不如林放乎　これは純粹傳疑、根拠を求めず、失望をあらわしているのみ。このへんに気をつけて読むと、読み方に深みがでます。しかし例外がある、と稲垣君 洋洋乎盈耳哉　これは反語ではない。何と耳に満ちることか、という強調。不是〜嗎 井有仁焉其從之也の也を耶とするテキストがある。この場合断定であり、疑問ではない。また、複式虚詞があり、不亦説乎、不得而見也、不可得而聞也とセットになる。 安澤さん、講演会の報告。中国では、2007年阿Q伝の魯迅が教科書からはずされた、また、世界史において、第一世界大戦と第二次世界大戦が選択科目となったそうです。 26) 蘧伯玉、人を孔子に使いせしむ。孔子、之に坐を与えて、問ひて曰わく、夫子、何をか為す。對えて曰く、夫子、其の過ちを寡なくせんと欲すも、未だ能わずなり。使者出ず。子の曰わく、使いなるか使いなるか。 衛の国の蘧伯玉のところに使いをだす。どういう用事が分からないが、孔子は座を与えて問いて曰わく、座につかせて問う。夫子、何をか為す、あの先生はどうしておられますか？使者が對えて曰く、夫子はその過ちを寡なくしたいと願っているが、まだ十分できてはおられません。使者が帰った後、先生が、使者だな、使者だな、さすがに立派な使者、親分の蘧伯玉はたいしたものだ。使者の受け答えをほめた。乎はさっき説明のあった純粹傳疑。夫子はどうしておられるのか？何をやっているのか？ご機嫌伺いか？夫子はあなたの主人、蘧伯玉のこと。何為は？何をしますか、進行形で何をしていますかのこと、と成田君。問題となるのは、過失をなくしたいと願ってのこと。孔子が立派というが、何が立派なのか？過失を少なくするとは、完全を目指すこと、95点98点としてもいくらかの過失はある。60点であれば、まだまだ。自己評価を厳しくしている。弟子もそれを言っている。普通は弟子は主人が立派な人と言うものだが、ここでは弟子も謙虚。皆さんは何故立派な使者と思いますか、川那辺さんどうですか、と安澤さん。いきなり私？意地悪く見れば、孔子に受けの良い答えをした。抜群パーフェクトな答え。二つ目は、蘧伯玉がこんな風に答えをさせる人、三つ目は自分が仕えている人に対してこんな答えが出来る、信頼関係がある。使者をほめることで蘧伯玉をほめている。どうしていますか？に対しては、普通なら違うことをいう。元気にしているとか成果をあげているとかそういう風なことになるが、この答えは出来すぎたもの、パーフェクト、と川那辺さん。もう一度、二番目は？と安澤さん。自分の主人がやっていることをそんな風に答えられることは、上の人が素晴らしく、その影響を使者が受けている。三番目は？更に安澤さん。自分の主人に対してこんな風に答えられるということは、上の人と下の人に信頼関係がある、と川那辺さん。孔子は子路に自分のことを「憤りを發して食を忘れ、樂しみて以て憂を忘れ、老の將に至れるを知らざるのみ。」（述而篇18)）と言ってくれというのがあった。ここの答えは素晴らしいものと思いますか？川那辺さん、と安澤さん。これは素晴らしい。過ちがないように努めているが出来ていません、というのは高いところを求めていることになる、と川那辺さん。それはぼくと一緒だなあ、高いところを求める、と笑う安澤さん。之に座を与えるは、之と座して、と思うと、高井君。二つ読み方がある。使者を迎える礼をとった、特別待遇をしたというものと、対等に座すというもの、と稲垣、成田君。使者を重んじたものであり、蘧伯玉をも重んじるもの、と成田君。蘧伯玉について上田さんどうですか、と稲垣君。蘧伯玉は孔子が生まれた頃に活動していた政治家。我々の時代なら終戦時に活動していて生きている人、中曽根さんの年齢にあたる。孔子が衛に出たのが56歳、蘧伯玉は90歳に近いと想像される。孔子は蘧伯玉がどういう政治家であるかはよくよく知っておられた。蘧伯玉は主君が悪いとしても、それを廃して政権を奪うという人間には組しない。道があれば仕えるが道がなければ仕えないというタイプ。後に60歳にして60回化したというほど自省をした人とされる。孔子は衛に仕官するということで衛にゆき、蘧伯玉の家に世話になっている。ここでは孔子が使者、蘧伯玉を評しているが、おそらく、仕官しようとする孔子をよく知るために使者を送り、蘧伯玉が孔子を評価したものであろう。魯まで使者を送るというよりは、衛に行ったときに、蘧伯玉が使者を出したというほうがありえたことではないか。孔子は蘧伯玉が噂どおりの人物、この人物のもとであれば、仕えられると思ったでしょう。実際は孔子は中傷を受け、衛では仕官できなかったけれど、と上田さん。上田さんは衛でということですね。朱子は孔子が衛を出て魯に帰ってから使者を出したとみています。ぼくも最初はそう読んでました。双方ともすでに隠居している年齢ですが、家臣や弟子達を含めたネットワークで結ばれており、国を越えて情報交換をしていた。孔子に聞かれて、使者が政治に関したものではなく、日常生活のことを、適度に、過不足無く、ゆきすぎもせず言っている所が素晴らしい。日常、自分を高めることにこだわりのあること、両方が理解しているし、教育も行き届いている。上田説では、使者をだすのは政治的意図があるとなるが、政治性が全く無い答えをしている。孔子が蘧伯玉を分かっている。そうした使者を送ってくるというのは、孔子にとってインパクトのあるものだった、と成田君。最初は面白くもなかったが、話を聞いていると、面白くなってきた。もし、朱子の言うように魯に帰ってからというなら、政治的なことが含まれている、衛に招きたかったが出来なかったことを遠回しに伝えている、とも思えてきた、と高津君。そうかもしれない、実は来てほしいと言っている、と安澤さん。使者を使って意図を伝える。同じ感じで、何気なく。過ちを少なくするとは色々な意味を持っている。使乎使乎、己を評価してくれる。プライドをくすぐられたという感じ、と稲垣君。自分のことを分かってくれなくとも・・・不知而不慍といいながら喜んでいる、と成田君。人物評点シリーズの一環、憲問篇14)にあった公叔文子を説明する公明賈のケース、上手く答え、雄弁に語って馬鹿にされる、何も答えられなかった子路のケース、そしてここの場合、色々ありますなあ、と稲垣君。 27) 子の曰はく、其の位に在ざれば、其の政を謀らず。 責任のある地位にない場合、政治を語ってはならない。泰伯篇にもでている。何度もでてくるのは重要なことなのか、二度もでてくるからたいしたものではないというのか、迷うところ、と安澤さん。次も関連するので一緒にやってください、と稲垣君。 28) 曾子の曰く、君子、思いて其の位を出ず。 君子はその職務以外のことは考えない、と安澤さん。位について前者とこれとどう使い分けてますか？と成田君。前者は責任ある地位、ここは職務、貝塚先生のものですが、穂積先生は前に出ているのでと説明がない。君子、思いて其の位を出ずの方が面白い。どんな考えを持っていても専門外のことは言わない。「ばかの壁」を書いたあの人、養老先生、専門は脳であって財務や政治は専門外、言うべきではない、と憂いている人がある。宮本武蔵は一芸に秀でると万事に通じるとという、どっちがいいのか分からなくなってきた、と安澤さん。仁者は惑わず、どっちかに決めなければ、と稲垣君。40歳を越えていないから大丈夫と笑う高津君。専門外というが、専門であっても、その場所にいなければそれを言ってはいけない。辞任した中山国土交通大臣、文部大臣の時であればいいけれど、国土交通大臣として言ったことが場違い、と成田君。泰伯篇の時に台湾の張さんは、季氏が魯で、君公にとってかわって政治をするようになった、それを言っている。鄭さんは、君子は自分の専門をしっかりとせよ。知らない事は聞くように、ということだった。その位をどうみるかが問題、と上田さん。位は、易の中では、大きな言葉。当時政治レベルでは身分、階級、そうでない使い方がある。憲問篇の最後に闕黨の童子の話しがあり、その童子が、其の位に居るを見て、とか其の先生と並行するを見て、それは益を求むる者ではなく、早く一人前になりたがっているだけというものだが、この場合の位は身分、階級、職務というより分（分際）のことを言っている、と稲垣君。「心の欲する所に從いて矩を踰えず」、専念する、はみ出ない。易の「君子以思不出其位」、艮(ごん)のことで、艮は山をあらわし、止まるところを知ること、と高井君。これは、張さんの説と同じく、当時は周に代わって諸侯が覇者となったり、大夫が諸侯を牛耳るあるいは下克上のようなことが起こっており、孔子はそれを戒めていた。諸侯でないものが諸侯の地位につく、まるで自分が諸侯のごとく振舞う、それはダメということ、と上田さん。衛靈公篇に、蘧伯玉は邦に道が有れば則ち仕え、邦に道が無ければ則ち之を卷いて懷にす可しとある、と稲垣君。位を出でず、自分のことのみで、他のことには口を出すなでは、政治評論はできなくなる、と安澤さん。政治評論家の位であれば、それでよし、ただ政治活動をするのは駄目、と成田君。位を出でず、とは里仁篇5)に君子無終食之�闊瘰m造次必於是顛沛必於是とあるように、どんな時でも仁を違えないという決意。君子であり続ける気構え、思うことといえば、ひたすら君子でありつづけようとする心構え、そういうことではないか、と上田さん。位とはどういうことになりますか、と大西さん。後者の位は君子、前者の位は周王とか諸侯というもの、と上田さん。古注は、この二つを一条につなげている。孔子と曾子の対話ではない。孔子と曾子の言葉をつなげたもの。孔子はこう言っているが、曾子はこう言っている。孔子の言った言葉を、上田さんのように、曾子がきまじめにそういう言葉としたとも考えられる。曾子は孔子の孫弟子で直接的な対話をすることがなかった。論語を編纂したのは有子や曾子の時代、その時にここにふたつを並べた、と成田君。上田さんのように解釈するなら、その位を出でずとは、政治に携わる人間は、まわりでごちゃごちゃ言われても、それに左右されず・・・口を出されて左右されるような人じゃ駄目という風にも読める。君子は寝ても覚めても君子なら、前文もそういう風に考えることができるのでは、すきがあるから口を出される、と川那辺さん。孔子の言ったことを説明している、と安澤さん。孔子と曾子が対立するようなことはない。朱子は上の条の言葉により、これを類比するから、記録者が上の言葉と関連づけて併記した。方向性は同じ、と稲垣君。 もう一つゆきましょうか、と安澤さん。時間ですからこのへんで、来週の塾頭は大西さんにお願いします。本日は寺澤さん歓迎で一揆へ。一足先に場所確保の安澤さん。着いてみれば、熊野古道からのご一行に混じって話がはずんでおられた。寺澤、安澤の二澤は生ビール。大西、上田組は瓶ビールで乾杯。寺澤さん、じっとこの時を待ってました。毎週でなくとも、途中からでも顔を出してくださいね。12月7日の料理の会もよろしく！と夜が更けました。 2008年10月11日　憲問　29〜31 学会を終えて、高井、稲垣君駆けつけ。成田君の発音練習表、学而第一から八佾第三まで音読。大西さんご不幸があり、本日の塾頭はまず先週もう一つゆきたかった安澤さん。続いては高井君。 29) 行は言行の行で四声になります、と稲垣君。子の曰はく、君子は其の行、其の言に過ぐるを恥じる。 君子は自分の言うことが行い以上になることを恥じる。行為の範囲内で言えということか、と安澤さん。これは二つ読み方がある。安澤さんの読み方、もう一つは、テキストにあるごとく、君子は其の言を恥じて、其の行を過ごす。�@君子恥（其言而過其行）�A君子恥其言、而過其行と高井君。朱熹は過（す）ごすとする、と稲垣君。私は一つ目の読み方、貝塚先生はその読み方です、と安澤さん。朱熹は過ごすを余りあることを欲するとしている、と稲垣君。行いに余りが出ることに留意する、言を恥じるは大仰にならないこと、と高井君。怪力乱神を怪・力・乱・神と読むか怪力・乱神と読むのかの差のようなもの。�@の読み方は分かりよい、これは言が行を越えないという関係、朱熹は�Aの読み方。一線があり、言はその線以内にとどまる、行は線を越える（過ぎる）、そういう風にしなさいということ、と高井君。憲問篇21)に「其れ之を言ひて怍じざる、則ち之を為すや難し。」とあり、一つは自分の言葉に恥がないなら、言行不一致になる人はいけない、もう一つは、言葉を言ってやましいところがない、引け目の場合と自信の場合、恥じざるに二つの意味があった。ここも二つ。言葉を言って、言った言葉が実行されない、それを恥じる。朱熹は言葉を恥じて、行いそれを越える。この二つどういう違いがあるかを考える、と稲垣君。�@はバランスのあること言が行を越えない、�Aはやることをやっておれば何をしてもよい、まあ、範囲内なら恥じることはない、と安澤さん。�Aの読み方の方が自然、いいやすいのでは、と上田さん。�@でも同じです、と高井君。朱熹が�Aなのは恥其言と過其行が対句となるから、と稲垣君。古注は�@、朱子は�A、日本では訓読ということで語順や読み方が変わるが、中国人は息継ぎの場所が変わるのみだから、それはつまり結果的にこうなるという説明。古注と朱子では説明の仕方が異なるが、内容的には大差はない。前後の関係からみれば、次の子貢とのからみで、この条のもつ意味がでてくる、と上田さん。古注は言ったこと以上に出来ないのは駄目。言と行動を分けて、言を抑え、行いは余裕を持たせるじゃなく、やろうと思う以上にやりなさい、とひねったものとなっている、と稲垣君。朱熹は恥者不敢盡之意。過者欲有餘之辭と記しており、これも対句になっている、と高井君。高井君が言ったように、過ぐすは、一定線以上する、やりすぎるくらいやる、と稲垣君。 30) 子の曰はく、君子の道は三つ。我れ能くすること無からむ。仁者は憂えず。知者は惑わず。勇者は懼れず。子貢が曰く、夫子、自ら道（い）うなり。 君子の道は三つあるが、どれもすることができない。仁者は憂えない。知者は惑わない。勇者は懼れない。その三つをどれもすることが出来ない。子貢は、孔子先生自らおっしゃったのだと言及した、皆さんどうですか、と高井君。孔子は自分を君子とはしていない、弟子にとっては謙遜の言葉ととらえた。そうして、子貢が弟子に伝えた。おそらく、子貢は先生のいない所で、こういったことを言いそう、と稲垣君。子罕篇28)に知者不惑仁者不憂勇者不懼とあった、順番が違うが、と高井君。仁なら仁で他でも色々言ったことを集めてみれば・・・と安澤さん。そのやりかたでは駄目と伊藤仁斎が言っている、と高井君。顏淵篇4)に「司馬牛、君子を問う。子の曰わく、君子は憂えず、懼れず。曰く、憂えず、懼れずば、斯れこれを君子というか。子の曰はく、内に省みて、疚（やまし）からざれば、夫れ何をか憂え何をか懼れん。」とあった。ここにも君子がでてくる。君子＝仁だけでは駄目で知も勇も必要、上田さんそう言ってましたよね、と稲垣君。それは童君が言っていたようだ。それはそれとして、ここでは子貢が"えっ"と驚いたこと、先生は他のところでは言いきっておられたのに、ここでは「我無能焉」と言ってから言っている。つまり、前条の「君子恥其言而過其行」と関連している。爲政篇13)に、「子貢問君子子曰先行其言而後從之」とあり、まず子貢にその言を行えと注意している。言語には宰我、子貢というのがあったごとく、子貢は言語、弁舌に優れており、次の条とも関連しており、子貢に対する戒めにもなっていると、上田さん。それは分かります、そうすれば朱熹の読み方がそれに合致してくる。宰我の場合には公冶長篇10)で「始め吾、人においてや其の言を聽きて其の行を信ず。今、吾、人においてや其の言を聽きて其の行を觀る。」と古注にあてはまるが、子貢の場合にはすごく才がきれており、それを叱っている。言行一致というより、弁論がかちすぎている。そうすると朱熹の読み方がよくなる。そのところで言ったことの比較。孔子はこういう謙遜をする。子罕篇6)に孔子は聖人かと聞かれて、子貢が聖人のみならず多能と答えると、「吾少（わか）くして賤（いや）しかりき、故に、鄙事（ひじ）に多能なり。」と謙遜して、だけどうれしさ半分のところもある、子貢の言ったことを、よく人のことをそんな風にいうね、といった感じ、と稲垣君。 31) 子貢人を方（たくら）ぶ。子の曰わく、賜は賢なるかな。夫れ我は則ち暇あらず。 子貢は人を比較しておりました。孔子先生は、子貢は賢いなあ。私にはそんな暇はないよ。人を比較してああだこうだ、悪く言えば、人をランクづけする、そんな暇はない。ではどういうことに時間を使うのか、と高井君。孔子は、自分で精進してがんばっているが人間くさいところが出る。嫌味ではないが皮肉な言い方ではある。公冶長篇8) で顔回と子貢とどちらが勝るかというのがあったが、子貢は自分に対する批判ととらえ、下手に出て、顔回は一を聞いて十を知るが自分は一を聞いてニを知るのみと答えたとき、孔子はおれとおまえではかなわない、とおれとがついてくるところで子貢にはがつんとくる。孔子らしいところ。子貢は言葉の使い方がうまい。述而篇14)で子貢が衛君をたすけるかどうか孔子に確認するために、伯夷、叔斉のことを持ち出して、孔子のしないという意向を引き出した。頭の回転は早く、機転もきく。孔子もレトリックで返す、孔子の教え方の幅のすごさがでている、と稲垣君。片言、片方の言い分を聞いただけで裁くことができるのは子路と、孔子がほめている（顏淵篇12)）。しかし、それに対して、自分は訴訟を起こさないような政治を実現するというのが孔子であった。子貢も孔子にない能力をもっていた。荒野で包囲されたとき楚にゆき援軍を連れてくることができたのは子貢の外交能力により、子貢は孔子の教団の財政を賄う貨殖の才もあり、諸侯のなかでは現実的には、子貢を孔子より高く評価するものがあったとされる。孔子の迂遠な助言よりは子路の率直な判断が好まれたとも思われる。ここでは、子貢の人物批評が好まれ、孔子は子貢は賢いとほめ、しかし、自分にはそんなことをしている暇はない、高井君がいうように、では孔子は何をするのかが問題、と上田さん。朱熹は、人物を批評して短長を較らべるのは、理を窮むることになるが、そればかりしていると、自分の心が外に向いて、自分で自分を治めることにうとくなる、とする。自分を治めることに力をいれていた。子張（師）と子夏（商）を比較して「師や過ぐる。商や及ばず。曰く、然らば則ち師愈れるか。子の曰はく、過ぐるは猶及ばざる。（先進篇15）」これも子貢が人を比べたがる一面がでている。子貢がどの程度批評したがるか、今の時代でも人物批評がある。時々軽いことを言っているなあと思うが、子貢とどこまで違うか。人のことを批評するのは、あまり気持ちのいいものではないが、と高井君。よくそういう風に人物批評をしてしまう、孔子に叱られるだろうな、と稲垣君。子貢が批評をするのはそういう意味ではなく、孔子も師とは言えど人間なんだから、子貢のその力にある程度のうらやましさもある。子貢は自分にはいたらないところはあっても、先生は私のことを十分にわかってくれている、先生には先生の道がある、でも私は私の道を歩いているみたいな気持ちがあるような。孔子の教団が放浪しているとき、財政をみたのは子貢、子貢が財力を集める自分にはない手管を持っていたことは、心の内では、孔子も分かっていた。お互いの胸の内を分かって言っている。暗黙の了解がある。暖かい弟子と先生の間柄がみえる。そう読むのは何か教訓を引き出そうとする論語の読み方からすると、外れているかもしれないけれど、私にはアットホームな気もする、と川那辺さん。アットホームではない。お互い認め合っているというのはそうですが。顔回と孔子との場合とは違う。お互い認め合っているが恥ずかしさがある。子貢はかげで言っている。何か陰口をいいたくなる、ついつい先生のいないところで言っている感じ、と稲垣君。陰で言っているとは思わない。心のなかで反芻している、独り言のような気がする。子貢はよく分かっている。顔回と孔子の関係は、孔子にとっては刺激的なものは感じない。子貢は頭脳派的な知的ゲームの感覚がある、と川那辺さん。宰予の場合では、叩き付けるようになる。孔子は人の評価には慎重、〜であるが仁であるかは知らない、という感じ。公冶長篇5) で「雍（仲弓）は仁にして佞ならざるや」と人物評をされたことを嫌った。あいつは仁者とか知者とか弁舌がないみたいなことを言ってはいけない、言葉だけのゲームでなく、そこを追及するよりは、実際に自分に照らし合わせて考える。慎重なのは言葉のこわさ、言えば言うほどはずれてゆく、人を傷つけることもある。言葉が独り歩きする、そういうところまで含めて孔子は考えている。仁とか君子の議論より言葉に対するおそれ、つつしみ、恥がある。自分のことを考えれば・・・・、と稲垣君。ユダヤの言葉、口は一つ、耳は二つ。しゃべるより2倍聞け、と高井君。默而識之（述而篇2）の默とは、聞いて頭の中で反芻した上での意。孔門の四科、すべて分けて考えていた、徳、政治、言語、文学と弟子を分けることが出来た。「閔子侍側�ｧ�ｧ如也。子路行行如也。冉有子貢、侃侃如也（先進篇12）」とあるが、侃侃とは朱熹は剛直と言っている、この二人が真直ぐ、ストレートに言うというところが面白い。川那辺さんがおっしゃるように、子貢と孔子は心が通じ合い、ストレートに言えたと稲垣君。 明日の学会に備えて帰宅の稲垣君。安澤さん、高井君の自転車組が先に一揆へ。徒歩自転車の川那辺さんと奈奈さん、上田さんはテクテクと。今回、グッドイブニング！終電には間に合いました。 2008年10月18日　憲問　32〜35 発音練習表、学而第一から八佾第三まで音読。本日の塾頭は川那辺さん。 32) 子の曰はく、人の己を知らざることを患えず。其の能くせざるを患ふなり。 自分のことを認められないことを気にするのでなく、自分に力がないことを思い悩みなさい。学而篇で「人知らずして慍らず」「人を知らざるを患う」とか憲問篇の「古の學ぶ者は己の為にす、今の學ぶ者は人の為にす」とか孔子が一貫して言っていること。人にアピールするだけでなく、自分の為にする。アピ−ルすることがダメということでなく、道理に合っていればやりなさい。人に認められていないという前提があって言っている。自分を知るのは天のみというものもあった。自分をなぐさめる言葉ともとれるが、後には天が分かっていない嘆くというものがあり、あきらめ、覚悟が定まっているではなく、かくされた自信があると思う、こういうことの専門家の安澤さんどうですか、と川那辺さん。それはその専門家にやってもらったら･･･不意打ちは困るなあ・・・「人知らずして慍らず」は北京オリンピックで出た言葉。ここで言っているのは素直に、日常のこととして、自分の思いが伝わらないときに、自分を励まし・・・自分が努力することにつながる。受け止め方で、人がどう言おうが、良い方にとってくれなくても・・・新しい弟子達に口癖のように言っていた。自分を分かってくれないときに、どういう態度をとるか、己の能力なさを思うこと。外に原因を求めがちであるが、と安澤さん。お勤めをされていて現場で高津さんどうですか？と川那辺さん。（後輩に）教えることは楽しいが、当たり前のことを聞かれて、気付いているが無視しているところがあり、一生懸命説明すると、自分自身がそういうことに気をつけることが出来る。ぼくは、人からどんな人と見られるかを、あまり気にしていない。自分の仕事が出来ていないので、反面教師として教えている。自分のために勉強する、人に知られるのを気にせず、自分のために勉強するに付け加えたいことがある。勉強するより、自分自身の質を高めること。そこに悩みがあるが、自分に対するいいきかせに聞こえるが、そうじゃなくて日々やることで自分の成果につながる。学は二の次、ぼくの中では、と高津君。精神修養が先ということですか、と川那辺さん。そこまで意識する必要はないのじゃないか、と高津君。ここでは当然政治的場面でのことをさすので、人に知られないという言葉がでるのは、当たり前だと思うのですが、そのあたり専門的にはどういう風になりますか、成田君、と川那辺さん。専門的知見じゃないが、人に知られることは嬉しいことで目的であるが、徳を好むに、色を好むがごとくするものを見ないといった話があるが、色を好むは男性として当然、それを前提としている。当時にあって、人に知られなくば人生終わり、それが前提で、それにもかかわらず、意識しないようにするのが孔子の事情、と成田君。余力があれば学ぶ、また、父母に仕えて力をつくし、君に仕えて身を致し、朋友と交って信あれば、そこまで出来ればその人は學んでいるとなる（学而篇7）というのがあった。人に知られるより、日々の行動に重きを置いているような気がする、と高津君。これは現代病の一因となる。人に認められなくて病んでいるのがほとんど。それからみてどうですか、道を示してあげるという立場にある中村（佳）さん、と川那辺さん。診療室に貼っておきたい言葉。人の己を知らざるを患う、それをつきつめてうち（診療所）に来る人が多い。人を変えるより自分の方を変えることがよほど簡単であるが、それが分からない。病気のレベルまでなるとむつかしい。正直言って難儀な患者がおり、治療してもなかなかよくならないが、長い間患者さんと付き合って治療して良くなっていくと、あの時になんで、あんなことにこだわっていたのかとなる、患者によって異なるけれど・・・、と中村(佳)さん。最後に、高井さんはどうですか、と川那辺さん。どうして分かってくれない？はよくあること。こんなに訴えているのに・・・なにかドラマになりそうな、どこにでもある。最後にといわれても言うことはないなあ、と高井君。他人と過去は変えられない、自分と未来は変えられる、と安澤さん。これも貼っておきたい言葉、と高津君。無私というのが日本の伝統。私ということは明治以降に入ってきた、150年前のこと。それから私を考えるようになった。元々日本人には馴染まない、そういう土壌があまりない、と高井君。今の若い人はあまり私ということは主張しない。主婦レベルでは私というと槍がささる。集団で動くのが主婦の心理、私達です、と川那辺さん。英語では、一般的に言われていることはThey say・・・・となるが日本語では〜と思われるですむ、私は考えない、と高井君。上田さんどうですか、と川那辺さん。ここはそういう私の問題ではない。人の己を知らざることを患えず。はよく出てくるが、ここでは不能がポイント。この言葉は通常弟子に対するものとされるが、君子の道は三。我れ無能（憲問25）とも関連する。三桓子の武装解除に失敗して、魯を出ざるを得なくなったとき、衛で仕官できなかったとき、荒野で窮したとき、自分より弟子の方が重宝されたとき、孔子自身が自分に言い聞かせてきた言葉でもある。川那辺さんの話にもあったが、天我を喪（ほろぼ）せり、自分が後世に知られるのは春秋、易の注釈としたくらいで、孔子自身も自分が後世何で知られるか、正確な見通しを持っていたわけでなかった。随分悩んで、自らに言い聞かせておられた言葉ではないか、と上田さん。前条に「子貢人を方（たくら）ぶ」とあった。子貢は自分を知ってもらえないことに悩む人生ではなく、人に認められているから、人を批評した。その子貢と全く認められない人とは孔子からみれば、そんなに変わらなかった。私は本当は出来るのに、と悩む。人からの評価により自分の評価を認める。自分の評価を人に押し付ける。そういうことに対して孔子はよく思わず、自分のことに集中せよ！が子貢に対して言った事、ここでもそういうことだろう、と成田君。 33) 子の曰はく、詐（いつわり）を逆（むか）へず、信ぜざることを億らず。抑（そもそも）亦（また）先ず覺る者、是れ賢か。 詐は嘘で飾った言葉で人をだます。逆は"むかえる"。事が起こる前に準備しておく。億はあれこれ思いを巡らす。相手に騙されているのではないかと、前もって準備したり、自分に対して信がないと思いを巡らさない。それでいて、最初からその心を読むことが出来るのは賢である。巧言令色、見分けがつかないような言葉にも、騙されているのではないかと疑い、自分に不信を抱いているのではないかとしていれば、余裕がない。そうではなく、相手の騙そうとする気力が失せるようなあり方。そうのような人間が寄り付くことが問題であって、いつわりをはねつける強さがあればそういった状態に関わることもないはず。高津さんどうですか、と川那辺さん。中国の諺に、「害人之心不可有防人之心不可無」、人を害する心は持つな、しかし、人はそうしてこないとは限らないので、それを防ぐ心は持っていないといけない、これはここの意とは違うけれど。川那辺さんの寄せ付けない、自分から呼び寄せないはいいポイント、と高津君。そういうもので悩む人は、寄せ付ける原因がその人にある。寄せ付けるは自分に問題がある。先に覚るはそういうものを含むと思う、と川那辺さん。不億不信は"信ぜられざる"と読む、"信ぜざる"だと自分が信じない、信じられないと方向が違う、先ず覚るは先に見抜く、と高井君。安澤さん、現実の仕事においてどうですか、と川那辺さん。仕事上で騙されることがある。例えば、後ろに暴力団がついていて騙されたりすれば、えらいことになる。そこは経験と裏付け資料なんかで判断。しかし、振り込め詐欺、投資で騙す人が多い、と安澤さん。詐を逆へず、信ぜざることを億らず、そういうことをしなくとも事前に察知するということだが、朱熹はそうだが、古注は、事前に相手の気持ちを探ろうとすると逆にその人から怪しまれる恐れがある。そういう人は本当に賢であろうか、となる。荻生徂徠は、最初のところは孔子の言葉でなく、昔の諺、それ以下は孔子の感想としている。先回りして探る、そういう人は賢だろうかといった解釈、と成田君。古注の賢は心のあり方ですか、と高井君。古注は、そういう行動をするのは寄せ付け、招きかねないということでは、と川那辺さん。成田君、抑亦〜乎で反語となるのでは、と上田さん。必ず反語になるとは限らない。朱熹はそういうことをしなくても覚るという読み方、古注は先回りしてはいかん、と成田君。子路は片言でというのがあった。片方を聞いて双方のことが分かったと解釈しているのだが、それは子路が相手の言うことに素直に反応するから、孔子が筏で海に出たいと言うと、即筏を捜しに行く、あわてて孔子がそれを止める。孔子の方が自分の本心を告げざるを得なくなる。聞いて相手のいいなりになっているのだが、あまりに素直に聞いてくれるので騙せなくなる。そういことを言っているのではないか、と上田さん。上田さんは古注の方ですね、と成田君。そうです、と上田さん。孔子が子貢に、お前と顔回とどちらが勝れているかと聞いた時、子貢は自分は一を聞いてニを知るだが、顔回は一を聞いて十を知ると答えると、孔子は私もあなたも顔回には及ばないと言った。一を聞いて十を知ることを必ずしも善しとしていない。一歩づつで良い、顔回のようにずば抜けたものでなくとも、一歩一歩で善いと孔子は考えていた、と成田君。上田さんの話も分かりますが、意地悪くみれば、それも作為ではないでしょうか。筏の話も余りに素直に行動に出たとなるかもしれないが裏をみれば、それをされた人物はどう思うかとなると・・・子路は孔子の心を読んでいたのでは、と川那辺さん。それほど素直に聞けるというのは現実に実行できるかとなれば難しい。考え方としてはあり得るが。現実には探りを入れたり、疑われているのではと思ったりしますからね。成田君が言うように、顔回のようにパッと分かるというより、どんな弟子でも先回りすることより、一歩一歩やっていけばやがて相手も騙せなくなるという方向、と上田さん。 34) 微生畝、孔子に謂て曰く、丘、何をかする。是れ栖栖する者か。むしろ佞するか。孔子の曰はく、敢へて佞をするに非ざるなり、固を疾んでなり。 栖は息をはずませせかせかしている。佞は口が上手い。固は凝り固まる、融通が利かない。微生畝は隠者の名前。細い畝を耕す人、百姓のおじさんみたいな名前（微生が姓、畝が名と成田君）。すみません、勝手に人のイメージををつくりました。孔子に尋ねました。おい丘、どうして忙しそうにせかせかして、口先だけべらべらと人の相手をしているのか。孔子は、人の機嫌をとっているのではない。凝り固まった人がいやでこういうことを言った、ということですが、よく分からない。丘と呼んで尋ねるとはどういうことか？佞は孔子にとってどういうことか？固は孔子にとってどういうことか？孔子がどういう立場であったのか?皆さんに話していただきたい、安澤さん、と川那辺さん。丘は呼びすて、立場の上の人が批判して、何すれぞ、どうして栖栖、うろちょろしているのか？あちこち就職活動しているのか？佞は孔子が嫌ってから一般的なことば（口達者）となる。固をにくむは、固は栖栖の反対の言葉、固になるのをにくむから、と安澤さん。高井さんどうですか、と川那辺さん。固をにくむ、はむつかしい。丘は呼び捨てにしている。求職中のこと、アクセクしている。何でアクセクしているのか、はこの人がアクセクしていない人ということ。栖栖の反対は固ではなく、佞と固が反対、と高井君。高津さんはどうですか、と川那辺さん。固はかたい、融通が利かないこと。自分の組織だけで、考え方を固めているのはよくない。井の中の蛙。固はいいときもある、巨人の星の星一徹みたいに。佞は悪いイメージでなく、後の人が悪くした。孔子が批判して、ひねくった。孔子の時代の佞は悪い言葉ではない。公冶長篇5)に「雍は仁にして佞ならざるや」とあった、佞それ自体は中立的な意味、と高井君。孔子が悪く言ったので悪くなった。口給（口達者）を以てすは屡（しばしば）、人に憎まる、見識を披露したいのかと皮肉っている、と高津君。微生畝は畑を耕す人ではなく、ここでは孔子よりかなりえらい人。いきなり呼び捨てにするのは無礼、孔子が認めている人でないとおかしい。言い方としては親しみのこもった言い方。半分冗談でちゃかしている。何でお前はうろちょろ、あくせくしているのか。いつも佞が嫌いと云っているがお前が佞をしているではないか。面白くもない、すすんで佞をしているのではない。ただ固が嫌だから。古注にしても新注にしても、政治の場を求めて諸国を巡ったが、それでその国の為政者に言ったが佞じゃないとする。固は世の中が凝り固まっているのを変えようとしている、言って聞かせなければならないと弁解が一般的。おおまかにとらえると、孔子の政治場面でのみじゃない、世の中の固を正す、自分も固となるのも嫌だ感じている。孔子にズバリと物が言える人が、厳しい意見を言う、片や、孔子は孔子で筋を通して上手くかわしている、と成田君。上田さんはどうですか、と川那辺さん。微生畝は、長沮とか桀溺という系列の隠者で、孔子に世をただそうなんて無駄な努力はやめたほうがよいと忠告をする。佞はその弁で外交の場で衛の霊公を助けた祝鮀の佞（雍也篇14）と称賛されたくらいで、悪い意味ではなかった。仲弓は仁であるが、そのような弁が無いと言ったことで孔子が怒ったものだが、諸国を巡って売り込むには、佞は必要。ここで、孔子は佞といわれて、私は佞でないという、はねつけるような言い方をせず、好き好んでやっているわけではないと一応相手の言い分を容れている。先回りしていない。孔子は受け容れてもらおうと何度失敗をしても、自分は人の世に生きていると、とことん駄目となるまでトライしている。隠者は無駄なこととかかわりを持とうとしない。それこそ固じゃありませんかと問い返したことになる。これは隠者との五分の分かれ、と上田さん。それは、うなずける、と成田君。僕は固まってしまった、と高津君。フリーズしたのね、横に佞の人が居るから大丈夫、もう一つやりましょう、と川那辺さん。 36) 子の曰はく、驥は其の力を稱さず、其の�ｺを稱すなり。 驥は一日千里を行く秀れた馬、また俊才を意味する。驥馬の力、体力を褒めるのではなく、その徳を褒めた。加地先生は名馬の脚力、体力を褒めるのではなく、節度ある風格・・・・宮崎先生は、血統より調教・・・・・・・生まれ持った性質でなく、生まれてから習得したもの、徳は後につくられるとされる。私は、力も徳ももとより備わっているもの。質と場所が違う。力を褒めず徳を褒めたとしても、どちらもなければならないと思う。徳に重さを置いているが持久力も必要。日頃の訓練で持久力は向上してゆく。生まれ持っての才能、好奇心、それを日頃の訓練から高めてゆく。本当に優れたものは、両方が必要、安澤さんのテキストではどうなっていますか？と川那辺さん。貝塚先生は、驥は名馬、中国の古典では、一日に千里を駆ける名馬とされ、脚力を褒められているのではなく、その徳を称する、品格を褒められている。馬の徳、馬の風格かな。穂積先生は、順良で悪癖のないことを称えている、況や人においてをや、と蛇足をつけていないところが論語とある、と安澤さん。人為的調教、馬の力を引き出すも一つのプロセス。千里も走れば、我慢強く走ってくれた、自分の役割のみならず忍耐強く走り続けることで･･･徳はあとからついてくる、走り続けることによってついてくる。人の場合も、自分からやったこと、自分の役割を果たしておれば、徳はそのうちついてくる、と高津君。馬にとって徳とは、と安澤さん。馬に聞いてくれ。品格もあるだろうし、関羽が死んだとき馬が飲まず食わずというのもあった、と高津君。スポーツ選手とノーベル賞受賞者の比較、馬と人間と比べるより分かりよいのでは、と川那辺さん。そうじゃなくて、スポーツ選手の速さではなく、スポーツ選手の徳が褒められるの意味、と安澤さん。私が言うのは、スポーツ選手もノーベル受賞者も目に見えるものじゃなくて、質が評価される、でも両方が備わっていることが大事、成田さんはどうですか、と川那辺さん。徳というのは従順で御者のいうことをよく聞くこと、よく馴らされているから褒められている。力は先天的、徳は後天的なもの。馬の千里の脚力があっても、人間が馴らさなければダメ。それを実行できる能力の備わっていること。今の世だと車。名車、ベンツ。パリ-ダカでベンツが完走したら、いい車と思うでしょ。車が裏切らず能力を発揮する、と成田君。馬は賢い。走らされるのが分かる。馬の性質によるが、走るけれども云うことを聞かないものもある。走り続けてくれる、役立ったことに徳を与える、と高津君。馬の徳が重要。水泳選手とはちがう。馬は人ではない、人でないものの徳。千里を走る、心が通じ合わないと落とす。千里を共にするは心が通じ合うところ、そこが重要と高井君。弟子と先生の関係、心が通じ合わないと、徳のある弟子は出てこない。弟子と孔子の間柄を言うような言わないような、と川那辺さん。北島選手とコーチ。北島は自分の為だが、馬は自分の為ではないなあ・・・と安澤さん。最後に、上田さんどうですかと川那辺さん。馬の徳ですか？当時は競馬というのはないし、馬が走るといえば戦車の馬ですか？分からないなあ馬の徳は・・・これは馬のことでなく、政治のことでしょう。政治には力でなく、徳が必要という主張。当時は覇者とか下克上とか力が台頭してきた世、流れとしては戦国で力が前面にでてきていたが、孔子は非現実的と馬鹿にされようが徳を称した、と上田さん。 来週は久方ぶりに成田君塾頭をおねがいします。本日は中村（佳）さん、所用で途中退出、先にでた高津君、携帯で一揆へ合流とのこと、自転車の安澤、高井組が一足先に。遅れて上田さん、本日一揆は珍しく、いつの間にか我等、四人組のみ。終電一本前の余裕のグッドナイト。 2008年10月25日　憲問　36〜37 発音練習表、学而第一を順々に１条づつ音読。為政篇は皆で。発音練習表の成果がでてきたかな、と稲垣君。是謂能養の養はyàng と四声で読んでいたがyǎng３声じゃないのですか、と大西さん。yǎngは養うことであるが、yàngは目下が目上に仕える意味に限定される。別については調べておきます、と成田君。来週は為政篇を１条づつやりましょう。本日の塾頭は成田君。 36) 或るひとが曰く、�ｺを以て怨に報ひばいかん。子の曰わく、何の以てか�ｺに報ひん。直きを以て怨に報ひ、�ｺを以て�ｺに報ゆ。 或る人、誰か分からない、徳によって怨みにお返しするならどうですか。徳は前回もでたように、馬も持っていた、そのものが具（そな）えているもの、善徳、悪徳、いい面の徳、悪い徳もあるが徳とだけ言えば、善い徳。古注も新注も、恩恵の徳、恵み施すこと、怨みに対して恵み、施すことでお返しするのはどうか、と言うと、先生は何によって徳にお返しするのか？もし徳によって怨みに報いるとするなら、何によって徳に報いるのか？と逆に質問した格好になっている。怨みに報いるに徳を使えば、徳に報いるにどうするか？直は素直なこと、筋を通すこと、直でお返しをする。徳には徳で報いる、怨みにたいしては直を用い、徳に対して、お返しをするのは徳、と或る人の考えを訂正した、と成田君。直とはどういうことか、と大西さん。真直ぐなこと、正直さ、曲がったことを認めない考え方、と成田君。高津さんどうですか、今日は安澤さんがいないから、と成田君。いきなりですか・・・いや・・・怨みにたいして徳をもって報いるは、なんとなくイメージとしては・・・まあお金をもって報いるとかすれば表面的にはおさまるが、本当にそれで報われているかとなれば・・・本当の解決策ではないみたいな、と高津君。恩恵を施す、恵むということで物理的に物をあげるじゃなくて、寛大な心で許す、人の怨みに対して広い心で許す感じ、川那辺さんどうですか、と成田君。最近はそういう順番になったの、と川那辺さん。川那辺さんの真似です、と成田君。怨みを解決するのはケースバイケース。広い心で許す、そうしないといけないときもある。私なら、この人に言っても無理だなあと思えば許した形式をとる。孔子が言いたかったことは、その人のためになるなら正面からぶつかってゆく、その方法が一番いい方法と思ったのではないですか。徳に対して徳は、政治家としてあるべき姿、上に立つ人は正々堂々と向かってゆくのが必要ということじゃないですか、大西さんどうですか、と川那辺さん。正々堂々でしょうが、怨みを買っていて正々堂々では相手がきかない。実際にはむつかしい。堂々と正しいことを言わねば・・・と大西さん。これは、或る人が言う怨みということに対して、孔子の怨みのとらえ方が違っている。次の条と関連してみれば、孔子は伯夷･叔齊が怨みを抱いていたかという子貢の問いに「仁を求めて仁を得たり。又何ぞ怨みん。」と答えたように、怨みに対してはその怨みを自省する方向。孔子における怨みは、人が自分を分かってくれないことを怨むといった観点になり、或る人の怨みとかみあっていないのではないか、と上田さん。次の条で孔子が天を怨む云々があるが、この条では或る人がいて人から怨みを受ける。両方の意味があるが、孔子が言う怨みが、或る人が言ったような怨みのレベルじゃなく、天とか道と直結する怨みを持つか持たないか、次元が違うからかみ合わないということですね。直をもって怨みにとはどう直結しますか、と成田君。素直に自分を反省するということではないですか、と上田さん。ここは、人から受ける怨みと理解したほうがよい。孔子は色々と人から怨みを受けたのでしょう。それに対して、逃げも隠れもしない、堂々と相対するという方向。次の次の条の公伯寮の件でも逃げ隠れせず堂々とした剛直な態度、・・・それが決してうまく働いたとは思えないが・・・ある人の怨みに対して、徳で対応する方法がうまくゆくのでなく、真っ向から対決してゆく方向、と成田君。直はよく出てくる、ポイントポイントででてくる。曲がれるに直を置く、間違いに対して直を持って来る、孔子はそういう考え方が強い、と高津君。それは孔子の理想。実際にうまくゆくかは別として、上に立つものはそうすべきと考えていた。ところで或る人とは誰でしょう、と成田君。偉い人だったら名前を記す。そうじゃない人。この条は読んでいておちるところがある。相手がこっちを怨んでも、こっちが寛大な心で許す。日頃どっちかといえば、こういう態度で行くと、太鼓もち的なもので、相手に好いてもらいたい、いつか相手が分かってくれると思ってやっていた時期があったが、孔子に叱られる。怨みに対して心を尽くす態度で接することは、善いものと悪いものを混同している。それはいけないとしている、と稲垣君。怨みに対して徳で対するべきじゃないか、論語はそういう精神ではないのか、と大西さん。名を正す、君は君たり、臣は臣たりとあったように、臣が君となるなど出来ないこと、弁別しなければならない。概念がズレていることを許さない。怨みという概念と行動、徳という概念と行動、同じく対応してはいけない。臣は臣の節を越えてはならない。それと同じことを言っている。人に接する時、嫌なことをされたとき、自分の曲げることが出来ないところは、人間関係がうまくゆかなくなっても、そうすべき、と稲垣君。或る人が誰だかわかると、全体が見える。或る人がでてくると、孔子は必ず反対のことを言う。孔子と近く、対立している人、と高津君。季康子じゃないか、と大西さん。そこまで偉い人だと名をだす、と成田君。孔子の盲点を突こうとする人。他の人の質問より攻撃的な言い方、と高井君。怨みに徳で対するは一般的にはいい事、この或る人に対しては違うとしている、と大西さん。お決まりのパターンでダメとしている、と成田君。孔子に怨まれている人とすると、どうなる、と大西さん。それだと大変なことになる。実際に政治に参加している人、弟子であまり有名でない、日夜考えをめぐらして、徳でもって怨みに報いるのがよいと思って質問すると、そうでなかった、と成田君。貝塚先生は、ある高位の人物、この人は力で高位をかちとったので他人からずいぶん恨みをうけているかもしれない。ひょっとすると孔子の恨みを買っていたかもしれない。そこで徳をもって怨みに報じたらどうかと、はなはだ底気味の悪いなぞを孔子にかけたとしておられる、と大西さん。貝塚先生のはだいたい面白い、と成田君。名前を出したくない人、時の権勢家で哀公、季氏より名の出て悪い人、あるいは論語編纂時には除名されていた弟子かな、と稲垣君。孔子は季氏を怨んでいるのでは、と大西さん。批判はするが怨んではいない。怨んでいれば、見るだけで嫌になる、節度をもってやってくれればいいと思っている、と成田。政治的な場における倫理判断、と稲垣君。それが直、孔子から季氏へは怨みでなく直、と成田君。徳が悪なりはあまり使わない。悪徳は論語にはない、と稲垣君。悪徳は仏教的、と高井君。何故徳をもって怨みに報いてはいけないか、徳を安売りしてはいけない、徳のインフレ状態はよくない。自分の中で徳が目減りすることを恐れる。徳を保全すること、と成田君。そういうときに徳を何故使わないか、状況が悪いときに徳を使わずしてどこで使う？と大西さん。怨まれた時誠意を尽くす、例として分かりよいのは、誠意を表すものとしてお金を贈る・・・もし、自分が借金地獄で誰かが助けてくれた時・・・より上の恩義に報いる何かをしてあげる・・恩人に対して報いるときは質がちがう、徳の目減りだが・・・と稲垣君。徳は目減りなどしない、と大西さん。大西さんのおっしゃるように、徳をつかったら目減りするというのは考えられない、と川那辺さん。管仲の時もそう、逃げていればダメ、と大西さん。徳をもって報いるは自己満足なことに過ぎず、そんなことまでして、好かれたいとなるのは分からない、と川那辺さん。好かれたいでなく、それがいいと思っている、と成田君。徳をもって怨みに報いるはおかしい。徳と怨みとは性質が違い、直と怨みは性質がちがう。並べられると（こう短い文章では）分かりにくい、もっと長い文章だといいのだが、と高井君。目減りは撤回、変質、使っていけない方向に使うとズレてくる。孔子は必ずしも実践できたわけではない。理想像、と成田君。怨みにどう対応する？相手に左右されたくないことを言いたいのではないか。老子に徳をもって怨みに報いるという言葉がある。釈迦の弟子の一人が、釈迦に仏教の布教に行くというと、釈迦が相手がののしってきたらどうするか？と問うと、その人に感謝しますと答えた。その人がぶったらどうしますか？と問うと、命をとらなかったことを感謝しますと答えた。殺されたらどうしますか？と問うと私に人を殺しめなかったことを感謝しますと答えた。それを聞いて釈迦はにっこり笑って行かせたというのがあります、と高井君｡流石は敦煌仏教説話の高井君と声がする。瀬戸内寂聴さんの人生相談、徳を積みても、怨み積らば、悲惨なことにもなりかねぬ・・・でひとしきり盛り上がるも、これは記録なしの記憶の世界。この条での徳は舜の徳。舜は継母とその子、父からもひどい目にあうが、彼等に孝を尽くした、彼は彼等を怨んではいなかった、それは伯夷･叔齊が武王を怨んでいなかったのと同じく、仁を求めて仁を得たと同じ。だから堯にして使うことのできなかったような異才の者が舜を助けた。そういう徳。いや、ここは人から受けた怨み、個人的なものでも政治的なものでも、怨みを受けたとき、どうするか、孔子の対処法が問題、と議論は尽きませんが・・・、次にゆきましょう、と成田君。 37) 子の曰はく、我を知ること莫きか。子貢が曰く、何為れぞ其れ子を知ること莫からん。子の曰はく、天を怨みず人を尤（とが）めず。下學して上達す。我を知るは其れ天か。 先生がおっしゃった。私を知ってくれるものがいないなあ。子貢がいいました。先生を知る人がどうしていないのですか。夫は疑問でも反語でもよい。先生が言いました。天を怨まない、人も尤めない、天や人のせいにしない。下學は下の方で学ぶ、君子上達とあった上達、上に到達する。私を理解してくれるものは天であろうか？この条もむつかしい。しかし、注釈は充実している。古注では、子貢が孔子が何故私を知ってくれるものがいないと言ったのか、それを訝（いぶか）っているのが最初の対話とする。孔子が云うに、政治の場面に用いられなくても、天を怨まない。人が分かってくれなくとも尤めだてしない。下においては人間社会を学び、上においては、天の命を理解する。聖人は天地と自分の徳を一致させる。だから天だけが理解をしてくれる。とまあ、あ、そうですか、というところ。新注は、孔子自ら嘆息、嘆いて、子貢の質問を引き出した。天に得るところがなくても、常に天に通行したいと思って得られなくても、天を怨まない。人間世界の人と融合してやってゆきたいが、それが出来ない。人と合わなくても世の人を尤めだてしない。下學して自ら上達する。出来ないことはあるが、下學と上達は出来る。それを自ら反省して自己を治める。聖人でない人が、知恵に至る道筋と変わらないが、その言葉を深く味わうと、天のみが知ってくれるという妙味が見られる。孔子の門下で、子貢の知のみが、そのレベルに達する可能性があるから、子貢に言って啓発しようとしたが、子貢には及ばない所があった。朱子が言っていることで、朱子がこれほど意見を言うのは珍しい。そういうところで皆さんどうですか、と成田君。子貢の前で言ったのは、子貢に言いたかった、と高井君。啓発じゃなくて、子貢だったら分かってくれると思って言った。子貢はわざとぼけて、後を孔子に言わすってことがよくあるじゃないですか、と稲垣君。ぼくが知っているじゃないか、でしょうと成田君。これは顔回亡き後ですか、と稲垣君。その可能性はある。孔子世家では、麒麟が捕まった時としているが、そこまで限定すべきではない、と成田君。政治的に身の危険を感じたときに、よくこの言葉がでてくる、と稲垣君。天となると最終的段階。伊藤仁斎は、知るは目上の人が分かってくれる、孔子の場合、失敗が続いており誰も分かってくれない状態、と高井君。そこから昇華しており、７０歳を越えて達観した感じ、と成田君。子貢なら分かってくれる、天しか分かってくれないという状況、と稲垣君。天が分かってくれるという自信はこの時ない、知我者其天也じゃなくて乎と疑問形。天、予に�ｺを生（な）せり、桓鬼隹、其れ予を何如（述而篇22）のごとき自信に満ちたものではない、と上田さん。それは空元気、自分自身を鼓舞したもの、と稲垣君。高井さんが燃えておられたところ（2007年6月16日）、と川那辺さん。ぼくは何と言ったのか？と高井君。天は私を見捨てることはないの方向、と川那辺さん。天を信じるものが内面にあった。ここではそういうものがない、と高井君。太平の世に現れるという麒麟を捕えたという話はどういう意味、と大西さん。聖天子がよい世を実現すると麒麟が現れるとされる。この頃狩りで麒麟が捕らえられた。それはあってはならないこと、正しい道が行われていないのに麒麟が現れるのは世紀末現象、と成田君。捕らえられたことの意味は、と大西さん。現れたこと自体がおかしい、捕らえられるはあり得ない、今の言葉でいえば、UFOが現れて宇宙人が捕まったようなもの、不吉、不気味、と稲垣君。孔子の運命みたいなもの、場違いな世に捕まった、と上田さん。麒麟が孔子というなら、前提として、聖人が現れたことになりますよ、世紀末現象にとどまります、と成田君。李白は「絶筆於獲麟（筆を獲麟(カクリン)に絶たん：聖人孔子のまねをして、同じく筆を獲麟に絶ちたいものだ。孔子は春秋を獲麟で終えたとされる。）で筆を終えた、と高井君。孔子の最後の言葉は論理的につながらない。何をいいたいのか分からない。論理性を超えたところに天がでてくる。朱子のなかではつながっているのかもしれないが、言葉のなかではつながっていない生の言葉、と成田君。言葉に出来なかったことがある。私を知るものは天か？言葉にできないものがあった、と稲垣君。最後のみ主語が天、その前は私が主語、と高井君。孔子のなかでは主語はない。イメージが三つポンポンと出てきているのみ。孔子が最晩年に自分の人生を総括することになった。天とのつながりを確認したい、そういう自分をさらけ出している。最初は、子貢の知の能力を、子貢が代弁してくれる期待があって投げかけたが、子貢としては、どうしようもない、と成田君。へたに慰められない、弟子としては、と稲垣君。孔子は自分が不遇と思っているのか？本来は政治の場で働きたかった、政治的実績もあったんでしょう、と大西さん。当時弟子も多く、就職してある意味では成功していたが・・・納得していた部分はあった、と成田君。死ぬ晩年でも、政治家でいたかった？と大西さん。孔子はやれといわれれば、出来ると見ていた、と成田君。孔子世家では、荒野で孔子と子路、子貢、顔回の対話を司馬遷が創作し、孔子が諸侯の政治顧問となり政治をただすことを断念した心境を描いた（孔子世家：孔子、蔡に遷りて三歳（BC489）参照）。道を究める方向に向かうが、子供の死、顔回の死、子路の死で、天が自分を喪（ほろ）ぼすという思いに駆られ、自分の名は春秋、易で知られるのみと追い込まれてゆく。学而第一の「人知らずして温（うら）みず。」と双璧だが、そののびやかな気分はここには全く無い。先生も暗澹たる不安、悩みと向き合っておられた、と上田さん。お時間で成田君門限にせかされ退席。 来週の塾頭は高井君にお願いします。一揆へは、大西、上田さんのツーショット。最近はお暇なようで、後半は二人で貸切状態。現今の極東情勢で一杯、日韓で歴史認識の作業を進めると、日本の学者は過去の怨みに直面する、この怨みにどう報いる？が大西さんの頭の中にあった。終電間際、あわてて退散。 2008年11月1日　憲問　38〜39 発音練習表、為政第ニを順々に１条づつ音読。八佾第三は皆で。yanはイェン yang はイアンで鼻音、と高井君。何以別乎の別（〇のつく：入声「にっしょう」の場合）について。 反切（はんせつ）表記法、A　B切　Aの語頭子音+Bの語頭子音以外、によれば �@彼bĭ列liè切　biè　だがbiéとなる　　　分別の別（〇のつく：入声の場合） �A皮pí列liè切　piè　だがbiéとなる　　　離別の別（一般的発音） これはピンイン表記による限界。 次清音　ｐ'　→　有気音　ｐ' 濁音　　　ｂ　は有気音ｐ'になるもの、無気音ｐになるもの分かれる。 清音　　　ｐ　→　無気音　ｐ �@�A共に無気音となり、列（レツ）は入声（末尾にフ・ツ・ク・チ・キのいずれかの音がくる漢字）、入声は上記表のごとく１〜４声、いづれにも変化し、別では２声に変化し、無気音２声となった。当時は唐時代の音と考えられ、列はlietに近いとされ、日本語でレツと残っている、と成田君。 38) 公伯寮、子路を季孫に愬（うった）ふ。子服景伯以て告げて曰く、夫子、固より公伯寮に惑へる志有り。吾が力猶能く諸を市朝に肆（さら）さん。子の曰はく、道の將に行はれんとするや命なり、道の將に廢（すた）れんとするや命なり。公伯寮其れ命を如何。 公伯寮は最初子路を季孫に愬えた。告訴するの訴える、悪く言った。この時子路は季孫の所に居た。子服景伯という人が居て、景は諡、伯は名前、魯の大夫。夫子はこの場合季孫、もとより、惑える志、疑念を抱いている。固よりは、元々。吾が力なおよく、これを市朝に、人の集まる所、市は人々の集まる所、市は買うの意味にもなる。朝は朝廷、えらい人たちが話し合う所、市朝に肆（さら）す。刑に処して、死体を大衆にさらす、それだけの力がある。孔子は道のまさに行われるも命、道のまさに廢（すた）れんとするも命、天命、これは対句。人がどうできるものではない。まして公伯寮がどうできようか。このように孔子が答えたと書かれている、どうですか、と高井君。新注では夫子固より公伯寮に惑へる志有り、季孫の公伯寮に対する惑志となるが、古注では、惑志は季孫が伯寮の子路を讒すを信じる、子路が危うくなる方向、ところで季孫は具体的には季康子ですか？と成田君。季武子です、子路を使って孔子は三桓氏の武装解除を行っていた。陽虎の政権奪取に懲りた三桓子は、斉との外交交渉で手腕を発揮し、陽虎と異なり、定公を中心とする政治の復興を行う孔子を評価をしていた。季孫氏の費、叔孫氏の郈の武装解除には成功するが、孟孫氏の成については、武装解除すれば斉から攻撃され孟孫氏が滅びると、宰の公斂処父（こうれんしょほ）が警告し、拒み、叔孫氏、季孫氏が同調しこの武装解除は土壇場で失敗する、そのことで孔子が魯を去る原因となった、そういう政治情勢における話、と上田さん。それは司馬遷ですか、と成田君。孔子世家にも左伝でも出ている、と上田さん。古注では夫子固よりは、まことにと読み、公伯寮が訴えたことから子路に対して不安感をもつことになる。こちらの方がいいと思う。新注では、季孫氏は公伯寮に対して不安感をもつ、だから死刑にする、公伯寮くらいのものなら私の力で出来ると子服景伯が言い、季孫の気持ちが子路に有利に働く。古注では、子路が危うくなるからなんとかするとなる、と成田君。ここでは、道が行われるか廃れるかは天命である、公伯寮ごときが何をできよう、とするが、これは実際の政治、軍事の行動。このような場合、最後の詰めみたいなときに、孔子は一押しせず結局失敗に終わる。軍事的に断固たる行動に出て、収束させて、定公の下に返せばいいのだが、そういう陽虎の下克上みたいなことはしない、それでうまくゆかない。天命などという話がここにでてくるが、疑問がある。公伯寮も孔子の弟子であり、弟子のなかでも分かれていたのかなあ、と上田さん。命のまさに廃れんとす、これも命と言うところが深い。命は自分に味方するばかりでない、悪い方でも受け容れる。命に対する畏れも持っていたことを読む必要がある、と成田君。論語の編者がこの条をここに入れたのは、天ということが問題となっている、と高井君。ぼくは最初これは晩年のことかと思っていた。先進篇23)で季子然が、「仲由、冉求は大臣と謂ふ可きか。」というところ、二人とも季氏に仕えているような言い方、留学中でどういう議論だったか分からないが、冉求が季氏の宰となるのは孔子が放浪から帰ってのこと、子路は衛に仕える前に季氏ところにいたということも想定され、その頃の話とみていた。孔子は以前に急進的なことを行って失敗をしたことがあり、孔子が手伝って、公伯寮を殺すようなことはしなかった、と成田君。公伯寮は何を訴えたのか、理由があるのでしょう、と安澤さん。それは書かれていない、と成田君。弟子の派閥争いがあった？と安澤さん。司馬遷によれば孔子に弟子が三千人いたということで、大勢の中の公伯寮、派閥で分かれるようなものではないし、派閥は無い、政治の場での話し、と成田君。公伯寮が子路を訴えるとは、子路に対して惑える心か、公伯寮に惑える心かどっち、と高井君。古注がいい、季孫が子路に対して不安感を抱いてしまったという感じ、と成田君。子服景伯は季孫が公伯寮に疑念を抱いている今なら公伯寮を殺すことが出来ると言っている、機会を失うと殺すことはできませんよ、ということではないのか、と上田さん。それは新注の読み方、古注では、子路はすでに危うい、と成田君。如A何は、Aは如何と同じ。「力抜山兮気蓋世時不利兮騅不逝騅不逝兮可奈何虞兮虞兮奈若何：力山を抜き気世を蓋（おほ）ふ。時利あらず騅（すゐ）逝（ゆ）かず。騅の逝かざる奈何（いかん）すべき。虞や虞や若（なんぢ）を奈何せん（四面楚歌、項羽本紀）」の奈若何、と高井君。 39) 子の曰はく、賢者は世を辟（さ）く。其の次は地を辟く。其の次は色を辟く。其の次は言を辟く。 賢者が辟けるもの四つ。世、地、色、言。辟は避。世を避けるを一般的に考えると、濁世から逃げる、隠遁、隠棲する、山奥に引きこもる。地を避ける、足の付くところ、自分の居るところ、そこも乱れている、乱れた国を去る。色は顔色、様子、自分を重用してくれない、上に立つ者のことを見て色を避けるは、重用してくれれば避ける必要はない。その色があれば去る。言、言葉、言葉に出す、さらにはっきりしている、言動から逃げる。世、地、色、言を避くは、より直接的になる。でかいものから小さくなっている。色はより抽象的、言は具体的になっていくと思った、と高井君。無理に戦うな、言うて聴かないなら、無理に説得するなみたいな、と安澤さん。古注では、「子の曰はく、作つ者は七人。」をつないで読んでいる。先生がおっしゃった、たつもの七人。古注はつなげるが、七人というのははっきりしない。七で多いかもしれない。荻生徂徠は、堯、舜、禹、湯、文王、武王、周公。何故書かないかは、皆分かりきって今さら書くに及ばない、ということらしい、と高井君。竹林の七賢人みたいに、と安澤さん。賢者と言うものがどういうことかが、次々に出て来て、私にはまるで等級分けみたいに見えるのですが、成田さんはさっき、より直接的になると言ったけれど、何故、世、地、色、言、と順番に書かれているのですか。もし意味があったとして、世、地、色、言となるなら、私が考えたら、世を離れるのが最終手段だと思うのに、どうして一番最初にくるのですか？と川那辺さん。朱子が引用する程子が云うには、四つは大小により並べているが、どっちが優れているかどうかでなく、境遇による、どれが善いとか悪いとかでない。下に行くほど分り易い、言葉、顔色、地方（邦）、世は世界全体。遇う所同じからざるのみ、重要なのは、そのタイミングであったということ、と成田君。七人は隠者、長沮、桀溺、丈人、石門、荷簣、儀の封人、楚の狂、接輿、と貝塚先生は名前を挙げている、と安澤さん。それは古注の説、作者が誰か、作（た）つ者、立ち上がって隠居した者、なす者は古注、実行した人の意味。もう一つは、述べて作らず、聖人の作った制度、法則を広める、自分が作ったものではない、聖人が作ったものという見方。孔子は七人を挙げた。古注でも説明が分かれている。世捨て人として伯夷、叔齊、虞仲。荷蕢、長沮、桀溺は地を避る者、柳下惠、小連は色を避る者、荷簣、楚狂接輿は言を避る者、鄭玄の説で、隠者説。七は十の間違いと云う。篆書で十は十、七は と成田君、だから七と十の間違いはある。微子篇8)に隠者七人（伯夷、叔齊、虞仲、夷逸、朱張、柳下惠、少連）が出てくるところがあり、朱子は七人が誰かを考えても意味が無いよ、と言う。制度を作った偉い聖人、張載、北宋の人、朱子学で周張ニ程、周敦頤、程��、程頤、の張載は伏羲、神農、黄帝、堯、舜、禹、湯が法を作って王道を興した、並みの人間によって述べられるものではないとした、と成田君。ここでは全部避ける、孔子はたとえどんな逆境にあっても我が道を進むイメージのある人なので、ここで避ける、避けるとなぜこの漢字が出てくるのか、不思議な気がする。他の漢字をあてはめてもいいのではないかと思う、と川那辺さん。それについては、二つ考え方がある。ひとつは、「世に道がないときどうしたらいいですか」という質問に対して答えたというもの。もうひとつは吉田松陰の考え方だが、文王の徳が高く、伯夷や太公望が集まってきた、文王のような人が居なければ、賢人は去ってゆくという方向で考える、と上田さん。その次は、論語のなかでは順番でなく、次善。子路篇20)に、子貢が問って、孔子が「己を行ひて恥有り、四方に使して君命を辱めざるを士と謂ふ可し。」とあり子貢が、「敢へて其の次を問ふ。」という。その次の条件、次善の意味、第一の条件があれば次に、という感じ。下に行くほど悪いではなく、金銀銅のなかでの争い。雄弁は銀、沈黙は金。孔子が避ける意味ではない。賢者は避けることが出来るが私は避けることが出来ない、と成田君。孔子はこの中に出てくる隠者をあまりよく言わないのでは、と大西さん。孔子の評価は隠者に対して低い。人間として種類が違う。そういう世界と自分は交じり得ない。子路が隠者と出会うとき、子路は隠者と心を交わすことができるが、孔子が出てくると交じりえない。ここには、孔子の不器用さが出ている、と成田君。後の時代になると、両方が肯定されるようになる。山にこもるは待ちの生き方ではない。隠遁するのはよしとされたことでもあり、どちらも評価される、と高井君。賢者とは？孔子は賢者と思うのか？と安澤さん。孔子は自分で自分のことを賢者とは言わない、と高井君。色を避く、は誰の色か、と大西さん。上に居る人、どうかと思うが他に読みようがない。世を避くは隠遁するが妥当、と高井君。伯夷は世も避けた。仁を求めて仁を得た。美しいこと。一つの生き方として肯定される、と高井君。伯夷は隠遁した人、しかし制度を作った聖人なら違う、と成田君。隠遁者のイメージは、と大西さん。高潔とかだけれど、実際は耕していた人、餓死した、と成田君。世間からはずれるが、勉強をして徳を得るようなイメージか、と大西さん。現実の政治を拒否する、しかし、逃げて隠遁しつつ後に役人になるなどというのもあります、それでは違ってくるけれど、と高井君。身を清くしているだけでは逃げているのみとならないか、と大西さん。自分を鍛え上げて世に尽くす、ぼくみたいのはないのか、と安澤さん。現在の解釈は、本は置き、自然の中にいる。隠者が勉強しているのは興ざめする。何だ、勉強していたのかよう・・・孔子は活かせないなら勉強する意味がない。孔子と隠者は相容れない、と成田君。世を去り精神生活を豊かにするではどう、と大西さん。それはそうですが、孔子の勉強は政治に参加すること、勉強すれば、政治に活かせるが孔子、と成田君。時間となりました。 来週はまた難しそうなところ、成田君塾頭をよろしく。一揆は今日も四人組のみ。寒くなり、おでんと熱燗。論語じゃなくて仏教で盛り上り、終電には間に合いました。 2008年11月8日　憲問　40〜41 高井君、立命館大学中文４回生の稲富君を同道。発音練習表、八佾第三を順々に１条づつ音読。里仁第四は皆で。特別な音声についての復習。處の平声はchǔ、動詞の場合、通常はchù、名詞の場合。知の去声はzhì、で智、孔子の時代には智は無く、あっても使われず知で代用、知る（動詞）の場合はzhī。好悪hǎo è　だが好むは、hào悪（にく）むはwùとなる。悪の平声はwū反語、いづくんぞ。放の上声fǎng、は、ほしいままにする、放つはfàng。唯の上声wěiは、はいとの返事、ただ、これの場合はwéi。幾の平声はjī、通常はjì。鮮の上声はxiǎn少ないことだが、ほとんどない。行の去声はxìng。數の入声はshuò、しばしばす。shǔで数える、shùで数（名詞）、と成田君。本日は靴の数が多いと安澤さん。中村（佳）、寺澤、高津、稲垣、大西、上田の10人。塾頭は成田君。 40) 子路、石門に宿る。晨門（しんもん）の曰く、奚れよりぞ。子路が曰く、孔氏よりなり。曰く、是れ其れ不可なるを知りて、而してこれを為す者か。 子路が石門に宿泊した。魯の首都、曲阜、城壁に囲われていて街があり、人の住む城壁の外に門、いわゆる砦、関所、交通を管理する門、詳しくは分からないが・・・晨門は門番。晨は早朝、早朝に門を開け夕方に門を閉じる。宿泊していた子路に「どこから来た」と聞く。子路は孔氏よりなり、孔氏は孔子の苗字、孔氏のところから来ました。孔子の門下の者であると言った。そうすると、それは出来ないと知っているのに、それでもそれを行う者のことか、行おうとする者かと聞いた。言葉の意味はそういうことだが、どうですか、と成田君。自が自分と〜よりの意味があるが、現代文でもそうですか、と大西さん。自分と〜よりはそう遠い意味ではない、と成田君。起点を示す、と稲垣君。自己、ツーチー、己からです。と高津君。来自日本、と稲垣君。履歴書なんかで　自　至　とある、ところで門番にも孔子のことが知れていた、と安澤さん。門番は魯国に雇われている人、人をいつもチェックしている。孔子は魯の曲阜においてはよく知られた人、と成田君。不可能なことと知って、あくせくするな、ととれる。荻生徂徠は、もし反対意見を出しているなら、何かその役がつく、だから無理と分かってやるは、褒め言葉としている、と高井君。朱子が引く胡氏は、世の中で出来ないことはやらなくてよい。それをするから譏（そし）っていると注釈している、と成田君。時期的には何時頃のことですか、と稲富君。これだけでは分からないなあ、と上田さん。石門は邑か、と稲垣君。石門は宿場、城外の近く、邑ではなく宿場、と成田君。宿場にしては石門とはえらそうな名前がついている、と稲垣君。宿泊しているとなっているが、どこかからの帰りで、子路が宿に泊まっていて朝早く門を開けると、子路がそこに居たという状況かもしれない、と成田君。どこからは場所でなく、どこの誰のところから来た、と高津君。Where are you from?　国か街か学校か、と成田君。学派を答える。京大とか立命大じゃなく、どこの者か、と稲垣君。孔氏よりが分り易い、そう言えば通った、と安澤さん。孔氏は学校というより、孔子の集団、と成田君。この頃の氏とは、と大西さん。氏と姓の区別ははっきりしていた、と稲垣君。姓というのは集団性が希薄、氏は氏族集団。〜の〜氏、一族郎党がまとまって生活している、と成田君。姓はルーツを示す、と稲垣君。氏は親戚ですか、と大西さん。親戚というより、一緒に生活している、と成田君。地名+〜氏が普通、と稲垣君。隴西の李氏といえば李白のこと、と高井君。太公望、呂尚、姓は姜、氏が呂、名が尚、と稲垣君。何時頃かをむしかえすが、孔子は魯で失敗して諸国を放浪して、帰ってきてから若い人を育てている。晨門が不可なことをがんばってしているという孔子は、まだ初期で政治を行っている頃のことと思うのですが、と稲富君。考え方としては十分成立するが、限定はできない、と成田君。もう一つの考え方としては、この条の置かれている位置からして、実際はどうあれ、それらと同じくらいと見ることもできるが、確実ではない。儀の封人が見（まみ）えることに似ている。無理と分かっていても世を変えよういうのは、個人的には賛成できる、と稲垣君。隠者のこういう考え方はよくでてくる、と大西さん。譏っているか褒めているかはさほど重要ではない、共感してるところ、無茶じゃないとするところ、入り混じった言葉、と成田君。門番などは中国の物語ではよく使われる、と稲垣君。項羽が劉邦と契りを結んで河を渡るとき、亭長という小役人が、項羽がなかばあきらめかけている時に、声をかける。社会的地位にいない人が、その人の人生のターニングポイントになるというのが中国にある、と成田君。関はホームとアウエーをつなぐトンネル、そこを守る人が、その人も中間の人、それが重要な役割を持つ、と稲垣君。仏教説話でもよくある、と高井君。屈原もそう、と稲垣君。伊勢物語にもある、と成田君。貴種流離譚で中国的な人がでてくる。隠者と孔子の話にはない広がり、中国文学や神話を宿すものとなる。もとにもどるが、ここでは、孔子と聞いて、あ〜あの人ね、という軽い感じなのかもしれない、と稲垣君。 41) 子、衛に磬（けい）を撃（う）つ。蕢（き）を荷（にな）ひて孔氏の門を過る者有り。曰く、心有るかな、磬を撃つこと。既にして曰く、鄙（いや）しきかな、硜硜（こうこう）乎たり。己を知ること莫くんばなり。斯れ已みなんのみなり。深ければ則ち�氏iれい）し、淺ければ則ち掲（けい）す。子の曰はく、果せるかな、難(かた)ひこと末（なし）。 　（童嶺君より） 孔子が衛の国で磬を撃つ。磬は楽器、ヘ字形の石を紐で吊るしたもので、沢山並べて音階ができる。孔子が演奏していた。そうすると蕢を背負って、子罕篇18)で山の土を運んで道をつくるときに用いる簣（もっこ）のこと。この時は竹製、土を運ぶもっこ、ここは草を編んで作り、背負っている。荷は去声でhè、普通はhé、荷物の意味、植物の蓮。ここでは背負っているので四声。蕢（もっこ）を背負って、孔子の集団が滞在している屋敷の門の前を通り過ぎた。心がこもっていることだなあ、感嘆の気持ちであるが、憂いの気持ちがこもっているともみる。既にしては、時間があいていること、その後、足を止めて耳を傾けていいた。「鄙しい」は都の反対、田舎くさい、洗練されていない、秩序が低い、ひなびている。（奥の細道では、おひなさんとひながかかっている、と稲垣君。）硜硜乎たり、石でできた楽器をコンコン叩く、カチカチでは融通が利かない、凝り固まっている、でけなす意味。コンコンする音が程度が低いなあ。「斯れ已みなんのみ」は問題あるところ、朱子の読み方では、ここは己の知ることなくんば、自分を知っている人がいなければ、もう、やめにすればいいじゃないか、それまでのこと。「深ければ則ち�獅ｵ、淺ければ則ち掲す。」は詩経「匏有苦葉」の句。河があり深ければ衣を腹の上までたくしあげて渡る、浅ければ裾（すそ）をつまんで渡る。掲はjieで��liと韻をふんでいる。河に応じて臨機応変にすればいい。そうすればいいじゃないかと言った。最終にも問題がある。朱子によると、果は果敢、果敢にもそういうことを言うなあ。何に果敢かは、世の中のことを少しも考えない、蕢（もっこ）をかかえた人は、世の中のことをよくもきっぱりと忘れられるなあ、もしそうであれば、難しいことはない。孔子は難しいと考える。世の中のこと、政治に参加して、理想の政治にがんばることは難しい。朱子の読み方はそうだが、これやまんのみ、斯己而已矣を斯已而已矣とみている。古注は、己を「おのれ」と読むから、自分のことばかり考えている。自分の才能を頼みとして考えるからそうなる。どっちかといえば、己の方がいい。朱子のように読めば、已而已が二回出てくる、斯已矣ですむことになる。自分の思っていることを実現したいとばかり思っている、自分の我を通すことばかりでとなる。蕢（もっこ）を荷った人、この人が孔子の気持ちが分からないのをそしった。それを果敢という。何故、果敢にも批判をするんだ。難しいことなしは、孔子自身は自分を政治の世界で思いを遂げることに困難を感じている。そういうことは、蕢（もっこ）を荷う人にはないのだろう。吉川幸次郎先生もここは難解とされ、よくわからないところ、と成田君。相手の方は楽なものだということになる、詩経の句は、古注では、�獅ﾍ着物を着たままザブザブと入ってゆくことではないの、と稲垣君。そういう読みもあるが、�獅ﾍ帯より以上と注がある、と成田君。色々読み方があるということか。心有るは心がこもっているとあるが、未練とかマイナスの心が入っているから鄙しい、と稲垣君。両方とれるが、古注は契契、憂いもだえる様で、評価しているか、けなしているかはわからない、と成田君。蕢を荷った人が孔子に伝えようとしているのは・・・有心は、楽器で伝えているということに気付いた、挫折しているかもしれないし、硜硜にも、こんなことがあるだろうしと伝えている・・・末之難矣がむつかしい、と高津君。否定形でしょう、と高井君。有心は肯定的。既にして、ちょっと間隔があかないといけない。その前では肯定的、その後では否定的ということでなく、後になると鄙しくなっている、洗練されていない、田舎くさい失望がある、と稲垣君。心がこもっている音、それが最低条件。実際聞くと、心がこもっているが内容がいやしい、と成田君。硜硜はいらいら、がつがつ叩いているのかな、と稲垣君。音そのもの、硬いもの同士がぶつかる音、心、心が硬い、の両方をあらわしている、と成田君。磬は石でなく玉で作ったという話がある、と高井君。玉は高価、そんな高いものを孔子が使うことはできない。蕢を荷った人が孔子の演奏を聞いて色々言うが、最後に孔子がふとこぼした言葉に意味があるんだろうが、その面白さが分からない、と成田君。古注はどういう意味だった、と大西さん。己を知ってくれるものが居ない。そういうことで、自分のことばかり考えている。「己を知ることなきに、これ己のみ」となる、と成田君。自分を知ってくれない。それでイライラするのか。独善ということですか、と稲富君。そうです。このことばかり考えて、まわりのことが見えていない、と成田君。蕢を荷う人が偶然聞いたというものでもなく、そこで言うことが孔子に伝わるのは、外から大声で叫んだものではありえず、誰か弟子がつたえているはず。また、詩を引用していることからすれば、教養のある人、蕢をかついで土方をするただのおじさんではない。孔子に自分の意思を伝えようとして意図的にやっていること。弟子の誰かに託して孔子に伝えている。そこで、最後にぼそっという孔子の言葉に、成田君がいうように面白さがあるのだろうが、そこがよく分からない。よくもまあ言ってくれるなあ、世をそんなふうに簡単にあきらめることはできない。そうすることはあの男には難しくないとなるのか、孔子にとって難しくないとなれば、どうなるのか分からない、と上田さん。ニュアンスがとりにくい、と成田君。難nánで困ること、難しいこと、nànで非難すること。末之難矣はこのことを非難してはいけない、そこまで言わなくていいかな、と上田さん。そうともとれるが「難しい」の方でしょう、と成田君。nànでは、流れからすれば、きつい言い方になるからnán がいい。何らかの意図をもってはあるでしょう。蕢をかつぐ人、孔子とは対立させられているが、詩を吟じ、こうして記録にも残っているくらいの人物、と稲垣君。隠者と称される人達、知識人であって世に隠れる、後の竹林の七賢人じゃないが、そういう人間がこの時期に生まれていたことになるのでは、と上田さん。こういう隠者は後に作られた可能性がある。隠者というものが出てくるのは、早くて前漢、後漢あたりかな、と稲垣君。老荘が成立してくる頃、老荘が出来る前に隠者があり、老荘がそれを使った可能性がある、と成田君。白川先生は孔子伝で、孔子の後には顔回を継ぐものが老荘的な要素を持ち、対極には孟子がいて、二つが対立していた。双方の要素があった、と稲富君。成田君の門限の時間。論語は郷党第十以降はそれ以降とは異なる。論語が編纂されるには、集められた言葉が本当に孔子の言葉かどうか吟味をされ、怪しいと思われるものと仕分けされていった。孔子家語などにはそういうものが残されている、後半は後に創作されたようなところもあるからなどと雑談が続き、来週の塾頭は稲垣君にお願い。 寺澤、中村（佳）、安澤さん、高津君は所用、稲富君歓迎ということで、高井、稲垣君、大西、上田さんは一揆へ。久方ぶりに本日は盛況、なかなか注文ができません。論語読書会で研究会じゃない。このごろは教養に欠ける人間が増えている、中国古典は人間どうあるべきかを考えさせる。だから、前から論語がええと言うてるやんか！読書会には色々な人が来ている。その人特有の発想をしますから、そこからでてくる反応が面白いのでもっと大胆に、いやだけど基本的なところははずせないでしょう、子路は門のところで、門番からお前さんならあの先生がもうダメだということは、先生より分かっているんだろう。だのにまだ一緒にやるんかいというところ。それなら、こんなところで言わず読書会でいわなくちゃ！一を聞いて二を知る。一を聞いて十を知る。ありゃ、10回繰り返して納得するが私の説で、二を知る子貢のほうがピンと来ている、どう？それは面白い、読書会も一杯入れてやらんとダメですかね、ここでやりますか？と盛り上がりました。最終電車に乗り遅れぬよう、では来週。 2008年11月15日　特番篇 中村（典）さん、久々の登場。発音練習表、里仁第四を順々に１条づつ音読。公冶長第五は皆で。特別な音声についての復習。妻゜右肩の○を圏点という。去声qìは｢めあはす｣普通はqīで「つま」名詞。女は上声はrǔ＝汝(なんぢ)、「おんな」の場合nü、乗は去声shèngは戦車などの台数、通常はchéngで乗ること。愈の上声yùについては来週に持ち越し。yùの発音はü。ju、qu、xu、のuもüであるがnuとnü、luとlü は区別がある。語頭の場合üはyuとなる。朝の平声はcháo 朝廷のこと、「あさ」の場合はzhāo。足恭（スウキョウ）の足は特別な用法、去声でjù、「あし」の場合はzú。前回のメモにzhùとありましたが、と大西さん。王力の辞書を調べるもjùですね。衣の去声yìは｢きる｣、｢ころも｣はyī。季文子三の三の去声sànは「みたび」、何回も、普通はsān「みっつ」のこと。三千丈が何故三百、三万丈にならないかというと、平仄による。三は多いということで三百、三万でもいいが、平声が揃うのは三千と三京、三京は普通は使わない。 一（入声）、二（去声）、三（平声）、四（去声）、五（上声）、六（入声）、七（入声）、八（入声）、九（上声）、十（入声） 百（入声）、千（平声）、万（去声）、億（入声）、兆（去声）、京（平声） 漢詩を作る時には平声とは仄声（上去入）を半々くらいに保つ必要がある。そうしないとバランスよく聞こえない。三千をそうと分かって使うことが求められた。少は去声shàoで「わかい」、「すくない」はshăo。と成田君。 現代中国語の１〜４声とはどう関係しますか、と中村（典）さん。平声は１か２声。上声は大部分が３声、４声となるものもある。去声は４声。入声は消滅、１〜４に分かれているが規則性はない。２声が平声か入声か、どっちから来ているか見分けるには、日本語でフクツチキが語尾に来るかどうかでも分かる。十（ジフ）、六（ロク）、達（タツ）、一（イチ）、歴（レキ）、と成田君。日本語のなかに古い中国の発音が残っているとのことで、中村(典)さん、蝸牛考に似てますねと本日特番篇がスタート。蝸牛は「かたつむり」「まいまい」「でんでんむし」と京の都で流行った呼び名が地方に年間200mくらいで拡散してゆくという。結果青森と鹿児島で同じ言い方が残るという現象になる。馬鹿も関東、「あほ」は後で関西どまり。ところで、雅楽は半島経由（高麗楽）、大陸経由（唐楽）のものがあり、日本古来の歌や舞、平安時代の謡物が組み込まれたものであるが、そのエキスみたいなところを取り出してみると能になると中村(典)さんはおっしゃる。唐楽というものも、中国では失われてしまったが、蝸牛考のごとく東南アジア、中央アジア、韓国、日本には残っている。中央アジアということは、遠くイランやインドの宗教や音楽の伝来経路でもあり、唐楽にそういう要素が入り込んでいるそうです。特殊な面をつけた舞楽に伎楽があり、これは面をみれば分かるように、仏教や中央アジア系の要素が盛りだくさんで、能、狂言というものにつながる。 西洋音楽の根底にはキリスト教があり、作曲はハイドンやヘンデルなどの時代は、演奏会にあわせて組み替え、編曲が行われ、作曲数が１００を越えるのがザラであり、その状況を変えたのがベートーベンだそうです。一つ作品としてのアイデンティティを確立されたのですかね。ところで雅楽などは西洋の音譜では表現しきれないところがあったのですが、現代音楽の表現形式を用いると笙などの「ういーん」とした音階も書けるようになったそうで、中村（典）さんもそういう新しい文法を使い、あるいは作り出して、自分の中にあるものを音楽の形にするに苦闘をしておられるようです。西洋の音階では田んぼや日本の情景が、麦畑みたいな欧風の情景になって、違和感がどうしても残るようです。 そういえば、鄭さんが、空海が密教を唐で学んだとき、中国人はサンスクリットの文法に馴染めないが、韓国人や日本人は似通っており、密教を中国人より容易に習得できたと言ってました、と上田さん。いや、それは鄭説で言語学的には違います、中国やチベットなどは孤立語、韓国や日本は膠着語、サンスクリットは印欧圏、屈折語に当たり、範疇は違います。屈折語は動詞では過去形とか未来形とか時制変化、あるいは女性形とか名詞変化、複数とかがきっちり分かれており、語順にかかわらず特定ができる。膠着語は接頭辞や接尾辞をくっつけて意味をきめてゆくことができるが、孤立語はひとえに語順で決まる。その考えは鄭さんが中国語を勉強をしすぎて、頭が中国語で一杯になったときに、ひらめいた鄭説でしょう、と成田君。どこかで鄭さん以外の人も書いておられた気がする、と川那辺さん。 実は、だいそれたことをやっておりまして、鑑真和上のミュージカルというかオペラを作曲しようとしてるんですが、中国語で行き詰っています。鑑真和上は五度も失敗して、六度目に失明してまで、日本に辿りついて教えを広めようとされましたが、日本に来てしばらくしてそれができなくなるのですが、と中村（典）さん。実際は、その時は見えていたという説もあります、と高井君。仏の顔も三度までで六度目ですからただ事ではない、と成田君。 日本の笛を演奏される方から笛の奏法や学理を学ぼうとすると、弟子入りじゃないですが笛の演奏のことを伺う前に色々修行みたいなことを経ないとダメでしょう、エキスだけを聞くってことはできませんから自分の年のことを考えれば、修行なんてなれば、人生終わってしまいますから、なんとかエキスだけ持ち出す方策を考えないといけないんです。西洋音楽なら演奏法とか学理を学ぶことはできるのですが。昔し鑑真の言葉を見たとき感じるものがあり、それをしまいこんでどこに行ったかわからないのですが、頭に色々あるのですが、オペラでは漢文にしたくて、それも現代の音じゃなくて、昔の音でなくちゃいけないと思うと、勉強してからでは絶対的に時間が足りないんです。中国から来ておられる方に教えてもらっているのですが、作曲のことをやればそっちに頭がとんでしまって。音も頭に残らなくて、２００文字くらいを覚えこむとなんとかなるでしょうか？中国語の母音はいくつですか？6個ですか、鑑真のことといっても、インターネットで調べるくらいしかできないのです、と中村（典）さん。6個じゃきかないでしょう。やたらありますよ、高井さん、辞書ではどのくらい、と成田君。50は越えてますね、と高井君。組み合わせたものを除いて基本的な音だけだとどのくらいですか、と中村（典）さん。a、e、i、o、u、üの六ですね、アラビア語は３つです、そのかわり子音が沢山あります、どの言語でも組み合わせれば同じくらいになるのでしょうが、日本語は７つです。イとオが二種類ありました。その音は発音せよといわれても分かりませんが、万葉仮名では区別されています、と成田君。文化と文化がせめぎあっているところでは、母音と子音の関係なども逆転して発展するということがあります、モーツアルトなどもトルコの音楽からは、西欧ではメロディーとか和音などが主で一定の方向に進行してゆくのですが、太鼓なんかのリズムが主で、そんなところを取り込むのです。アラブからは沢山のことをヨーロッパは取り入れていますが、砂漠のごとき気候が厳しくて、非常に極限的なところは合いません。副次的なことを取り去って、生のところでどうすれば橋渡しができるのか、鑑真が何を伝えようとしたのか、と中村（典）さん。 当時日本では僧侶になると免税されるので、多くのものがにわか僧侶となり、これを減らすのに、戒律を知る鑑真を用いて僧を制限しようとした、税のがれ対策に利用されたのでしょう。鑑真の言葉なら大正新修大蔵経に経典解釈などで出てくるでしょう、インターネットで検索すれば出てきます、国訳一切経にもあります。読み下し文がついています。京都なら花園大学や仏教大学、龍谷大学あたりで研究者がおられるでしょう、と高井君。日文研も、と成田君。中国語の文章では四文字、六文字というのが調子が整います。四六駢儷体といって、形を整えるあまり、内容が空疎になってしまうことがありますが、と高井君。私がみた文章もそれでした、その文体で強い印象を受けたと思います、と中村(典)さん。 ところでどんなオペラになるんです、と上田さん。鑑真のエネルギー、五度もうまくゆかなかったのに、高齢をおして日本にこられたこと、ガンジーという人も何か越えたものを持っておられたのですが、鑑真は、色即是空みたいなことではなく、実体があると唱えたという印象があり、悟りを開くみたいじゃなく、何か越えたものがあると思います。オペラですから男性だけでは困りますので女性がはいります。それに鑑真の弟子と日本側の弟子達、女性は光明皇后です、と中村（典）さん。光明皇后と鑑真の接点、二人を結びつけるものは何なのですか、鑑真と光明皇后の間にロマンスがあるのですか？楊貴妃というわけにはゆかないでしょうから、どういう心の結びつきがあったのですか、と上田さん。施薬院です、鑑真は仏教を教えるばかりではなく、人々の救済事業をやっています、と中村（典）さん。西洋ならキリストの神の愛にふれるというか、何か両者に共通する精神的背景があるでしょう？鑑真は仏教者といっても仏の心の伝道者という感じでもないし、光明皇后ともなれば、天皇家のご先祖や日本の神々がおられ、何に向かってこころが結ばれてゆくのですかね、と上田さん。そういうことじゃなくて、ガンジーとかおっしゃっておられ、皇后とは救済事業に取り組んでおられ、人道、人類愛みたいなものじゃない、現代に通じるものがあるってことでしょう、と川那辺さん。いや前に、韓国の舞踏家とソプラノ歌手とピアノ、太鼓の演奏を見せてもらいましたが、神寄せのシャーマンのごとき、魂を引き寄せる"いたこ"のごとき感があって、鑑真と光明皇后となれば、それがどこに向かうのか、そういう気がして、と上田さん。私も中村さんが作られた"マナ"というのを聴きましたが、上田さんがおっしゃるようにシャーマンのような、時に佛教を唱えているような、賛美歌のような、神につながるような。だからひとつの宗教的なものでなくて、何か天から降り注ぐようなもの。天というと論語の天もあるし・・・いろんな天があるかもしれないけれど、天や宇宙を想像しました、と川那辺さん。ところで何曲くらい作るのですか、と上田さん。5〜6曲です、と中村（典）さん。えっ、その程度でいけるのですか？ミュージカルってそうでしょう、いい曲がそれくらいあれば、それで展開ができます・・・全体でどれくらいの長さになります？そう、一時間くらい・・・最後は大合唱ですか？そうですね、と中村（典）さん。だったら、テキストはそう長くなくてもいい？そうですね、中国語で１ページくらいかな、と中村(典)さん。だったら手が届かないこともない。中村(典)さんが、日本語で5〜6曲分書き出して、それを読書会の若手に漢文にしてもらえばどうですかね・・・・、中村（典）さんの作曲過程が分かり、どんなオペラになるのか今から楽しみですね、と川那辺さん、特番篇となりました。 話はどんどん鑑真篇、一揆でも鑑真。鑑真とガンジー共通するところがあるようです。 2008年11月22日　憲問篇42〜44 愈はyu（4声）しかないが上声の指定があるので本来はyu（3声）であったかもしれない。二つの読み方があるものを破讀というが、愈はそうではない。発音練習表、公冶長篇の音読。 zi-zhi -ji 　　子zi　之zhi　及ji ci-chi -qi 　次ci　恥chi　其qi si-shi -xi 　　斯si　是shi　喜xi 中国の南方ではzi-zhi、ci-chi、si-shiの区別がなくｈを抜いて発音する傾向がある。しかし、ji、qi、xiとは混同することは無い。日本人はジ、チ、シで混同する。賜はciであるがsiが昔の発音。現代ではciだが昔の人や人名の場合はsiとなる。と成田君。そこへ登場した高津君、どっちで発音しますか？今の人はciだがsiの方かな。　本日の塾頭は稲垣君のプリント、成田君が代読。 42) 子張曰く、書に云く、高宗、諒陰三年言はずとは、何と謂ふことぞ。子の曰はく、何ぞ必しも高宗のみならん。古の人皆な然り。君薨（みまか）れば百官、己れを總べて以て冢宰に聽くこと三年と。 稲垣君のレジュメを読み、ということだそうですが、どうぞご意見を、と成田君。説命とは、と大西さん。尚書には稲垣さんが説明しているように五十八篇ありそのうちの一つ、と成田君。三年の喪とは25ヶ月、二年で24ヶ月、25ヶ月目で三年目、傳説という賢人で高宗が大臣にとりたて、色々と意見を述べたのを説命とした、と高井君。稲垣さんによれば、説命では「王」となっており、無逸では「高宗」となっている。「書に云う、高宗」ということは、説命から引いたものではない。稲垣さんが「五十八篇の約半数が東晉の頃（4世紀）の偽作」と述べているが、左伝とか古書からの引用であり、全く創作したものではない。論語にものっているということで引用されたものかもしれない、と成田君。三年言わずとは、三年間先王のやり方を変えないということ、父が死んで三年方針を変えないというのと一緒、これからすれば冢宰、今でいえば首相の役割が非常に大きかった、と上田さん。君主は死ぬ前に立派な冢宰を選んでおかないと大変なことになる。稲垣さんが、「子張は「三年」の意味を知らぬはずがない」、と書いておられるように、敢えて聞くということは、何かそうでないものを感じていたのでしょうが、何で聞いたのですか、と川那辺さん。稲垣さんは「君主が喪に服している三年間は、宰相と百官が一致団結して乗り切る、それが昔ながらの本来のあり方なのだと、孔子は言いたげである。魯の国は君主が葬礼に従わぬばかりか、百官も宰相も責任者としての自覚に欠けているという批判が、この条に読み取れるように思う。」としている。実際は三年間物をいわないということはないだろうが、と成田君。冢宰という立場には孔子の門下の人が就くということはあったのですか、と川那辺さん。魯公の冢宰ということはないが、季氏の冢宰にはなっている、と成田君。孔子の言うとおりにはなっていないということになりませんか、と川那辺さん。冉有が孔子に叱られています。子張の疑問が今の社会に向けられたものか、古の社会に向けられたものか、どっちともとれるが、稲垣さんは古にそういうことが出来ていたのかとみている、高宗だけそんなことをしていたのですかと聞くと、孔子はそんなの普通だ、誰でもやっていたことだと言い、子張としては考えられない、ということでしょう、と成田君。実際実行しようとなると、当時でも無理があったのでしょう。子貢は六年の喪を行っていますが。それでも孔子は三年の喪を実践せよとする。殷の伝統を孔子は好んでいる、と上田さん。蘇軾も三年の喪に服している、と高井君。孔子は殷の末裔と言ってます、三年となれば、部下が無能だと、国が滅茶苦茶になり、他国から攻められる懸念がある、やり手だと思うままに国を動かすことになる。そうならないようにしておくことが大事となる。喪中であるのにいけいけどんどんとなれば、他国から喪中だのに何と言うことかと非難を受ける。春秋から戦国時代でルールを無視することもあれば、それを口実に攻められることにもなる。時代の針を元に戻すことはできない。と成田君。稲垣君がこんなに書いてくれているのでいうことはないなあ、と上田さん。 43) 子の曰はく、上禮を好めば則ち民使ひ易し、と。 稲垣君のレジュメを読み、ということだそうですが、どうぞご意見を、と成田君。何に民を使うかというと、土木工事か戦争。土木工事でも事故で亡くなることがある。民の方が為政者に心服、信頼しておれば、使い易くなる。禮がいかに重要であるかを言っている。以政篇3に「子の曰はく、これを道くに政を以てし、これを齊うるに刑を以てす。民、免れて恥なし。これを道くに�ｺを以てし、これを齊うるに禮を以てす。恥あり且つ格る。」とあるごとく、禮を重視している、と高井君。今の為政者は禮を無視しており今の民は使いにくい、となりますね、と成田君。そういうことじゃないか。漢とか明という帝国、家康の江戸幕府のような統一国家ができれば、「上禮を好めば」は現実性があるが、戦国時代でこれを言っても、はいそうですかとはならない。それでも孔子は禮を主張するしつこさがある、と上田さん。司馬遷の史記に戦国時代の人で禮を重んじ、人々が彼を慕う。一介の門番（侯エイ）だが彼がすばらしい人と聞いて、ある人（信陵君）が禮を尽くしてその人を迎えようとする。そのためにパーティーを行うが、その人がやってこないので迎えに行く。一緒に行くことになるが、途中で用があると待たせる。周囲は苛立つのであるが、じっとその人を待つ、禮を尽くして待つ。その人が結局用いられるのだが、その人が居ることで秦から攻められることがなかった。戦国時代でも禮は重視されていた、と高津君。待たせるということは、それだけの人物であるとの評価を高める策であった、と高井君。食客三千人が居たともある。孔子の意見は間違いではない。しかし、そういうことが出来る人は上にはならない、なろうとしないところが面白い。そういう人がいると国は強くなる、居ないと国が滅びる、そういう事実がある、斉の国で下克上があったとき、そういう人がいたら、そういうことにはならなかったのでは、と高津君。歴史では生産力が重視される。周の禮は都市国家連合という時代には可能であったが各国がそれぞれ力をつけて競うようになると、それは崩れてゆきもとにはもどらない、戦国時代への流れは食い止められない、と成田君。司馬遷の貨殖列伝に今でいうグローバリゼーションというか、富が一国内にとどまらず、流動的となり、国際化してゆく様が描かれている、と上田さん。 44) 子路、君子を問ふ。子の曰はく、己を脩めて以て敬す、と。曰く、斯の如きのみか、と。曰はく、己を脩めて以て人を安んず、と。曰く、斯の如きのみか、と。曰はく、己を脩めて以て百姓を安んず。己を脩め以て百姓を安んずれば、堯舜も其れ猶ほ病めり、と。 稲垣君のレジュメを読み、ということだそうですが、どうぞご意見を、と成田君。稲垣さんが全部書いておられ、つっこみようもないのですが、「孔子の今の為政者に対する評価を聞き出すためのレトリックであった。・・・子路は一度聞いた教えは実践し、それが出来ないうちは新しい教えを聞くことを恐れた。後で聞くよりは、いっそこの機会に先まで聞いておこうという意図があったのだろうか。」としておられますが、子路にはそれほどの意図はなく、それならぼくもできると思ったのを、孔子が人を安んじることができるか、とだんだんハードルをあげて、子路がええっとなるような感じじゃないですか、と川那辺さん。ぼくもそのほうがいいと思う、と成田君。上田さんも賛成。レトリックは子貢にかんすることです。子路は、己を脩めて以て敬す、なら出来る。己を脩めて以て人を安んず、も出来ると反応する。孔子は子路は甘く考えてるな、では百姓を安んずことはどうだ。更に高いレベルを持ち出し、堯舜でも苦労したことが出来るのか？子路は、まいりましたとなる、と成田君。ぷっと笑い出すようなところがある、と川那辺さん。必ず最後にオチがつく、と高津君。その後子路はどうなった、と高井君。いつも絶句で終わる、言い訳するような見苦しいことはしない。稲垣さんは、「敬の対象は自分以外の他者であるから、「以て人を敬す」と理解」としておられるが、古注では、自分を敬すを含む。また敬事、学而篇5)に「子曰道千乘之國敬事而信節用而愛人使民以時」とあるように、事とは仕事、サラリーをもらう仕事、家庭内での孝養なども含まれるが、それを敬すは大事にすること。真摯に向き合うこと。自らを高めて自分の仕事に取り組むとなる、と成田君。 来週は高井君塾頭をお願いします。来られればやりますが、来られなかったら・・・稲垣さんみたいにレジメにすれば、と川那辺さん。一揆は満席で入れませんでした。珍しいことです。白木屋となりました。 2008年11月29日　憲問篇45 朗報ありと川那辺さん、中村（典）さん、アジア現代音楽祭から招請を受けられたとのこと。師走に一段とご多用、健康であられますように。本日塾頭は高井君、ええっ、ぼくでしたか、予習してない。まあ、やってください。発音表、公冶長第五を一人づづ音読。雍也第六については、夫（平声）fúそれ、その、語（去声）yùは告げる、上（上声）はshǎng、鮮（上声）xiǎnは少ない、衣（去声）yìは着る、使（去声）shìはつかいする、食（去声）sìは飯、説（去声）yuèは喜ぶ、遠（去声）yuànはとおざく、樂（去声）yàoは好むhàoに同じ、知（去声）zhìは智、と高井君。中村（佳）さん、uの発音はもっと口をとんがらしてください、川那辺さん、３声２声は２声をしっかり上げて下さい、３声は低くでて、上田さん、則がツェになってます、と稲垣君。 45)原壤夷（うづいに）して俟（ま）つ。子の曰はく、幼くして孫弟（そんてい）ならず、長じて述べることなし。老ひて死なず。是れ賊と為す。杖を以て其の脛を叩(う)つ。 　　（童嶺君より） うづにしては、うずくまって待っていた。孔子先生がこのように言った。幼かった時に、孫（去声）は従うこと、弟（去声）は孝弟、そうではなかった。長じては、述べることなくは褒め称えることもない、老、歳はとったが死んでいない。このようなことを賊という。賊というニュアンス、脛を叩く、これもどうとるかが問題、如何ですか、と高井君。うづいにしては注をみると蹲踞、相撲取りみたい、と稲垣君。皇侃によると夷踞竪膝、立て膝、体育会坐り、片膝をたてる、と成田君。楽な坐り方、夷は泰らかと稲垣君。ちゃんとした坐り方ではない、と成田君。唐とか宋くらい、それ以前は地べたに向かい合って坐る。唐以降は皇帝が御簾の後ろに坐るようになる。孔子の頃は地面に坐る状態、と稲垣君。胡座（あぐら）ですか、正座ですか、と川那辺さん。本来なら立って待っているべきなのかもしれない、と成田君、賛成する上田さん。貝塚先生は片膝、と安澤さん。韓国では女性が片膝たてで男性は胡座、と川那辺さん。日本では女性は片膝たてはしない、韓国では何故、と稲垣君。チョゴリが綺麗に見えるからだと聞きましたが、と川那辺さん。原壤は、あまりいい待ち方をしていない、と安澤さん。テレビを寝転がって見ている子を叱る親のような感じ、賊は注をみると損なう、朱熹は人を害する、徳を損なうと見ている、と稲垣君。古注は賊害という、と成田君。孔子の弟子で、逆鱗にふれることはあるが、手を出すというのははじめて、いきなり杖で叩くのは、どんな叩き方ですか、と川那辺さん。原壤は幼いときからの友人、古馴染み、叩くは打つじゃなくて、音でいえばコツコツ、ノックするような感じ、と成田君。原壤のお母さんが亡くなったとき、孔子は椁の準備を手伝ったのだが、その時原壤は木に登って椁について歌を歌うという始末。「（木目が）貍首の斑然（まだら文様のよう）。女の手を執るように卷然（なめらか）」ということで、従者がそんな人間とまだ付き合うのかと問うと、孔子は親しい者に親を失ってはいけない、故（ふる）い者に故を失ってはならないと聞くと言ったということだが、と上田さん。それは、何にでてきますか、と成田君。禮記檀弓下第四にあります、と上田さん。陽貨篇で孔子は子路に「仁を好みて学を好まざれば、その弊や愚。信を好みて学を好まざれば、その弊や賊」と言っている。徳目が一方的にあらわれるのは、愚で二番目が賊になりかねない、「郷原（えせ君子）は徳の賊」とも賊を使っている、と稲垣君。先進篇24)で子路が子羔を費の宰にすると、孔子がまだ早いから子羔をダメにする、それを賊（そこな）うと用いている、害悪、今で言うと老害くらい、と成田君。現代訳で壊人（huai（4声）ren（2声））とある、と安澤さん。かなり誤訳だなあ、と稲垣君。このごくつぶし、と貝塚先生が訳しておられる、と安澤さん。それはいい、と成田君。上を犯し乱をなす、ともある、と高井君。古注も新注も読みにくいところがある、しっかりせいや、このごくつぶしくらい、人間のいいところを損なうみたいな感じ。理性によってコントロールできない、いい方向に導けないの方向、と稲垣君。幼、長、老とあり、お互い分かり合っている知り合い。何でここに残したのだろう、と高井君。顔淵は若死にしている。それと比較すれば老いてこれでは、と成田君。述べないとはどういうことか、と安澤さん。吉川幸次郎先生は、人からないも言われない、名を成していない、と成田君。それに対して言及するところがない。大きくなっても誰も相手にしない、そういう状態で、老いても死なないでいるのは賊だよ、と稲垣君。必ずしも孔子の目指す人ではなく、世からはみ出ている人と孔子のかかわりを集めたのがこの篇、その流れができている、と成田君。お互い古い仲で、原壤が呼んだのか、孔子が呼んだのか、偶然ということもあるが、（偶然じゃないでしょうと成田君）そうでしょう。何か用があって会ったもので立って出迎えてくれてもいいだろう、と脛を叩いたが、その後どうなったものか、こういう面白い人もいた、と上田さん。型破りなひとで、老荘の徳と考え、交流があったのかもしれない、と成田君。禮について、人に接する態度、禮とのつながりからみており、この次の条、最後は若者について述べており、ここでは老人のことを言っている、と稲垣君。私はこれは、案外、孔子自身のことをダブらせて、とらえているのではないかと思う。原壤のとんでもない、突飛なこと事をしているのに対して怒っていたとしても、母親の亡くなったときのエピソードを聞くと態度を責めるよりもむしろ悲しんでいる原壤の気持ちを深く察しているような。この時期すでに孔子も杖をついている年齢から考えても、原壤だけでなく、今までの自分を振り返ってみれば、立場は違っていたとしても、自分もたいしたことがない、自分とオーバーラップしているところがあるように思えますが、高津さんどうです、と川那辺さん。孔子が自分を振り返ると、十五にして学を志し、三十で立つと・・・歳とともに上達してゆくべきものとみている。それをもとに弟子を教えてゆく、原壤はそのまま来て老、歳をとっている人。当時の中国のことは分からないが、自分の母親の世代では、老、歳をとった人は、権威を持って叱るべきで、原壤のようにずっと昔のままで出来ていると、孔子が心配するところでもある。自分を高めることが必要。その反例となっている、と高津君。さて、随分前のことだが、石原知事の女性に対する「ババァ批判」発言があったのですが・・・。しかし、読書会のメンバーはどんな発言かがわからず、迷走。高津君は、石原発言とかけて、原壤を高齢の女性と比較して、解釈したかったようです。さて、ここでの孔子の叱り方ですが、厳しく詰問しているというものではなく、あたたかさがある、と稲垣君。公冶長篇でも孔子は娘を獄に繋がれたが罪がないとして、公冶長に嫁がせた。両方とも狂にちかい、と稲垣君。原壤を叩いたとき、孔子はどんな顔をしていたと思いますか、と成田君。おい、もういい加減に立って迎えてくれてもいいだろう。原壤のことは昔からよく知っており、なんとかならんか、と上田さん。どんな顔ですか、笑ってますか、と成田君。笑ってはいない、困ったものだというか、と表現不能の上田さん。原壤も孔子の昔のことをよく知っていますから、鄙事に多能ですから、いろいろ言えないようなことも知っていた、と成田君。来週は憲問篇の締め、成田君塾頭よろしくお願いします。 本日は予定どおり一揆。安澤さんの学生時代の下宿生活、参考になりましたでしょう。12月7日は料理人稲垣のmy包丁がみられるか、請う。ご期待。 2008年12月６日　憲問篇46 発音表、雍也第六を一人づづ音読。３声２声の発音は日本人にはむつかしい。３声１声、３声4声はいいのですが、３声２声が３声１声になってます、上田さん、と成田君。 而第七の注意点。好とか（知、與）については省きます。識の去声はzhì、記憶する。齋の平声zhāiは“ものいみ”。国の名前の場合も平声だがqí、斉、斎、日本の名前斉藤は伊勢の斎藤氏の後裔zhāiの方。葉の入声はshè、セフ、人や国の名前、今の中国人では忘れられyè、エフとなる。飯の上声はfàn、“めし”、“たべる”はfǎn、食の去声sìは“めし”、shí、が“たべる”。枕の去声はzhèn、枕にする。射の入声はshèで、こだわらないなら去声shìでもよい。取の去声qùは娶qùからくる。和の去声hèは唱和する。以上の上は雍也第六で上声としていたのでここでもそうするのが一貫する、と成田君。 46) 闕黨の童子、命を將（おこな）ふ。或ひとこれを問ひて曰く、益者か。子の曰はく、吾其の位に居るを見る。其の先生と並び行くを見るなり。益を求むる者に非ず、速やかに成らんと欲する者なり。 闕黨は地名、党は今では政党の党、中国で党とは中国共産党。昔は仲間、ここでは村、闕という村、闕黨。そこの子供、冠をつけていない、弱冠ははじめて冠をつける、それ以前を童子という。命を行う、命令、指令を取り次ぐ役目。或る人が孔子に質問した。益者はみどころのある人。将来性があるでしょうが、控え目で、若いのにいいのではないか、と聞く。孔子は、私は、その童子が本来居るべき場所、命令を取り次ぐ仕事をしているべき場所にいるかを見る。先生は日本では教師、元々は年長者、年配の人。年長者と並んで行くとは歩く、同じところで仕事をしている。それをみていたところ、どうかというと、益を求める、進歩、成長を求めているのではなく、早く一人前になりたい、背伸びする、速成は今では悪い意味ではないが、昔は付け刃的で、いい意味ではなく、益者に対する否定となっている。朱子の解釈では、或る人が、孔子は学問にみこみがあるから、取次ぎの役目をさせて、かわいがっているのではないかと思いつつ、使っていると思った。禮では、隅に坐り、付き従わねばならない。年長者に付き従わず、同じところに居るのは、禮に合っていない。進歩しようとしているより、背伸びして大人のようにしたいと思っているだけで、取次ぎをして長幼の節を保つかを見たが、そうでなかった、と朱子は云う。皆さんいかがですか、と成田君。10代は背のびしたいものじゃないですか、と高井君。孔子がそんな風に否定しているとは逆に、或る人がけしからんとおもった。若い童子にそんなことをさせているのはけしからん。私が思ったのは、孔子がこの子が得ようとしているところは認めるが、世間知らずな至らないところを直すためにあえてその童子を取次ぎの役に当たらせ勉強させているんだと。この童子にはいいところがあると見込んでいると。だから、成田さんとは逆にとったのですが、と川那辺さん。或る人は益者かと問う。論語ではいい意味、ここでは益者ですねと聞いている。或る人の意見は益者でないかと孔子に聞いている、と成田君。そうとるべきものですか、と川那辺さん。益を求める態度ではないと孔子は否定しており、速成というのも悪い意味となる、と成田君。先週、稲垣君が原壤が老人、次が童子、若者と対比していたところ、と上田さん。上禮を好めば則ち民使ひ易し、があり、次に子路が出て話が面白くなり、世の中を治めることの禮を述べ、最後に二つ、禮を気にしない老人、禮を過度に追求する若者、原壤が若いときだったら、この童子と仲が悪かっただろうに。朱子は、闕黨（故郷）の童子に孔子が取次ぎの仕事をさせたとあり、孔子のところで勉強していた若者を前提としていることになる。根拠はないけれども、と成田君。闕黨は孔子の住んでいた村じゃないんですか、孔子が童子を使っていたというのは、どうも考えがたい、と上田さん。出身地、闕里出身となっているが、住んでいた所ではない、その名が出るのはかなり遅く、信頼できるか微妙で、論語に出てくる闕党と関係があるのかないのかもよくわからない。朱子は孔子の門番に童子を使っていたと見ている、ぼくはそうとは思わないが、と成田君。それなら子供を批判するより、それをやらせる大人を批判するべきじゃないの、と川那辺さん。大人と一緒のところに置いておいたらどうするかを見た、が朱子の意向。仕事はできていた。出来ているけど、そういうものではないとみている、と成田君。高津さんどう、と川那辺さん。孔子が言いたいのは、君は君たり、臣は臣たりでしょう。童子は大人に従ってやるべきということ、高津君。この子はその後どうなったのだろう、と上田さん。孔子よりは出世するんじゃない？当時はそういう風になっていた、と高津君。冉有タイプ、先生の言うことは分かるが、力不足とか言って自分を限る。壁にぶつかるとそっぽを向く、と成田君。上田さんはどう？分からないなあ、と上田さん。早死にか出世か、他をけちらかすのでは、と高津君。その後出会う人によるのじゃない、と川那辺さん。孔子について学ぶかが重要。朱子とは違って、孔子のもとで働く、はないと思う。弟子なら孔子の見方が突き放しすぎ。弟子なら叱るとかするでしょう、と成田君。違うとはどういうシチュエーションですか、と大西さん。闕黨から孔子の所へ使者がやってくる。使者の手伝い役として童子が孔子のところへやってきた、と成田君。ある人が何故、益者かと聞くのか、と大西さん。子供なのにいい仕事をしている、なかなか見込みがあるのではないかと思い孔子の同意を求めた、と成田君。孔子の住む村が闕黨で、そこにやってくる客の取次ぎをしている所にその童子が居ると思っていたのだが、と上田さん。孔子が闕黨に行ったという可能性はあるが、と成田君。大西さんとのやりとりが続きましたが、童子は孔子に仕えていた可能性もあり、そうでない場合でも、孔子の所に童子がやってきた可能性と、闕党に孔子が赴いた可能性があるということでしょう。 長かった憲問篇がやっと終わりました。 来週の塾頭は高津君よろしく。本年は12月13日(土)でおしまい。鄭さんが年末に来京との話しがあり、時間があえば、忘年会を急遽開催するかも、無理であれば、来年に新年会をしましょう。来年は教室の都合がつけば、金曜日に開催、1月9日（金）からのスタート。 一揆は、安澤さんが途中から合流して大西さん、上田さんの三人。日本史を研究する院生さんの一団に中国語の勉強を勧める安澤先生でありました。 2008年12月13日　衛靈公篇1〜2 成田君、中村（典）さんに分り易いようにと英語での中国語音声学phonologyと論語における特殊な発音一覧と新たなる発音表を用意。 Mandarin Chineseは北方官語、いわゆる普通話。syllable音節、例えば乱luànは l（Initial：声母）u（Glide：介母）a（Nucleus：韻腹、主母音）n（Coda：韻尾）からなる。 Initial：声母とFinal：韻母（Final＝Glide + Nucleus + Coda）とされる。Initial：声母はφ無いこともあるがConsonant：子音。Glide：介母もφ無いこともあるがVowel：母音(I,u,y)。Nucleus：韻腹もφ無いこともあるがVowel：母音(a, ə)。əはシュアイブ、あいまい母音。Coda：韻尾φ無いこともあるがVowel（i,u）、子音(n,ŋ)となる。Tone：声は音のレベルを下から5段階�@〜�Dに分かちTone1： 1声は�D→�D、Tone2：2声は�B→�D、Tone3：3声は�A→�@→�C、 Tone4：4声は�D→�@となる。 Initial：声母のConsonant：子音の発音については、音が発声される部位、Labial：唇、Alveolar：歯茎、Velar：軟口蓋、Alveolo-palatal：歯茎硬口蓋、Retroflex：巻舌、とPlosive：破裂、Affricate：破擦、Nasal：鼻、Fricative：摩擦、Approximant：接近のマトリックス、Plosive：破裂、Affricate：破擦については更に、tenuis：無気とaspirated：有気の区別がある。 Final：韻母については、Nucleus：韻腹(a, ə、φ)の３パターンで、Glide：介母（φ, I,u,y）とCoda：韻尾（φ, i,u, n,ŋ）マトリックスで決まり、pinyinピンイン表記を添えている。erは例外。 Middle Chineseは中古漢語、隋、唐初の音で切韻といわれる。この時代のCoda：韻尾の子音は(m,n,ŋ,p,t,k)となる。はp,t,k入声のことで、英語でいえばit, that, cup, deskのごとく途切れるように終わる。Four tones：四声は、：Level tone平声、Rising tone：上声、Departing tone：去声、Entering tone：入声 Initial：声母の発声部位にはGlottal声門（喉奥）が加わり、Voiced−が清音、Voiced＋が濁音。Aspirated−が無気音、Aspirated＋が有気音を表す。 Finals：韻母については、めんどうくさいので、Glide + NucleusとCodaでマトリックスにした。 Sino-Japaneseは漢音、呉音のこと。遣隋使や遣唐使以前の音は呉音、遣隋使や遣唐使は隋、唐など北方の音を最新の音として取り込んだ。論語、ロンゴは呉音、漢音だとリンギ、経は呉音ではキョウ、漢音ではケイ、お坊さんが慣れ親しんだキョウにこだわったので今でも“おきょう”、“おけい”とはいわない。呉音マma馬が漢音でバba、mがb、nがdに変化する。日本語には無気音p、有気音p’の区別がないので、が同じpになる。 新たなる発音表には、色々と工夫がこらしてあると、成田君。 説明の終わったところで中村(典)さん登場。音楽ではこういうことを勉強してますとのこと、稲垣君によれば、大学で半年かけて学ぶ内容。旧発音表、述而第七を一人づづ音読。本日稲垣君、大学で聴講されている津布良（つふら）さん同道。詩を中国語で暗誦しておられるとのこと。 泰伯第鉢の注意点。巍巍乎wēi wēi hū が通常だがwéi wéi hū、の方がいいと稲垣君。ngではじまり日本語でギとなるものは2声、ngがない場合、威はwēi、１声と成田君。校はどうですか、と中村（佳）さん。校は名詞の場合xiào、動詞の場合jiàoと成田君.本日の塾頭は高津君。 1) 衛の靈公、陳を孔子に問ふ。孔子、對へて曰はく、｢俎豆の事、則ち嘗てこれを聞けり、軍旅の事、未だこれを學ばず。明日遂に行る。 2) 陳に在して糧を絶つ。從者病んで能く興つこと莫し。子路慍りて見へて曰く、君子も亦窮すること有るか。子の曰はく、君子は固より窮す、小人窮すれば斯に濫す。 まずは前半から、靈公は衛の殿様、陳は陣で軍事のこと。兵法について孔子に聞いたところ、俎豆は祭のこと、俎豆のことは知っているが軍を扱うことは学んでいない、と答えて、あくる日に他の所へ行った。ここで孔子は、軍隊、兵を使うことは知らないことはないが、国を治めるには、兵を最初にすることに違和感があり、国を治めるには俎豆、つまり内政、これを善くして国を豊かにしてから、軍事をかんがえるべきとした、と思うが皆さんいかがですか、と高津君。陳（陣）を問う、軍事でも色々ある。戦術、戦略、制度的、色々あるがどういう風に思うか、兵を問うとは異なる、と稲垣君。陣は、兵を使うのであるが、兵を並べて戦うのみではいけない。どういう使い方をするか、そういう陣形のこと、と高津君。軍隊をさすのは兵、兵は兵隊、兵器。陣というのは具体的な戦術。靈公は兵を並べる技術について聞いた。一国の為政者の考えることではない、と孔子はした、と成田君。俎豆はまな板と盛る器、どういう具合に並べるか、どういう具合に置いて使うかが陣、陣の張り方は分からないが祭器の置き方は知っている、会話の中でうまく孔子は切り返している。孔子は軍事のことを知らなかったわけではない。顔淵篇7)で、孔子は「足食足兵民信之」としており、兵、軍事を大切なものとしてとりあげている。子路篇30)で「不教民戰是謂棄之」と言っている、と稲垣君。孔子は霊公に良い心証を持っていないのでしょう。孔子が俎豆、禮を持ち出したことは強い否定、陣について問うた時に、相反する言葉をもってきたのはこれ以上、話を続ける気はない。何というか、最悪の対比、強い反感がでている。軍事を好まないということではなく、答えようとする気がない、と川那辺さん。国内の内乱に批判的。≪左伝≫では、哀（公）十一年、孔文子が大叔を攻めようとしたときに孔子を尋ねたことがあって、その時孔子は："簠（胡）簋（ほき）のことは知っているが工（甲）兵のことは知らない"と今回と似たような発言をしたことがある、なので、恐らく戦争を仕掛けようとする衛霊公を批判し、力になろうとしなかったとのでは、と高津君。司馬遷によると、靈公はかつて、蒲を伐つべきかどうか孔子に相談をして孔子は伐つべしと進言したが、結局蒲を伐たなかったことがある。このことがあって、孔子はまともに答える気がなかった。それと、司馬遷は、明くる日も二人の会話があり、靈公が雁が飛ぶ隊列を眺めてぼんやりしているのを見て、孔子は衛を去ることを決めたとしている。しばらくして、靈公は死ぬのですが、靈公が隊列に心を奪われていたのは、相続の問題であったのかもしれない。ひょっとすると、靈公はこの相続の陳に関する孔子の考えを聞きたかったのかもしれない、と上田さん。それは司馬遷の記述によるもの、論語を優先すべきで、軍旅の事としているのをどう解釈しますか、と成田君。孔子が軍旅の事を聞かれたと勘違いした、と上田さん。それはないでしょう。川那辺さんの意見で思いついたのですが、孔子は主君である霊公をたてて、お皿の並べ方などは知っていると答えたが、言葉の裏には、霊公に対する強い批判がある。ブレーンに求めるものが軍隊の並べ方しかない、それで次の日に去った、と成田君。陳が何故陣になるのですか、と中村（典）さん。陳はならべること、名詞化すると、兵をならべたもの、陣となる、軍でなく兵の並べ方、と成田君。古くは、なんでもならべることを陳と言った。後には兵をならべることに車を付した陣を用いた。孔子は言葉の上では、したてに出たが、心の中では、かなりきっぱりとした態度をとっている。皿のならべ方と同じくしか兵の並べ方を考えていない。泰伯篇4)で「籩豆之事則有司存」とあるごとく、君子として徳を修めることを述べている。器のことは役人のやること、本来なら、政治の命題を問うべき、仁とかもう少し高尚なことを聞くべき。・孟子なら、つまらぬことを聞くと馬鹿にする、と稲垣君。旅は500人、軍は12500人、それだけの人を並べる、兵隊を配列すること、と高津君。では後段にゆきましょう、と稲垣君。 最終的に、陳に着いて、行き場を失ったのですが、食糧を失い、病になる人がいた。そこで子路が慍（いか）って、「君子もまた窮することがあるのか。」と問うと、孔子が、「君子はもとより窮す、小人が窮すれば濫(らん)する」、君子は乱れてはいけない。子路が乱れているのに言い返した。子路は窮することに怒っているのではなく、史記によれば、病み倒れている人がいるのに、孔子は琴を弾いたりしており、そういうことをしている場合ではない、病み、食糧がない現状を憂えていた。と高津君。補足をしますと、孔子一行が陳に行ったとき、楚が陳を圧迫していた。楚は孔子を召抱えようとしており、陳と蔡の人々は孔子に楚にゆかれると、楚に滅ばされることになるのではないかと恐れ、孔子一行を囲って行かせないようにした、と成田君。従者とは何か、と稲垣君。孔子と一緒に行動している人、と高津君。従者といっても色々あり、一人のひとではなく、「從我於陳蔡者」（先進篇2）とあり、弟子のこと。病は病気ではなく、病み疲れる、皆うなだれて意気消沈のさま、と稲垣君。病は論語では、強い表現、病気がすごくひどい状態、ここでは立ち上がることが出来ないほど弱っている、と成田君。陳の国で食糧がなくなり、病気。その時、子路が孔子に聞く。孔子も子路も窮地に陥る。弟子たちがバタバタ倒れる。君子、ジェントルマンでいても大変なことになっている。何故、陳が同じところにあるのか（前段の陳：ならべる、と後段の陳：国）？これは詩人的な人が（前段と後段を）まとめている。詩を作ったとき、バイブルクラス、聖書的な並び方。争いがなくならない、両方あわせてみると、先のととのえ方、日常のことが出来ていないと、別の方法ではたてることが・・・このエピソードはそういうものがあります、と中村（典）さん。この二つが何故つながっているのか、と上田さん。二つセットに意味がある。どう関係しているかが問題。中村（典）さんがおっしゃる詩人とは朱子になる。この二つをつなげたのは朱子。論語はバイブルクラスではない。これをバイブルだと決めたのが朱子、と成田君。論語は聖なるバイブルというよりは、ヒューマニズムにあふれる・・・と川那辺さん。バイブル（旧約）には人殺し、叛いた心、盗人はズタズタ、読んでいられない。それを思うとバイブルはホーリーなもののみではない、と中村（典）さん。例えば、雪山で遭難して生きるか死ぬかという時に、口から出る言葉というのは、自分を信じてついてきてくれた隊員、弟子に何か人に教えるなんてことではなく、自分も相手も生きることに対して、奮い立たせないといけない。悲しく、辛く、深いものが含まれていると思うし、ここに何か教訓があるかと問われれば、ただ哀れな言い方だと私は思う、と川那辺さん。それほど深刻なものではない。ギリギリのものであることは確か。鳥の將に死せむとす其の鳴や哀し。人の將に死せむとす其の言や善し（泰伯篇4)、とある。zhènの音だが、昔は暗誦が基本。本などはなく、貸してもらえないから、写すか、写せないときは丸暗記、目でみると陳と陣は違うが、昔は音のみで聞いている、と稲垣君。今ではインターネットで視覚的に把握ができる。論語の記述は、私にとって他の星から地球に来て見ているようなもので、イメージで読むのみ。俎豆の事はみるなり、食べたり飲んだり。陳、陣、軍と旅とあり、否定されている。もっとすごいのは、明日がないイメージ。繰り出されているのが、小人がでたらめになる。ならないのが、中人か大人か、ちょっと大きくなってみようのメッセージ。ここで出来た論語がグランドテキスト。聖なる人として読むと、とんでもない失敗をしていることが言葉に残っている。表現？することで人格が崩壊していない。バイブルと同じようなにおいを感じる。前向きに展開する気持ちのよさ。大宰相になるような人が、間違いし、大失敗となるところを記録に残している。軍事を否定することは、聖なることです、と中村（典）さん。グランドテキストを感じておられるというのは、ピッタリきます。崇めて聖なるもの、それは正しくない。グランドテキストというのがいいと成田君。時間が迫っており、古注では、前段と後段はつながっていない。伝統的には分かれている。古注でも、邢�ﾓ(けいへい)、皇侃（おうがん）は次とつなげる読み方をする。朱子は三つをひとつとみている、と成田君最後のコメント。司馬遷は次とつなげて、荒野での孔子と子路、孔子と子貢、孔子と顔回の対話の場面をつくり、孔子の精神的変貌を描き出した、ここはそういうものを感じさせるところ、と上田さん。安澤さんからの電話で一揆で合流とのこと。 さて、本日で本年の読書会は終了。本年最後ということで川那辺さんが集まった会費の中からシュークリームを用意いただきましたところ、中村（佳）さんからもシュークリームの差し入れ、ダブルシュー、ご馳走さまでした。来年は1月8日（木）18:30〜開始。金曜日は隣室でコーラスが練習をされるので、木曜日となりました。困ったことに、土曜日でないと困る方もあり、第三、第四土曜日のみ木曜日にするといった方法も検討中。 一揆は本年最後ですので、川那辺さん、中村（典）さん、津布良さん、大西さん、稲垣君、上田さんの面々。そこへ安澤さんが三人で合流。岡川さんが来年より参加されるとのこと、賑やかな飲み会となりました。 では、メリークリスマス、そして謹賀新年。 2009年1月8日　衛霊公3 成田君の発音練習表ニュ−バージョン。１ブロックはInitial：声母が子音かφ（無し）。次は、Glide：介母がI,u,y,φ、Nucleus：韻腹がa, ə,φ、Coda：韻尾がi,u, n,ŋ,φで、２ブロックはNucleus：韻腹がa、３ブロックはNucleus：韻腹がə、３ブロックはNucleus：韻腹がφ（無し）。最後ははみ出し、例外のer。５ブロック以降は日本人にはまぎらわしい音のパターン別ブロック。泰伯　第八は全員で音読。子罕　第九の音読について。賈（か）は朱子は去声でjiàと読ませている。これは値、値段の義。gǔと読むのは商賈（しょうこ）の賈で（こ）、商売人のこと。舎の上声shěは動詞で捨てるの義、shè で名詞、宿舎のこと。爲酒困はwèi jiǔ kùnで酒乱す。wéi jiǔ kùnで酒の為に乱す。 3）子の曰はく、賜、女、予を以て多く學びてこれを識す者と為（す）るか。對へて曰く、然り。非（ひ）か。曰はく、非なり、予は一以てこれを貫（かん）せり。 先生がおっしゃった。賜は、子貢のこと。私のことを沢山学んで記憶している人と考えているのか？子貢が答えて、そうです、違いますか?。孔子が言った。私は違う。一を以てこれを貫く、一つでまとめる、一つ共通しているもので行動をしている。そういう答えですが皆さん如何ですか、と成田君。一を以て貫くは日本人が好きですね、と安澤さん。紀貫之がそうです、と成田君。私の好きな寿司屋が一貫、と安澤さん。一を以て貫くは里仁篇15)にありますが、これは凄い話で、「參（曾子）よ、吾が道、一を以てこれを貫く」と孔子が言い放って出て行った後、曾子はそのとおりですと答え、弟子が先生のおっしゃったことは何ですかと問うと、先生の道は忠恕だよと答えている。忠は何事においても、君主に仕えるばかりじゃなく、出来る限りのことをする責任感、恕は相手に対する思いやりの心。この状況じゃ、それが正解であるかは誰にも分からないが・・・。子貢に対して言った事は、人もシチュエーションも異なっており、ここでも忠恕をあてはめてよいかは難しい、と成田君。誰か子貢に聞けば分かったろうに、と大西さん。子貢は、孔子が一つ一つ勉強して、学に達した人と思って、そのとおりと答えて、孔子に違うと言われて面食らった、と成田君。先生も意地悪な人。思うと言うと違う。やっぱり言うてみると違った、と安澤さん。この前に、何かを言われた状況があってのこと、と高井君。物を識っているだけと思われるのが嫌だったのだろう、と成田君。「多く聞いて疑わしきを闕き、愼んで其の餘りを言うときは、則ち尤（とが）寡し。多く見て殆きを闕き、愼んで其の餘りを行う（以為篇18）」ともある。子貢も、この線上でそうですと答えたが、非ずと言われ、ええっと、思ったことだろう。しかし、前回を含め、ここあたりは荒野で、孔子が仕官をあきらめ、どうするか転換期を迎えた時のこと。結局、子貢を楚に派遣して窮地を脱している。子貢を楚に送ったのは楚に仕官することが狙いだったが、これは楚側の事情で実現せず、以降孔子は諸侯を補佐して周公の政治を復興するという道が不可なることとあきらめる。その後は、易や春秋に注を加えるとか弟子の教育のような方向に転換してゆくことになる。その中で一を以て貫く、というのは成田君のいうように、忠恕に限定することはそぐわない。何が一なのかは分かりにくい、と上田さん。一つの何かを心にもって行動しているということでしょう、と高井君。司馬遷のように陳蔡の間、極限の時というなら、孔子は何でも知っている人だから、何故出来ないと思っているかという聞き方、これくらいのことは何とか出来る、出来ないとおかしいという気持ち。子貢にぶつけた。孔子が何でも解決できるとは思わないが、多能な人物と思っている。自分の道を実現するには、ダメと分かっていても貫かねばならない。行き詰まっているが押し通さねばならない。陳蔡の間に限定する必要は無い、と成田君。司馬遷の描く世界では、沢山なことを知っている、色々な事を学び道を知る必要があるということは、極限状況では分かり易いのかもしれない。でもかねてより、孔子は、多くの知識を束ねるということを言っている人なので、それが一貫させる動作、ここで示唆をしているのではないか、と川那辺さん。そうです、コインの穴に紐を通して一貫とするごときイメージ。今の世、統合して高めるということができない。可能性があるのだから、子貢にはやってほしい。一を以ては分かりにくいでいいのではないか。曾子のように忠恕と決める必要はない、と成田君。ここは、司馬遷が劇的にその転換を描いたところ。孔子が琴瑟を弾き、詩を歌っていることに、弟子の不満があり、子路を呼び、どうするべきかを問うと子路は自分たちが至らないからと言う。子貢は、レベルを下げて相手に受け容れられるようにすべきと言う。顔回は受け容れないのは諸侯の問題、先生は道を変えることはないと言う。そのことに意を強くした孔子ではあるが、後には、天われを喪（ほろ）ぼせり、とかつては天命を受けたという自負とは反する心境にも至っており、その中で「一を以て貫く」とは何なのか、と上田さん。司馬遷は政治で成功しようとするがつまづいている。その後どうするのか？後の人に記録を残す、孔子にとって易、春秋をまとめるというのは、司馬遷が史記を著わしたことに重ねあわせて言っており、それを貫いた結果、死んだ後に花が開いている。孔子の死後の成功、後の中国の士大夫の考え方となった。政治に失敗して、書物を書くことに専念したと理解されている。孔子は書物を残して後世に残る。政治的にダメだったら、これくらいのことはしなければならない、司馬遷的理解である。孔子はそうでなくて、死の淵にあっても、もっと出来たと考え、理想に対する飽くなき追求、本を残したからこれでいいというものではない、と成田君。そういうことだが、伯夷、叔斉のことがあった。孔子は、この二人を高く評価した。その志を高く評価した。その孔子を司馬遷が高く評価をした、と上田さん。伯夷、叔斉を司馬遷は悲劇のヒーローとして描いている。孔子の理解は、悲劇のヒーローではなくて、仁を求めて仁を得たという肯定的なもの、本当にいいから称えた、と成田君。司馬遷は列伝の最初に伯夷、叔斉をとりあげ、彼の言葉や実行に長い、すごい思い入れが強かった。司馬遷特有なものであり、彼が宮刑を受けたことにもよるのだが・・・と高井君。丁度時間となりました。 さて木曜日も都合の悪い人があり日程設定がむつかしい。やはり、土曜日を基軸として、都合の悪い土曜日は木曜日とする方がいいようです。1月は15日（木）、24日（土）、29日（木）とし、24日は午後3時から5時半まで読書会、6時過ぎから新年会（場所未定：お勧めがあれば提案ください。）と決まりました。鄭さんが1月末、2月はじめに来京との話もあり、調整が必要になるかもしれません。さて、新年初の一揆、マスター、木曜日に顔を出したもので、何かあったんですか？孝なるかな、安澤さん。お祭りまで田舎でお母さんと一緒。 2009年1月15日（木）　衛靈公篇4〜5 時間通りは成田君、大西さん、上田さん。成田君の修正版の発音練習表、子罕篇音読の最中に稲垣君、岸本史子さん（立命館大学国文学在学）と同道、高井君が話していた人です。先週は日を間違って失礼しました、今日もこれから駅まで行かなくちゃ、と羊羹を置いてハロー＆グッドバイ。伊勢物語を研究されて、第二外国語で中国語を勉強。 柏は何故bǎiでなくbóになりますか、と大西さん。白話音と文言音があり、劇でト書以外のせりふが白話、白は“もうす”と訓じられ、言う意味がある。科白は“しぐさ”と“せりふ”が原義。文言は書き言葉で格調がある、柏林はbǎi línではなくbó lín。ベルリンのこと、bǎi línでは品がない。夏后氏以松、殷人以柏bó、周人以栗、宰我が戦慄の慄と栗をかけて、民をふるえあがらせると言って孔子に叱られた。 �ｸ黨第十にゆきましょう、と成田君。便便はbiàn biàn。でなくてpián pián口達者、ペラペラ、便佞pián nìng　という。朝cháo、朝廷のこと。攝齊shè zīの齊はzī、シとなる。着物の裾。齊衰者zī cuī zhěは喪服の者。齊必有明衣布齊必變食の齊はzhāi、サイとなり、斎戒のこと。祭必齊如の齊はqí、セイ、整うことか、zhāiかは宿題。裘長qiú chángの長はchángとなる。長いこと。長一身有半zhàng yì shēn yòu bànの長はzhàngとなる。丈（たけ）のこと。有もyòuで、余りのあること。食不厭精、食氣の食はsì、飯のこと。食shíは食べる事。飯はfànで“めし”、fǎnで食べる。当時の飯は米ではない、粟とか稗、おかずは菜、穀類は給料、菜はプレゼント。畜之の畜はxù、キウで養うこと、家畜の畜はchūとなる。東首の首はshòuとなり、向くこと。東を向くこと。“くび“や”はじめ“の場合はshǒuとなる。車は今ではchē、であるが、もとはjūで、将棋の駒では今でもjūです。�ｸ黨第十は中国人でも読めないところ、読めなくても恥ずかしいことはありません。この篇はあまり好まれませんが、子罕篇までが概論、ここが実践篇、総仕上げ。これが評判がよくて、もっと、ということで先進篇以降が続けられた、と成田君。本日も成田君に塾頭をお願いするしかありません。よろしく。 4) 子の曰はく、由、�ｺを知る者は鮮し。 先生がおっしゃった。由よ、由は子路。仲由、が姓名、字が子路。名と字は関係がある。炉（みち）に由（よ）る。子は成人につけて語呂をよくする。孔子の子は先生の意味。生まれたときには幼名があり、昔は乳児死亡率が高く、元服に際して、名と字を決める。親や先生、主君は本名で呼ぶことはできるが、それ以外の者が本名で呼べば、絶交もの。季路とも称される。伯（孟）は長男、仲は次男、叔は三男、季は四男。子路は四番目の子であったろう。魯の三桓氏、桓公の子孫が孟孫氏、叔孫氏、季孫氏。ここでは、本名で、由よ、と呼びかけている。徳を知っている者は鮮（すくな）いね。鮮はxiānで新鮮の意であるが、xiǎnで少ない。少ないというのは、あることでなく、ほとんどない、ない方。矣がついており、強い言い方、いないことだ。そういう字の意味ですが、皆さんは如何ですか、と成田君。朱子も「第一章より此に至るまで、疑うらくは皆一時の言なり」、と注しており、陳と蔡の間のこと。弟子達は窮状のなかで孔子が琴を弾き詩を吟じていることに苛立っていた。これは子路を叱ったという風にみなされるが、次のところで舜が何もしないのに天下が治まった話がくるが、孔子の高弟はそういうふうには孔子を支えてはいなかった。そのことについては、孔子は自身に対する落胆もあったのではないか、と上田さん。朱子もそう注してますが、これは、必ずしも極限状態のときとしなくてもいい。想像するに、魯の晩年のこと、長い間生きている中で、徳を知る者は数えるほどしかいなかった。絶望にも似た感じ、絶望の中でも希望をもつ。じゃ、どうすればいいのか、それを理解してくれるのは子路と思ったのではないか、高津さんどうですか、と成田君。この時子路は怒っていた。孔子は怒っている者に徳が無いという言い方。子路が怒っているのは、徳が欠けているからということでなく、周りをなんとかしてあげたいと思って怒っている。子路と孔子は一番年が近く、子路は話しやすい相手。徳は昔は得と一緒、奴隷や財を持つこと、孔子は単なる得を理想に変えた。孔子の影響で今の徳という考え方になった。内面的な得、持っているものですかね、と高津君。金を持つ、政治の場で力を持つのがトク。これを内面的な心のあり方に変えようとした。徳有る者、徳を知る者は違う。徳が有っても徳を知らない、徳を知っていても徳が無い。徳を知っている人が為政者にいれば、徳のある人を使う。為政者が徳を分からず、口達者な人を使って政治がよくなっていないという考え方がある、と成田君。舜は徳の人、すざまじいくらいの孝行者。盲目の父、子連れの後妻、殺されかけるも孝を尽くす、堯は二人の娘を舜に嫁がせる。普通は二人の嫁となるとこじれるのだが、二人とも舜を助ける。堯が使うことができなかった乱望者も舜のためならと従った。徳と能力のある臣が仕事をして天下が治まった、と上田さん。神話を引いて、いいたいことを補強していただいた。何もできない舜に代わってよい政治を行ってくれる。孔子の場合、舜のような人がいないので、（孔子は力を発揮できず）宝のもちぐされとなった、と成田君。舜には魅力があった。君子としての風格があった。それで臣が集まった、と高津君。徳は舜、才は周公、と成田君。孔子は自分が周公になりたかった、と高津君。徳を知る者とは舜のことか。孔子の時代は皆無ということか、と大西さん。孔子が会った為政者、国を持つ人は、皆不合格であった。本人に徳があっても、家臣がダメならいい政治は出来ない、と成田君。管仲は？と大西さん。管仲は君主を助けて覇者となした。一面ではいいものを残した。一方では、管仲は礼を知らないともした、と成田君。徳は君主に限られるのか、と大西さん。限られない。孔子の不満を汲み取るなら、君主が徳を持っておれば使ってくれるのに、だろう、と成田君。最後に、楚でトライしようとしたが、これも上手くゆかず、孔子は諸侯に仕えて政治を正すことは断念して、自らの道を求めることになった、と上田さん。弟子の教育、帰らんか帰らんかとなった、と成田君。 5) 子の曰はく、無為にして治むるは其れ舜なるか。夫れ何をか為さむ。己を恭しみて、正に南面するのみ。 先生がおっしゃった。無為、何をしなくても平らかに治まる、それは舜だ。舜は何をしたか。舜は自分をうやうやしく、王の位にいて、王としての行動をつつしんで、王らしく振舞い、正しく天子は宮殿で南向きに坐る。君子としてその国を治める。王座に正しく坐っていた、それだけなのですが、皆さん如何ですか、と成田君。何が一番大事なのですか。何もしなくても、下の者が正しくする。君主が先なのか、君主を支える人が先なのか、武王を支えているのは十人、そういう人が使われていることが大事。先生はそういう人を使って欲しいということか、と高津君。孝経というものがあり、孝の象徴が舜。自分を殺そうとした人間に尽くす、それは人の気持ちが分かる、舜ならば自分のことを分かってくれる、人の能力を発揮させるところがあった、と上田さん。意地悪く言うと、孝の話は古いものではない。論語には出てこない。孝経もそう古くない。秦の焚書以前にはなかった。舜が徳を持って、家臣が集まった。一体舜のどこが善かったのか。この二つが合体した、でつじつまが合う、という見方もある、と成田君。尚書を見れば、舜の記述はそう多くはない。それでは足りないと増強をしたのが司馬遷。舜や伯夷、叔斉の孝に光を当てたのは孔子、孔子を称揚したのは司馬遷、と上田さん。司馬遷は、伯夷、叔斉を列伝のはじめ、孔子を世家に入れた、と成田君。感情移入がある、と高津君。時代（漢初）のニーズがあった、というところで時間。 来週は1月24日（土）１５：００〜１７：３０に西陣小学校で読書会、１８：００〜皆様お馴染みの「一揆」にて新年会です。 2009年1月24日（土）　衛靈公篇6 成田君の修正版の発音練習表５、郷黨篇音読。日本語を中国人がしゃべるには口先だけでしゃべる練習が必要と稲垣君。日本人が韓国語をしゃべる時は、ほとんど抑揚をつけないで、鼻から抜くようにと教わりました。日本語を話すように抑揚をつけると子供みたいにかわいいかわいい韓国語になると川那辺さん。日本人が中国語をしゃべるには、汗をかくほどはっきり発音しなければ、と中村（典）さん、腹から声をださないと、と稲垣君。稲垣君の発音指導で、苦手発音克服にトライ。最後は、出祖気車chū zī qì chēこれができれば中国語らしくなります。 先進第十一。�ｺ行の行は名詞でxìng動詞でxíng 。行行はhàng hàng。為之聚斂の為はwèi 〜のために、斂はliànとしているが３声でもOK.。冠者の冠はguàn、冠をかぶった、名詞は３声。以吾一日長の長はzhǎng年長chángは長い、zhàngは余りある。比及三年の比はbì。今日の塾頭は決まっていないのですが、稲垣君お願いできますか？ 6) 子張、行われんことを問ふ。子の曰はく、言、忠信にして、行ひ、篤敬ならば、蠻貊の邦といへども行はれん。言、忠信ならず、行、篤敬あらずんば、州里といへども行はれん。立てば則ちその前に參つを見る、輿に在れば則ちその衡に倚るを見るなり。夫れ然して後に行はれん。子張これを紳に書す。 子張が行というものを問うた。孔子は、言葉が忠信で、行い篤敬、言行が一致、対となっているが、言葉にまことがあり、行いが誠実でうやうやしい、そういう態度でゆけば、未開の地であっても、蠻は楚のあたり、湖南地方、貊は北狄であろう、今でいえば万里の長城の北、中華文明の及ばない土地であっても、行われるであろう。その反対であれば、不誠実でうやうやしさがなくば、中国の州里、小さな行政区であっても、正しい道は行われない。次のところは、朱熹のいうことはよくわからないなあ・・・立てばすなわち前に三つなるを見る、よく分からないなあ・・・かごにあれば、その衡というのは、横木、車の前に乗る人がよりかかる板、そこによってかかるのを見る、その後に行われると孔子が答えたことを子張が帯に記した。身につけるもので、常に見ることができるようにした。成田君ここのところの解釈はどうなるのかなあ、と稲垣君。朱子の解釈は参を参与の参、其參の其は、忠信篤敬のこと、忠信篤敬が我と相参づる、一緒に行動する、みたいな意味、忠信篤敬が自分の前にあり、それを一緒に行動する、みたいな意味、と成田君。立てば、は一歩外に出れば、徒行、歩いて行く時と、車に乗る時ということではないか、と稲垣君。何時如何なるときにも、忠信篤敬を忘れるな、じゃないかと成田君。言行に篤敬があれば、どこへ行っても大丈夫、理想がおこなわれるにはどうすればいいか、となるが、朱熹は自己確立ととっている。上達下達というのがあった、立つについて･･･分からないなあ、と稲垣君。後藤芝山は参を三つと見ているのは読み違い、朱子はそういうふうには言っていない、無視すればいい、と成田君。自分と言と行が三つじゃないか、と稲垣君。その次はどうかいしゃくするの、と上田さん。衡というのは、古代には二つの意味があった。車を引く牛の角が人間を傷つけないように、一本の木で角をくくりつけた棒、もう一つは車の部分と牛とを繋ぐ、牛にくくりつけるための横木、人が乗る部分が輿、乗る部分と、牛の部分がちゃんと繋がれているかを見る、と成田君。立てば、目前に言忠信行篤敬の六文字がちらつく、立つとは、人の上に立つ、徒歩で衆の前に、集まっている状態があり、忠信の気持ちが伝えられ、篤敬の部分は、行いきちんとして行われているかを見る、そういうことが行われれば政治が行われるみたいなことではない、と川那辺さん。立つは、衆の前に立つはあるが、人の上に立つの場合は居上ではないかな、と稲垣君。立てば忠信篤敬を目の前に見る、車輿では衡軛に忠信篤敬が依り付くのを見る、立てば真っ直ぐ前を見、車輿では横木に寄りかかり威儀を正すという解釈がある、と上田さん。それは誰ですか、と成田君。貝塚先生じゃないかな、司馬遷はこの子張の質問は陳と蔡の間、囲まれて困窮の極みにあった時のこととしている。子路や子貢が孔子に思いをぶつけたように、子張もストレートに問いをぶつけた。先生の行が実現していない、どころか窮しているさなかであり、先生の行とは何ですかみたいな感じ。稲垣君の言うように蛮は楚であり、孔子は楚での仕官を考えており、楚であっても、忠信篤敬であれば通用する、心配しなくてよい、というが、子張は、今がどうにもならないのに、なんと現実離れした、これではどうしようもないとあきらめかけたが、次の言葉を聞いてびっくりした。立則見其參於前也在輿則見其倚於衡也夫然後行。（この窮地にあっても）子張よ、いかなる時も、その心構えを失っては、行はれることはない。子張は、あわてて衣にそれを記したという風なものではないか、と上田さん。言忠信行篤敬この6文字、神がかり的な言葉、その文字がもし、あなたの前にある、並んでおれば・・・車輪のなかでも、放射しているように、それが寄りかかっている。6文字の部分が、イメージとして聖書のロゴスのように、人の前でも、車の中でも、バネみたいな感じで現れる、と中村（典）さん。古註では、「參は猶森なり。言、若し敬徳の道、己を行ひ、立ちて世間に在らば、則ち自ら想ひ忠信篤敬の事を見る。森森として滿ち己の前に亘るなり。」参は森としている。古音では参sēnは森sēnで通じた。沢山なこと、連なっていること。沢山の人の前であっても、車に乗っているときでも、横木のところに言忠信行篤敬を見て、そういう気持ちで政治を行う、みたいなことですか、と川那辺さん。最後のところはそうですが、これは自説なのですが、弟子の曾参の字は子輿。参と輿には関係があるはずです。立って目の前に何か沢山並んでいる。それは輿と関係があるはずです。何かを確認している、乗る前に、乗ってからは牛と車の関係がきちんとしているか確認しながら車を進めている。爲政篇22)に「人而無信不知其可也大車無輗小車無�ｲ其何以行之哉（人にして信なくば其の可を知らざるなり。大車に輗なく、小車に�ｲなくば、其れ何を以てかこれを行らむかな。）」とあり、人間であって信がないとダメ、何で以て行うのか？何以行之哉には、車を進めるようなイメージがある、と成田君。成田さんそれで本がかけそうですね、と声がかかる。御（車）は六芸の一つ、教養でしたから、と成田君。横木がぴったりとくっつけてある、と稲垣君・時間となりました。一路一揆へ。岸本、中村（典）、川那辺、高井、成田、稲垣、上田、そして大西、高津、安澤さん達がすでに一揆でお待ち、新年会で乾杯。高井君の電話で、鄭さんは台湾で忘年会の最中、月末から2月4日まで来京、2月1日(日)17:30より、無法松（webｸﾘｯｸ)で一杯やりましょう、とこういうことは話が早い。地図はお店案内の中にあります。北白川にも無法松がありますが、八幡前の方ですので間違い無きように。来週は1月29日（木）です。 2009年1月29日（土）　衛靈公篇7〜8 成田君の修正版の発音練習表5、1〜3、先進篇、顔淵篇音読。稲富君久方振りの登場、口頭諮問でボロクソでした、いや、試験の季節はどちらさまも大変です。本日は、急遽、高井君に塾頭をお願いする。 不疚bú jiùの不は疚が4声で2声になる。夫何憂fú hé yōuの夫平声で2声。不得已而去行など7条の去は上声でqùでなくqǔ、取り去る、すてること。問知wèn zhì、この知は智の義、と高井君。善いほうの知は日で明るく智、疒の知は暗い知で痴呆の痴、と稲富君。樊遲退見子夏の見はjiàn、�ｸ也吾見於夫子の見はxiàn、まみえること。�ｸは先に、なので去声でxiàng。義善道之の道はdǎoで導くこと、と高井君。dào とするのは言うの義、朱子は導くとみる、とは成田君。 7）子の曰はく、直かな史魚、邦に道有れば矢の如し。邦に道無ければ矢の如し。君子なるかな蘧伯玉、邦に道有れば則ち仕へ、邦に道無ければ則ち卷（おさ）めて懷（かく）すべし。 先生がおっしゃった。まっすぐだな史魚、邦に道が有れば矢の如く真直ぐだ。君子であるかな蘧伯玉、邦に道が有れば仕へ、邦に道が無ければ、くるくるまいて懐に隠す、さっさと去ってゆく、道を懷（かく）す。史魚の史は、役職名、君主の言行の記録者、魚が名前、衛の国の大夫。蘧伯玉も衛の国の人。直、真直ぐである、史の役職が直であること、おもねらず、真直ぐなこと。春秋左伝、襄公の25年に崔杼が、「其ノ君ヲ弑ス」と書かかれ、それを書いた史官を杼は殺した。その弟がまた、「其ノ君ヲ弑ス」と記すとまた殺した。同じ事を記録するとまたも殺したが、その末弟が再びそう記すと遂に諦めて許した。その出来事をしっかり書くことは危ういということで有名な話なんですが、直なるかな史魚と、そういう意味で言っていた。蘧伯玉は憲問篇26)にも出てくるが、蘧伯玉は五十歳で四十九の反省をし、六十年六十回変わったという人。改めながら生きた人。蘧伯玉は邦に道有れば仕え、邦に道無ければ身を引く、史魚を直としたが、蘧伯玉は君子として褒めた。荻生徂徠は、矢をもって、古人以矢喩直ということに注目している。尸諌（しかん）、衛の霊公の時、蘧伯玉は賢であったが用いられなかった。迷子瑕（びしか彌子瑕）は不肖であったが用いられた。史魚は諌めたが、しばしば諌めたが霊公は聞かなかった。史魚は病んで死につくが、生きているときに蘧伯玉を入れ、迷子瑕を下げることができなかった。死して霊公を諌めんとして、その子に命じて、屍を牖（まど）下に置かせて、死んでも君主を諌めた、と高井君。その話はどこに出てますか、と成田君。大戴禮記に出ている、漢代に作られたものです、と高井君。おじさんが小戴禮記を記した、と成田君。現在禮記といわれるのが小戴禮記、大学や中庸を朱子が評価し、修身斉家治国がいわれた、と高井君。史魚は大夫、蘧伯玉は？と大西さん。大夫です、と高井君。彌子瑕は霊公の寵姫ですから女性です。愛されている間は、母の病気を見舞うに霊公の車を使うと、孝行とされ、食べさしの桃を差し出されも、霊公がその無礼を愛（いつく）しむ始末、容色が衰えると、裏目にでて逆鱗に触れる、南子という女性も居た、これに命をかけたのなら、史魚は気の毒というか、犬死みたいなものではないか、と上田さん。どこから出てますか、と成田君。韓非子列伝です、と上田さん。漢代の話であり、左伝ほどの信憑性はない、と成田君。孔子は史魚を君子とは言わないですね、と高井君。通常は直の史魚より、君子という言葉で蘧伯玉を褒めたとするのだが、孔子は道無くば、卷めて懷すということはできず、放浪にでてますから、必ずしも蘧伯玉を善しとするものではないのでは、と上田さん。孔子は直の方に近い。孔子は自分を君子とは思っていない、客観的には蘧伯玉が上であるが、共感するのは史魚、と成田君。蘧伯玉が君子なら、史魚は狂簡、と稲富君。うまいこというね、と上田さん。どっちも必要。孔子は人に求めるときは蘧伯玉、自分は出来ていないのにそういう時は自分を冷静に分析している。何でもくるくるまるめて、とかするのが善いのでもない。直も必要、二人を合わせて、バランスがとれる、それを言っている気がする。人に求めて自分のバランスをとる。孔子は色々なタイプの人を求めている。一人でとるのはむつかしい、そのバランスがおもしろい、高津さんどう？と川那辺さん。いやーおっしゃるとおりなんですが・・・それぞれ役割が違う。片方は直でないと、片方は君子でないと勤まらない。しっかり果たしており、どっちが優位というものではない、と高津君。史魚は歴史家？と稲富君。記録をする人、史官、役人と高井君。蘧伯玉はどういう大夫？と稲富君。当時は政治を行うのが諸侯の手を離れて、大夫に任せるという流れになっている。税制とか法制とかの制度的なものや富国強兵の経済政策など、そういうことに長けた人物が求められた。行過ぎると下克上、陽貨のごとくなる。蘧伯玉はそういうことを嫌った、と上田さん。具体的にこういうこと、というものはありますか、と稲富君。貝塚先生なら書いておられるかも、と上田さん。何をしたかでなくとも、何もしなくて任せてやる、舜みたいなのがあります、と稲富君。史魚の史が官職名だとすれば、苗字、姓は別にあったのですか、と声がする。史は姓を兼ねている、と成田君。この時代には、官職名が姓になっていたのかもしれない、と稲富君。ぼくは弓道をやっているので、矢についてですが、矢が何故真直ぐ飛ぶかですが、矢は精密に真直ぐでないと真直ぐは飛びません。昔しは竹や木ですからゆがんだり、たわんだりします。そのままだと、曲がったりして真直ぐ飛びません。常に真直ぐするよう手入れしておかないと、常に曲がりを修正しておかないと、真直ぐは飛ばないんです、と成田君。なるほど、成田さんですね、そういう意味で直を保つというのは難しいのですね、と高津君。これだけ見ていると、史魚の生き方の方が難しいですね、いい時は出てくる、悪いときにはひっこんでいる、その方が易しいのでは、と大西さん。どこで出て、どこで去るかが難しい、と成田君。政治家の引きどきは難しい、そのへんの潔さを褒めている、と稲富君。邦に道が無いときには、その所に居着かない、諌めて聞かないときもダメ、と高津君。公冶長2)に「南容を謂ふ。邦に道有れば廢らず。邦に道無くも刑戮を免る。」とあった、と成田君。直ではそうはいかない、道があれば仕事をし、無ければ降りるというのもあった。中国では、「留得青山在、不怕没材焼（山さえあれば、材木が焼けても悲しむな）」と言うのですが、生きていれば、また使える時が来るということなんですが、史魚みたいな人に使う言葉です、と高津君。道が無いなら懷すじゃなく、それをなんとかしようとするのが孔子、と成田君。史魚や左伝にあった史家のようでない場合は曲筆という、と高井君。歴史は権力者の側で書かれるのでしょう、と大西さん。司馬遷は直筆、自分のために書いたもの、は石棺の中に隠していた、武帝の怒りに触れれば大変なことになるので、自分の墓みたいなところに隠した、と成田君。中国では、時の皇帝の批判は出来ない、投獄された蘇軾も、「聖王如夫萬物春、小臣愚闇自亡身」とするくらい、と高井君。政権が変わればどうなります、と大西さん。前政権を批判します、コロッと変わります、日本では天皇を批判しませんよね、と高井君。天皇は変わらないですから、と成田君。 8) 子の曰はく、與に言ふべくして、これと言はずば、人を失ふ。與に言ふべからずして、これと言へば、言を失ふ。知者は人を失はず、亦、言を失はず。 共に話し合うべき人と話さないと、人を失う。共に話し合うべきでない人と話し合うと、言を失う。共に言うべき人を見抜き、語るべからざる人は避けるが知者。共に言うべき、論語ではよく出てくる言い方、学而篇15)では「賜也始可與言詩已」、賜は子貢、八佾篇7)では、「商也始可與言詩」、商は子夏、共に言うは非常にいいこと。この篇の終わりの方に、「道、同じからざれば相ともに謀らざる。」ともある。人を失わずという表現はあまり論語にはみえない。周公（文王の子、武王の弟）は自分の子、伯禽（魯候）に、天下においては鄙しからず、「一沐三捉髪、一飯三吐哺、起以待士、猶恐失天下之賢人」の失人、沐浴して髪を洗っている時でも、食事中でも食べているものを何度吐き出しても、賢人とあらばお迎えした。それでも天下の賢人を失うのではないかと恐れた、と諭した、と高井君。どこに出ていますか、と成田君。史記に出てくるのかな？｢魯周公世家｣、と高井君。日常生活で感じることがあるが、特に後者はむつかしい、と稲富君。これを見ると、鄭さんを思い出す。三人行けば必ず我が師有り（述而篇21）など、善いところに従い、悪い所は真似しない、なんとなくそんな話をしたことがある。どういう人にもその人の役割がある、身分や見解の違いで見限るかはむつかしい、と高津君。この間、法務大臣が死刑執行に署名した。ヤフーのコメントでは死刑賛成の意見が多く、その文面では反対意見を受け付けないというすごいニュアンスがありビックリした。反対意見をバッサリ切る、驚いた、と高井君。そもそも共に言うのを求めて、共に言うところに書いているのにねえ・・・と成田君。共に言うべくしてという人かどうか分からない時がある。分かっておれば言うと思うが、と大西さん。それを見極めるのが知者、と成田君。言うべからざるは分かるが、共に言うべきは、どこまでハードルを越えれば言ってよいかが難しい。どの時点でハードルを下ろすかは、お互いが求めていないと成り立たない。それが捜せれば・・・一生のうちそうあることではない、と川那辺さん。不可の可は〜すべし、という強いものではなく、可能、できる、話し合うことができる程度、と高井君。可より、共に言うのニュアンスが難しい。詩を共に語り合う、学問について語り合うは、道で立ち話をするのとは異なる。相手の懐に踏み込んで話すのには、相手を見極める必要がある、と成田君。死刑の話ですが、今の若い人、自分の子供たちもそうですが、死んで当然、人を殺してしまったのだから殺されるのは当然、何故そういうことになったのか、その人に何が起こっていたのか、想像力を働かせて求めてみるということをしない。すとんと割り切っている。お互いが想像力を働かせる必要がある、想像とは相手がどう感じているかを受け止めること、それが必要なのですが、と川那辺さん。学校の同世代の学生達は、世の中、成果主義になり、よく考えることをせず、どんどん進んでゆく。何の為を考えることをしてはいけないような感覚がある。小泉時代の数年にこれが進行した、ともかく答えを出さなければならない方向に行っている。今はもっとすすんでしまい、学生達がめり込んでいる。死刑の話と同じく、ある方向に向いて・・・成果主義であって、結果が出ないということで、行き詰まっている、と中村（典）さん。とここで時間となりました。 2月からは土曜に戻し、都合の悪い土曜日は木曜日にする方向です。2月7日（土）、2月12日(木)、2月19日(木)、2月28日(土)となりますので、お間違いのなきように。本日の一揆は前回店内溢れる客でてんてこ舞い、盆と正月が一緒の状態でしたが、2組〜3組、5、6人という静かなものでした。 2009年2月７日（土）　衛靈公篇9〜11 発音については、体系的にやりたいが1時間までにして、討論の時間を確保して、色々な意見がでるように、と稲垣君。本日は唇音b、p、m、f日本語ではバ、パ、マなどであるが、唇はそのまま、中国語では唇を内側に引き込むようにして発音してください。Fは軽唇音で英語みたいに、下唇に上歯を置いて発音してください。b、p、m、fに注意して、全員で顔淵篇音読。個々に子路篇音読。 子路第十三。其舍諸の舍は上声shě、捨てる。與聞之の與はyù、〜にあづかる。以勝殘去の勝はshĕng、〜にたえない、去は qŭ、取り除く。其幾也の幾はjī、あててす。使於四方の使はshì、使いする。父為子の為はwèi、〜のために。その他不中の中zhòng、好之の好hào、惡之の惡wù、語之の語yù、喪邦の喪sàng、葉公の葉shè。川那辺さん急用で、急遽、稲垣君に塾頭をお願いする。 9）子の曰はく、志士仁人、生を求めて以て仁を害すること無し、身を殺して以て仁を成すこと有り。 先生がおっしゃった。志士と仁人は生を求めて、生命を惜しんで、自ら仁を損なうことはない、身を殺して、仁を成すことが有る。論語の立場では、守死善道、命を軽々しくしない。親からもらった身体を傷つけないことが親孝行、泰伯篇３）で、曾子が死ぬときに、弟子を集めて自分の手足を開かせて、きれいだろう、傷のないことを見せている。孝経に従えば、命を粗末にしてはならないとされる。礼記、儒行篇、孔子と哀公の問答で、儒者とは何かを語った.儒有可親而不可劫也（親しむが奪わず）。儒有可近而不可迫也（近づくが無理やりさせない）。儒有可殺而不可辱也（殺されても辱めを受けない）。そういうのがあり、身を殺すというのは本当に孔子の言葉なのか、身を殺して仁をなすは、後の世に随分と様子が変わってくる。日本が軍国国家であったときには、身を殺す、ということが行われた。儒教は身体を危うくさせないこととするが、孔子は逃げの人生を言ったものではない。陳恆が簡公を弑した時、孔子は哀公に斉を討伐せよと言った（憲問篇22)。「吾、大夫の後へに從ふを以て、敢て告げざることなからむ。」と孔子は黙っていなかった。孔子の実践は、身を殺して仁をなす、に割りに近い。身を殺して仁をなす、は微子篇にある。殷の紂王は夏の桀王とともに、桀紂（けつちゅう）として最後の帝としてひどいことをしていた。微子は異母兄だが逃げ出した。箕子は、朝鮮を開いたされるが、奴隷となって従ったが、比干は死をもって諫めた。三つの生き方があった。殷有三仁、と三人を仁とした。もう一つは、述而篇14）で、孔子が、衞君に味方するかを聞くために、子貢が伯夷、叔齊、のことを聞くと、孔子は｢仁を求めて仁を得む」、彼等は餓死しており、身を殺して仁をなす、となる。身を殺して仁をなす、は後の時代にはエスカレートし、唐、いや明のあたりになると、エキセントリックな皇帝へのあてつけみたいな死に方をしている。論語の中には命を懸けて何かをする、はあまりない。一人でしゃべりすぎたかな、高井君どうですか、と稲垣君。似たイメージで考えてました。死とか殺す表現は論語にはないが、この篇の後ろに「未だ仁を蹈んで死する者を見ず」とあります。伯夷、叔齊については、仁を求めて道をゆずらず、で身を殺すの方ではない。殷の三仁と比較して読んでましたが、志士というのは何でしょうか。下にでる、仁の人、仁を志す人と関係するかと思うがどうでしょう、と高井君。士は論語には一杯でてくる、と稲垣君。志士は志を持った人、一般の人でなく、仁の人でなく、殷の三仁の三番目。諌めて死んだ比干、志のある人、志を曲げない人、死を強要しているとは思わない。命にかえて仁を護らないといけないときの死、と高津君。子罕篇25)に三軍の将軍を変えることはできるが、匹夫といえど、志を奪うことはできない、とあった。日本では志は上へ上へと向かうが、中国では立身出世を志すは後のことで、この時代は心と一緒のような感じ、と稲垣君。殺されてもその人の人格を護る。死はやむをえない、死をもって仁を求めるは後世の判断。死をもって、仁をなすは最後の手段。仁を得るために自分がどうするか、死を選ぶか、違うところへ行くか、生きてどうするかが大事、と高津君。伯夷、叔齊は、仁、志をもって、たまたま死んだ、と稲垣君。生きようとすれば、生きられた。宋代になると、極端になる、と高井君。志士というと、例えば、自分の中の大事なものを与える、日本の幕末の志士はもっと激しい、国家主義になると、逆の発想で、死ぬことが大事、美化、正当化された。孔子の時代も転換期の時代じゃなかったのですか、と岸本さん。文化人と軍人は違う、軍人はそういう場合死を選ぶが・・・日本の幕末は、仁じゃなく、死ぬことが大事になっていた・・・と稲垣君。儒有可殺而不可辱也の殺は殺されるですか殺すですか、と岸本さん。殺されると読みます、儒者が殺すでは意味が通りません、と稲垣君。相手に辱めを与えないために殺すというのはありえないか、と高津君。話としては出てこない、と高井君。「生を求めて」とあり、極端にいえば、他人を犠牲にすれば、己が生き残れるという事態に置かれたとき、志士仁人というなら、仁を害してはならぬ、自分が犠牲になれ、という問題。大学紛争のころ、西洋史を勉強していたのだけれど、資本主義から共産主義へが歴史の必然と学んでいた時代、志とは革命であり、ここに例えれば、紛争のバリケードの中に入るが仁か、という選択におかれたようなもの。随分と大変だった、そういう選択に立たされたときの心得を言うのだが、実行はむつかしい、と上田さん。生を盗むという言い方があります、と稲垣君。周恩来は大半の人が好きです。大半の人を守った。その人が生かされている、立場立場でどういう選択をするかが問題、と高津君。史魚の生き方は孔子の理想とは違う。しかし、史魚的な生き方をする激しい人、蘧伯玉のような生き方はできない。ここでは言葉と行動の関係、上田さんの話じゃないが、言葉と行動を一致させることはむつかしい、と稲垣君。 10) 子貢、仁をせんこと問ふ。子の曰はく、工(たくみ)其の事を善くせむと欲すれば、必ず先ず其の器を利(とく)す。是の邦に居ては、其の大夫の賢者に事（つか）へ、其の士の仁者を友とす。 子貢が仁を問うのでなく、これは、程子の説であるが、仁をなさんことを問うた。やり方、方法論を聞いた。工（たくみ）、職人が何かをする時には、まず、包丁を研いだり、のこぎりの目立てをするとか、のみを研いだりして、器は道具のこと、道具を鋭利にする。その邦においては、大夫の賢なる者に事え、事はフォーマルな場で仕えること、よく出来る人に仕え、その士、大夫の下のこと、仁のある人を友人とする。上司んは賢い人、同輩には仁者、学而篇8)に「己に如ざる者を友とすべからず。」とあり、自分よりよく出来た人と友人となれとする、反面教師ということもあるが。邦における実践的なあり方を言っている。先取りすると、衛を出て、流浪する状態、居るは安定して仕える時、そういう時には、賢者、仁者。さ迷っている時には、邦に道がある時なら、として教えている、と稲垣君。六工、土工、金工、石工、木工、獣工、草工がある。大夫は賢人、士は仁となるのは何なのか、士大夫で賢、仁のことかと思う、と高井君。 ｘｘｘｘｘｘＡｘｘｘｘ　　　ｘｘｘｘＢｘｘｘ　 xｘｘｘｘｘＡ'ｘｘｘx　　　ｘｘｘｘＢ'ｘｘ　　　中国語では、ＡとＡ'、ＢとＢ'を入れ替えることが出来る。互文のこと、中国語では対句を重んじる。仁は個人の生き方。大夫に事、士に仁は、政治の方向に向けている。ここは次と関連してり、次に移りたい、と稲垣君。 11) 顏淵、邦を為めるを問ふ。子の曰はく、夏の時を行ひ、殷の輅に乘り、周の冕を服し、樂は則ち韶舞、鄭聲を放ち佞人を遠ざく。鄭聲は淫し、佞人は殆し。 顏淵には宰相の器があったので、天下を治める力量がある。邦を為める、邦と謙った。国でなく邦と聞いた。子貢も政治的が。夏の暦、殷の乗り物、服装は周、音楽は韶舞、八佾篇25)に舜の音楽、「韶は美を盡し又善を盡すなり。」武王の音楽、「武は美を盡すも未だ善を盡さざるなり。」とあり、様式と内なる善が必要としている。鄭聲、鄭と衛の音は亡国の音、国が治まっていない、とされる。淫らな音楽は、いやらしい、ではなく華美、抑えたところがない、吉川幸次郎先生は、クラシックとジャズの違いとしておられる、と稲垣君。それは、どうかな？鄭聲は古代のものと現代のものを比較している、と高井君。日本でいえば、雅楽と民謡のちがい。鄭聲は度を越えている。佞人は、便佞、おしゃべり、口のたつ人、これは危うい。賢者、仁者の対極となる。流浪集団の孔子集団が何故、こういう話をしているのか。先進篇25)で子路が三年で民に勇と義を持たせるというと、孔子が笑ったとあった。冉有は、民が生活できるようにする、公西華は小相をつとめたいというが、孔子は曾子の親父の曾�ﾙが沂水で浴し、朋友らと朗詠する、というのに賛成した。そういうことからいえば、孔子はここで顔淵と繰り広げているこの会話をそれ以上のものと見ている。暦は昔では非常に大切、殷の暦からは少しづつズレており、1か月くらいづれていた。孔子は夏の暦が一番合っているとした。農作業には一番役に立つとした。車は殷のが質素、国を治める方策というより、制度にまで話がいっている。秦の始皇帝が度量衡を統一したのもすごいことであった。制度は大切なもので、色々なところででかけてそれを収集していた。しかし、証するには不足しているともあった。制度は大切なものである、と稲垣君。鄭聲は陽貨篇にもでてくる。10)と11)はつながっているほうがいい、と高井君。子貢の話だが、子貢は非常に頭が良く、仁とは何かより、仁を行うことを問うた。仁を行うとは〜である、孔子がどう答えを返してくるか？先生を試してみるくらいのつもりであったが、はっとする答えであった。孔子はそれにはまず、己を磨けと返した。子貢はそのことに目覚めた、という話。11)は政治を行うに、暦、車、服装、音楽が大事というのは日本人にはピンとこない。信長とか秀吉とか家康など政治を行うとなれば、まず、軍事的に統一することが最初にくるが、暦が一番という。太陽で数える１年と恒星の1年にはズレがあって、70年で1度くらいズレる。360度で30度が1月にあたり、2100年くらいで1月ズレる。放っておくと月と季節が合わなくなり、1月が春になり、夏になり、季節感と合わなくなる。人間は季節感で生きており、天文観測して、月と季節が合うように修正をする。稲垣君が言うように、時を管理出来なければ、どうしようもない。度量衡を管理するのと同様に国を運営する根幹にあり、それがきちんとしていてこそ制度が機能する。音楽もそうで、律が正しくないとは、天文や制度とズレることで、国も人の心も乱れると考える、孔子が政治において暦、車、服装、音楽というものを正しくすることにこれほど重きを置いているのは、日本人には違和感があるだろう、と上田さん。「ということは、吉川先生がクラシックとジャズとされたのも当たりかな？ブルーノートとか音階が違ってますよね。」「孔子が衛から帰って、音が正しくなったの類で、中村（典）さんがおられればいいのだが、そういうことで何が正調かということになる。」「孔子なら日本でいえば、雅楽にせよ、これでは、今の人は寝てしまう。」「暦も音楽も連動している、天の秩序を地上に実現するという考えがある。」「それは漢代以降でしょう。」「律と連動させているのはそうだろうが、天の秩序を地上には殷の時代からある。天帝、上帝の嫡男が地上の帝が殷。」「天帝は周になってからでしょう。後の説じゃないですか。」「天命、天の命が王に下る、というのは周からと思うが、天帝の嫡男が地上の帝は殷です。10日ごと、これは旬、３６旬360日地上の帝の行動を天帝に伺いを立てる、これが占いです。占いは未来を占う、運勢を占うじゃなくて、上帝の意向を確認することです、甲骨文字はそのためのものです。」「占いでＮｏというのはないのでしょう、割れ目が出てから文字を記したという説もありますね。」「Ｎｏばかりじゃ、帝は行動できないよなあ・・・」とお時間になりました。 次回、12日の木曜日は高井君の最終講義です、終わったら一杯やりましょう。 2009年2月12日（木）　衛靈公篇12〜13 本日は舌音d、t、n、l、舌をとがらせて上歯につけて強く発音する。犬にツッツッツと合図するように強く発声する。de、te、ne、le、ドェゥ、トゥ、ヌェゥ、ルェゥ、口先だけでなく、舌をしっかり使ってください、と稲垣君。b、p、m、f、d、t、n、lに注意して、全員で子路篇音読。個々に憲問篇音読。 憲問第十四。危行の行は、おこない、xìng、裨�ｪpí chénの裨は名前でpí、bìの場合は益する。不要の要はyāo要求する。公子糾の糾はjiūでなく jĭu名前。飯疏食făn shū sì、飯はくらふでfăn食はめしでsì。朱子は他のところでは疏食shū sìと読ませており、それに従う。兵車の車はjū。治賓客の治はzhī、〜を治める。使人の使はshÌ〜につかひす。過其行の行はxìng。諒陰の陰ān、通常は諒闇、と稲垣君。相桓公の相はxiàng。辟世の辟はbì。荷蕢の荷はhè。好禮の好はhào。易使の易はyì。不孫の孫はxùn。長而無の長はzhăng。先週の幾と期はどういうことでした、と上田さん。幾（几）jĭ でいくつjīでちかい、ほとんど。期qīは期待の期、朞jīは一周年のごとく一巡りすること。期と朞とともに其と月からなる。星期とは一週間、星期一(月)、星期ニ（火）、星期三（水）、星期四（木）、星期五（金）、星期六（土）、星期天（日）と高井君。月火水木金土日は何時から使うようになったの、陰陽五行説？と稲富君（興味のある方はhttp://soudan1.biglobe.ne.jp/qa538494.htmlまで） 本日の塾頭は、高井君、最終講義です。 12）子の曰はく、人遠き慮り無ければ、必ず近き憂ひ有り。 先生がおっしゃった。人は遠くのことを、将来のことを思いを馳せることなく、なおざりにすると、近い所に憂いがある。短い言葉であるが、味わえる言葉、遠くを慮ると遠慮、近い憂いは近憂、慮りと憂いに差があるかどうか？皆さんどうですか？これは互文になりますか、と高井君。人無遠慮　必有近憂　これは互文ではないでしょう、と成田君。遠慮は通用するが近憂と言う言葉ない、と稲垣君。憂慮葉ある、と成田君。どうして、こういう言葉がここにあると思う、と稲垣君。遠く慮るとは、孔子にすれば、前条にあるごとく、方向としては未来でなく過去。遠く過去に起こったことを調べ、吟味し、比較すれば、今何故世が乱れているかが分かるという考え方。夏、殷、周の禮を研究し、過不足を吟味することなく、陽虎などの下克上の風に流され、冉求なども季氏の風に染まっている。近い憂いとはそういうこと、と上田さん。温故知新的ですね、と稲富君。大略においては上田さんと一緒だが、9)では志士仁人について、10)では子貢に国を治めるやり方、仁をなす方策、大夫と士とが相補的なこと、11)では顔淵を通じて、天下国家の制度について言っている。遠慮は天下国家の制度・・・古い時代の制度でなく・・・孔子はこの時、用いられずに流浪しており、自分たちが国にいて仕事についているのではなく、さ迷っているさなかで、いわば、無職の人が高度な政治の話をしている。そういう時においても、そうなった時に備えて制度を考える、将来を見据えている方向かと思う、と稲垣君。テキストの中には、人（而）無遠慮というものがあり、人としてということで、人を強調している、と高井君。ぼくも稲垣さんの方向、今流浪して無職の時に、遠大なことを考えるのが遠慮、そういう立場に立ったときに仕事ができる、と成田君。大きな夢を持っているが、流浪で、食べ物や金にかかずり回っているが、大きな野望を持っていれば、現実的な憂いに心が折れることはない。弟子にも諭している、と稲富君。ただ大きな夢でなく、孔子には細かい気配りが入っている。一国の政治を任して三年でこうすると誇大妄想を言えば、孔子はいい顔をしなかった。そういう立場に立ったときにどうするか、想像力を働かすことが重要、と成田君。この時代の夢がどういう意味に使われていたか？孔子の夢は、周公・・・我を知るか？と稲富君。あえていえば「志」、孔子が言うは、もっと政治に関し、現実的なもの、と成田君。慮るは配慮で、夢というよりは、先に手を回す、そうしなければ必ず近憂あり、と稲垣君。近いところだけ見ると溺れるが、向こうまで見れば、そこの向かってゆける、と稲富君。近き憂いとは、何を言うのか、と上田さん。足元をすくわれる、下克上に向かってゆくのを、どう立て直してゆけるかを知らない。給料さえもらえれば、自分の置かれている立場だけしか考えないようなもの。ここを耕せば、将来食物がとれる、みたいなことが重要、と高津君。陳恆が斉候を弑した時、孔子は哀公にこれを討つことを進言した。そういうことを放置すれば、いづれその身に同様のことが降りかかってくると孔子はみていた。近い憂いとはそういうこと、と上田さん。ここでなんとかしないと、戦国時代に入るぞ、でしょうと高津君。ところで、定額給付金、どうみても「付け刃」、政治の大局を無視している。僕はもらいますけれど、遠慮がなくやるのは、近憂、選挙があるから、と成田君。うまいこというなあ、と感嘆の声。COEにも遠慮がない。これまでは定常的にお金がでていたが、プロジェクトがないと出ないようになり、一貫したことができない、と成田君。文科省もこの間までは「ゆとり教育」、一転してこれを変えた。遠慮がない。金融問題でますます遠慮がなくなっている。金融が近憂だ、と稲垣君。近憂、大学も学生が集まらず、海外の学生をかき集める時代、生き残りのために、統合整理が必要で、文科省も予算配分でそれを進展させるご時勢。やれ、大学院を作れば予算を出す、世界的研究に予算を出す、連携すれば予算を出す、しかし、卒業した院生の仕事はない。遠慮がない、近憂ばかりではないか！金融だか近憂だか聞いている方の頭も混乱状態・・・脱線が続きました。政治の心得を論語に習う必要がある、中国古典、貞観政要でも読んでもらいたいもの、と高井君がとりまとめ。｢子曰人無遠慮必有近憂」この十文字でここまでやりますか、と稲富君。閑人の近憂か・・・ 13) 子の曰はく、已矣乎（やんぬるか）吾、未だ�ｺを好むこと色を好むが如くする者を見ず。 「やんぬるかな」は絶望、望みを絶ったときの感嘆、私は未だ徳を好むこと、徳を大切にすること、色を好むがごとくに好むのを知らない。時代は違うが、陶淵明も、歸去來兮辭で「已矣乎　寓形宇内復幾時」としている。子罕篇17)にありますが、已矣乎が前に加わったもの。ぼくは中国で居なかったから、成田君もぼくもそうと相槌、その時、どういうことになったか分かる人います？と高井君。已矣乎は絶望とは違う。強い気持ち、感嘆、現代語ではアイヤーじゃないか、と成田君。何か話をしていた後に、お前がそんなことを言うなんて、世も末じゃ、おしまい。冉有が季氏が泰山で祭りをするときに止めろと孔子が言うが不可と答えたような時に出たんじゃないか、成田君が言うように絶望的なものではないな、と上田さん。顔淵が死んだときみたいのではなく、ああ、そういうことかくらい、と成田君。徳、これは遠慮にあたる。孔子の気持ちが入っている、と高津君。徳は見えない、色は見える。近憂は見えるが遠慮は見えない。比喩的な言い方、と稲垣君。これは好色と徳を対立させるのではなく、色を好むがごとく徳を好むで両方大事としている。徳のために女は・・・では本末転倒、と成田君。NHKでオレオレ詐欺の主犯格の男が出ていた。順調な人生を生きてきてストンと落ちた若者、解雇や内定取り消しで、食事さえ食えない状態のところを狙って引き込む。犯罪だけれど、切羽詰って、背に腹は替えられない。主犯格の男は悪気など感じないというし、1日に1万円にもなる仕事だ、そこに、自分の中にそれなりの正義を作り出してやれば、加わるという。記者が若者に飯を食わして落ち着かせると、正気に返った。近憂、と高井君。孔子は子孫繁栄、子供が生まれないことにはどうしようもない。色は教えなくても男と女は子をつくる。徳は君は君、臣は臣、そういうことをして人と人がきちんとすれば社会がうまくゆく、色も徳も必要と孔子は思っているだろう、と上田さん。民全体のことを考える。孔子はそれをいう、と高津君。だけど、色は子供作り、セックスばかりじゃない、女性へのあこがれ、容色、色気、もっと色々・・・鄭さん、色も徳もがんばってますかね。求めて得られない？・・・と脱線。色には、色々ある。女色ばかりじゃない、巧言令色の色は顔色、臣下が上司におべっかを使う、取り入る、これは孔子の為政者に対する批判。徳のある臣下を好まず、見掛けだけの臣下を採用している。そういう為政者ばかりだという読み方が出来る。孔子は遠慮のある大夫が一貫した政治を行うことを評価していた、と本筋に返した成田君。子産のような大夫を大切にすることが大事、と高津君。次の条とのからみからすれば、成田君の解釈がなりたつなあ、と上田さん。 本日は高井君の最終講義の塾頭ご苦労さまでした。隣の部屋が空いておればここでピアノを一曲といきたいところ、3月に機会があれば、顔を出してください。では、一揆へ。成田君、岸本さんは遠いので先に失礼、グッドバイ。安澤さんが先着、高井、高津、稲富、稲垣の自転車、バイク組の後を、徒歩の大西、上田さん。近憂はなかなか使い勝手があります。遠慮ばかりじゃありません。午前様、よく飲みました。酒虜、酒憂は紙一重です。 2009年2月19日（木）　衛靈公篇14〜15 本日は舌音j、q、x、舌を上歯につけて、舌と口蓋の間から息をだす。ji、qi、xi、濁音、有気音、無気音、唇の両端を十分引いて発音してください。これに注意して、子曰學而時習之不亦説乎有朋自遠方來不亦樂乎人不知而不慍不亦君子乎の発音練習。bu、puの違いについて大西さん質問。ブとプではありません。buもpuもﾌﾟに聞こえるかもしれませんが、puは強く長いめに発音してくださいプーッ。buはﾌﾞではありません、日本語のバビブベボの音は中国語にありません。ハヒフヘホの有気音は日本語にありませんが、あえてハーッヒーッフーッヘーッホーッと息を吐き出し、動かしている唇の動きで何を言っているか分かるように口を作って発音しないと、中国人には通じません、と稲垣君。英語のbに騙される、台湾じゃピンインは使わず、独自の発音記号を使って、有気と無気を表している。こんなにただで丁寧に教えてくれるところはない。大概、習った発音じゃ、中国へ行ったら通じない。つまらん質問にも嫌な顔をせずに解説してくれるし、こんなありがたいところはないな。と安澤さん。全員で憲問篇音読。大きな声がでるようになってきました。 衛霊公第十五。テキストの従者の従はzòng　行篤の行はxìng　　遠佞人の遠はyùan、に訂正しておいてください、本日の塾頭は、急ですが、安澤さんお願いします、と稲垣君。訓読は稲垣君頼みますよ、と安澤さん。 14）子の曰はく、臧文仲、其れ位を竊（ぬす）める者か。柳下惠の賢を知りて與（とも）に立たず。 先生がいわれた。臧文仲は禄盗人（ろくぬすっと）といえないか。柳下惠のすぐれた人物であることを知りながら推薦して同役にしなかった。臧文仲が迫害しないまでも、疎外した。臧文仲のことは「左伝」で分かるが、柳下惠は分からない。要は、優れた人であったら、その人も引き立ててあげないといけない。迫害しないまでも、賢と知って共にたたざる、昔からライバルはむつかしい、と安澤さん。禄盗人とはどう思いますか、と成田君。今でいえば、給料泥棒、仕事をせず給料をもらう。組織に優れた人があれば、それを薦めるのが仕事。それをしないのは給料泥棒である、と安澤さん。それは一つの考え方、と成田君。位を竊む、給料泥棒というより、社長の座に居ながら社長の仕事をしていない、と稲垣君。社長というより、部長、専務。優秀な者を推薦するのが社のため。我々の業界用語では、不作為の殺人、みたいなもの、と安澤さん。ライバルを蹴落とすじゃなく、この場合には臧文仲の位が高い。臧文仲は大夫、部下の優秀な人、と稲垣君。高校野球じゃレギュラーを競って、入ってくる部員をつぶす、芸人の世界なんかでもあるよな、吉本と声がする・・・音楽の世界はどうです、と安澤さん。精神力の強いものが勝つ、言われればその時に演奏しないとダメです。ダンスの方から聞いたことがありますが、世界中のダンスカンパニーが集まるアメリカでの話し、笑い話ですが、ホームですからアメリカ人はどんどん花束が投げ込まれるが、アウェーの人は捨て置かれたり、押しピンを投げ入れられたりとかがあったようです、と中村（典）さん。大学ではどうです、と脱線模様。京大では、あまりそういうことはない。現世利益はない。文学部ではよくいって学長まで。自分の時間がなくなるのが嫌だということがあるでしょう。いや、教授でもタイプが分かれる。立場について、人を引き上げることも大事じゃないですか？・・・・・逆の例、憲問篇19)に、「公叔文子の臣、大夫僎、文子と同じく諸を公に升（のぼ）す。」とあり、臣下の大夫を自分と同じところまで引き上げたことを孔子が褒めている、と稲垣君。二人共「文」がつく、片や孔子に貶（けな）され、片や孔子に褒められる、と成田君。藏文仲は魯国の切れ者で、公冶長篇18)に、大夫でありながら、国君の用いる占いの道具を持っており、梁を支える柱の上部の草の模様の斗栱（ますがた）をしたり、大夫の分際を越えたことをしており、孔子はどうして知者といえるかと批判をしている、と稲垣君。藏文仲は孔子よりずっと前（前617年に亡くなる。）の人で宰相であったとされるが、と大西さん。それなら、晋の文公や斉の桓公など覇者の時代で、宰相ならば大夫のなかでも一番上になる、と稲垣君。柳下惠は隠者の代表とされ、いわば、世から逃れることで仁をなすの方、と成田君。隠者ですか、一緒にやっていた人みたいな感じだったが、そうじゃなかったのか？隠者で、登用しなかったというならそれで分かる、と大西さん。隠者から神仙、五胡十六国の頃、錬金術を使って、不老不死の薬を調合するということで、水銀や砒素などを飲んだという話に跳ぶ。実際に漢代の墓から出た女性の皮膚組織から砒素は出ているし、始皇帝の墓には水銀が敷き詰められていた。弱めたものを時間をかけて飲んでいたのだろう。薬となると最近の大麻事件に波及、そういえばマリファナというのがあった。ベチナム戦争の頃、欧米の若者の間で流行、日本でもヒロポン、これをやれば夜も寝ないで働くことができた、いや音楽家もこれをやって作曲したり歌ったり演奏したりする。やれバブルのころは滅茶苦茶、何でもあり、筒井康隆の『文学部唯野教授』、フィクションばかりじゃないでしょう。特命係長、只野仁もある。芸大もそいうのが居たのじゃない？そんなことはない、京大でもセクハラ事件がありました。意識朦朧といえば、中川大臣。あの人はここ一番では必ず一杯やって緊張をほぐしていたんじゃない、ストレスにさらされて、酒でもなければ保てなかったのでは。親父さんのこともあるしな。劉邦が桶一杯の酒を飲み干しているが、昔の酒はアルコール度が低いドブロクだからそれだけ飲めた。度数が低いから簡単には酔えないもので、神事などのとき皆一緒に徐々に徐々に盛り上っていった。神人和合。だけど酒は気狂い水、酔いに任せて大言壮語、酔いが覚めれば、申し開きは不能、始末書。始末書で済んだら幸せなほうじゃない・・・・・と脱線。稲富君が登場して、いやー！おめでとう、ここの先輩が引き上げたので京大に合格できたのじゃない、と本題に戻りました。 15) 子の曰はく、躬自ら厚うして薄く人を責むれば則ち怨に遠ざかる。 先生がいわれた。自分自身についてはきびしく責め、他人はあまり深く責めなければ、他人の怨みは遠ざかる。薄くして、あまり厳しく人を責めない。怨みが自分のところに近ずこうとしない。何故自分に厳しくしているのか分からないが、一般に躬自ら厚く責める、自分が厚く責める、人は薄く責めるから怨みは遠ざかる。この最初の躬がよく分からないな、躬の意味は何ですか、と安澤さん。躬は「おのれ」です、と成田君。躬をそんなに重く読む必要は無い。自分の修身、身を修める意味。責めるは、他人に要求すると読める、と稲垣君。日常よくあること、人を責めれば恨みが残る。人のことを悪く言わないほうがいい、と安澤さん。感情的に責めるのでなく、その人のためを思って叱ればいい。子供が悪さをしたのを、後のことを思って叱る。薄く責めるは、あまり責めない。叱らなきゃいけないが、叱り方のことを言っている、と稲富君。厚と薄が対になっている。責任を自分の方に厚くし、他人の方に薄くしている感じ、と中村（典）さん。自分の地位で、責任をとる。自分の方が厚くとる、そうすると恨みが少なくなる。責於人の於はどうなるのかな、と稲垣君。論語ではよく於が入る。人の方にというニュアンス。責めるは、悪い所をあげつらうでなく、それを含めて、いい事でも悪いことでも、自分を責め、人には軟らかく、薄めて・・・薄いことであっても、責めるきことを責めるには変わりない、と成田君。薄く人を責めるという言い方はあまりない、と稲垣君。相対的なこと。絶対的ではなく、人より自分に厚い。前半は修身、後半は人への注意の仕方。上に立つ人の心構え。コンビニの店長がアルバイトを責めるときに、感情だけでなく、諭すように教えることが大事、と稲富君。自分に対して厳しい言い方をしているからこそ、人に対して薄くできる、と成田君。自分のことをちゃんとする。きちんと厚くして、自分のやったことまで、相手に要求しない、と稲垣君。仁者は楽山、徳を厚くして身を修める、ぼくみたいに、と安澤さん。厚くお礼申し上げるの感じ、と中村（典）さん。手厚いじゃないか。厚生労働省の厚、生を厚くする、と成田君。自分だけを厚くするだろう、と安澤さん。だから怨み、遠からず、と稲垣君。これも遠慮なしの近憂。 来週の塾頭は、高津君が志願。徳と色のところ、考えるところがあるので、やらせてください。乞う、ご期待。2月28日の土曜日です。3月は7日(土)、12日(木)、19日(木)、28日(土)です。一揆では中村(典)さんと稲垣君の音楽談義に始まり、終電まで安澤、上田さんも参画。来週は稲富君の合格祝いで一杯。 2009年2月28日（土）　子曰：已矣乎！吾未見好�ｺ如好色者也 安澤さん、京都大学で日本語言語学を学ぶ王琳さん、旦那さんが帰国された後日本語を学んでおられる程淑艶と同道。一同自己紹介。 本日はｚ、ｃ、ｓの練習。これに注意して、子曰學而時習之不亦説乎有朋自遠方來不亦樂乎人不知而不慍不亦君子乎の発音練習。全員で衛霊公音読。二階のブラスバンドに負けず大きな声で音読。本日の塾頭は高津君、 子曰：已矣乎！吾未見好�ｺ如好色也。 "NHKでオレオレ詐欺の主犯格の男が出ていた。順調な人生を生きてきてストンと落ちた若者、解雇や内定取り消しで、食事さえ食えない状態のところを狙って引き込む。犯罪だけれど、切羽詰って、背に腹は替えられない。主犯格の男は悪気など感じないというし、1日に1万円にもなる仕事だ、そこに、自分の中にそれなりの正義を作り出してやれば、加わるという。記者が若者に飯を食わして落ち着かせると、正気に返った。近憂、と高井君"（ http://homepage1.nifty.com/hjueda/上田さんのホームページより抜粋） 　このようなことは日常でいろんな所に、様々な形で起きていると思うし、犯罪の色に染まった人も数知れないと思う。危機や困難は至るところに、ふっとした瞬間に訪れるが、そういう状況だからこそ、孔子はこう指摘する、「君子固窮、小人窮斯濫矣（衛霊公第十五）」。君子であろうが、誰であろうが、"窮する"ことは誰にでも起こりえること。しかし、いかなる時も人は自分を見失って暴走してはいけない。伯夷、叔斉は食べ物がなくなっていても、自分たちの信念を貫き餓死をした。死を選んでまで"濫"することを拒否したのである。孔子は伯夷、叔斉を「求仁而得仁（述而第七）」と評した。後世の人は伯夷、叔斉を"高義の人"と評した。義と仁と違いはあるものの高い評価であることには違いない。 伯夷、叔斉の最後を真似ることは美としたいのではなく、信念をもって道（志于道）を目指すことで困難にも立ち向かえることである。孔子は信念を持って諸国に遊説して用いられなかったが、あきらめずにこれから為政者になろうとする人たちを教育し、自分の理想を託した。自分の利益のために政治手腕を振舞うつもりがなかった。学問、道を目指す心得として孔子はこう述べている。「食無求飽、居無求安（学而第一）」、「謀道不謀食、憂道不憂貧（衛霊公第十五）」。すなわち、「学也禄在其中矣（衛霊公第十五）」。また、孔子は学問を成すものに対して、たとえ子路、冉有、公西華のような千乗、千室、百乗（公冶長第五）を収める政治手腕を持っていても、仁・賢を備える大夫に仕えなければ"仁"と言えないと指摘する。「子謂子賎、君子哉若人、魯無君子者、斯焉取斯（公冶長第五）。子貢問爲仁、子曰、工欲善其事、必先利其器、居是邦也、事其大夫之賢者、友其士之仁者也（衛霊公第十五）」 では、どういった人が仁者であるのか？徳＜仁＜聖、ここに共通したものがある。孔子は徳について「先事後得（顔淵第十二）」といい、仁について「仁者先難而後獲（雍也第六）」といい、聖ついては「子貢曰、如能博施於民、而能濟衆者、何如、可謂仁乎、子曰、何事於仁、必也聖乎（雍也第六）」といったことがある。共通しているのは自分だけの利を考えていないことである。禹は自分のことよりも治水のことを考えた。「子曰、禹吾無間然矣、菲飮食、而致孝乎鬼神、惡衣服、而致美乎黻冕、卑宮室、而盡力乎溝洫、禹吾無間然矣（泰伯第八）」。子産は国と国民のために命を捧げた「子謂子産、有君子之道四焉、其行己也恭、其事上也敬、其養民也惠、其使民也義（公冶長第五）」。孔子はこのような人たちの政治を求め、徳と仁と聖の評価の元にしているのではないかろう。 孔子も色を好んでいたのか！？ そもそも"好色"＝色を好むの"好"は、論語の中でどういう位置づけなのか、検討しないといけない。 1. 子曰、由也、好勇過我、無所取材 2. 子曰、十室十邑、必有忠信如丘者焉、不如丘之好學也 3. 哀公問曰、弟子孰爲好學、孔子對曰、有顔囘、好學 4. 子曰、我非生而知之者、好古敏以求之者也 　子路の勇、孔子と顔囘の学、意識して行うものではなく、自然に行えることであり、それぞれの生きる道でもある。孔子は十五にして学を志、生涯学問を好んだ（好）、顔囘もそうであった。子路の勇も、勇が元で生涯を閉じるはめになったが由そのものであった。だから論語の中にある好む（好）は志であり、道を目指す人の度合いを謀るものであった。私は、孔子は色を知っているが、好んではいなかったし、楽しんでもいなかったと思う。「知之者不如好之者、好之者不如樂之者（雍也第六）」ただ、知は生まれつきのものではなく、「好古敏以求之」、学びと実践のもとで知っていくのである。 時間のせいにしてまとまらなかったもの １. 色は顔色の意味もある「子夏問孝、子曰、色難、有事弟子服其勞、有酒食先生饌、曾是以爲孝乎（爲政第二）」。女性の意味もある。「賢賢易色」はチョンさんの好きな言葉であり、両方の意味がある？ ２. 冉有は千室之邑、百乘之家（公冶長第五）の宰になれる素質はあったが、仁はなかった。なぜなら、彼は"好色"であった「季氏旅於泰山、子謂冉有曰、女不能救與、對曰、不能、（八佾第三）」。いかなる理由があったとしても、冉有は季氏の顔色を伺え、自分の地位を守るため、季氏に逆らわなかったことになる。 ３. 伯夷、叔斉、武王を諌めるには遠謀があった「父死不葬，大动干戈，称得上孝顺吗？以臣弑君，算得上仁人吗？（新郑市文物志　P113）」。周王朝が滅びた一因に諸侯の台頭があった。力あるものが覇者となることは時代のながれだったかもしれないが、武王自らその先駆者となったのであろう。「子路曰、衛君待子而爲政、子將奚先、子曰、必也正名乎（子路第十三）」。武王の時代であっても、きっと孔子はこう言ったのであろう「必也正名乎」。結局のところ、武は「盡美矣、未盡善也（八佾第三）」。伯夷、叔斉はどこまで時代を見据えたかはわからないが、学問を身に付け、仁（文王）を求めて仁を得て後世に其の名と精神を残した。冉有は季氏の時代に活躍していたかも知れないが、孔子の弟子でありながら仁を求めなかった。 ４. 学は余力がなければできない（あるいは身につかない）「子曰、弟子入則孝、出則弟、謹而信、汎愛衆而親仁、行有餘力、則以學文（学而第一）」 ５. 孔子の好学はどれほどだったか？「發憤忘食（述而第七）」、「學而不厭（述而第七）」 ６. 「子曰、十室十邑、必有忠信如丘者焉、不如丘之好學也（公冶長第五）」。忠と信、弟子たちがそれぞれ「曾子曰、吾日三省吾身、爲人謀而不忠乎、與朋友交言而不信乎、傳不習乎（学而第一）」、「子夏曰、賢賢易色、事父母能竭其力、事君能致其身（忠である）、與朋友交、言而有信、雖曰未學、吾必謂之學矣（学而第一）」と解釈している。そういう意味では冉有は季氏に対して忠であった。しかし、孔子からみれば自分のように学を好むものはいなかった、千室の宰になる人であっても。 ７. PS:個人的に冉有に恨みをもっていません。 感想：やってみるものの用意などは散々でした。稲垣さんの助けがなければどうなったものかと、本当にありがとうございました。稲垣さんの助言で一部表現変えました。よろしくお願いします。本当はもっと言いたいことはありますが、自分の力はこれまでです。あと舞い上がって急に名前が出てこなかったり、間違えたりなど大変失礼いたしました。若気の至りということでお許しください。 以下は議論の記録です。 窮地にあって、しっかりと自分をもって、困難に立ち向かうことが出来ねばならない。学問を志すのは、腹一杯、食を安定させるのは自分自身にとっては大事なことだが、学問は政治につながり、自分がいい所に住み、うまいものを食べる、でなく、国（国民）の安定のために手腕を振るうのが大事、政治のみでなく、朱に交われば赤くなる、どういう人と一緒になるかで、仁、徳に近い人と一緒に行動することを薦めている、ほぼ強要している。徳、仁、聖を求めるのではなく、行ったことで誰かが評価してくれる、それが大事、徳と仁は遠慮というところは良く分かった、と稲垣君。 孔子は色を好むと上田さんは言っていたが、それの反論。思ったようには書けなかったが、孔子は日本語でいえば、色を好んだと思う。日本語の好むは範囲が広い。一般的に言えば好むになる。しかし、論語の中で「好hao」にはもっと重い意味があり、孔子好色となればとんでもない意味になる。論語の「好」は、志であり、道を目指す人をはかる度合いであり、孔子が好色であれば、論語は残っていない。孔子は色を知っている。知るは生まれつきではない、知るも大変なレベル、色は知っているが好んでいるものでも楽しんでいるものではない。色には色々あり、顔色とか・・・どっちにしろ色のよさは知っているが好んではいない、と高津君。濫が度を越える、一定水準を超えたもの。君子、小人を対立させるのではなく、君子も小人も、誰にもあること、濫でない例、志、仁を守って濫することなかった例、孔子が信念をもって、で議論が変わる。孔子にとっての仁、仁の教育があったが、どういったものが仁か、仁とは何かでなく、仁を哲学すること。実践ありき、後の目からみて、結果がどうであったかが問題、が高津君のいいたいこと、色のところはもうひとつよくは分からないが、と稲垣君。 「好」はその道に入ってしまった状態。もし、色を好んでしまえば、顔色とすれば、上の人の好みに合わせることになる。孔子は学問の道を走っており、その人、その人の道を指している気がする、と高津君。これを好む、これを楽しむ、色々楽しむが一番じゃないか、と安澤さん。よい例と悪い例があり、学問に関しては、知＜好＜楽だが、と高津君。好色はレベルが低いが好学はレベルが高い？良寛とか一休とか、色々な人がいるだろう、と安澤さん。孔子は南子のことを気にしていた。史記でも、女性によって国が滅びることがいっぱいある。楊貴妃か、一国の王がそれに陥ると国がダメになっている、と高津君。好色というのはあるが、志色はない。志道はあるが好道はない、勇、仁、知、学と色はカテゴリーが異なる、と稲垣君。 徳＜仁＜聖という関係ではなく、それぞれ別次元。字の成り立ちからすれば、仁は人と敷物、おもてなしの心、人に与えるもの、義は羊と我、我はのこぎり、音のみ仮借、殺して犠にする。自分を犠牲にして行うこと、徳は自分の行い、心がさわやかになる行い、千円を拾って自分のものにすれば、疚しい気持ち、交番に届ければすっきりする。聖は忘れたが、神の声を聞くこと。仁義といえば、義は直接の行い、仁はその抽象概念、これが完璧になると聖、天に通じる。キリストとか釈迦のレベル、と稲富君。同じことを言っているつもり。行う結果として徳となるかどうか？千円拾ってどうするか？自分のものにするか、届けるか、他人に与えるか、施すことによって徳が得られる。それを積み重ねて仁に辿り着く。考えずとも人に与えることができる、そういう段階を踏み、広く行き渡らせ、衆を救うと聖となる、と高津君。徳、仁、聖は単純な比較ではなく、カテゴリーが違うはよく分かる。徳行とはどう思うか、仁義は孟子から、仁とは、義とはどういうことか、などと言わない方がよい、と稲垣君。管仲のおかげで奴隷にならなかった、子産の評価など、はっきりとした定義は出来ないが、孔子が評価している人は、そこから学べるものがある人、こうしたら仁、こうしたら徳でなく、段階がある、と高津君。 英雄色を好む、リビドーですか、と稲垣君。フロイドはそう言います、衝動みたいなもの、と中村（佳）さん。エネルギー、精力でリビドーの大きい人と小さい人がある。学問や芸術で大きな成果を挙げる人は精力の強い人。それが単なる「助べえ」に終わるか偉い人になるかは紙一重。正しい方向にゆけば、業績を挙げるが悪い方へゆけば、悪を為す。孔子はエネルギーの大きい方。女の人も孔子を好きになったであろうが、孔子はストイックな方へ行った。陽虎は女好きの方で悪い例。孔子は陽虎をライバル視していたが、孔子はといえば、そっちへ行った。子路ももともとはヤンキーみたいな人。昔はやんちゃをしていた人。そういう人は結構楽しい方へ行き、事を成し遂げることがある。子路もそのままでは女好きだが、孔子に出会ってストイックに行った、と稲富君。色は悪ですか、善ですか？樂は善ですか悪ですか？そういうことでは成り立たない。では、顔回はリビドーの小さいひとですか？と稲垣君。そういわれれば、穴があいているなあ・・・と稲富君。リビドーは衝動と訳され、それのいい方向が昇華。他にも解消法はあります。あるがままに行えば犯罪につながります。それに蓋をする人もいます、無いものにしてしまうこともあります、と中村（佳）さん。善悪は社会的概念、陽虎は悪いと思っていない。色を好むも悪ではない。ぼくはそれを楽しむ、好む楽しむは悪とは異なる、と安澤さん。 伍子胥は無実の罪で父と兄が殺され、逃げて復讐を誓った。鄭から呉に逃げるとき、川で漁夫に会い、伍胥の身が危ないことを知って、船に乗せ対岸に渡してくれるのだが、伍胥のことを知っていた。渡り終えると、伍胥は値百金の剣をお礼に渡したが受け取らなかった。漁夫は剣より伍胥の首の方がはるかに高いことを知っていた。信念があってやっている。それが後の世の評価の対象になる。もし、漁夫が孔子以前の人だったら、孔子が仁を与えただろう。そういう状況のなかで自分が何をすべきか、そういうものを自分のなかに取り入れてゆきたい、と高津君。 先に食糧がつきて困窮した話がありましたが、芥川龍之介の作品、「羅生門」で老婆が死人から頭髪を抜いて売ることで生きていたのですが、この老婆を見つけた盗賊のするだろう行動には二通りの可能性があると思います。この老婆を見逃すか、老婆の衣服をはぎ取ってそれを売ることで、自分が生きのびるか。この場合、衣服を剥がし取るのが悪となるか、ということは疑問となり、それが絶対的に悪になる、と考えることは難しいと思います。衣服を剥ぎ取る、という行動の中には、自分が生きなければならないという強い意志、信念のようなものがでてくる。ぱっと見、悪いことに見えても、そこに自らの強い意志があるとすれば、つきつめてみれば、徳に通じるのではないか、と考えます。それは、色においても同じことで、色をつきつめるということが、どういう事なのか分からないが、何かしら、老婆の衣服を剥いで自分が生きる、ということは自分の利益となりうるので、自分の利益を追求しない行動、それ自体が自分の利益になっているのであり、たとえば、餓死しても自らの信念を貫くと云うことは、やはり自分がそうしたいからしているのであって、他人のためではない。自分でしようと思うことは、「他人の利益」「自分の利益」という外見的で世俗的な物より内面的なもの「強靱な精神性」を強く求めるというところがすべて徳につながる。外見的に善に見えても、悪に見えても、やはり自分の中の強い意志という物が重要視されているのではないかと思いました。 ところで孔子は自分に徳があると思っているのですか、と岸本さん。自分では仁とは言っていないが、自分が仁になりたいと思えば、仁が向こうから、こっちにやってくる（述而篇29）と言っている、と高津君。自分で徳のある人間とは言っていない、と稲垣君。衛霊公篇で、舜のことがあり、何もしなくても、南面しているだけで、治まるというのが徳とすれば、徳を持つ人と徳を知る人は矛盾しませんか。徳を持つ人は徳を知らなくても行っている。よい政治、君主になることが目的ですか、と岸本さん。いい政治をすることが目的です、と稲垣君。 ぼくは個人的には孔子に徳があると思う。孔子は生きるヒントを与えてくれた。それは孔子が作り出した仁徳、孔子がどう思おうと徳がある、と高津君。知識として学ぶ、楽しむは、人の評価とは関係なしに行う。色を好むように自然とできる。仁を生き、善に生き、ではなく、自然にできるのがすばらしい、と稲垣君。発憤して食を忘れる。東坡肉（トンポーロー）、作っているのを忘れて三日ほどかかって出来た。好は集中していること、孔子が好色だったら大変なこと、と高津君。音楽を聴いて三月肉の味を忘れる、これはどうなるか、音楽のみでなくそうであった、と稲垣君。時間となりました。 稲富君も岸本さんも試験に合格されておめでとうございます。一揆にて一杯の稲富君、大西さん、安澤さん、上田さんでした。 2009年３月７日（土）　衛霊公16〜17 安澤さんから声をかけられて、ENJOY KYOTOの本を出されているクランシーさんがお越しになる。韓国や中国にもでかけておられ韓国語も中国語もおできになられた。川那辺さんと韓国語会話。どんなことをしてますか？簡単に説明させてもらいました。 全員で衛霊公音読。本日はg、k、hの練習。日本語のガギグゲゴでなくカキクケコに近いが、舌は下歯茎で、もっと喉の奥から、有気音で。これに注意して、子曰學而時習之不亦説乎有朋自遠方來不亦樂乎人不知而不慍不亦君子乎の発音練習。クランシーさんにも発声いただきました。ここで、では、皆さんお元気で。本日の塾頭は岸本さん。 16) 子の曰はく、これを如何、これを如何と曰はざる者は、吾、これを如何ともすること末きのみ。 先生がいわれた、どうしようか、どうしようかと尋ねない者は自分もどうしようもないのだ。どうしてもやれない、自分を反省せず、問いかけるだけという訳もあるようである。如之何の三文字が並んでいる、畳語になっています。三語になるとリズムを強める、意味は同じでも全然ちがわないものですか、と岸本さん。意味はちがわない、と稲垣君。如之何、如予何、如命何と如○何、に目的語を入れないとすわりが良くない、之が如何の目的語となっている、と成田君。之があってもなくてもいい、意味は変わらないがニュアンスは違う、と稲垣君。古注では、孔安国は、如之何を二つに切って、最初を補語にして読む、どういうことでしょう、と岸本さん。孔安国は、不曰「如之何」、「如之何」者とし、「如之何」者というは、如之何者、言禍難已成、吾亦無如之何也、どうしようというは、禍（わざわい）がすでに起こっており、そうなってはどうしようもない、という風にみること、と成田君。不曰猶言不謂ともいう、中国語では、こうして説明を行い、如之何者、言は、「者（は）〜のごとし」、猶言は「なお〜のごとし」、という風な説明の形式、大事に至ってしまえば私にもどうしようもないの意味、と稲垣君。古注では、今更謂われてもどうしようもない、のようなことですが、私は、自分で考えて、自分で聞かないとどうしようもないの方と思いますが、と岸本さん。孔子の教え方がこういう風、と書いてある。一方的に言われるより、質問中心にやってもらった方がよく頭に入る。教える側からみればどうですか、と大西さん。教える側から言えば、ただ分かりません、で終われば、何が分からないかも分からない、手も足も出ない、ここが分からないということでなければ、どうしようもない、と稲垣君。だけど、しょうもないことを聞かれては、困るのでは、と大西さん。そういうことはない、ちゃんとしますよ、と稲垣君。自分の問題意識がないとどうしようもない。お客さんに聞かれたことは、調べて読んでもサーと頭に入るが、お客さんに聞かれたことじゃないとなかなか頭に入らない、と安澤さん。話を戻すが、古注方式に読むのは無理がある、不曰如之何如之何也と也で終わるなら、そうも読めるが、頭から一つながりで読むのが、すっと頭に入る、と稲垣君。新注の方がしっくりくる。如之何は当時の人々が、すぐに口にする言葉で、二回重ねることに雰囲気がある。吾末如之何と最後に私も如之何はユーモアの感じがある、と成田君。成田さんの今の訳はピンと来る。同じ言葉のリフレインはピタリとくる、と中村(典)さん。孔子がイラっときたところを誰かが書きとめたのかも、と稲垣君。最後の已矣がついているのは、意味がありますか、と大西さん。也で終わっても、也已矣でも意味は同じだが、強調されていることになる、と稲垣君。身分制度があるのでピンとこない、と中村(典)さん。当時の日常語でも、今の訳本になると、そこがきっちり訳されてしまうと、感じが変わってしまう、と稲垣君。之を如何の内容は、問いかけに限定するのですか、自分が内省することは含まれませんか、と岸本さん。古注は禍、困難に際してどうしようとなる。朱熹の場合は普段からどうしよう、どうしようと何度も考える、広い意味からなる、と稲垣君。日本語でどうしよう、どうしようと言うと、災いを想像する、と成田君。そうですね、孔子の場合、風刺、前向き、ユーモアがあります、日本語でいえば、狂言のこれはいかに、これはいかに、が合う。どうしようは、ダメなこととは思わない。マイマス、プラス的にマイナスではなく、これはどうなのよ、の感じ、と中村(典)さん。問題意識、問題を解決する方向、何かにうろたえるというものではない、と稲垣君。如之何はどっちにも使える、どっちかに限定することはない。古注は悪い方に、朱熹は熟思して自分の出処進退云々、というのは真面目すぎる、と成田君。古注は現実的、朱熹は内省的、と稲垣君。如之何を出せば出来る、出さないと怒るというより、C'est pas mal. 悪くない、よい、これにはくやしい感じが入っていて、ダメとはいえない、いいというには気恥ずかしい、自負がつよい表現ですが、と中村(典)さん。不錯bú cuòは、本当はいい意味、と安澤さん。レベルの上の人が下の人をほめるのが、不錯。川那辺さんはどうですか、と稲垣君。そんなに難しいことは考えていません。しょうもないことではなく、政治的なもののことを言っているのじゃないですか。下にも上にも、先生にも問う。政治をする人は傍観していてはダメ。災いよりも大変なこと、そのあたりのことを言っているように思います。そんなのでは私でもどうしようもない。「私は」は、きつく言っている。うまくかわすというものではなく、全く同じことをいうのは、厳しいかなと思う、と川那辺さん。厳しさは、也已矣にも表れている。「子大廟に入りて、事毎に問う（八佾篇15）」とあるように人に聞いて確かめる、人に聞いて、聞いて学ぶ、につながりがある。色々な人の意見を集めて一番いいものを聞く、それが出来ない弟子に言う、と稲垣君。独断専行をしている冉有に泰山での祭りを何故止めないのか（八佾篇6）、と言うときに孔子からすれば、問題意識が欠けている、政治を行う力はあり、出来るのであるが、問題意識が違っている、これでは如之何、と成田君。「憤せずば啓せず。悱せずば發せず（述而篇8) 。」に似ているとある、と大西さん。 17) 子の曰はく、群居して終日、言、義に及ばず、好みて小慧を行ふ、難（かた）ひかな。 先生がいわれた。一日中おしゃべりをしながら、一度も正義に触れることがない、一緒に居て、まともなことを言わない。小さな知恵を働かすのは、見込みが無い。慧に悪い意味があるのですか、慧は星の光、ほのかな光、小慧はこざかしい、小がつくと、悪い意味になるのかな、小慧の慧を恵とするともあり、小恵、小さな恵、小さな恩恵ではおかしい、小才がきくことが近いのかな・・・と岸本さん。小はすごく悪い。小人のところでビックリしたけれど、小人はordinary peopleと私は思っていたのですが、小人は君子と比較され、大はよくて、小はけなされるときに出てくる、と中村（典）さん。小慧を行うはよく分からない。おしゃべりすると小慧を行うこと、ただ単なるおしゃべりが小慧に何故つながるのか？内容が悪いのか、つまらない議論、本当につまらないのかどうか分からない。つまらない議論、小才がきかないとはあわない、と岸本さん。慧はさかしさで悪い意味、論語の中では知恵はそれだけではダメでしょ、と中村（典）さん。小知は小恵でもそんなに意味は変わらない、と稲垣君。英語では何？と中村（典）さん。Wisdomと稲垣君。Cleverness、慧は徳にまで高められていない、成田君。小聡明xiăo cōng míng、こざかしい、と安澤さん。陸徳明音義（唐）の魯論語では慧も恵もhuìで通じる、と成田君。おしゃべりが小慧というのはどこからでてくるのですか？群居というのは三人以上居ること、そこで話すことが、義に及ばない。好んで小慧を行うは、おしゃべりにふけることではなく、結構するどい議論や論評をしているのだが、孔子からみると義に至らないのは、それが不満ということじゃないですか、と上田さん。群居ということに意味があると思います。座談会が楽しかった、しかし、より義のことにはゆかない。音楽だったら交響曲とディベルティメントの違い。交響曲は沢山の人間でやる、沢山でやるときには意味を持とう、という意味。話しでも、テーマを持ってやってゆく、群居して、沢山の時間をとって、沢山のことを行うのは、義の方でしょう、と中村（典）さん。この条は言と行の対比でみていたが、そっちの方向で読むのがいいのかな。小慧と群居とが関係なくなる。個人で居ることではない、と稲垣君。群居は大事、義に及ばずと小慧は別のときでも一緒のときでもいい、孔子が言いたいのは、群居して終日の危険性。集団で寄り集まると、集団心理で変な方向へ行く。大勢でやるときの悪い特徴。小慧は妥協してスケールが小さなものにまとまる。大勢でやればいいものになるのに、ならない。真ん中に義を置いておかないといけない、と成田君。この後に、大勢が悪（にく）むもの、大勢が好むものは察する、注意しないといけないと言っているのにも合う、と上田さん。群居のシチュエーション、群居でしか出来ないものがあり、共に行う政治がみえてくる、と稲垣君。群居は弟子でしょう、と大西さん。弟子のこととは思っていなく、政府みたいなものを比喩的に言っているのじゃないですか。義に対して全然なっていない。好んで小慧、慧は悪いことではない。妙なプライドばかりみせつける。手の施しようがない。弟子にあててもいいが、難しは、弟子には厳しくするのであてはまらず、世に対してどうしようもない、政府を比喩的に言うのでは、と川那辺さん。弟子に言うのはおかしいのかも、と大西さん。弟子が群居しているに、難しはない、と川那辺さん。義に及ばねばならない人が義に及ばない、と稲垣君。徹夜国会で最後に牛歩、と成田君。四文字熟語の標語みたい、と安澤さん。群居終日/言不及義/好行小慧/難矣哉, 孔子が四文字づつ読んでと発音する成田君、四文字熟語です。小慧は定額給付金、僕はもらえるとうれしいのですが、と付け加えて本日はおしまい。 来週は12日（木）塾頭は大西さんよろしく。その後は、19日(木)、28日(土)です。一揆は熟年トリオ、今日は飲み物だけなら、とマスター。急な客でてんてこまい。で白木屋へ、ここも満杯で一揆へ出戻り、ほどなくして、料理もできます、果報は寝て待て。 2009年３月12日（木）　衛霊公18〜20 安澤さん、老子に詳しい野村清孝さんとこの間キャンパスプラザの会場予約の待ち時間に一緒だったNTTコミュニケーションズの指方リサさんをゲストに。読書会のリクルーターの面目躍如。 安澤さん、弁護士の領域を侵したらうるさいですよ、と野村さん。そこの分かれ目は裁判になったら司法書士、もますのが司法書士。もめる前はぼくの仕事。平和的にまとめるのが行政書士。司法書士と行政書士の違いは、司法と行政の違い。行政の許認可に関するものは行政書士の領域で幅が広い、絞込みをしないと法律の変化に対応できない。それで、国際関係、入管、建設、産廃とかが中心。もめてなんぼの弁護士さんとやることが違う、と安澤さん。 さて、本日は、成田君が発音チューター。子音の最後のグループ丙、zh ch sh r。日本人苦手の発音。甲をj q x 乙をz c sとする。中国では、丙の発音は南方では乙となることがあるが甲となることはない。甲は舌先が下歯茎、上顎と舌の間で発音、乙は舌先が上歯茎、その間で発音、丙は巻き舌、上顎との間で発音。学而篇の練習。全員で衛霊公音読。上田さん、最後の師冕見の見はxian(4声)現のことです、まみえる、目上の人に会うことです。 安澤さん、初めての方に返り点レ、一二、上下等の使われ方の説明を成田君に依頼。横書きじゃ出来ないかな、と安澤さん。Rとか１，２、up, downでやればできますよ、と成田君。 本日の塾頭は、大西さん。 18) 子の曰はく、君子は義以て質と為し、禮以てこれを行ひ、孫以てこれを出し、信以てこれを成す。君子なるかな。 先生がいわれた。君子は義を以って本質とし、正しい礼儀にしたがってこれを行い、謙虚なことばで義を口に出し、まことを以って義を完成させる。これでこそ君子であるなあ。二回君子がでてくる、と大西さん。二回君子が出ることにひっかかるのですか？本によっては最初の君子がないものもある。それがいいと言う人もいる、と成田君。二回目で、それでこそ君子だなあ、がいい、上田さんどうですか、と大西さん。義は正義というより、後に出てくるが、古代から続く素朴な、裏の無い、素直なもの、質は文質の質、中身のこと、君子とは、そういう性質を本にする。だけどそのままそれを行うと、粗略になることがあり、禮を以て行うと文が備わり、文質淋淋となる。出すは言葉に出す、これは古注の考え方だが、孫は謙遜の遜、謙虚に話すとあるが、いかに正しくとも相手に押し付けるようじゃ、相手は納得しない。相手もこの人が言うことだからという信頼がなければ、聞いてはくれないということではないか、と上田さん。朱子は義を正義とみているようですが、どうですか、大西さん。鄭さんがよく言っていたことだが、その時代は仏教が哲学的な論議を行い、儒者もそれに対抗して事理を明かにすることを迫られたため、論語の解釈も昔風の素朴な義では見劣りがしたのだろうが、ここは素朴な、実直な心とみたい、と上田さん。ぼくもその方がいいと思う。すべてのことを行う基本のところ、と成田君。朱子は善は事の本を制するなりとするが、制するとは何か、と大西さん。製作の製です、何を行うに、するにしても善が必要。ぼくの理解だと、はじめっから正しいと分かっているもの、契約をして、決められるものじゃなく、生まれたときからやるべきこと、やってはならないことと分かっているもの、と成田君。正義は時代によって変わる、中国では高津君どうですか？と大西さん。義は現代では正義に近い。これを成す、これを出す、これを行う、質を前提としてそこに礼をもっていく。質が義務みたいな感じ。義の意味より、質になることが義務かな、と高津君。最低限の義務。質がないのに、礼では、どうしようもない。之を出すの之だが、大西さんは之を義と理解しておられるが、こういう時の之は、目的語としてそう重くない、文調を整える意味の無い目的語。義を行う、義を成すと読まずとも理解はできる、と成田君。確かにそう考えなくてもいいようですね。四文字熟語にするためにやっているみたいなものですか、と大西さん。君子は何を当然行うべきかを身につけている、実行は礼をもってやらねばならない。これは勉強になりますね。出るは言葉に出す、ですか。信を以って成す。ぼくみたいだなあ、それが君子だなあ、と安澤さん。義は思い込みでしょう！節度をもってあたれですか？義は時代によって変わる。思い込みではないか。アメリカの正義と日本の正義は異なる。やる時に節度をもってやりなさいでしょう、と野村さん。義は普遍的なものでしょう、と安澤さん。孔子はそうです。それが共有できていれば問題はないが、と成田君。2500年以上経っているのに、孔子の理想社会はできているのですか、と野村さん。実現できると思うのは危うい。やろうとは思っていた、絶対出来る、やる気はあるが、ところが、反面悲観的なところもある、二面性がある。しかし、現実とのギャップから逃げず、あきらめなかったところに説得力がある、と成田君。所詮思い込みにすぎないと言ってしまえばそれまで。孔子の場合はかなり遠い昔、まだ人間が動物と同じく生で血や皮ごと食べて、腹をこわしたりしていたのを、ものを煮たり焼いたり調理することを工夫したり、木の上に住んだり、住居をつくったり、人間を人間たらしめてきた営みを評価し、社会を更に前進させる気持ちが強い。社会を組織してゆくのには、人間を人間たらしめるよりよきあり方があるとし、それが礼とか義とかいうことになる。思い込みとするのは、その人のお立場だから、そういう方なのだなとするしかないですが、と上田さん。所詮じゃない、と安澤さん。老子は義などは思い込みで、それを人に押し付けるのは良くないとするのでしょう、と成田君。人間の二面性、徳でゆければいいのでしょうが・・・やっかいなものが一杯ある、経済、軍事、武力ありますよね、と野村さん。孔子は文明の力を信じている。聖人がでて正しく使えば良くなる。中国の昔においては、聖人が居て正しいことが出来た、老子は聖人の政治をするのが間違いとする。人間社会が悪くなる、聖人が居なくするのがよいとする。中国思想の二面性を分担して行っているとも考えられる、と成田君。儒家、道家、法家などがある、と安澤さん。孔子と易と関係があるよね、易について言及しているが、人間を信じているなら・・・と野村さん。易は人間が如何に自然の仕組みを理解するか、人間の知恵の結晶みたいなものです、と成田君。易の前は甲骨を焼いての占いですが、今の人が考える運勢占いとは違って、天帝に伺いをたててそれを判定するものです。易は伏犠が天を仰ぎ地に伏せ自然観察、人間観察をしてどういう兆しから何が起こるかを見出すものです。それが八卦で季節が寒いから暑いに変化してゆくように、循環して一つどころにとどまらない、そんな風にして現象をとらえてゆくもので、自然と人間の理解の方法、と上田さん。易で何でも説明できる、易は共通の道具として存在した。それぞれの思想家がそれにあてはめて、更に大きなものとなり、道具として使い勝手がよくなる。伏犠が八卦を作り、文王が六十四卦の周易としたとされるが、実のところは誰が作ったかは謎です。色々なところが使えるので、思想家がそれぞれにあてはめ、それがより使えるようになっていく、と成田君。自分の考えにあてはめた、と野村さん。分担と言うのは何か、と大西さん。孔子、儒家は昔の王様の作った正しい世界に帰る、老子は王が居るところが悪い、その以前に返す必要がある、無為自然の方がうまくゆく、と成田君。易が知恵の集積とは、と大西さん。自然、世の中に対する見方をそれにあてはめてゆく。それぞれの思想家が使ったテキストがあり、それを自由に使って、ごちゃまぜとなり、エキスの部分のみを使うことになった、と成田君。時間がきているが、もう一つゆきましょう。 19) 子の曰はく、君子は能くすること無きことを病（う）れふ。人の己を知らざることを病へず。 先生がいわれた。君子は自分の才能の乏しいことを気にかけるが、人が自分を知らないことを気にかけない。論語には似た表現が4回でてくる。學而篇1)、人不知而不慍、里仁篇14)、不患莫己知、憲問篇32)、不患人之不己知とこの部分。ここは病、他の二つは患、そのちがいがわからないが、と大西さん。今日は医者がいないのが残念、どっちかいてくれれば。慍（うら）みずと似ているが、人の目を気にしない、と安澤さん。次の条が関連しているので一緒にやりましょうか、 20) 子の曰はく、君子は、世を沒（を）へて名、稱せられざることを疾（にく）む 先生がいわれた。君子は生涯を終えて名前が称されないことをにくむ。人のことを気にしないでなくて、二つの意味がある。ひとつは、生涯終わってから名を称えられないことを悩む。生涯が終わってからとあるがどっちがいいのか、ぼくは、死んでからと思うが、生きている間に出るのはいいが、死んでから出てもよい、と大西さん。自分が世に称えられるかどうかということより、考えが受け容れられないのが悔しい。説明しても説明しても用いられない。そのへん、と安澤さん。それを疾（にく）む、気にしないでなく、疾むと言っている、と大西さん。死ぬまでに、自分の理論で受け容れられることを望んでいる、と安澤さん。それを良くないと言っている、称せられないことを、良くないと言っている、と大西さん。なんで、何が違うの、と安澤さん。大西さんは、死んで名が称されないのを気にしないでなく、気にしているということ、と声がする。生きている間でも死んでからでも名が残せるようにしなければならない、と言っている、と大西さん。朱子は死んだ後の説かな･･･どっちかな･･･分からない。つなげて読めば、死んだ後がいい。生きている間はいいが、死んでしまうと称せられないでは困る。前とのつながりがいい、と成田君。４０、５０歳にして世に出ないようでは見込みがないと言っている。還暦をすぎてますから私はダメですが、生きている間というのが孔子、自分は春秋（歴史書）や易に注したことで世に知られるのだろうと、今日我々が称するようなものとは違ってます、と上田さん。そうは思ってないでしょう、大器晩成、死んでバッタリ忘れられるというのもね、と安澤さん。無能とあり、才能が無いとみられるが、能は出来る、やり遂げようと努力する、それが無いことを憂えるのであって、それを続ければ出てくるという方向、と上田さん。能力が有るか無いかではなく、実行できるかどうか、ただ上の政治家に使ってもらえない、自分の政治を実行する場がなかった、と成田君。自分の理論を完成する場がない、高津さんどうですか、と安澤さん。孔子はすべての人に君子を求めている。それぞれの役割を求めている。君子には君子の役割、臣には臣、自分の持分をしっかりすればシステムは機能する、一貫する。昔の学問は政治につながり、斉で臣下が主君を弑したとき、孔子はこれを攻めるよう助言したが、聞き入れられなかった。先を見て、人々に返してゆくのが孔子の理想、名を成すより役割がある。学問する人に本を持ってゆくのが私の仕事（朋友書店勤務）、と高津君。役割はある、と野村さん。 さて、お時間です。来週は19日(木)、塾頭は安澤さん、よろしく。お花見は4月18日(土)のお昼、植物園です。本日も一揆は熟年トリオ。
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