2007年5月24日 述而 1～6
本日は高井君がチュター、緊張します。では音読から、ゆっくりゆきましょう、とスタート。
先生がおっしゃった。私は古のことを述べるだけで、新たに何かを作ることをしていない。信じて古を好む。竊に私を老彭という人に比す、ということです、と高井君。述べるはどういう感じですか、口で説明するという感じだが、と成田君。説明して詳しく説く。注釈をほどこしたように詳しく述べる。自分から道を作るようなことではない、と高井君。昔からのことを伝えて、自分のオリジナルを作らず、新しい説を作らずだろうが、貝塚先生や小川先生達はそれぞれ説を作っているようようだが、と安澤さん。昔から伝わっているいいものを自分なりに敷衍（ふえん）するという態度ではないか。全く新しいものをつくるものではない。全くオリジナリティーが無いかといえば、そうではなく、今風、今に生かせるように新しく付け加える。孔子以降の知識人の態度となった、と成田君。春秋は孔子が作ったのでは？と川那辺さん。魯の歴史の記録を自分の信念に基づいて編纂した。春秋は、～で～で～した、と事実だけを記す、字面の中に、行間にこめられたものに孔子の考えがあるスタイル。表現の仕方が、述べて作らずでしょう、老彭とは?と川那辺さん。論語義疏、皇侃（おうがん）に老彭殷賢大夫也於時但述修先王之道而不自制作篤信而好古事とある。老彭は宋の人、孔子も宋の出身で意識していた、史記によれば、その先は宋人、国が一緒なので孔子が意識していた、と高井君。皇侃の説だと、孔子は老彭と同じことをしていたことになる。もしかしたら、老彭がそうだったかどうかどうかは別にして、昔の人の気持ちでやったと言っているだけ。我が老彭と言っているのは？と成田君。宋の同出身だから？と高井君。むしろ共に殷と意識しているのでは、と上田さん。我が老彭でなく我を老彭に比すではないの？と声がする。比於我於老彭と日本に伝わったテキストがあり、それならそうなるが、比於我老彭の場合は我が老彭、と成田君。朱子が言うには孔子は謙遜して言っている、作るというより大きなことと絶賛している、と高井君。本当はできるのに、と成田君。孔子は当時分からなくなっていた書や詩の意味を当時の言葉で解説し、本来の意味を明らかにしたのだろう、と上田さん。
先生がおっしゃった。述べることでなく黙って覚えておく、新しく学んで厭きることなく、人に誨を施して、あきること、倦むことはない。一体何が私にあるだろう。三つのうちどれであろう。その他に何があるだろうということのようですが、どうですか、と高井君。疑問ではなくて、"そんなことはどうってことない"と言っているのでは、と上田さん。何か私に出来るだろうかは、朱子の解釈で、批判はされていますが、と高井君。朱子は謙遜していると言っているが、鄭玄（じょうげん）の説では何故私だけが出来るのだろう。何有は論語では簡単なことであるの意味、簡単なことだでいいのでは、と成田君。黙して識すとは？と川那辺さん。新たに作らず、と高井君。識°は誌と発音が同じzhì、記録する、頭に覚えておくこと、と成田君。黙って何々し、でなく、人を見抜く、一瞬にして洞察するということにならない？と川那辺さん。何有於我の解釈による、と成田君。春秋を記すときには人に相談せずに自分ひとりで行ったとある、詩も三千を三百に編纂したとあった、黙しては相談せずにでは、と上田さん。朱子は孔子が謙遜してというが、孔子は謙遜しているとは思えない、と川那辺さん。謙遜してるのは朱子だろう、と上田さん。誰に向かって謙遜するのか、・・・そろそろまとめてください、と成田君。黙しては謙遜ではなく、三つの行為であれば出来るのニュアンス、初めて学ぶという考えもある、新しい知識を行ってゆくという風に解釈もできるともあるが、なかなかまとまらなくて・・・、と高井君。
先生がおっしゃった。德を自分の身に脩めることが出来ない、講じるは、当時、話しをして、話し合ったり、復習したり、習ったりすること。それをしない。義を聞いてなさない、いつまでも不善をなしつづける。私はそれを憂える。自分のことを言っているのか、弟子のことを憂えるのか、どうでしょうか、と高井君。私が心配しているのは、これが出来ないこと、と成田君。これがむつかしい、と高井君。いつも気をつけている、と成田君。世の中そうなっていないが、そうせよという立場、実際にはかなりきつい言い方、と上田さん。徳、学、善を強調した語順になっている、と高井君。講は、弟子同士で話し合うだけでなく完成度の高いものにすることが含まれる、と成田君。そうそう、学理を究めるという意味がこめられている、と上田さん。徳は先天的なものではなく、脩めることができるという考え方、と高井君。後に、「天、予に德を生めり、桓魋、其れ予を何如」と言っているがどうなる、と成田君。皆持っているのに極めない、と高津君（お仕事ご苦労様このへんから登場）。大変な時に天が意識される、日々天がどうこうでは怪しい、と成田君。自分を奮い立たせるときに必要、と川那辺さん。天はある程度動かし難い、司馬遷は「天道は是非か」で、動かし難いものとみていた。日本では"おてんとうさま"、天に対する疑念はない、と高井君。中国人は天を都合よく使っている、何か有ったときに、と高津君。都合がよいより、拠り所とする、と川那辺さん。天は自分の力ではどうにもならない意識。うまくゆかないときに天意を使う、と高津君。韓愈（『論仏骨表』を奉って諌め、結果、崇仏皇帝であった憲宗の逆鱗に触れ左遷されることとなった）が天命我にあざむかんといっている（一封、朝に奏す、九重の天、夕に貶せらる、潮州、路、八千）、と高井君。Oh Jesus! みたいなもの、と安澤さん。
閑暇、ひま、時にすることがない時、のびのびやわらいで、ゆったりしておられる。燕居を閒暇無事之時と朱子が言っている、と高井君。言葉の意味は分かるが何がいいたいのだろう、と成田君。普通の生活はゆったりとしていたとのこと、どういう時か分からないが、と高井君。前項とつなげるとどうなるか、これだけかな、と高津君。前の言葉は厳しい言葉、教室では厳しいが自分の部屋ではくつろいでいた、どうですか上田さん、と成田君。そう思います、と上田さん。夭夭如は、詩経の桃之夭夭 灼灼其芽、桃の姿の美しいことに使われた、と高井君。燕は宴会の宴と同じ発音、と成田君。当て字で宴会の宴ですね、と安澤さん。国の名前もある、と高津君。燕は、国名ではyānはツバメ、ここではくつろぐyàn。
私の衰えたことは甚しい。周公を夢に見なくなって久しいなあ、久しいかなあと強調。感慨深そうに歌ったもの、と高井君。ここで登場の鄭さん。前に戻るけれど、～～如表現は郷党篇に多いが、珍しくこれだけここに入っている。様子を表わすために使われる、何故ここに入っているか気になっていた、と鄭さん。じゃ、遷しましょうか、と成田君。勝手に、と高津君。これは政治に参加していないとき（の孔子）で教育のとき、表に出ていない時の様子で、申申如、夭夭如は悪い意味ではない。来たところで前のところがどうだったか分からないが・・・と鄭さん。その前との対比で、今の孔子の実態を示している。周公が夢にでなくなったのは、周を建て直すのは無理とみている、と高津君。まだ、あきらめていないと思った、と高井君。仕事に出ていない時、教育にたずさわっているときの様子、申申如、夭夭如は良い意味、これ以外に他はないという言い方、と鄭さん。孔子の行動を記録しているのは結構ある。述而篇が違うのは孔子のプライベートな話が多い。政治に引き付けずに、自分の狭いまわりの世界で考えてもいいのでは、と成田君。体力、気力は落ちているが、弟子の前ではそういう姿を見せなかった。燕居、のびのび、くったくなく見せていたととれません？と川那辺さん。夢の中までは、そうはゆかなかった。子路のような年長者、仲間のような人に言ったのでは、と成田君。孔子のため息に聞こえるが、弟子の前で言っていたとするなら、若い学生にはそうすべき（周公を夢に見る）である、というのは深読みか、と鄭さん。政治をあきらめていないと思うが、あきらめておれば、こんなことは言わない、と高井君。誰かに対する応えが、私は久しく周公を夢に見ないでは。孔子にとっては政治に対する失望の気持ち、実現すべきだは思惑が入っている、と高津君。孔子が誰か諸侯をたてて補佐し、周公のような政治を行うということは断念したが、その政治のあり方が正しいという思いはあきらめなかった。しかし、受け入れられず、春秋に自分の証を残そうとした。自分の想いが漢の時代になって実を結ぶことになるなど思いもよらなかったのでは、と上田さん。夢で孔子を見るが後の人の言葉、そう想えば夢にあらわれる、と鄭さん甚矣は否定的な応えに使われる、違いますと答えて話をつなぐ、と高津君。これは後ろの動詞を修飾しており副詞的に使われている、と鄭さん。
道というものにを志を抱き、仁德により生き、藝（六藝）に心を游ばせる、自身について語った言葉、里仁篇に「子曰士志於道而恥惡衣惡食者未足與議也」とありました、これについても皆さんどうぞ、と高井君。自分についてですか、と高津君。そうと思っていましたが、と高井君。弟子にこうせよという可能性もある、誰に向かって言っているのかは、これは難しい。孔子のことでもあり、弟子のことでもあり、そもそも道を、仁にとは、主語のない言語のマジック・・・據、依はともに「よる」だがその意味は、と成田君。そこまでは、と高井君。據は根拠の據で、依は頼る、手すりにで登るみたいな、と成田君。徳を土台にして、仁による、従ってということですか、と高井君。一般には君子のことを言っており、私がこうしたというものではない、すべきと考えているという方向。道、徳、仁、藝につながり、順番、重さがある、と鄭さん。道に対して強い思いがある。最初にくるのが納得、と高井君。道に徳と仁が入っていると思うが分けている、重さは前にあるが、藝を無視しなかった、と鄭さん。道は目標でなく、あるもの。この道を歩くという決意、途中に徳とか仁を、たまには藝で、まっしぐらでなく、藝で幅を広げる、と成田君。道は導くでもあり、色々な道があるが徳につうじる道を、藝も六藝と幅広いが仁につうじるようにということでは、と上田さん。外遊するにも藝が必要、最初の二つは自分自身、後ろの二つは外遊に際して、と高津君。道に志す、道は長いので途中でどこに寄りかかるのは、徳と仁と藝かなと思う、と成田君。これは、読み手によってどんな方向からでも読める。後の人の環境により自分なりに注釈をつけてみたくなる、と鄭さんそれが述べて作らず、と成田君。游とは？と安澤さん。たっぷりと身につけること、と鄭さん。游は川の女神が船で遊んでいる様子でなまめかしい、と上田さん。そうこなくちゃ、と安澤さん。道を志すときのバランス、人格形成の按配をしているのでしょう、と川那辺さん。議論が尽きませんが、本日はありがとうございました。やってみると、成田さんがこうして調べてるんだなということが分かりました、と高井君。来週は成田君だが、その次は高津君やってください、と鄭さん。6月9日は高津君がんばってください。
2007年5月31日 述而 7～12
先生がおっしゃった。束脩をやったからには、私は誨（おし）えなかったことはない。束脩は謝礼のこと。束脩はそもそも束ねた細長い干し肉、ジャーキーみたいなもの。10本を束にしてあげる。朱子によれば、最低レベルの贈物、入門したからには誨えなかったことはない、と成田君。持ってゆけば、面接とか試験はなかった？と安澤さん。それが試験みたいなもの、ところで、誰に向かって言ったのでしょう？と成田君。先生から教えを受けたことが無い、みたいなことを言う。あるいはどうすれば入門できますか？みたいな、と安澤さん。勉強していない人たちに、私は一生懸命やっているのだから、そのつもりでやってください、みたいな、と川那辺さん。初心、ジャーキーを持ってきたとき、その初心をわすれないように、と成田君。束脩はそういうことでなく、禮を行う、行動する、束脩を行うは、自分の行いを束ね修める、其れが出来ないものは教えて仕方ない、の方向でも読める、授業料のことであろうか？と鄭さん。学ぼうとする意志のある者には教えるですか、誰に向かってでしょうか？と成田君。政治の場ではなく教育の場、次の句と関連している、と鄭さん。
先生がおっしゃった。～しなければ～しないの構文。憤は、心の中で沸き起こってくるものが出そうで出ない。分かりそうで分からない状態、そういうことでないと、啓は教える側の行動、ひらくこと、生まれそうな者を啓いて出す。?は口の方で、言葉になりそうで言葉にならない状態。發もひらく、先生の側、そういうことでないと、助け伸ばしてあげることが出来ない。一隅は四角の一つの角、一つの角を指すと残り三つの角を答えるような状態でなくば、復はもう一回ためすということはしない。実力が上がってから行う、と成田君。具体的に分かりやすく言っている、と鄭さん。実力が上がってからという余裕があるとは思えない、と川那辺さん。複たせずとは繰り返さないこと、と成田君。本人の疑問に応える、問題意識がないとダメ、と安澤さん。このころの授業は講義形式ではなく問答形式であった、と成田君。ソクラテスの産婆術か、と安澤さん。そうでしょう、と成田君。プラトンは対話を重視、紙に書いた形式ではダメ、後世の人は本で読むけれど、と高井君。質問にあわせて応える、と鄭さん。自分自身の問題意識の高め方、それはどうなるのか、と安澤さん。礼儀作法の具体例で、ななめに歩くとあれば、どうしてそうなるのかと考えるようなもの、と成田君。憤は、司馬遷の発憤著書、李陵をかばって牢に入れられた司馬遷が手紙に書いているが、発憤して史記を書く、世の中の正しい道が正しくゆかないのを誰がただすのか？歴史の記述によりただそうとした、と鄭さん。發憤忘食樂以忘憂不知老之將至と重ねると、主体性、強いニュアンスで読み取れる、と高井君。学生運動の頃は、座して勉強するのが恥ずかしかった。日本の研究室に来たとき問題意識がないことにショックを感じたし、うらやましくもあった。会ってみると面白くない、社会に対する憤り、日本に来ると吐き出し方がちがう。日本は幸せな国だな、と思った、と鄭さん。我々の時は授業がなかった。1971年頃だが、20歳の原点という本があった。娘に、こういう学生がいたことを、読ませようとすると、お父さん暗い、でしまい、と安澤さん。勉強したいのにさせてくれない。学生運動に参加して社会を建て直すというには、自分のことができていない。だけど、何のために大学に行っているのか？同じ民族で戦争が起こるかもしれない。何故そうなったのか、それを変えねばならない、武力蜂起してでも変えるべきでは！そういう危機をあおり利用する軍事政権をなんとかしたかった。ところが軍隊で2,3年たつと現実的になる、と鄭さん。日本の学生さん返す言葉は？と安澤さん。それは･･･ないですよ、と成田君。表にはださないけれど、内にはあるのでしょう･･･と安澤さん。･･･では行動で示すことに、と成田君。
もともとは二つのことを一つにしている。先生の行動の記録。葬式、喪中の人の側で食べるときには、腹いっぱい食べなかった。何故かというと、葬式の手伝いに行く、その時のこと。喪主は食べてはいけない、悲しいから味が感じられない、理由はともあれ、礼として食べない。哭すは声を上げて泣くこと。その日に号泣すれば、歌わなかった。家に帰ってフフンと歌うことはなかった、と成田君。歌うとは何を歌うのか、と上田さん。詩でしょう、逆にいえば普通のときはいつも歌っていた。ぼくも葬式の時は腹いっぱい食べないでしょうが、家に帰ってからなら歌うことはあるかも、と成田君。同じ日に葬式と結婚式があれば、その時は笑って、歌うよな、と安澤さん。葬式の仕事が入っており、誠意を尽くす。孟子には良く出てくるが、不忍之心＝仁。君子は屠殺されたのを見れば肉は食さない、人の心の立場になって考える、相手の気持ちになって応える、と鄭さん。屠殺業は禁止用語、食肉処理業といいます、現実は逆で、一般人はそうしていた、と安澤さん。孔子の態度が、後の人の規範となった。と成田君。
先生が顏淵に言った。その人にやらせれば、実行する。政治の話、その人を罷免すれば隠れる。社会から離れてひっそり暮らす。そういうことがきちんと出来るのは私とお前だけだな。そこに子路がいた。笑い声、皆様、話の筋が読めてきましたね、三軍は諸侯の国に三軍、各将軍の上に幕僚長としては誰とやりますか？私でしょう、笑い。素手で暴虎と戦い泳いで黄河をわたる。詩経、小雅、「不敢暴虎、不敢馮河、人知其一、莫知其他、戰戰兢兢、如臨深淵、如履薄冰」それを本気でやり、死んで悔がないという人とは一緒に働かない。子路のこと。実際の仕事は慎重に計画をちゃんとして完成させる。そういう人と一緒にやりたいね。子路がたしなめられている、と成田君。何故、子路がそんなことを言ったのか、と上田さん。私と顔淵だけといったことにかちんときた、と高井君。政治的に得られなかったとき、（孔子と顔回は）チャンスを待つことが出来る。その場で、子路はそう考えなかった、と鄭さん。子路は衛の輒を助けて政治に参加すべきと孔子に迫るが、名が正しからずばといって断っている。そんなことではどうにもならないという気持ちが強かった、と上田さん。孔子と子路が食い違うことはよくある。そのひとつには子路はただの弟子ではないという面がある、と成田君。子路の性格に相応しい応えをしている。それが君には欠けている、と鄭さん。孔子は何故、子路に聞こえるように顔回をほめるのか？ジュラシーを起こさせるようなことをする、と成田君。配慮して言っている、やっぱり聞いてきよった、と安澤さん。子路と顔回は20歳以上離れている。子路は孔子と同世代。孔子は顔回の将来性をみてかわいがる。子路は孔子と共に政治をどうするかというところ、と鄭さん。気心が知れているから、すっぱり言える、と川那辺さん。子路がそういう言い方をしたのは、これじゃダメ、私がやるという覚悟、と上田さん。論語には人格の統一性がある。後に整理したものであり、そういう人という評価が定着してから編集していることに留意すべき、と鄭さん。俗っぽいが命を大切にする、あまりあわてないという印象、と高井君。安心立命、と成田君。（高井君は立命大）用之則行舍之則藏は後に重要な格言となる。使われない士大夫を慰める言葉となった、と鄭さん。これは政治をあきらめた頃だが、その前は孔子は諸侯に売り込んでおり、ちょっと矛盾している、いつの頃？顔回は生きている頃で、と高津君。際どい時、魯に帰ってすぐに死ぬ、と成田君。荒野での問いに、容れられないのは容れない諸侯が悪い、道を修めることが大事という顔回に孔子は同意、この頃から売り込むことをあきらめるようになった、心境の変化がある、と上田さん。戦うときには自分についてくれるだろう、自分と孔子の関係を確かめようとした、と高津君。子路は堂に上がっているが室に入っていない、とあった。子路に対する叱責。比べることはできないが、むきになっている。いい年をしてむきになるな、というところ、と成田君。いづれにせよ、この言葉どおり子路は衛で討ち死にする、そのとおりのことが起こった、と鄭さん。
富が求めていいものなら、史記伯夷列伝に、富貴如可求、とあり富而可求と同義、如と而が発音が似ており而はもし～ならの意味。求めることが出来るなら。鞭をもつ人とは、門番、警察官、ガードマン、そういう仕事であってもそれをやる。富を求めていけないのであれば、自分の好きなことをやろう。好きなこととは、古の道を修める、夢では周公旦に会って話を聞く。求めて行われるものではない。銭金のために働くのはいけないと思っている、と成田君。孔子は何がしたかった？小さいころ、貧しくて、倉庫で量りや飼育やいやしいことをした。何でもやるとは？と高津君。普通の人が欲しいと思うものを手に入れることができるなら、と成田君。富貴は給料がもらえるなら、権限がもらえるなら。するが正しくないのであれば、それをしない。正しいことなら、いやしいことでもする。重さは後ろにある。正しくない方向では富、高い位につくことは不要、二つならんだときには、どちらが重いかをみる、と鄭さん。正しいことをしてもらえるならという考えが面白い、と高津君。若い時の孔子も他の人と同じく、富貴を求めた。史記によれば、執鞭の士とは御者のことで、晏平仲の御者が認められ大夫にとりあげられたとき、丘は、御者になることも厭わなかったが、不向きと悟り、学を志したのが15歳のときとあった。富貴を嫌っているわけではない、と上田さん。飼育の管理はいやしい仕事でない。当時には重要な仕事。若い時に孔子の才能が認められていた。いやしいことをしていたという考え方は好きでない｡先にいやしいと言ったのは訂正したい、と高津君。二つのことで前は例え、本当のことは吾好所、と鄭さん。求むべき、求めてよいとどちらに読むかはむつかしい。論語を読み終われば分かるのかも、と成田君。程子が完璧主義、道徳主義の完璧さがあり、顔回の評価が高い。だからそうじゃない人に対しては厳しい。蘇東坡（蘇軾：北宋代最高の詩人）とはぶつかった、と鄭さん（程朱子学では道徳的に解釈される）。弟子三千人、多くの弟子を抱え、弟子を連れての放浪の旅ともなれば経費がかさむ。資金が必要であったのでは、と上田さん。衛では俸禄をもらいそこねた、と鄭さん。主君を補佐する、季氏のために働くでなく、主君に尽くすのは良い？と高津君。季氏をたてるとどうなるか、それが天下に益になるかどうか、自分に自信があって厳しく言っている。会社にしろ、国家にしろ、これが人類にとってどうなるのか？冉有は自分の会社だけを考える、孔子はそれがゆるせない。孟子がいうが、色も富も皆これ人が好むもの。王が求めるということは民も求めるということ。王のみが天下の女を自分のものとするからダメである、と鄭さん。不義にしての富貴は浮雲の如し、と安澤さん。
先生の行動の記録。先生が慎重にしたこと、齋、戰、疾。齋zhāiサイと齊（国名）qíセイ（漢音）サイ（呉音）は異なるので注意。齋は潔斎（ものいみ）、身を清めて、清潔な白い衣で身体を洗う。天と通じあうための儀式。一大事が起こり気合を入れるとき、殿様に会って物申すとき。それに戦いと病気、この三つのことは慎重にやった、と成田君。齋が何故一番か、と高井君。語呂が良い、冗談、と成田君。戰、疾は考えやすい、禮を重んじていたことを示すもの、と高井君。齋とあと二つは異なる、と高津君。戦争の話をしなかった、病気に気をつけた。慎むは広い意味でむつかしい、と成田君。戦争、病気は大勢がからむ。齋は天がからむのがポイント。朱子は、齋は天の問題、戦は国の存亡、疾は自分の存亡といっている、と鄭さん。齋は祭如在祭神如神在、樂における神人和合、特殊な心的状態、と上田さん。戦争は人を殺す、天の持つ命を人が掌ることになる。それをするときには、そういう気持ちをもってやる。被害を最低限にする、と鄭さん。霊公が軍事について聞くと応えなかった、軍事をあまり高く評価しない、と高津君。戦争をなくして国々を統合することを評価。戦争はやむを得ぬ最後の選択、と鄭さん。来週からは土曜日です。
2007年6月9日 述而 13～17
午後1時から教室で一人予習の高津君。音読は大丈夫だが、訓読となれば、エース成田君を欠いては、後藤点は、悪戦苦闘。いよいよ解釈へ。僭越ですがやっていのでしょうか・・・そろりそろりと高津君。
先生が齊に行って韶を聞き、三ヶ月、肉の味を知らなかった。孔子の感覚としては、これを楽しむために齊に来たわけではない、と思うのだが、と高津君。圖らざりき、てどういう意味？音楽がこんなにいいものと思ってもみなかった、では、と川那辺さん。これ、韶、を樂しむ爲に、ここ、齊に来るのが目的でない、と解釈してみた、と高津君。爲樂、それと、ここ、肉の味を感じさせない境地、を結ぶ之とみるべき、と上田さん。孔子としては、別の目的、違うことで齊に居たはず、音楽を聞きに行ったのではない、と高津君。確かに、齊に行ったのは、亡命した昭公を追い、景公に近づくため、高昭子の家臣となった、と史記にある、と上田さん。韶は舜の音楽というところがポイント。聖人の音楽を聴き、その素晴しさのことで、楽しみ、三ヶ月楽しくて肉の味を知らない、では意味をなさない。何の音楽であるかが大事、それを齊で聞くとは夢にも思わなかった、と鄭さん。その時、太師（樂官の長）と音楽について対話したともあり、韶を聞かせてもらい仰天したのではないか。本来なら周公を受け継ぐ魯にあるべきものが、齊にはるかに立派に残されている、と上田さん。史記では、聞韶音，學之，三月不知肉味、と學之、これを学びて三ヶ月と司馬遷は解釈している。魯に美女群団を送ったり、韶が奏されているのは、魯より齊が国が大きく文物、文化、魯にないものを持っていた可能性があった、と鄭さん。論語では韶を聞くことで三ヶ月となっている、と高津君。古注ではそうだが、韶は美を盡くし、又善を盡くしとあるごとく、孔子はこれを三ヶ月学んで、その間肉の味を知らずとみるべき、と鄭さん。
冉有が、夫子、先生は衞の君をたすけるか、と聞いた。子貢がそれを聞いて、よし、聞いてくると孔子のところへ入って、伯夷、叔齊について聞きました。昔の素晴しい人と応えた。後悔をしているかと訊いた。伯夷、叔齊が地位を譲り合ったことを後悔しているかを訊いた。仁を求めて仁を得て後悔をしていないと応えがあった。出でてきた子貢は、衛の君子をたすけないと言った。衛の出公のことで、祖父の霊公の意向で君主になるが、お父さんが衛を出ており出公もその帰国を拒み、内乱になろうとしていた。孔子は、おそらく、自分の地位を守るろうとする人は、助けないとみていた。歴史背景は、あまり知らないのですが、と高津君。衛の君とは、と鄭さん。出公です、と高津君。伯夷、叔齊はどういう人、と鄭さん。殷の末の王子、王は叔齊に位を指名し、兄の伯夷は亡命、伯夷が亡命したので、叔齊も亡命した、と高津君。何故、伯夷、叔齊を子貢はもちだしたのか、と鄭さん。父親が衛以外に亡命、自分の国に帰ろうとしたとき、出公が拒んだ。伯夷、叔齊と似ている、と高津君。どう似ている、と鄭さん。出公と父のことを聞いた、と高津君。直接聞かずに遠まわしに聞いているのは何故、と鄭さん。出公を助けるべきか、父親を助けるべきかの経緯（述而14）を説明する上田さん。皆は衛の出公を助けようとしていた。子貢がその気持ちを確かめようとして、単刀直入には言えないので、昔の人のことを持ち出した。頭の回転のよさを、気転のよさを思わせる、と高津君。仏教では禅問答。先生が遠回しに言って、弟子を悟りに導く。昔の賢人の評価により分かる、答えを導いた。冉有も出公も孔子を頼みとしていた。孔子がブレーンとなれば、その弟子も多く、多くが味方してくれれば政治的に力を手に入れることができる。父親を支持する家臣もいたであろうし、冉有などを真ん中にいれてゆこうとしていた。子貢に様子を確かめさせた、と鄭さん。孔子が衛で仕官をする最大のチャンスであるにもかかわらず、孔子はあとにも出てくるが名が正しくないとか、前に子路が三軍の話を持ち出しそのとき自分に味方してくれるかを確かめたときにも肩すかしをくらい、特に子路はイライラして孔子に決断を迫っていた。結局、子路は出公に加担して死ぬことになるのだが、あれほど諸国を放浪して仕官を求め、公山不狃の誘いには子路が反対して押しとどめられておきながら、この時点では孔子の心境に大きな変化が生まれており、孔子はどちらにも加担しない態度をとり、仕官の道も閉ざされてしまった、と手を振り上げての上田さん。陽虎や公山不狃の時には乗ろうとし、この頃は、立場が異なっていてもそうしたが、この時点では、春秋を注しており、今はそれで良いとしても、歴史の中ではどうなるか、父を追い出した子を助ける、そういう名を残したくない、とおもっていたのではないか、と鄭さん。
孔子は多分、粗末な食事を食べて、水を飮んで、肱を曲げてを枕にして、こういう樂しみ。楽しみはこの中にある。悪い事をして、人に言えないようなことをして、富、名声を得ても、私にとっては、空に浮く雲のようなもので、いづれか消えてゆく。付け加えますが、賢なるかな回（雍也篇）にあった顔回を評価したときのそれに通じるものがある、これは前の句とセットになっている、と高津君。何故、どういう場面で発したのか、と鄭さん。前の句と連想すれば・・・悪い事をするのでなく、そうして富と名声を得るのは、前の句とつながりがないか・・・時期的には同じかな・・・と高津君。分けて読んだほうが一般的、と鄭さん。執鞭の士の句と関連し、それを更に分かりよく説明しているよう、と高津君。浮雲の如くなどと言うのは、意気が揚々としているときには言わない。客観的に自分をみているような、それを楽しみにでもしないとやってられない、絶望的なもの、雲はつかめないもの、手中に収められない、自分が取り残されてゆくような恐怖感があり、浮いたものもってくる不安があるのでは、と川那辺さん。富貴はつかめると思っているが浮雲のようなもの、孔子の中に変化があった、と高津君。ポイントは不義、ニュアンスとしては余裕がある。正しい方向でなくつかめるものが目の前にあるのは分かるが・・・前の句とセットで読みたくなる、政治から退いたあたりの心境か、と鄭さん。孔子は郷党篇でみれば分かるように、食べ物にはうるさく、元来、粗食家ではない。顔回のような生活を好んでおられるものでもない。富も地位も当然の結果であれば問題はない、不義にして、であれば問題、不義をして仕官し俸禄を得ても浮雲ということ、川那辺さんのおっしゃるように、晩年で仕官をあきらめた時期のことでしょう、と上田さん。後の時代の知識人は左遷された時に、このフレーズを使うようになった、と鄭さん。
數年を足して、五十にして易を學べば、大きな過、過失はない。これは、おそらく50歳になる手前の話、と高津君。50歳だとそうだが、それが読みづらいと卒となる、と鄭さん。易は孔子の時無かったともあるが・・・と高津君。易経というものはまだ成立していない、というか孔子が注したということで、易そのものは伏羲が仰ぎては象を天に観、俯しては法を地に観て、自然観察により、八卦を考案し、六十四卦の組み合わせとなしたのが周の文王とされ、昔からあるもの、と上田さん。個人的には五十でなく卒と読みたい。孔子が易の注をつけた。占いとしては早い時期からあり、卦に短い言葉がついていた。孔子の言葉も戦国時代の言葉になっており、孔子が発した言葉を後の世の人が定めたもの。断片的な言葉を孔子は論理的に説明し、それで易がどんなものか定まった。（50歳の頃でなく）晩年、孔子は喜んで易を読んでいた。私に時間があって易を学ばさせれば易に対する理解、道を記すに大きな間違いはない、だろう、と鄭さん。過ちとは何？と高津君。政治的判断、正しい道を示すにおいてのことではないか、歴史のことは春秋を読ませればよい、易は人間、万物について総合的に説明する。人と宇宙については、孔子の最後の課題であった、と鄭さん。孔子は今までやってきたことについて、何か思うところがあったのか、と高津君。易をやれば正しいではなく、何だろう・・・と鄭さん。歳が行けば自然と流れが分かり、物を見る基準、易により視野を広げ深める材料となった・・・と川那辺さん。否定的に見ているのでなく・・・論語と違って、孔子が説明しており、それを読んでゆくと宇宙、万物、人間の関係を説明しようとしている。易は六段爻辞？を繰り返す。読みすぎて韋編（竹簡を繋ぐ紐）が三回切れた、と鄭さん。六段爻？とは、と川那辺さん。四五が良くて六から落ちる。底があって上がある。底にゆけばつつしみて待つ、晩年にも弟子を教え、最後は春秋で自らの評価を問うた。孔子はそれだけでは足りず、個人的に最後の方に、人間とは何か自分の一生を省みた。実は私も易にある時期はまった、早めに読んでおればという気持ちになった。他のものと異なるところがある。易に対する解釈が一番揺れる、と鄭さん。占いというのは、殷の時代は１０日毎に帝が天帝に10日の行動についての天帝の意向を伺うもので、易は天体の運行、自然の運行による天の意思を読み取るもの、個人の運命などを占うという感覚とは異なる、易は当時としては宗教的というより科学的というか因果関係、転変の理を読み取る風なもの、と上田さん。易は―（陽爻）と‐‐（陰爻）から成り、三段で八卦、六段で64卦が得られる（図）。 爻には各々爻辞があるが、孔子は個々でなく全体的に見る見方、まとめて総合的に説明をしてくれており、分かりやすくなっている、そこに人間、社会、宇宙に対する解釈が入っている、と鄭さん。
孔子はよく正しい周王朝の会話、標準語を使って（詩、書を）話し、禮をするのに正しい言葉を使っていた。これは鄭さん何か。詩、書を講じるとき、禮を行うとき、気合が入っている？と高津君。雅言は周の音で発音すること、魯の音とは多分違っており孔子は音楽でもそうであったように正しい音に訂正したように、禮においても本来の姿のあり方で行ったのでは、と上田さん。それを観察している誰かがいる感じ。孔子の行い、考え方を・・・されるときはこうだ、間接的な観察がある。これがここにあるのは何故か、と高津君。構文が不自然。雅言が常の言葉、正しい言葉の二つを兼ねている。詩、書で切り、常の言葉で行い、禮を行うとき正しい言葉ですか、と鄭さん。白川静先生は、雅は夏と通じ、夏は舞楽の象、歌舞は古い伝統の上にあるということで、雅言はわが国で雅楽というごとく、今の言葉の音でなく本来の音ということでは、と上田さん。そうじゃなくて、常の言葉は日常の言葉、と川那辺さん。ええっ、逆のことなんですか、と上田さん。いつも詩、書のことを孔子が言っていた、と鄭さんと川那辺さん。古注では正しい音だが、朱子は納得しなかった。それはあたりまえのことであり、詩ではこう、書ではこう、禮ではこうだ、といつもそれをもって考えていた。詩は人の心を、祭事、まつりごとは書、行いはバランスをとれるのが禮、日常生活で大事な事と考えていた、と鄭さん。
少しく、時間オーバーとなりました。
2007年6月16日 述而 18～24
今日は早くから丸尾さんを含めて音読。丸尾さん、その年になってからでは無理と鄭さんにいわれて、発憤。論語中国音に挑戦。それは鄭さんの手でしょう。きれいな発音ですよと、成田君。ネイティブじゃない人に言われても、と丸尾さん。中国人など意外に気をつかわず読みますから、発音に気をつけて読まれると、なんかきれいに聞こえます、十分素質はありますよ、と劉君。
15）の復習。後藤点では、我に數年を加して、以て易を學ぶこと卒（ヲヘ）しめば、以て大過無かる可し。道春点では、我に數年を加して、卒（ツヒ）に以て易を學べば、以て大過無かる可し。このテキストは、二つが入り乱れており、卒をツヒと訓じているのをヲヘに変更する。朱子は五十を卒の間違いとするが、五十は五十とみたほうがいいが意味がとおらない、と成田君。岩波文庫の易経の「大過」の解説について（述而16）説明する上田さん。昔の字で五十はどう書きますか、と丸尾さん。篆書では五は 
で、算木を並べて、一、二、三、亖 、 。
の下に一、二、三、亖 を加えて六から九を表し、十は｜、縦棒1本。甲骨文字や金文では｜の中央部に・を加え、あるいは太くして識別していたものが、横棒を加えて十となった、と成田君。
葉公は孔子が放浪しているとき、楚の手前、北の辺境であるが、葉という国（地図）の公。葉は木の葉っぱのときはyè（エフ）、地名ではshè（セフ）。公といっても周王により封ぜられたものでなく、楚王に封ぜられたもので、楚の勢力範囲にある。公は子路に孔子について問うた。子路は何も応えなかった。何故かわからないが、先生は怒った。お前は何故言わなかった。言って欲しい事を自分で言う。人として、ふつふつとした思いをぶつけて食を忘れ、樂しいことがあれば、憂を忘れる。老のせまっているのに、老化現象を感じない。子曰「女奚不曰『其爲人也發憤忘食樂以忘憂不知老之將至』云爾」となっており、云爾は引用した時に付け足す、日本語の～と、に当たる。子路が孔子に怒られたということであるが、みなさん、如何でしょう、と成田君。自分で自分を評価した。子路が言えなかったのは、色々と大変な時期であって、葉公を相手にしなかった・・・孔子も強気の発言をしている、と高津君。何故言えなかったのか。葉公という相手にもよる・・・と成田君。司馬遷によれば、孔子と葉公は以前に会っている。葉公は孔子に政治について質問していた。孔子は葉公に仕官してもいいと思っている、その話を孔子にはせず、子路に尋ねたことに、子路は葉公の器量を見切った、返答しても無駄と思った、と上田さん。この言葉は、自分では言えても、弟子が言えるものではない。上司をそんなふうには言えないものでしょう。子路はあまり言葉が上手でないから、先生のチャンスをこわすことになってはいけない・・・、先生に不満があるといえなくなる。顔回なら違った事をいったでしょう・・・子路のキャラクターがわかる、と川那辺さん。僕の推理では、葉公は田舎の人、孔子は当時では有名人、いきなり問われて子路は面食らった。うちの先生をなんといったらいいのであろうか？？？先生はそうむつかしく考えなくて一言こういえばよい、とさとした。孔子と子路の間の問題、と成田君。他の人に対してならいやらしく聞こえる、云爾とは?と丸尾さん。～と云う、そのように云う、と成田君。しか云うと読むときもある・・・この言葉は若いときによくやる行動。他をみなくなる勢い、不知老之將至に言いたいことがあり、まだまだ出来るぞという文章、と高井君。自分の師匠のことを聞かれたら、○×さんてどういう人と言われると、自分で来て見て下さい。まして雇い主となるかもしれないなら、自分で説明するのは恐れ多い、と安澤さん。怒られたらどうします、と成田君。何もいわないのは、失礼なのでは、と丸尾さん。いい人ですが、私からは・・・といいます、と安澤さん。言葉が上手く、世渡り上手は子貢、と成田、高津君。子路が話し下手ということはない、裁判で片方から聞くだけで両方のことを察することができる、人の言う事を素直に理解する、孔子が筏に乗ってといえば、もう筏捜しを始めて、あわてて孔子が止めるくらいの判断が早い人、葉公の意向もすぐ察しえたのでは、と上田さん。孔子に否定されている、子路は将軍みたいな人で、説明しない、将軍は説明するヒマはなく行動を起す、と高津君。子路は、分かっているが、表現は下手。瞬時に判断する・・・孔子によく怒られているが・・・結局、子路の言う事に反対するが、孔子が発憤する材料となっている。人の気持ちを煽る、孔子をカーとさせる、図ってやっている。顔回や子貢には、そういう「かわいさ」はない、子路に対してだから孔子もこんなことが言える、と川那辺さん。子路が怒られてばかりというのは、褒めると、伸びるでなく調子に乗るから。なにせ、褒められと一日口ずさんでいる。孔子からすれば、あいつは何をやってんだ！！！褒めて、伸びるタイプとダメなタイプがある、と成田君。
先生がおっしゃった。生れながらにして、知っている人間ではない。古を好んで、敏は行動がすばやいこと、機敏に理解して求める。それだけのこと、と成田君。誰に向かって言っているのか？誰の言葉だったか、力不足・・・（雍也篇10）の冉有、と成田君）、努力すればなるよ、誰かの問いへの対応、と高津君。先生、小さい時から、そんなことを知ってたんですか？への応え、と成田君。敏は機敏だけじゃなく、つとめる、いそしむ、毎は白川静先生によれば、髪飾りした婦人が祭事にいそしむ姿、先生も姿勢をただしてつとめておられた、と上田さん。述而篇の一番最初と同じ、古を信じてをつけてもよい、と高井君。信は一方的にこっちから信じる、孔子は、相互関係、古の人が要求していることを自分がやる、残したいと思っていることをやってあげる、と成田君。古のどの部分かを取捨選択している、と高井君。人物とその時代のこと？と丸尾さん。文獻とあるが、文は古典、文字で残っているもの、獻は人材や文物、人に聞けるもの、青銅器など物、礼儀作法などのことで、今の文献とは意味が異なる、と成田君。
先生が語らなかったこと、怪は怪奇現象、力は諸説あるが人知を超えた力、巨大な岩を持ち上げるみたいな。亂は子が親を殺したり、家臣が主君を殺すなどすること、神は神通力、人がはかることのできない力、人間も持っているが計り知れない力。怪力、神懸りの力、亂神、人間によからぬことをする神、と考える人もある。鬼神は死んだ人の魂（キョンシーの声がする）。朱子によれば、怪奇現象、力任せに、反して秩序を乱す、正しい所からでているもので語らない。鬼神は大事なものだが意味が無い、敬して遠ざける、と成田君。まえからの疑問だが、仏教と儒教はライバルというあたり、そのあたりを聞きたい、と安澤さん。時代によって違う、春秋では、道家が怪力亂神、大好き。儒教が国政の中核となって道家は宗教化し道教となる、と成田君。孔子、釈迦、キリストは同じ時代、孔子の時代にはライバルにはなっていないのでは、と安澤さん。仏教は後漢あたりから伝わり始めている、と高井君。孔子は師匠、釈迦はライバル、と安澤さん。孝が問題。仏教は髪を剃る、身体を傷つける事、子孫を作らない事、祖廟を祭らないと攻撃され、仏教にも孝はある、苦から親を解脱させることが孝という議論があった、と高井君。老子が西へ行って釈迦になったというのでは、と丸尾。それはデッチアゲだが、そういうことをした、と成田君。中国では、仏教は、寺に入らなくても心の中で、形にこだわらない印象、因果応報みたいなこと、日々にできる日常の教えのなかにとりこまれている、と高津君。日本では神社も寺も教会もなんでもあって面白い、と丸尾さん、高津君。だけど、何にも根付かない、捨ててしまう、と高井君。仏教の強いときの方が文化爛漫ではない、と丸尾さん。論語は政治経済、心の問題は釈迦原理主義でゆかないと、お堂や寄付、建物は建替え、ならば寄付となるので原理主義の方でないと、と安澤さん。怪力亂神をみだりに持ち込む・・・敬しているから語るのをひかえた。神に近い人の物語という気がする、と丸尾さん。そう思ってしまうのは、毒されているのでは、と川那辺さん。神は天では？と丸尾さん。神は地上にうじゃうじゃいます、と成田君。乱れを正すのは怪力亂神に走ることがある。オーム真理教でも、信じていることは純粋で、頭もいいが、そちらに走る。それを語らずは、相当意志が強い人でないとできない。平安時代など恐れがあり、自分の行動を占いで行う、安部清明などがそこに走っていた、と川那辺さん。孔子は普通の人よりは神を知っていたので、口に出す、表にだすことを恐れた、と丸尾さん。先生がこういったとなると、それにおひれがついて、と成田君。後の二三子のところで出てくるが、弟子は先生は何か隠しているのではないか、何か自分達の知らないことを知っているのに言ってくれない、あるいは、危急の折に弟子たちが困り果てても自分だけは詩を歌っているなど、弟子に納得のゆかないことがあった。だけど孔子は何も隠していない、一緒にやっていることがすべてだと言っており、君子もまた窮するといって、ひたすら窮していた。怪より常、力より徳、亂より治、神より人について語る、川那辺さんのおっしゃるように強い意志をもってそれを通された、と上田さん。
三人が行えば、行くとも読める、必ずその中に自分の先生がいる。善い行いを選んで従うことができる。善くない人がおれば、それを見て改めることができる、と成田君。改めるは、その人を改めることでは、と上田さん。我が師ありてで、その人が師になる、と高井君。従之は善者、改之は不善者、鄭さんなら、改不善者で自分を改めることはもとより、不善者を改めるのでは、と上田さん。鄭さんなら、そうでしょう、と高津君。鄭さんだけじゃないでしょう、儒教が身についている韓国人では一般的では、と安澤さん。それが鄭さん思いやりでしょう、と丸尾さん。欠席すると何を言われるかわかりません。
天が德を私に与えてくれている。天のおかげで徳が生じている。桓魋、宋の国へ行った時、司馬（兵隊を掌る）である桓魋が、木の下で禮修していると木を引き抜いて、出てゆけ、さもないと殺すぞと言った時、桓?に何ができようと、私には天から受けた徳がある、と成田君。ここは高井さんの熱のこもった解説がありましたね、と丸尾さん。では、もう一度、と成田君。拍手。（2007年4月19日序説3参照）。天は中国人にとって大きな存在。天命我をあざむかじ、天と自分をつなげた所、天と夫子はつながる。禮記にもあるが、政治がうまくゆくと自然界もそれに従って、世の中うまくゆく。自然と人間がすごくつながっている、と高井君。天と神はつながらない。最終的に天を持ち出し終わらせる。天がでると、もうどうしようもない、と高津君。いざというときに、天をだし弟子をだます・・・孔子がそれだけの人物、それだけのことができるから、天も味方する、と成田君。怪力亂神が自分の中にある、人には言わないが自分の内にはあった、と川那辺さん。自信・・・自信が確信に変わった、と成田君。こういう風に生きてきて、こういう風に生きるという確たるもの、と高井君。
さっき、上田さんに言ってしまわれたけれど・・・二三子は複数の弟子の場合、お前達、私が何かを隠している、何か重要な事を教えないと思っているのではないか。疑問を言って自分で応える。無隱乎爾は文法的には、のみと、隠すことなきのみ、私は行う事すべてについて共有している、そうしていないものはない。それが丘、丘と言う時、本名を言うは、謙っている言い方。親か先生ならいいが、友人レベルで本名を言えば、しばかれ、絶交される。この場合、自分自身をズバリと指摘する、と成田君。むき出しに自分をさらしている、と丸尾さん。丘と言っている事に意味がある、と成田君。疑っているのですか、と高津君。弟子がこのままではついてゆけない、と高井君。でも先生は自信たっぷり、と丸尾さん。お前達がいるからがんばる、でもないか、と成田君。割と切迫した、戦のような場面、本名を言う場合、何か媚びるようなことはあるの、と丸尾さん。権力者に本名を言うは媚をうることがある、じゃ、もうひとつやりましょうか、と成田君。
先生は四つのことでもって教えた。文、行、忠、信。先生の行動の記録。文は教養、六藝のようなもの、行は実践により教える、忠はまごころ、社会的に目上、上司に対するもの、信は対等の信頼関係、友人との信頼関係、忠と信で教えるのは普通でない。孔子が自ら実践することで教えた、と成田君。学而篇の曾子曰（学而篇4））に忠、信がある、と高津君。そうですね、じゃ、習はざるを傳へしか、は文、行になりますね、と成田君。後ろの方にも忠、信がある（衛霊公篇の5）と成田君）と句をそらんじる高井君。公冶長篇の最後（公冶長篇28））にもありますね、これらを総合して、文、行、忠、信とは何でしょう、と成田君。この順番には、と高津君。文行wén xíngは行文xíng wénより語呂がよい、と高井君。文行、忠信で音が合う、と成田君。学而篇の子夏（学而篇7））、事君能致其身の身を忠とみればこれも会いますね、と高津君。忠信がベースとなって文行が行われることでしょう、と成田君。自己に対するもの、他者に対するものをバランスをとっている、勉強しても心がなければ、と川那辺さん。心のできることが先、余裕があれば勉強というのがありましたね、と高津君。ベースは白、そこに色をのっけるともありましたね、と川那辺さん。忠信で文行、文行からまた忠信と繰り返す、と成田君。9月から成田君、高井君は中国へ遊学、7月中旬くらいからは出席はむつかしいかな・・・武運長久、壮行会がいりますね。
2007年6月23日 述而 25～30
先生がおっしゃった、聖人、何でもできる万能人、スーパーマン。中国語で、不得而～という場合、機会がなくて出来ない、能力とか許可とかでなく、チャンスがない。そんじゃそこらに居る人ではない。君子をみることができれば、よしとしょう。可なりは、よいとしようという程度。聖人は超越しているが、君子は普通人でも努力すれば到達できる。朱子は二回目の子曰はいらないとする。善人はむつかしい。聖人と君子、善人と恆有（つねある）人のセット。善人はほとんど完全な人、恆有人、一つこれだという変わらないものを持っている人。亡（な）いのに有ると嘘をつく、虚（むな）しいのに（空っぽなのに）盈（つま）っている、約（せわしゅう）して、切迫している、余裕が無いのに、泰（ゆたか）な、泰然としたように言う。それでは、恆有はむつかしい。難乎～矣は、乎、矣で語気が強くなる、と成田君。見るは出会う、まみえる、と読みたい、と高井君。実際会ってみないと聖人か分からないですからね、中国語では、会うと見るとを区別しない、と成田君。聖人と君子の対比はわかり易いが、善人と恆有（つねある）人はどういうことですか、善人とは具体的に何？と川那辺さん。聖人と君子は具体性のある言葉でない、善人と恆有（つねある）人は具体的なのですが、逆に分かりにくい、と成田君。恆有（つねある）人は、日常ありのままに生きる人で、これは結構むつかしい。ついつい見栄をはったり、そんな風にみられたくないと思って、とりつくろう。善人は恆有（つねある）人の完璧版ということでは、と上田さん。弟子に対して、究極の善、常に充実、常に泰然自若、いきなり善人は無理であるから、恆あるようにせよということ、と成田君。背伸びをして、無理をしてしまって、そういうことでなく順序に・・・孔子は君子なのですか？と川那辺さん。孔子は自分のことを君子というでしょうか？と成田君。そう思っていなければ、得見君子者斯可矣はないでしょう、と上田さん。そうでしょうが、この後の方に、躬行君子則吾未之有得、とあり、自分が君子とは言ってません、どっちが本当かな、と成田君。三回繰り返しているのは何故か？と高井君。繰り返して言う時は、感情が高ぶっているとき、強い調子になる、と成田君。見方が三つある、最初は存在、次は内容、最後に体裁、三つの角度からみているのでは、と川那辺さん。弟子の態度をみかねて強い調子で言っている、と成田君。そのほうがわかりよい、と川那辺さん。もういいですか、高井君、と成田君。ありがとうございます、と高井君。どういたしまして、と成田君。
次は先生の行動。釣りをしても綱しなかった。綱は"はえなわ"、川の両岸に杭をして縄、ロープを張り、釣り糸を沢山垂らして一度にとること。弋は矢にロープをつける、鳥に当っても軽い傷の場合はそのまま飛び去るので、ロープをつける。"いぐるみ"のこと。宿は巣、巣を狙って射ることはない。共通するのは、一匹ずつで、大量にはとらなかった。雛のいる巣を一網打尽、効率はよいが、そういうことはしない、と成田君。弟子やその家族と宴会をするために大量にとるということはなかったのかな、と上田さん。釣りとか漁は、リクリエーションで生活のためではない。六芸の"たしなみ"。郷党篇に、市場で買って肉や酒を食べたり飲む事はなかったとある。役所で給与としてもらうものはよい。リクリエーションでつかまえたものはどうだったでしょう？まさか、キャッチアンドリリースはなかったでしょうから、食べたのでしょうね、と成田君。必要以上に追わない。一つのものを射止める。修練、鍛錬、飛ぶ鳥を落とすのは相当な集中力が必要、集中力と目的意識を言う、と川那辺さん。釣りとは漁の目的がちがう、と成田君。弟子がどうだでなく、一対一の関係のなかでみる、と高井君。つまり、大講義室で学生に教えるのでなく、一対一の孔子ゼミ形式、効率でなく実質本位ということ、と成田君、頷く高井君。ここで登場の丸尾さん、今でも心ある人はそういう風にするでしょう。
何も分からず、述而篇の最初に述べて作らず、昔からあるものを敷衍して行う、作るは新しいものを作ってしまう。そういう人は居るかもしれないが私はしない。多く聞いてよいものを選び、それに従う。多くを見て、識°は去声zhi記す、覚える、記録する。それは、知る、理解する、見て聞いて知る事でなく、生まれながらにして知っている、一つ下だがそれに次ぐ。天才のやることには及ばないが次のレベル、と成田君。生まれながらにしてとは？と上田さん。生まれながらに知るは金メダル、その次は銀メダル、孔子は生まれながらではないといっている、と成田君。聞くは人から聞き、善いものを選び、実践する、これを知るとし、見るは聞けないものを見て大事と思うものを選び出し記録するで、それは知るまではゆかない、その次ということでは、イメージとしては春秋を記すみたいなもの、と上田さん。識すは、記録ではなく、自分の頭の中に記憶すること、と成田君。今のことでなく、古の考えを言っている、温故知新、勉強のプロセスは古いものを手繰り寄せて、今の状態を正しく判断する、その順番を言っている、と川那辺さん。中国には昔はよかった、その昔に戻って考えるという気質があるんじゃないですか、と高井君。人を引っ張りやすいので昔しのものを出す。新しいものにうかれ、流されるのを嫌った、と川那辺さん。次が気になる、と丸尾さん。亜聖というと孟子のこと。聖人は孔子、それに次ぐ、それに接近している存在と使われる、と成田君。本当に知っているものではない、と丸尾さん。中国では作ることを否定しているばかりではない。荘子などは価値の転換であるとか、斬新な視点を導入して物の見方をガラッと変え大変面白い。今でも好きですが、だけど、孔子の現実世界での粘り強いこだわりや挫折やしつこさぶりにはどうしようもないものがあるでしょう、禮の方はかんべんしてほしいですが、と上田さん。上田さんの性格のなかにそんなものがあるんでしょう、と丸尾さん。自分を出さない、ありのままの姿を見つめる、現実がどうであるかにこだわる、と高井君。昔からこうです！というとド～ンとくる。心理作戦では、と川那辺さん。福田恆存も、私は～と思うでなく、現実は～である、これが説得力がある、と高井君。昔はよかったは騙されやすい、と川那辺さん。昔を知らないのに昔は良かったといえば、そうなる、と成田君。蓋しとは？と丸尾さん。最近は漢字と音にこだわる丸尾さん。論語は漢字ですから。はっきり定めず、控え目に、はっきり言いたくない場合に用いる、やわらぎ、そういう人が居るらしいねとなる、と成田君。"ふた"ですね、と丸尾さん。そうです、おおまかに覆うことです、と成田君。之とは？と丸尾さん。之は軽い代名詞。動詞には目的語が必要で之があるとすわりがよい。是は前に何か言って、それを言う時に是となる、と成田君。そことここの使い分けは？と丸尾さん。まず、ここといえば、次からそこ。そこは両者からの等距離の場合、あこはそれより遠い、と高井君。これ、それ、あれと三つあるのは日本語の特徴。これ、漠然とこれは之zhi、近い所は之zhī、近い所は此cī、それは是shì、あれは其qí、此岸に対するものが彼岸、彼bǐ。斯sīははっきりズバリと"これ"。斯文、斯道は強い言い方、と成田君。
互郷は地名で、何処かはさっぱり分からない。その人と一緒にしゃべるのは難しい。しゃべるのは難しいという評判。朱子の説では、互郷の人達は善くない習慣があり、不善ばかりしているから、善をしゃべろうとしても話にならない。古注では、言葉が自分勝手で融通が利かない。子供が一人来て、見°はxiàn＝現、まみゆ、目上の人に会う時、お会いする、孔子に会った。評判の悪い所から、また、孔子に会ったので、門人はいぶかった。自らすすんでやってきたことを認めてやろう、味方する、買ってやろうじゃないか。退くことは認めることはできない。帰っていった後のことを認めたわけではない。どうしてそんなにひどいのか。決めつけるのはひどい。人というものは自分を身奇麗にしてやってくるなら、認めてやろう。往は潔くする前のこと、その後のこと、二つの理解がある。互郷に帰った時のことまでは保証できない。朱子は間違いがあると指摘。人潔己以進與其潔也 不保其往也 與進也不與其退也 唯何甚とする。このほうが整っている、と成田君。文明にたいして野蛮という見方、中国の風習に染まろうとすれば受け入れる。互郷は中国の風習に染まっていない人、そういう人に対しても開くべき、その後の中国に通じるところがある。管仲微（な）かりせば、吾其れ髮を被り衽を左にせん（憲問篇）と、管仲がいなければ、夷狄の部族に染まっていた、とある。自分の所へ来る同志を受け入れるという考え、と高井君。其往とは互郷に居たときの心持で、それを保たずは決別することではないか、帰ってからどうこうということに孔子がこだわるとは考えにくい、と上田さん。頷く、中村さん。既往を咎めず、で過去の事でしょう。高井説がいいですね。互郷は風俗が違う。古注では、性格が悪いとあるが言葉が分かりにくいの方がピッタリ。互郷は南方説、楚やそのあたりを放浪していた時の村がいい、と成田君。其が使われているが、と丸尾さん。孔子も弟子も知っていて、その場にないということ、と成田君。門人は弟子でしょう、言葉が通じにくい、分からないとしても、孔子の弟子としてやっている人がどうして惑うことになる？孔子に会わせてはいけないという人がいたの？門人に拒否する権限があったの？と川那辺さん。本当に何を言ってるのか分からない人はいるもので、勉強したいというのはわかるが、とんでもない受け答えをして弟子も困り果てたのでは、それでも教えて倦まずが先生、と上田さん。言葉の上手い下手にこだわって、本質を見ようとしない事を怒っている、と成田君。教育することへの情熱、言葉が異なると思考方法も異なることになる、と高井君。往が分かりにくい、と丸尾さん。二つの説がある。確実な事をいわない。過去なら、互郷での行いを問わない、未来なら、互郷に帰ってからのことは分からない。名詞では過去。動詞で"ゆく"とみれば未来。私見では、互郷のことは関係なく、一人の個人としてやってきている。上田さん、この童子、仲弓というのはどうですか、と成田君。まだら牛のね、面白いことになりますね、それらしい記述があればね・・・と上田さん。親父も変人で、互郷にピッタリ、あの童子が後に立派に仲弓に、と流石、吉本漫談論語を目指す成田君。
仁というのは遠いのだろうか。反語、いや、遠くない。我は、日本語で私は家族を愛するというときの私。我は誰にとっても自分ということ。一人称は吾、予、殿様の場合の孤。自称は我。吾愛我家人、我愛吾家人にはならない。一人称と自称は違う。我は、孔子一人でなく、人間全体。我仁を欲せば、誰でも自分が仁になりたいと思えば、仁が向こうから、こっちにやってくる、と成田君。斯がありますが、はっきりさせるのですか？と丸尾さん。仁至斯ならそうだが、斯仁至矣で斯は則ちの意味、ここにのこと、矣、焉、也は、矣が一番強く、焉は弱い、也は説明っぽい、と成田君。仁と考えると難しいので、色と置き換えてみるとわかりよい、と上田さん。色がむこうからどんな風にやってきます、と成田君。仁が向こうからやってくるって、それこそどんなことですかね。結局は、仁に至ることではないんですか、と上田さん。欲するは、思うだけじゃない、欲した上での行動がある、思うだけじゃなくて行動に移すという強いもの、伊藤仁斎の「童子問」に、「人の外（ほか）に道なく、道の外に人なく、人を以って人の道を行う。何の知りかたく、行いかたきことか、これあらん。」とある、と高井君。里仁篇に、「我は未だ仁を好む者不仁者を惡むを見ず」とあり、上田さんが顔回なんかも該当せず厳しいといっていた事と、比較するとどうなるの、孔子に問うてみたい、と成田君。意識的行ってどうなるかでなく、無意識にまで到達しないと・・・そう簡単なものではないのでしょう、と川那辺さん。近くにあるが気付かない、と成田君。簡単そうであるが、非常に難しいと感じさせる訓話。常に意識を持つ必要が・・・と川那辺さん。この言葉で思い浮かべたのが仏教。弟子の一人に子供がまぎれている。子供の方が純粋なので分かり易い。仁も素直に率直にみればよい、と高井君。それも説得力がある、遠くにあるものではない、と成田君。子貢が世の人を救うみたいなことを言ったとき、先生がそれは仁者じゃなくて聖人のこと、仁は日常生活の中で行うものとあった、と上田さん。日常の基本的な生活、心のありかたを言っている。人の気持ちになってするとか人が嫌がることをしないとか、その人その時にピッタリの対応としている。仁は広いもので、説明も色々ある、と丸尾さん。子貢みたいに考えるとむつかしくてわからなくなるから、考えるのをやめましょう、もうひとつやっておきましょう。と成田君。
陳は周の方の小さな国。古い矢を見つけて驚いた所。司敗は、他の国では司寇、警視総監。昭公は禮を知っていましたか、と問う。当時はもう亡くなっており謚（おくりな）で昭公と称されていた。孔子は、知っていましたと言った。孔子とあるのは、政治家と話しているときであらたまってのこと。孔子が出て行った。巫馬期は孔子の門人、巫馬が姓、名が施、字が子期。揖は軽くお辞儀をすること。このように聞いている、「君子は、悪い意味で仲間、内輪で仲良くする、身びいきをするということはしない。」だが、そうするんですかと嫌味に聞いた。昭公は呉の国から嫁を娶り、取°＝娶と同じ、呉の国の王の一族から嫁をもらった。魯と呉は苗字が同じ、姫姓、本来なら呉姫であるが、バレバレで呉孟子と言った。こんなことでは、誰が禮を知らないとされるのか。巫馬期が孔子にそれを伝えた。丘、私は幸せ者だ、過があれば他の人が気付いてくれる。一般の解釈では、うっかり間違っていたのではなく、自分の国の君子の不祥事を自分からは言わないのが禮という解釈。今回はまちがっていないが、もし、本当に間違ったことをすれば、知らせてくれることが嬉しい、と成田君。そのまま素直に受け取っていいの、と川那辺さん。言葉からすれば先生に伝えてくれたくれたことを含む、と成田君。弟子が言う事・・・ここのことはよく分からない、と川那辺さん。過ちを指摘すれば改める人間とみられたことが嬉しかった、と上田さん。孔子が間違った、言われて気付いた、そう言ってもらえることに感謝している、と高井君。あっさりしすぎている。初めて間違いに気付いたのであれば、なんてこったみたないなものがないと、と成田君。昭公ってどんな人、と丸尾さん。上田さんどうですか、と成田君。精神薄弱的な所があった人。孔子は昭公をかついで三桓氏を武装解除しようとして失敗、昭公の決断力が鈍いせいもあったが、昭公は斉に亡命し、孔子も斉で役に立とうと斉で仕官しようとした。斉で昭公は土地を与えられようとされ、臣下とされることに気付かず、家臣があわてて止めるという状態で、結局斉で亡くなる。そのことに孔子は、負い目を感じていたのではないか。だから、悪いことをしたと、昭公をかばう気持ちがあったのでは、と上田さん。昭公のことを知り尽していたのなら、成田さんの考えが自然じゃない、と丸尾さん。述べて作らずですから、と成田君。その結婚って、とんでもないこと？と丸尾さん。呉と魯では遠いから、孔子もまあまあと思っていたのでは、と成田君。誰に対して感謝しているの、司敗、それとも巫馬期？巫馬期は一回きりで性格が分かりにくい、あ、そう？一回きり、と声がする。司敗じゃない、巫馬期かな?頭の切れる優秀なひとではなく、素直な人、孔子にとっては幸いであった、と成田君。司敗は昭公に対して批判的なのですが、いけないことをしているという気持ちが孔子にあった？と丸尾さん。昭公は魯を混乱させてしまった張本人、孔子は忠孝を尽くしています。司敗は孔子を試してやろうと思って、ひやかしでイチャモンをつけてるのでは、と成田君。ところで時間がないので、成田君は7月25日に出立ですから、最終の土曜日は何時かな？7月21日！その日は皆さん、二人の壮行会を予定しておいて下さい。
2007年6月30日 述而 31～37
先週の復習ですが質問が。多見而識之知之次也の意味は？と高津君。知るというのが一番いいが、それには及ばないが、それに迫っている、本能的に理解している人には及ばないが、理解している、と成田君。百聞は一見に如かず、聞いて知る、本の上の知識もそうだが、それを実際に見ることの方が上と思ったのだが、と高津君。そうじゃなくて、知るが次なり、とは知ることの下にあるということ、と成田君。ここでは、知るとは善きものを選んで実践して自らの血肉とすることまでを含んでいる、識は成田君が先週説明したところでは記憶していること、まだ血肉化してない段階ではないか、と上田さん。
では本日のところ。これは、先生の行動の記録。人と歌を歌って、善ければ、気に入れば、素晴しいと認めたときには、その歌を繰り返し、そこ、もう一回歌って、みたいに、そして一緒に合唱、唱和した。単にそれだけのことですが、皆さん、如何ですか、と成田君。まさにそのとおり、述べて作らず、信じて古を好む、ですね、と高津君。歌であるから分かりよい。ただ単に歌をそうしていたの？と川那辺さん。自分なりにいい物を取り入れる、と高津君。ひとりよがりでなく、周りで連携する、と川那辺さん。和°はhè唱和する。通常はhé和らぐ。人と歌いて、最初は一緒に歌っていない、と成田君。衛から帰って樂が正しくなったとあり、孔子が声調を正す立場であり、声調が合っていると一緒に和したのでは、だけど合わなかったらどうしたのだろう、と上田さん。熱心な孔子は唱和できるまで教える？と高井君。人とは孔子と同等の人かと思う、と成田君。一緒に歌う？と川那辺さん。一緒でなくともよい、と成田君。孔子が繰り返さしめるだから、孔子が教えている、と高津君。放浪の頃、楚の国の人が歌う、魯の国の人が歌う、楚の国のなかにいいものがある、それもう一回歌っていただけませんか。多くを聞いてこれを識す。魯に帰って樂正しくなる、はどうですか、と成田君。それも成り立つでしょうね、と上田さん。どういう人と歌ったかで状況は変わる、と成田君。善かったときはいいが、悪かったときはどうなる、と高津君。悪ければ一緒に歌っていない。マイクをもたせてもらえない、と川那辺さん。孔子は、樂となるとそれは文王がどうのこうのと、その樂の心をいいますから、声調が合うだけじゃない、と上田さん。チャイコフスキーのバイオリンコンクールで日本の女性が絶賛されてましたよね、それと一緒ですね。聴衆が乗り出すように聞き入ってましたね、と高井君と川那辺さん。
先生がおっしゃった。文、ここではとりあえず教養、六芸。それに関しては、人並みであることはないだろうか、いや、人並みだ。しかし、自分で自ら君子を実践するに関しては、出来ていない、それが朱子の解釈。文莫吾猶人也を吾莫猶人於文也とみている。清朝の人が文莫を忞慕（びんぼ：mín mù）黽勉mín miǎn努力する、がんばる、とみて努力することは人並み、君子を目指すと解釈している、上田さんどうですか、と成田君。これはむつかしい、自分のことを言っており歯切れが悪い、と上田さん。憲問14に「君子の道という者三つ。我能くすること無し。仁者は憂えず、知者は惑わず、勇者は懼れず。」でもそう言ってます、と高井君。君子は何かいいものを一つ持っていればいい、ところが仁は最高価値、と成田君。それが向こうからやってくるでしょう、感情の起伏が激しく、ズドーンと落ちる、と川那辺さん。君子は評価しやすい、君子はだれもが認める人、仁に関しては全然違う。孔子の場合、あの人は仁ですかと問うと、とんでもない！となる、と成田君。君子と仁とは別の分野、と川那辺さん。（孔子も）政治に参加して、きちんとした政治が出来ない、それが辛い所、たいして努力せずして政治をしている人もいるが、と成田君。君子は周りを指導する。（仁は内面的）内面よりは指導的なもの、と高津君。君子は政治であり、なかなか行わせてもらえない、仁は内面的なことで出来る、年齢的にも晩年で、そういう風になってゆくのでは、と川那辺さん。
先生がおっしゃった。聖人のような行い、それと仁に関しては、私は、豈には反語、強い否定、敢えてする、進んでする、することが心理的にできるかどうか、そんなことはとんでもない、とてもできない。抑（そもそも）は選択を示す言葉、別の選択肢をして聖人の道、仁の道を求めて、一生懸命努力して厭がらない、人を誨えて疲れる事を知らない。そういうことなら言ってもいいね。云爾は引用のでた時に付け加える言葉。謂「」云爾の「」内が省略されている。そういうことに対して、ほにゃらほにゃら、そういう風にできている。そういうことなら言ってよい。公西華は公西赤、子華のこと。外交交渉に長けていた人、斉に使いに行った人。正に、それこそ学生が学ぶこと、真似する、習う、それこそ真似る事ができない、と言った。まあ、そんなところ、と成田君。晩年のこと、ここでまた違っていることを言っている。そんな簡単なものでないと思って、ここへ来たほうがよい。公西華にとっても、先生の日々の姿勢すらできない、と川那辺さん。孔子がそのあとどう言ったかが気になる、ここでは関係はよさそうだが、と高津君。外交官みたいな、お世辞みたいな言葉だが、と成田君。冉求は力不足（雍也篇10）と返答しているが、それよりは上手い、と高津君。前の句は対象が自分で歯切れが悪かったが、これは対象が公西華とその弟子とはっきりしており、子貢に対するように、聖とか仁を遠く、かけ離れた議論をせずに、日常の生き方の中に求めることを諭した、と上田さん。子貢、冉求、子路と対比すればおもしろい、子路なら、私がやりますとくるだろう、と成田君。ちょっと物足りない感じがしたのでしょう、孔子は、と川那辺さん。孔子も応えにくいのでしょう、と高井君。冉求に言った汝かぎれり、に似ている、と高津君。冉求の場合には完全に言い訳であった。ベストじゃないがこういう応えも可能、もやもやする感じはある、と成田君。
先生の病気が非常に重く深刻になってきた。疾が病気。病は病気が進行して危うい状態。孔子はこの時には死なない、子路が先に死ぬ。子路が祈祷をしましょう、加持祈祷の儀式、そうすると先生が、それはあるか？有諸？有諸と応える。諸は之乎の略。ありますか？ありますよ！やっていいことか？いいことですよ。誄（るい：lěi）は讄、死んだ後に生前のことを記録することだが、孔子は死んでおらず、讄、神様に祈るときの言葉、説文解字に「祷なり」とあり、その言葉集のなかに、「爾を上下の神祇に祷る。」がある。上は天神、下は地祇、天の神と地の神。先生がおっしゃいました。丘は子路に向かっていうのではなく、上下の神祇に謙っている、私の祷ることはずっと前からのこと。やり取りがどういう意味をもっているのか、と成田君。難しいと思ってしゃべっていない。現代人の神祇に対する考えは異なる。世の中の分からない事に対する畏怖の念が異なる。子路の祈祷を嫌がっていまいが、敬する思いはあったが、（天や天命を鋭く意識する孔子のこと）内容としては断った、と高井君。全面的には賛成しない、と成田君。多分祈っている、と高津君。子路は別に病気が重く自分の門弟を家臣として葬儀の準備をする話もある。ここでも手回しよく祈祷の準備をしているのだが、出公を支える支えないの一件以来、孔子の思いとはずれて行動を起こし隙間が広がってゆく。孔子は子路のやることが危ういと危惧し、結果出公のことで、子路は命を落とす事になる。重病にしても神頼みというのは孔子のあり方とはそぐわないもので、かんべいせいということだろう、と上田さん。生かされているものが、目前に来ているのが分かっているので、（子路が）苦しいときの神にすがるのは辞めてほしい。寿命が分かっていたのかもしれない。そんなことはしなくていいよという気持ち、と川那辺さん。子路の心意気には賛成するが、祈祷なら気にくわない、日常、（疾には斎し）天に心を通わせているのだから、と成田君。子路は孔子が逡巡しているとみて、良かれと思って先回りするのが、悲しくもゆきちがってゆく、と上田さん。出公の場合でも自分がお膳立てをして孔子を迎えようとしている、と声がする。孔子を大夫にしたが、君子にしようとしていたと思う、と高津君。竹を削って羽根をつけ、鏃（やじり）で磨けば、もっと深く入る。竹をもっと鋭くするものが学ということで、武の子路が孔子に入門したのがいきさつ。直裁にやっていけた二人だったのだが、と上田さん。二人の関係にはジンとくるものがありますね、と高津君。
奢れば、大盤振る舞い、豪勢な暮らしをする。そうすると不孫。孫の字を使っている。孫°は去声で遜xùn、不孫は譲らない。儉約していると、固くなる。安定しているが融通が利かない。不孫よりは固なった方が良い。奢るのはダメで、儉約しなさい、と成田君。やりすぎないことですかね、と高津君。これは年寄りにはよく分かる。勤めてみれば分かるが、奢る人とはどうしようもない、人の言う事を聞かないし、最近の会社の不祥事をみればよくわかるように、会社を潰してしまう。倹約して固いのは、融通が利かず困るが会社を潰すようなことにはならない、と上田さん。奢れば不遜になるのは仕方ない。限りなく不遜でどこへ行くか分からない、と川那辺さん。倹約で固いは不渡りをだすくらいで潰れるには至らない、と成田君。どっちがましか、フリーで、と川那辺さん。奢る、権力を持つと人間がコロッと変わる。映画で、ある女性がある村にやってきて苦労して受け入れられるようになるのだが、マフィアの娘とわかって疎外されひどい状況に陥る。そのお父さんが村にやってくると、一転して立場が変わり、父が娘に好きなようにしなさいというと、娘は村の人々に復讐して殺した。びっくりした、と高津君。女の人だからそうした、男ならむつかしいでしょう、と川那辺さん。
君子は、ちゃんとした人、小人はダメな人が、基本パタ－ン。平らかはどこまでも平らか。蕩は盪、盪尽は湯水のごとく使うこと、限りなく水が流れてゆく、スケールが大きく、凹凸がなく続いている。長はとこしなえ、時間的に長く、戚は慼と一緒、心配事があってビクビクしている。余裕の無いない状態、と成田君。これも年寄りには分かりやすい、と上田さん。職場でよくあることだが、手配どおり事がすすまないときそれは私の責任ではないと相手に責任を問わねば気のすまない人がいる。君の責任じゃない事は分かるが、そんなことよりそれが可能なら、君が頼み込んでもやってしまう、可能でなければ仕方が無い、ごめんできませんでいい。そう言っても、自分の責任じゃないと周りの人に思わせねば気の済まぬ人がいる。実は、女性に多い。優秀で、自分は完璧にやっているという女性はどうしてもそこをはっきりさせないと気が済まない。結局、なんてことでもないものが、ギクシャクする。それって、小人と女は、のところで聞きたいものですね、と高津君。女性にありがちのことです、私の職場でもありました、と川那辺さん。数学者の岡潔という人が、女は人間である前に女として認められたいという気持ちが強いとおっしゃってました、と上田さん。それ、本当。私が論語の会にでるというと、そんなことよりエステとメークの方が大事でしょ、というのが女性の気持ち。論語なんて出家でもするつもり？なんですよ。ここにいる私は女じゃないんです、それを脱ぎ捨てないとできません（交流広場）、と川那辺さん。
これも、先生の行動の記録。朱子以前のテキスト、古注のメインは何晏の論語集解であり、これとは別に皇侃の論語義疎がある。論語義疎は中国では人気がなくなり、清朝に日本に伝わり、中国人がビックリしたという。皇侃では｢君子温而厲・・・｣と先生の言葉となり、君子はこういうものということになる。普通では、先生は温かみがあったが厳しかった。威は威圧、迫力があるが狂犬みたいな凶暴さはなかった。人に謙るが、どっしりとした感じがあった。皇侃なら、君子とはそういうものだと言ったことになる、と成田君。皇侃が正しいとしたら、孔子が正しいから、そうしてしまった、と高井君。手がかりは孔子っぽいが、後の人がいいそう・・・か、と成田君。いいヒント、孔子の言葉じゃないか、と高津君、高井君。ぼくもその意見、上田さんどうですか、と成田君。そう思う、と上田さん。弟子ではいいにくい、川那辺さんどうですか、と成田君。私も一緒、と川那辺さん。子路が入門のときもそう、外面やわらかいが、本質的なところは厳しくゆるぎないものがある。禮について一つ一つ尋ねたときも、恭しくしてとある、と高井君。恭しくしての心は安と合う、と高津君。不猛とそこだけは不となっている、威がひどすぎないように、文章としてねっていない。そこから孔子の言葉と断言しては、と高井君。皇侃と何晏のどっちかは決めがたい、と成田君。禮はおごらんよりは倹せよ（八佾4）。
7月21日の予定、午後2時より読書会、5時過ぎから第二タワーホテル、レストラン若杉で壮行会です。
2007年7月7日 泰伯 1～6
本日は丸尾さん、早くから、成田君の特訓を受けて音読。7月7日、七夕はデートの日と早々にNext stage！成田、高井、上田のトリオのライブという珍しいセッションとなりました。筆記が追いつきません。
泰伯は昔の偉い人、至德、最高の徳と言ってよい。也已矣は語尾を強調。いいんだようー。何故かというと、三回天下を讓ったから。だからこそ民、士・大夫と対立するのが民、士は治める側、民は治められるが側。機会がないので称揚することができない。周太王には泰伯、仲雍、季歴が居り、季歴の子が文王である。三回は三度か何度もかどちらか分からないが、鄭玄（古注）によれば、太王が病気になったとき、太王が亡くなると自分が王になる泰伯は、三男の季歴が優れており、その子も優れており、将来文王を王にするには、季歴を王にしなくてはならないと思い、薬を採りに呉越に行って戻ってこなかった。季歴が喪主となる。これが一回目。次には、季歴が泰伯のところへやって来て、葬儀に来るよう言ったが、来なかった。三回目、ついには泰伯は髪を切り、身体に入墨をした。これは中国の風を捨て、呉越の蛮族の風であり、季歴は仕方なく王となった。しかし、遠い呉越のことであり、民は分からず、三回天下を譲っても、民は称揚できない。泰伯のことは知られていないが、孔子は素晴しいとした。如何ですか、と成田君。蛮夷の風俗に染まっていても孔子はこれを称揚した、と高井君。髪を切り入墨までするのは、普通そこまでやってはいけない、孝に反する、と鄭玄は言っている、と成田君。司馬遷は伯夷叔齊を列伝の第一においたように呉泰伯を世家の第一においた、孔子の意を受けてのことである、と上田さん。本来呉はたいした国ではない、儒教的観念にうまく取り入って復活させたもの。孔子は誰もが認める管仲を偉い人とはしない。知られていない人を持ち上げる、と成田君。泰伯と徳を慕って人々が集まり、国を興したのであり実力があった、日本の天皇家の祖は呉泰伯という説もある、と上田さん。その話はいかがわしいところがある。後に周が心理的つながりを得るために利用したもの、と成田君。三回、諸葛亮（孔明）も三回、シェークスピアのジュリアス・シーザーも三回断っている。シーザーの場合には裏取引があってのことだろうが、三回断るというのが共通していて面白い、と高井君。断っても、なんとかかんとか言って、最後は受けている。しかし、泰伯は本当に断っている。泰伯が皇室の祖先なら、高天原から降りてきたのですから、高天原は周ですかね、と成田君。ええっ、・・・むむむ、周には崇岳があったよな、それが高天原ね・・・と上田さん。
恭、うやうやしくしても禮が無ければ勞す、骨折り損。愼しんでやっても禮が無ければ葸す、恐れおののく様、いつもビクビクしている。勇猛果敢であっても禮が無ければ亂す、親や主君に対して無礼、秩序が無い、順番を無視する。直、正直、まっすぐであっても禮が無ければ絞す、絞るはきつすぎる、ギチギチのガチガチ。ここからは言い方が異なる。朱子は別のものとする。君子は、家族、親戚、親しい人と懇ろに付き合うと、民も仁ということに、仁の心がふつふつと興る、内からむくむくと起こり立ってくる、覚醒する。故舊、旧臣、置き去りにする、ほったらかしにするのでなく、忘れなければ、被支配階級の民は、偸、これは泥棒のことであるが、ここでは情けの薄いこと、不偸で薄情にならないこと。前半と後半で話が異なる。朱子は後半は曾子が言っているとみている。曾子の言葉「愼終追遠民德歸厚矣（学而篇9）」に似ており、言い方、目線が曾子風、と成田君。前半は個人の行動を禮をもって節すること、後半は禮をもって政治を行うことではないか、親とは親しみというより、祖先の祭祀をいうのでは、と上田さん。それって、愼終追遠、曾子に近づいているんじゃないですか、と成田君。そうなるね・・・、と上田さん。君子というときは、禮をもってする中庸をえた、その君子が親に篤く・・・中庸との関係ではちょっと分かりにくいなあ、と高井君。前半は禮でもって節すれば、これは有子の言葉、「以禮節之（学而篇12）」、最終的に禮で整える。植木職人が植木が伸びるのは重要だが、最後に剪定して整えるというパターン、と成田君。前後がつながるような質問があったのでは？どうもつながりが悪い、と高井君。述而の最後に、「子、温にして厲し」とあるが、それの逆パターン、と成田君。民の偸は仁の反、と高井君。民レベルの人にとっての仁の様相、孔子が弟子に求めるのは別、と成田君。前半の方でしょう、と高井君。前半は一人の弟子に向かって言う言葉ではない、総体的な言い方は珍しい、上田さんどうですか？と成田君。前半と後半のつながりは、分からない。ゆっくりこれから考えるか、と上田さん。論語がどういう風にして出来てきたかを知るヒントとなる箇所、と成田君。
曾子、疾有り。もはや危篤の状態。孔子が亡くなってかなり後のこと。子貢などは社会的地位は高かったが、門人の教育には熱心でなかった。儒学の学団が形成されるには、曾子や有子が重要。門弟子は曾子の門人。曾子が死ぬとき多くの門人がいた。私の足を啓き、私の手を啓け。古注も朱子も一緒で、蒲団を開いて手足を確認してくれ、清朝の人の注では、死後硬直する前に手足を開いたままにしてくれ。啓を䁈
(みる)とみなし、ちゃんと見て確認せよ、手と足を確認してくれ、という。曾子は孝経を作ったとされ、それから発想して親からもらった形を確認しろという説。曾子が孝経を作ったかといえば嘘くさい。もっと新しく、孝経ができたときに曾子をあてはめたものと思われる。薄冰は述而篇10）に出てくるが、小雅の小旻（しょうびん）「不敢暴虎不敢馮河 人知其一莫知其他 戰戰兢兢如臨深淵如履薄冰」にあり、どういうことでも注意深く、深淵に臨んで気をつけよう、薄冰を履むが如く慎重にしよう。しかし、今日にして、今からは私はそれから免れる。死んでしまうのでそんなことはする必要がなくなった。小子は二三子に比べて、慈しみ、目下のものに対する愛情を込めていうこと。死ぬ間際の人がこんなことを言うのかな、と成田君。門弟を呼んで意識的に教訓として覚えて置くようにといわんばかり、と高井君。言葉と行動を意識的に行っている、孔子は考えていないが、曾子はそこまで考えている。学団がそこまで体系だっている、と成田君。孔子亡き後有子がその席に着く事に反対した曾子であり、重厚で大真面目であった、と上田さん。もっと言うと、儒学の未来を担っている自負がものすごくある。また、死んだら免れるなどという言い方は孔子にはない。曾子らしい、と成田君。啓くがむつかしい、と高井君。曾子にとっては重要な事であった、詩の文句をいうから、改まって、手足を啓けと言っている？臨終にあっても教育を考えている、と成田君。孔子は死後の事まで考えていない、曾子は他の諸子百家との関連で学団を守ることを考えていたのであろう、と高井君。
危篤の病。もう一方では孟敬子を呼んでいる。危篤ながらねばっている、それはおいて、孟敬子は孟武伯の息子、孔子の時代からは、かなり離れている。今生の別れでやってきた。曾子、言曰は珍しい。曰のみでなく言曰となるのは、ニュアンス的には重い。普通の言い方ではない。遺言の形。鳥が死のうとしているとき鳴き声は哀しい。人が死のうとしているとき言うことは善し。くどくどしい前置き、危篤のわりによくしゃべる。君子の道において貴ぶことは三つ。一つ目は姿形を、立ち居振る舞い、儀しておれば、すなわち暴慢から遠く離れておられる。顏色、表情を正しくしていれば、信に近づく。そうすれば、言葉と氣をだすとき、人間で言えば息、口から出るということ。鄙はいやしいこと、倍は背くこと、正しい事にそむくことから遠くはなれていられる。籩も豆も食物を供える高杯、儀式の事、こまかいしきたりは、有司、役人がちゃんと保存記録しており、まかせておきなさい、君子が大事にするべきは、容貌、顔色、辭氣である、と成田君。最初の比喩をどう思いますか、と高井君。順接か逆説かによる。順接なら鳥が鳴くのはよい、逆説なら鳥が鳴くのはたえられない、と成田君。人間はしゃべり伝えることができるが、鳥は鳴く事しかできない、それが哀しいでいいのでは、と上田さん。曾子っぽいですね。曾子は君子と民を相対する概念としてもってくる。鳥は物を言えない。人と鳥、君子と民と区別して考える。孔子の考え方とは異なる。孔子はあいまいにしておいて、最終的には天が味方していると片付ける、と成田君。そう、曾子は籩豆の事まではっきりと言って伝える、と高井君。若い孟敬子にも形からはいるように、押し付けるように諭している、と上田さん。教育する対象に対するアプローチの仕方が孔子とは異なっている。孟孫氏と曾子の間では、孟孫氏に役人を供給しているのが曾子の学団だろう、有子、子夏、子張などが同世代。孔子との直接対話はあまりなかった。と成田君。孔子は個人個人の内面を捉えた対話であるが、ここでは、表に表れることに重要性をみている、と高井君。
子路や子貢であれば、子路が曰く、曾子の場合は曾子の曰く、での場合はワンランク上。曾子は曾先生。出来るのに、出来ていながら出来ていない人に尋ねる。沢山もっているのに少ない人に尋ねる。有るのに無いみたい。充実しているのにからっぽみたい。人に侵犯されているのに仕返ししない。昔し、吾が友、嘗ての嘗chángは常と同じ、以前そういうことをしていたね、斯のことをしていたの斯はズバリそのものの斯。矣もあり強調している。私の友人とは、顔淵とされる、私もそう思う、と成田君。人物をあてるなら顔淵でしょう、と高井君。伊藤仁斎は複数であると言ってます、顔淵は弟子のなかで抜きん出て評価されており、祭り上げられていなければ、顔淵と言ったでしょう、と成田君。犯すはズバリ指摘すること、校は械（かせ）のことで追い詰めること、不校は追い詰めない、ということでは、と上田さん。それもありますが、校jiàoは較と同じく計較、計り比べる、侵犯された被害を計り比べての仕返、それをしない、と釈されている、と成田君。友は自分からみれば・・・そういう風には思っていない、と高井君。こんなことを弟子に言って理解ができたのだろうか？ただの回想か、と成田君。三つの事はむつかしい、と高井君。こういうのを聞くと、曾子の場合はゼミ形式よりも、大講義形式、1：多の感じを受ける、と成田君。1：1としても、述懐している言い方ですよね、と高井君。記録される事を予期している、と成田君。顔淵のような言い方とは異なる、置かれた時代背景が違っているのだろう、と上田さん。孔子のように言うのはむつかしくなってますね、と高井君。曾子、有子の言い方では、おもしろくない。孔子のことばの魅力を残したい、という思いが論語の編纂上にある、と成田君。（曾子、有子の言い方では孔子の）含蓄がなくなりますよね、と高井君。（孔子には）そこまで言っていいのか！というおもしろさがあります、と成田君。
六尺の孤はみなし子の君主。1尺を20cmとすれば1m20cmで大人ではない。百里の命をまかす。百里は方百里、諸侯の国のこと。一国の命令、政治上の命令を任せることが出来る。君主になり代わって政治を行うことができる。大節は重要な一大事に臨んでも、大事な所をはずさない。その人の持ついい所が失われない。そういう人は君子人か、君子人だ。君子と君子人の違いはどうなりますか、と成田君。不可奪は祖廟を奪うことはない、下克上を行わないということではないのか、と上田さん。その場合には不奪となるべきで、不可奪は匹夫不可奪志也（子罕25）とあるごとく匹夫から志を奪うことができないとなる、と成田君。尺は二歳半、六尺は15歳という説がある、君子人は君子なる人では、と高井君。それじゃ、君子で十分ではないか、この場合のように、政治的なことのみで君子を定着するのは如何なものか、と成田君。託された人が忠の精神、孝もできる人というのはどうですか、と高井君。それなら、忠はこうで、孝はこうと言わないとおかしい、と成田君。孤児君主、一国の政治を託され、大事の際に志を奪われない、それで何がいいたいのか、と上田さん。何があっても忠と義を尽くして守るということ、最初の初心を貫徹できるかということ、と成田君。君子と君子人はわからない、他に君子人はでてきますか、と上田さん。ここだけです、と成田君。君子の素質を持っている人？と高井君。君子は人か？君子は人なり、とでも釈しますかね。君子は環境、君子という立場に置かれて君子になるものではない。一大事にあって、その人の力が問われて君子かどうかがわかる、というのはどうですか、と成田君。
論語は郷党篇が禮の具体篇、子罕篇までで一応終わる、これでひとまず完結。それ以降は続編みたいなもので、弟子の言葉がよくでてくる。泰伯篇で曾子が出てくるのは意味がある、非常に重んじられていることがわかる。論語全体の構成からみれば、郷党篇以前、以後で性質が異なる、ところで、来週はゼミの関係で出席できないので、来週は高井さんお願いします、と成田君。
2007年7月14日 泰伯 7～11
台北医学大学の張さん、本年も夏に来訪。有朋自遠方來不亦樂乎と声あり。鄭さんと台北で一緒、学会での発表を終えた鄭さんも久々の登場。安澤さんは中国語で自己紹介、日本語で応える張さん。笑いをかみ殺す川那辺さん。
曾子がこのように言った。士は道を志している人。弘毅は寛宏強忍、自ら課した任、自ら背負っているものは、重くして遠い。仁をおのれの任とする。一体どうして重くないことがあろうか？重い。死んで已む。一生涯をかけてやらねばならない。仁の道の険しく遠いこと。死して後とは、一生をかけて追い求めていること、非常に重いものである。如何ですか、と高井君。士と君子はどう違うのか、と鄭さん。士は道を志している人、君子に至っていなくとも、これから目指せばいい、と高井君。前の句で君子人と二回出てくる、君子という言葉がふさわしいと思うが、と鄭さん。曾子が弟子に向かって言っており、高井君の考えでいいのでは、と上田さん。孔子の言い方とは違いますね。孔子なら死ぬまでというような言い方はせず、そういう風に感じさせるところで止めるでしょう、と川那辺さん。これは曾子調の言い方、と上田さん。孔子の時代、士は階級を表す言葉、低い貴族の呼ばれ方、孔子も士であった、と張さん。士は農民でも商人でもなく、官吏として仕事するのだが。君子のイメージもあるが曾子がどういう場面で言ったのかが気になっている。後の時代には、士は責任をもって政治を行う、君子の道を示すものとなり、君子は模範であるが、士もこのくらいの気持ちを持たないといけないもの、と鄭さん。江戸時代の儒学者は、論語の士は武士とみている。孔子の時代には、士は政府が認めた階級、必ず責任のある仕事がある、と張さん。江戸時代以前の武士は戦う侍であったが、儒学者達は士として責任のある知識人階級とみなし、そのように変っていった、と鄭さん。論語では士は二つ、一つは政治的、もう一つは道徳的意味、現代では知識人として責任を持つ、私もそうなりたいと思っている、と張さん。論語の精神を行うとなれば、どういう意味で行うのか、と鄭さん。私が士となる・・・素晴らしい人間になること、と張さん。一般人も磨けば立派な人間になる。朱子以降はそういう風な展開をみせる、と鄭さん。はじめの部分は、仕事についての説明、後の方は一般大衆に向かって言っているような気がする、と高津君。くどいくらいの繰り返し、と声がする。言葉の過剰性がありますね、と高井君。孔子が無くなってから30～40年の間に言葉が変化していることや、曾子の場合は孔子とちがって、なまなましい言葉が記録される、と鄭さん。諸子百家の競う時代であり、分かりやすく説明されねばならない、孔子のように抽象的だともうダメだったんでしょうね、と高井君。弟子に阿呆が多くなった・・・孔子、曾子、孟子の間に言葉の使い方や記録の手段が変っている、と鄭さん。江戸時代の話がでたが、徳川家康がこれを家訓にしている。「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。（泰伯篇7）」曾子は受け容れられていた、と上田さん。吉田松陰も士規七則（至道舘村塾）にあらわしている、と張さん。国家が滅ぶと士も滅ぶ、それ以前は君主は変れど貴族は貴族として残る、国家に対する責任を意識するものが士となる、と鄭さん。
詩というのは詩経のこと、昔は詩と言った。詩によって興るのは心。「詩三百一言以蔽之曰思無邪（為政篇2）」とあった。心、感慨をおこす。禮を身に付け、音樂に成る。音楽は当時尊ばれていた。自分の徳行を修めるには樂による。三語三語で規則的におさまっている、如何ですか、と高井君。詩の好きな高津君どうですか、と鄭さん。孔子の言う言葉の意味が深くて・・・詩は心ですよね。禮はおもてに表れたもの。音楽できれいな形になる。そういうことを言わんとしているのかな。弟子にお前と詩が語れるようになったと褒め言葉に使ってますね、と高津君。孔子の時代、詩は外交のために必ず覚えておかねばならないものであった。息子の孔鯉に詩を勉強したかと問うていただろう。禮儀がはじまると、詩と樂が伴う、同時に行い分けることができないもの、と張さん。詩と外交とは、と安澤さん。交渉の話し合いには詩経の言葉が引用され、それがもし分からなければ無禮とみなされる、と張さん。興、立、成とある。孔子は三十にして立つ、仕事をする場合禮を知らないとダメ。詩は基本的に心に関するもの。心は動くもの、それを起こす。それを分別する、どういう道を歩むか分かること。樂はハーモニー、合わせること、耳順うとか心の思うままに行い規を越えずとか調和をさせること、孔子の人生の遍歴が分かるもの、と鄭さん。音楽の表現形式は禮を含む。音楽が上達することは禮や詩も一体として上達する、それが古代人の教養、と張さん。音楽は心で表現しないと伝わらない、詩と禮で樂になるというがそうつながるものではない、その人が心をもって演奏する、どういう心でつくられたかを分かって演奏しなければ・・・そういうことを言ってましたよね、と高津君。一つには生き方の流れ。詩は心、気持ちよくなれば、心は動く。きちんとするには禮が確立していなければならないし、きちんとしたものは調和する。そういう流れ、と川那辺さん。心が言葉となってあらわれるのが詩、行動で心を正すのが禮、心そのものに直接訴えかけるのが樂、韶は美を盡し又善を盡す。武は美を盡すも未だ善を盡さざる、樂においてこそその心が最もよくあらわれる、と上田さん。韶は舜の禅譲の心、武は政権を奪取した武王の心のあらわれ、と高津君。音楽を練習する形式。練習してゆくとその人の気持ちが分かる時がある。本質が分かること。それは、禮においても詩においても同じ。形式と本質、孔子の理想は一体、と張さん。詩は心を動かすもの、禮は区別、分別、どうすべきかを分けるもの、調和させるのは音楽という三つの段階、その性質を読み取ることが大事、と鄭さん。詩、禮、樂を学びはじめは形式から。形式から本質へゆくこと、学ぶ程度が興、立、成、と張さん。文質彬彬ですね、と高津君。
民、一般民衆、之は道徳。これに由らせることはできる。導くことはできるが、その所以、根本理由を知らしむことはできない。単純に言えばそういうことです、これくらいにして、どうですか、と高井君。之を道徳と言わない方がいい。あとの解釈がややこしくなる。これは愚民政策と評判が悪く、大学の頃はそう思ったが、今となれば、このとおり。政治は、その政策について、いちいちすべてを国民に知らせることはできないもので、責任をもって政策をしめすことが大事、と鄭さん。学ばないと理解は出来ない。深く考えないと道理はわからない、と張さん。農民は腹一杯食べて生活できればよかった。上にたつものはどうすべきかが問題。しかし、今の時代でこんなことを言えば、森総理だったかな、と鄭さん。一発で辞任もの、と安澤さん。何においてこの言葉が出るのですか？政治ですか、と高津君。民にはじまる以上、民は治められる側、その反対は治める側、政治のことでしょうね、と高井君。正しいこと正しくないことを区別できれば民と一緒のレベルのこととなる、と張さん。上田さんどうですか、と鄭さん。稽古事でも何故うまく出来るか理屈がわからなければできないというものでなく、こうすればうまく出来るからはいりますから、愚民政策といわれてしまえばむつかしいことになりますよね。年金問題でも何故そうなったのかそのすべてが知らされないと納得できないというものでもないでしょう。それより、おかしくした責任者が揃って責任を取って弁済してくれる方が分かり易い、政権担当者は政策に責任をもって分かりやすく説明できることが必要ということですかね、孔子も自分の言うことが分かってくれなくてイライラしてますよね、知らしむことは実際極めてむつかしいのでは、と上田さん。人間は学ばないと人間の道理はわからない。孔子の時代には読書できる民はなかった。そのまま今の時代に適用しようとするのはむつかしい。上に立つ者のあり方、下のあり方をいうもの、と鄭さん張さん。孔子と弟子は対話、討論をするが、一般人は討論できる状態には無く理解不能が前提、士となるべき弟子は勉強できたけれど、と張さん。
勇猛果敢を好み、貧しい状態を嫌がる。そのようであると亂である。不仁であることを嫌がる、その程度が甚だしければ亂れる。不仁とは誰かに対しての不仁。甚だしすぎるとは中庸、一方によらず程度をおさめることからはずれること、さて、皆様はどうですか、と高井君。貧しきことをにくむとは、自分がですか他人のことですか、と鄭さん。自分が貧しいの方です。乱がむつかしい。不仁とは他人に対する、里仁篇（里仁篇6））にありましたねそれを書きますので、と高井君。貧しいは他人をも含むのではないか。乱とは国の乱れを含むもので、陽貨のごとき下克上のことを言っているのでは、と上田さん。地獄へ落ちる方法を知って、それから遠ざかればよいという話がある、不仁である者の害を自分自身に加えさせないようにする。不仁者の害を受けない。不仁を憎む事を否定していないが、甚だしいと損なう、里仁篇と関連づけて考えた、と高井君。この句で思い出すのは子路。乱がむつかしい。自分を乱すが国まで乱す。不仁を憎むが甚だしいと自分を損ない、周りも乱す。弟子の前で言ったとなると個人に重きがある、と鄭さん。紂王、不仁を行った王。下の句は、国を治める人はこういうことをする、ということでは、と高津君。子路は勇の対象だが・・・仁人には勇気がある、勇気だけで仁がないと乱暴、仁があっても勇がなければ優柔不断という。孟子の言葉だ、と張さん。張さんは陽明学者、陽明学は孟子の言葉に重きを置く、と鄭さん。ならば、「殀寿（ようじゅ）貳（たが）わず、身を修めて以て之れを俟（ま）つは、命を立つる所以（ゆえん）なり（「孟子」の盡心章）」と安澤さん。安澤、高井、上田は立命館大学でした。
周公、よく出てきますね。夢に周公を見るとかですね。才能の美徳があっても、驕り且つ吝、自分の内に秘めて見せないと、觀られたものではない、と高井君。吝とは、と鄭さん。吝は一般的にはケチケチする。自分の才を見せない、と高井君。ケチケチでは美徳とは合わない。吝は反対にしすぎ、吝は謙虚のイメージはない。どういう意味、と鄭さん。仁者のように、人徳を持った人であっても、驕りたかぶっていると・・・人徳の美を驕りたかぶることなく、出し惜しみしないようにすべき・・・ですかね、と高井君。単に、驕りたかぶるとすべてが帳消になるという意味？と川那辺さん。周公は才能の人。周公の人材任用、安定した周公の政権の成果を利用して、貴族の政権者に話している、周公であっても傲慢とケチであれば失う、と張さん。周公の才と美があると思っているが、周公が自分をなげうって成王をたてて尽くしたが、政権を狙っていると疑われ遠ざけられることすらあった、その苦労も知らずに、周公のごとき才と美とうぬぼれているようでは、見ちゃおれません、と上田さん。もし、政治家だったら誰に言っていたのだろうか、と鄭さん。台湾総督かな、と張さん。
久方の鄭さん張さん、いざ、白木屋へ。台風4号にて来たる張さんなればと、台風をものともせず一杯。一夜あければ、太陽が顔を覗かせている。偏西風に頭を叩かれ、和歌山沖を東海に向けて漂流。7月21日は午後2時から読書会、5時から壮行会。
2007年7月21日 泰伯 12～15
先生がおっしゃった。三年學んで、実際三年か、何年も長い間學んでかもしれないが。朱子は、穀に至らざる、穀は俸禄のこと、至zhìは志zhìの間違いではないかとする。三年學んで役職を考えない人はそうはいない、と言っている。古注では鄭玄も穀を俸禄とみているが、何晏、論語集解では善とみている。これは詩経にも用例がある。三年學んで善き所に至らない人は得られない。三年學べば、そこそこの所へゆける、と成田君。穀者と者が入っておれば、はっきりするが・・・不易得也もあまり使わない表現、人であるのか物であるのか・・・と鄭さん。三年というが孔子は15歳から30歳まで学んで立つ、60歳で耳順がうとか一生学び続けている・・・と高津君。学ぶ目的は何か？勉強することか、仕事につくことを思わない人はない。政府に入ることを目指している。だけど仕事につくことを思わない人は本当にえらいということ、と張さん。言葉が足りない。そのまま読めば、三年勉強して仕事ができない、それ以上やっても成果があがらない、という感じの文章。注釈をみていると、顔回のような人は得るのはむつかしいとなる、と鄭さん。孔子の弟子の多くは政府の仕事をしてゆくこと、他方には顔回、閔子騫、原憲のように政府に入りたくない人、両派があった。子路や子貢などは仕事をする人達、と張さん。朱子の場合は、人のために勉強する、自分のために勉強する、と分けている。朱子の読み方はなんとなくちがう・・・と鄭さん。朱子の解釈では顔回のような方が子路や子貢より、と考えているが、ぼくはどっちでもよい。自分の道を実践するのが良いこと、どっちが良いというものではない、と成田君。現代における学ぶ目的、現代人はあまり考えていない。学ぶ目的は何ですか？私の場合は、自分の志のために学んでいる、と張さん。ぼくの感じでは、三年勉強して俸給をもらえない人はそういない。給料のために勉強するなら三年でいい、と成田君。職のために学ぶのか、自分を向上させるのか・・・どっちからいっても最後は一緒、とりあえず、最初の目的のところで、と考えるべき、と安澤さん。実際は、鄭さんみたいな人のこと、と張さん。一経で3年、5経で15年。昼に耕し、夜に勉強する。頭じゃなくて、身体で覚える、孔子は15年かかったという。3年で一つが完成する、と鄭さん。三年学んで穀に至る、至は心がそっちに向く。三年学んでも俸禄に心が向かわない、と高井君。論語の中では、至をそういう風には使っていない、と鄭さん。丸尾さんに大学院までいって勉強するってすごいですねと言われたが、進む人と進まない人とどっちがいいというものではない。タイプがちがう。褒めるところは褒め、けなす所はけなす。それが心の支えとなっている。弟子はどう見たのか、と成田君。
篤くは、熱心に、信じては古を信じて、学問を好む。死を守るとは、命をかけて、道を善く修める。朱子は篤く信じるだけで、学問を修めねば、とんでもないことをしてしまう。命をかけるのはすばらしいが、道を修めることをしなければ、とんでもないことになる、と言っている。危ない邦には立ち寄らない、亂れた邦に家臣としてゆくことはない。さっさと去る。見°はxiànで現われる。見るはjiàn。天下に道が行われていれば世に出てお上のために働く、道が行われていなくば、山にひっこんで静かに暮す。貧と富、賤と貴が対、財産と地位を表す。邦に道が行われているのに、貧しく賤しいのは恥かしいことである。邦に道が行われていないのに、富みて身分が高いのは恥かしい、と成田君。篤く信じては副詞動詞、他は動詞名詞、信を篤くしてと読める、と高井君。読めますが、学を好むとの関係はどうなります、と成田君。あまり変わることはなく、信を篤くして古の学を好む、と高井君。これは子路のことでは、どうですか上田さん、と鄭さん。う～ん、子路ですか。守死という言い方、死をまっとうする。孔子一行は危邦にも乱邦にも入っており、言う事が矛盾している。晩年の言葉でしょう。殺される危険をくぐってますから、死の危険の中で、道を善くするという思いが錬られていったのでしょうか、と上田さん。二つ並んでいるときには何が言いたいのか、重さがどこにあるのか、道が無いときに隠れ、道が無いときに富、貴はいけない、に重点がある。史記に弟子が不満を持ち、子路や子貢が相手に合わせて仕官すべきとするが、顔回の言葉で国に道が無ければ隠れるという風なものがあった。道がないときにどうしたらよいかを示したもの。言いたいのは後ろの方、と鄭さん。その二つに優劣はない、差を感じない、と高井君。今の世は道がないですよね。ぼくは、富んでないから恥じず、と安澤さん。前章と一緒に読めば、孔子の言う対象は弟子。学んでから仕事に行く。だからその言葉は弟子に言ったもの。ある弟子は危邦に、ある弟子は乱邦に行くかもしれない、それらの弟子に向かって言っている、と張さん。不義にして富み且つ貴きは我においては浮雲の如しとも言ってますね、と高井君。台湾でもそうですが、と張さん。張さんは国立大学で給料をもらってますから、と鄭さん。陳政権で無茶をしてます。政府の上の人が財産を増やすのは問題があります、と張さん。張さんの扇子に画された文字を読む安澤さん、遺芳永存とあり。
そのしかるべき地位に無ければ計画する事をしない。きれいな対、～だったら～という言い方、と成田君。明治時代の釈を成田君に読んでもらう鄭さん。下として上のことを批判すべからず・・・下々のものがお上のことをとやかく言うな。安澤さんが、田舎には、ご政道を云々すべからず、とありましたと合いの手をいれる。これはそういう風に利用されましたが、意味が違ってますよね、と成田君。これも孔子は言う事とやることが違う。その地位にないのに色々文句をつける。どう理解したものかと思案。これは、ある質問に対して、自分はその地位にないからと断り文句にしたのかな、と上田さん。そうじゃなくて、位に値しない者からぐじゃぐじゃ言われないように、自分を高めておけということでは、それなら矛盾しない、と川那辺さん。いや、矛盾しているが、どういう場面で誰に言ったかで違う。禮に関してであれば孔子は専門家であり、矛盾しないが、と鄭さん。歴史的には、魯の国で季氏は大夫の階級であった。季氏は魯の国では君子の仕事は出来ないのに、とってかわって君子の仕事をするようになった、それを言っている、と張さん。現代の台湾でみると、李登輝が陳政権を批判しているようなもの、と張さん。道が同じでないなら共に語るな、道が異なる国の政治に介入すべきではない、ともある、と鄭さん。弟子に向かっての言葉で、その位にないのに、政治の事にでしゃばるな、例えば冉有とかですね。だけど、張さんの季氏説がいいですね、と成田君。一般的な教訓としては、そういうことだが、どういう場面でいわれたものか、分からない、と上田さん。君子思不出其位（易経）、中庸にも似た言葉がある。君子は自分の専門をしっかりとせよ。知らない事は聞くように、ということだ、と鄭さん。自分には自分の役割がある。社長には社長の役割がある、職分倫理を守ること、と張さん。臣は臣、父は父、子は子、その役割がある、と鄭さん。武士の職分倫理、士農工商における役割をきちんとすること、と張さん。
師摯、師は音楽の先生、大師。摯は名前。この人は微子篇9）にも出てくる。有名な楽団の団長、指揮者。關雎の音楽をいいものに高めたため、關雎の別名となっている。師摯の始は關雎のはじまりのこと。關雎の亂の亂は終りのこと。洋洋は大きく広がっていること。耳のなかに充満してくる。哉は～だなあ。關雎の曲を褒めている、と成田君。中村先生！どんなイメージですか、洋は水に関係があります。この間の演奏会の曲は水の動きにかかわっていました。琵琶湖の水の動きとか、私と張さんは分かりませんが川那辺さんはわかってらしたようで、と鄭さん。川那辺さんは耳順うですね、と成田君。当時の音楽（關雎）については分からないが、歌詞は残っている。男性と女性が二羽の水鳥、仲睦ましい様子を歌う。男女の情感を歌っている。孔子は一貫して褒めている。關雎は樂しみて淫せず、哀しみて傷らず（八佾20）、と成田君。演奏した音楽そのものだけか？歌詞も含まれるのか？と鄭さん。よければ繰り返して唱わせたともあった、と高津君。孔子は古い楽曲を整理したとき、自分で楽器を奏して、その曲の心を理解しようとした。孔子は音楽を重要視して、音楽が正しくなれば、禮も正しくなるとみていた、と張さん。始めにやわらかなもの、クライマックスには身体が高揚してきて、気持ちが満ち満ちて、漂うような流れがあり、それが調和をして最後のクライマックスを迎える、と川那辺さん。音楽も話すことと似ていて、言葉と文法が入ってきて一つになる・・・音楽も一つの形になっているような・・・ことわり（道理）を使って自然だったらそういうものを表現する事になると思いますが、自身では、やればやるほど色々あって・・・・この間は分かりやすいものを出したのですが。音楽的に快いものであったら良いという訳でもなく、テキストが良いものだったら良いという訳でもなく、逆の方向に表現されることもありまして、と中村さん。作曲は初めから終りに向かってしてゆくものですか、と成田君。建築と同じで、色々の要素、影響しあうところを考えてやります。前からやることもありますが、それは時間がおしている時。部分部分からやることもあります。モーツアルトは最初から最後まですでに（頭の中で）出来上がっておりそれを書く、これはすごくエネルギーのいることで、30歳代でそれを使い果たしてしまっています、と中村さん。ぼくの場合は、真ん中の対句がポイントです。真ん中ができて導入とまとめの部分を作る、書では書く時間と見る時間が一致しているが音楽ではどうですか、と成田君。音楽はそうではない、と中村さん。しかし、モーツアルト以前ハイドンの頃は学団員がその日の譜をつくりながら演奏するという状態でかなり一致している時代があったという。その中でよかったものの譜を残すということで100曲くらい作曲するということが可能であったが、これを劇的に変えたのはベートーベンで最初から残すべく一人で作曲するのであるから、できるのは10分の1くらいに減った。ブラームスに至ると、その半分にまで減り、一致のしようがなくなったらしい。この句のことはよくわからない。それは分からないままにしておくほうがいい、と鄭さん。亂を使うのは何故ですか、と高津君。朱子がいいたいのは、亂＝治で逆の意味がある。全体を治める部分とみている。諸説があるが、音楽の性質とのかかわりがむつかしい、と成田君。亂の源は、ぐちゃぐちゃのもの、亂れている状態、それを整理するから治まる、と成田君、張さん。後に出る亂臣は乱れた臣ではなく、世を正しく治める臣のこと、と成田君。乱の格式？段があって小節数が異なり、元の形を認識しながら、形の中に入れるカプリチオ、ラプソディーのようなもの・・・闊達なエネルギーを一つの型の中に入れるのですが、成田さんの書にあった、真実の言葉が美しくない、という言葉に似ている、と中村さん。元の形がないと乱れることがないとは面白いですね、と高津君。モーツアルトは素晴しいのですが、音楽の文法に、ほとんど、ひとつとして従っていません。詩でいうと対になっていない、五七五になっていないのに素晴しいという風なものです、と中村さん。人においてもそうですか、と鄭さん。孔子は自分で弾き、弾くと作る人の気持ちが判った。何故それが分かるのか？人間は体験しないと分からないのに何故分かるのか、と張さん。中国の伝統は温故知新。破るは破るが伝統的なところは変わらない。破るところがうまかった、と鄭さん。論語を学べば孔子の心が分かる。それが分かれば、人々の心を理解する事ができるかもしれない、と張さん。孔子は孔子。自分は自分。自分なりにどう受け継ぐか。変わってゆく世界にどう適応するか。孔子を祭りあげるのではなく、置かれた環境の中でどう生かすかが重要。話し合っているうちに交わりがあり、考えながら、気がつくこともある。あたりまえのところが、そうでなくなる。高津君が乱ということを言ってくれて、ここまで話が展開してきた。自画自賛かな、と鄭さん。お互い出し合って、いい意味での私、と高津君。自分でさえ自分が理解できないことがある。お互い交流している、交流しているときに・・・色々な解釈がある・・・自分の意識で解釈する、お互い交流できれば理解しやすくなる。交流することは大切、と張さん。モーツアルトの話も鄭さんの話も根は一緒。人間として自分を信じる。愛のない人間は無い。自分を愛し、人々に愛情をそそぐ、が底にあり、自分の意見を出す事で人を理解しようとする。常識を打ち破る所からはじまる、と川那辺さん。モーツアルトがはずすということには、幼児から基礎が出来上がっているということがあります。違う解決法を考え付く、結果そのような形となった、ということで単なる思い付きというものではありません、と中村さん。孔子の一をもって之を貫くにつながることばですね、と高津君。バッハの演奏で1955年グレングールドというピアニストの演奏がでて特別視された。バッハの演奏ではそれまでにない演奏のスタイルで、一躍有名となった。グルダという人も独特。ジャズに走ったのでダメと言われた人。裏で楽譜を入手した。彼は小さいころから基礎をやっており、奇抜なことをするというのではなく、やっていくうえで、その道が開けてきたもの。いつの時代でもそうせざるを得ないエネルギーがあった、と高井君。道を究めれば、それが通じる。最初から変な事をしようとしたものは、エネルギーが長くは続かない、と鄭さん。
本日のスペシャル-1は成田君の書、軸物。行書での李白？杜甫？の詩、篆書での老子の言葉、草書での会稽の辞。本日のスペシャル-２は高井君のピアノ。裏で入手した楽譜の曲でしたかね？これはそれぞれの心に写すしかありますまい。5時半過ぎから若杉で席を移動し移動しての交流会となりました。日頃は尽くせない韓台日の交流となりました。これも孔先生のおかげ。では、まず、先発の成田君、お元気で。
交流会番外篇：孔子の音楽は美を尽くし善を尽くす、更に、神人和合が行き着く先。グレゴリア聖歌になりますか？そうともいえますが、フォーレのレクイエムでしょうか。フォーレとは？ドビッシーやラベルの先生です。じゃ顔回はドビッシーですか？いいえ、ドビッシーは才能が豊かすぎて。じゃあ、ドビッシーは昼寝の宰我ですかね、顔回はどうなりますか？フランクじゃないでしょうか、バイオリンソナタがいいですよ。フランクが顔回・・・こんなことでもなければお聞きできないお話しでした。
2007年7月28日 泰伯 16～19
本日は鄭さん、張さんは京都大学での学会、「東亜經典與文化」研究計畫に参加でお休み。日本でいうところのCOEプログラム。2006年からの新たなプログラムで鄭さんもこの前台湾で発表された会でもある。東アジアを見渡した周到な骨格が組まれ、相応しい人材を取り込む台湾大学人文社会高等研究院の意欲的なプログラム。
今日は、高井君、丸尾さん、川那辺さん、上田さんのクァルテット。まずは丸尾さん中心に学而第一の中国語音読から。丸尾さん、7月中に学而第一の中国語音読の公約達成か。本日はネイティブが居ませんので最終判定は次回に持ち越し。猪か鹿か焼肉か？
先生がおっしゃった。狂にして、狂は狂信的、熱狂的、一つの事にこだわること。直は、まっすぐ、実直なこと、狂であるが、直でない。侗は、無知で幼稚なこと。愿は謹厚、律儀なこと、侗であるが愿でない。悾は、朱子が無能と言っている、悾でありながら信のないもの、私は、これを知らず、とはこのような人は知らない、そのような人はどうしようもない、となる。如何でしょうか、と高井君。悾がどうして無能になるのか、と上田さん。朱子はそういってますね、と高井君。無能であって信がないとはどういうことですか、誰に向かっていっているのですか、と上田さん。対話であるが、誰か特定の個人という印象はありませんね、と高井君。そう思いますが、弟子のなかにもいたのですかね、と上田さん。狂ってどういうことですか、と川那辺さん。限度をこえてつきすすむ、ですかね、と高井君。スケールが大きく求める、前回、音楽の話でモーツアルトが常に常識を破っていた、あるいは鄭さんの古典の話でもそうだったのですが、基礎がしっかりあって、それでも形式を破ってゆく、思いつきでやっても長続きはしないと言っておられたでしょう、その部分に近い。基礎がしっかりしたものでないとダメって感じ。悾はわかりにくい、どういうこと、と川那辺さん。狂は孔門では結構好まれた言葉で、憑かれたように狂おしく求めること、悾は素朴なこととありますが・・・と上田さん。私も素朴という注をみていますが、物もいわずボーッとして、それで信がないってどんな人？と川那辺さん。禮が大事といいたのでは？恭にして禮無くば則ち勞す。愼にして禮無くば則ち葸す。勇にして禮無くば則ち亂す。直にして禮無くば則ち絞す、に通じる、同じ事の違う言い方じゃない、と丸尾さん。直、愿、信は重要で、先進の弟子にはそれがあった、狂であり直であるといえば、子路を想像しますが・・・侗であり愿である、悾で信ありとは誰になりますかね。浮かんできません・・・、と上田さん。ひっかかる人がないのは、だんだん悪くなる、ふくれあがった弟子の中に、へんなのがいることを嘆いている？と川那辺さん。侗であり愿は孟武伯がどうですか、「孟武伯孝を問ふ。子の曰はく、父母唯其の疾、これを憂ふ。（以為篇６）」悾は辞書をみれば、誠懇的様子、まことでねんごろな様子ということです、と高井君。その方が分かり易い、人当たりはいいが、根っこのところができていない、と川那辺さん。今の政治家って感じ、と丸尾さん。明日は選挙ですね（参議院選挙7/29投票日）、と高井君。
学問は常に目標に届かないとしてがんばる、目標が失われることを恐れる。学問に行き着くところはない。という短いものですが、どうですか、と高井君。恐れるのは目標を失うことですか、と上田さん。之の解釈ですが之が学となれば、学問を失うで意味が通らず、学ぶ目標というのが妥当なところ、と高井君。学ぶ目標とは？と上田さん。目標というよりは学ぶ意欲じゃない、と丸尾さん。学ぶことは終りの無い事、着いたと思うと、その向こうがある。朝に道を聞けば夕べに死すも可なりというのがありましたが、三年学んで穀に至らざればというのに近いかな。もうこれでいいや、と思うことがある。仕事に就かずに、まだ学ぶのがいいってみたいな、ひたすら追ってゆく人は、もうひとつ深く学問に入ってゆく、その上が朝に云々・・・・になるのでは、と川那辺さん。学が強調され、学び方として不及、猶、恐れるのは失之、之は学んだこと、つまり、学ぶだけでは駄目で、実践して、学而篇でいえば習う、何度も何度もやってみて身につける、そうすれば、失うことはない、と思ったのだが、と上田さん。学ぶことを続けているのが前提です、と高井君。学問の姿を見失う、モチベーションをあげていなければ、これからするべきことの姿が見えなくなる。好きで結婚してもその想いが冷えてくるとダメでしょう。学ぶ心、篤い想いを失ってはいけない、と丸尾さん。それってすごく分かり易い、と川那辺さん。
最初に、與ですが、與°はyù で預かる。yǔ は～と。yúは語尾の助詞。意味がたくさんありますが、この三つくらいで大概大丈夫です。荻生徂徠は中国語で読めたのですか、誰から学んだのですか？と上田さん。誰からかは分かりませんが、そういうことが可能な立場にあったのでしょう、通辞などですかね？日本では、荻生徂徠以前は書き下し文で読んでいたのですが、徂徠は中国語で前から（返り点など使わず）読めと言い出しました。巍は広大なさま、巍巍乎ですから、なんと広々としていることか、有は“たもつ”と訓じられ、舜禹の天下を有（たも）つことは。ここの解釈は二つあり、一つは、自分自身が直接かかわらない、もうひとつは、その任にいて楽しむことはない、朱子の説ですが、言其不以位為樂、普通はそんな位につくと喜んで、その位を楽しむのですが、そうでないということです。ぼくは、素直に読んで、直接かかわらないの方がいいと思います。舜には後に出てきますが五人の家臣、賢臣、禹･稷･契･皐陶･伯益、がおり、実際の政治はそれらの賢臣が行いました、と高井君。いい気にならなかったということ、と丸尾さん。舜の人間離れした孝行（書経舜）、洪水を治めた禹の粉骨砕身の力行ぶり、鯀（禹の父）の洪水対策（書経堯）、その徳により位を禅譲され、賢臣がこぞって仕えた経緯を説明する高井君、上田さん。周は殷を討つ正当性を主張するために、天、天に対する民という概念を持ち出し、民の安寧を図ることが天命で、殷がそれを怠ったために周に天命がおりたとした。しかし、これは両刃の剣で、周がそれを怠れば他に天命が下る、革命の思想となり、清朝までこの考えが続く事になった。元来文字は殷の亀甲文字、占いから発生しており、語り言葉ではなく書き言葉。周は受命のことを銅器に銘して子孫に残した。書経の原型であるが、それも周の力が衰えると、偽作が横行するようになってしまったし、柵に書かれるようになった書経の内容も東晋時代（3世紀）に偽作された部分ある。それはそれとして、舜に対するような儒者の考えを皮肉る人々もいた。宋人と切り株と兎の話し。切り株にぶつかって死んだ兎をみて、仕事をやめて、ずっと兎が切り株にぶつかるのを待った。この宋人は国中の笑いものになった、と高井君。よくわかりました、政権を奪い取るのではなく、そのような行いをすれば自然にそうなるということでしょう、と丸尾さん。
何と大いなることか、堯の君子たること。書経のはじめ、天というもののみが最も偉大。堯のみがそれに則って行うことが出来た。蕩蕩乎は広遠なこと、民が名づけることも出来ない。すごすぎて、存在を名付けること、意識することが出来ない。広大であることよ。成功は功を成す、民を治める業を成し遂げる。煥乎は光輝くこと。文章は朱子は禮樂法度のことと言う。堯のことをたたえた、と高井君。分かり易い。べた褒め、けなすところがない。素晴しい手腕、形容することがないほど。特に疑問をもつことはない、孔子はよくほめたたえるの、と川那辺さん。古代の聖王や周初の人、周公などについてはそうですね、と高井君。堯の前にも多くの王の伝説（神話の世界）があり、堯の時には世が乱れており、堯は門番のような役人以下の質素な暮らしをし、飢えている人、寒さにふるえる人、罪を犯すものがあれば、わたしのせいだと考える帝で、太陽のように慈愛を注いだ（書経堯）とされる、と上田さん。おもしろくないね。違う人が孔子をつかって褒めてるみたい、と丸尾さん。
翌29日夜の宝ヶ池での花火もこの4人、花火のあとは朧月で夜が更けました。帰宅すれば自民党大敗のニュース一色。
2007年8月4日 泰伯 20～21
丸尾さん、先ほど聞いてこられた坂田新先生の論語の吟詠に感動。台湾の先生方を尋ね、読み方を研鑽されたとのこと。日本の歌会の読み上げのようなそうな。では、本日は、丸尾さん、ネイティブの前で、学而第一を中国語音読。読めているが西洋人が日本語をしゃべっている感じ。ひとつひとつの発音はきれい、他の人とくらべると分かるだろう。例えば高津君。次、高井君、発音は丸尾さんの方がきれいだが、漢文になっている。次、上田さん、発音は同様、慣れて意味が分かって読んでいる。では、沈さん。ネイティブなんだから、内容をよく復習しておいてください。次は張さん、お願いします。北京の人には発音が違うと指摘されますから、台湾弁だからね。坂田新先生が詠まれるのと似ている、と丸尾さん。中国でも吟じるように歌うことがある、と沈さん。では鄭さん。鄭さん、おもむろに韓国語での吟詠。それが聞きたかった、と安澤さん。ネイティブの皆さん、丸尾さんの音読を認定、漢文を見ては読めないが、書き下し文を見ながらだと読み易いという丸尾風は独特。秋には猪が楽しみです。
舜、には臣五人がいて、五人とともに天下を治めた。禹（土木）･契（文教）･棄（農事）･皐陶（法律、裁判）･伯益（山沢、狩猟）の五人。皐陶を"こうとう"と読むものもあるが"こうよう"。この五人が活躍した。武王には、亂臣十人がいた。周公旦･召公奭･太公望・畢公･榮公･大顚･閎夭･散宜生･南宮适・太似（邑姜）の十人。亂は反訓、正反対の意味を持つ、一つで二つの意味がある。亂を治めること。丸尾さん、普通、亂臣といえば、びっくりするじゃない？反訓ってよくあるの？どうして区別するの？あまり多くないので、覚えて慣れれば・・・と続ける高井君。孔子は、才難あるものは得がたいもの、そんなものだな。堯の治めた国が唐、舜の治めた国が虞、このときには盛んだった。婦人が一人中にいるので実際は九人。文王が天下の三分の二を保ちながら、殷に仕えていた。周の德は、至德、頂点に達していた。至德、至善。亂臣十人の女性について問題がある。太似は文王の奥さん、武王の母が自分の臣下はおかしいので、奥さんの邑姜ともされる。「武王曰予有亂臣十人」は書経に出てくるが、前回いいましたように、偽作の部分にこの言葉が入っているのが問題。史記では書経の引用とするが、これには注意を要する、と高井君。女の人が出てきている、特別な何かがあったの？と丸尾さん。よく分からないが、文王が殷の糾王に捕われていたとき助けたのが周公旦･召公奭･太公望・畢公･榮公･大顚･閎夭･散宜生･南宮适・太似（邑姜）の十人。、その時太似も文王を助けたのかな、後で調べますが（太似は嫉妬しない徳で知られる。文王の偏らざる寵愛に感動して、太似も全ての側室も怨む事はなかったとされる。）、対象となっているのは殷を倒した武王ではなく、力を持ちながら殷に仕えた文王の徳、と上田さん。下克上はよくない。武王はそれをした。大義名分がいるので、他の諸侯を納得させるために、天をかかげて、天という思想、天命があり、殷はそれに背いたために討ったとした。これは両刃の剣で、周も背けば滅ばされる、そういうことで天をもってくる。天とは架空のものであり、天とは何かといえば、民意、天と民という概念となる、と高井君。民主主義ってことですか？と丸尾さん。革命のことです、天命の源は人民、人民が苦しいと革命を起こすことが出来る。孟子以後の思想。孔子は天を尊敬するが革命の思想はない。民主主義のごとき選挙権はなく、民本主義とされると張さん。革命を起こすのは農民でしょう、と安澤さん。孔子は武王に同意せず文王を賞賛する、文王を至徳とする、と張さん。音楽の話で、武王の音楽は美を尽くすが善を尽くさない、美はあっても善はない、基本的に至徳について言っている。この文の構造は普通と違う。舜に始まり武王にきて、孔子の言葉、文王が天下の2/3を保ちながら殷に仕えたことを誉めている。武王が登場し亂臣十人の一人が女性であったという話が、落ち着かない、と鄭さん。至徳とは誰ですか？・・・・文王と泰伯です！孔子は革命で権力を持つ人を誉めていない、批判している、と張さん。堯、舜、武王の間に文王を入れている。武王と才難を入れることが何を意味しているのか？目の前で行われている政治に対する戒めがある、と鄭さん。禅譲の理想を言っている、と張さん。晩年の言葉ですか、それとももっと若い頃のことですか、と丸尾さん。晩年です。諸侯に仕官をするため諸国を放浪している間に、孔子は自分が政権について政治を行うことが出来ないことを悟り、徳のある人がいてこそ、才能あるひとが集まってくる、自分の才能を生かしてくれるとやってくる、孔子の晩年は自分の徳を高めることに向かっていた。それが実現されるのは漢の時代をまたねばならなかった、と上田さん。水戸藩では、論語を教えるとき、革命、禅譲は共にダメ、万世一系の天皇でなくてはならなかった、と張さん。幕末の政治情勢で、薩長の革命は駄目、さりとて幕府が政権を禅譲というのも妙なもの、天皇にあったものを天皇にかえすでしょうから、論語の教え方もそういうレベルでは難しいですね、と上田さん。最後に、「唐虞之際於斯爲盛」の於斯は①これより②ここにおいての二つの読み方があり、①の場合、唐虞のときより周が素晴しい。②の場合、唐虞の方が周より素晴しい。斯は唐虞の時のこと、と高井君。書き下し文ではそうなるかもしれないが、漢文では、斯は武王の時のこと。唐虞の時のことが、武王の時にも盛んになった、の義。ただ一人女性がはいっていることがよく分からない、と鄭さん。
閒然とする無し、は何も非難する事がないこと。閒は非常に悪く言うこと。先進第十一「孝哉閔子騫人不間於其父母昆弟之言」の間と同じで、隙間があって悪く言うこと。それがなく、全くいうことがないなあとなる。飮食を菲くする、手軽に、粗末にすること。孝を鬼神致すは、なくなった方、先祖の祭祀に力を入れた。衣服惡しうして、黻は膝を覆うもの、冕は冠、両方とも祭祀における服装、禮を重んじた。卑くしては、贅沢や豪華なことに力をいれないこと。溝洫は田の用水路、それらに対してお金を使った。禹は、悪くいうところはないなあ。これが、泰伯篇の最後に来ている、と高井君。閒は、隙間、悪口の入る隙間。閒然とする無し、は悪口の入る隙間が捜そうとしてもないこと。父母昆弟がいいものだよ、身内からも褒める、隙間をとるところもない。溝洫にお金を投じたとおっしゃったが、お金じゃなく、禹は洪水を治すために八年間、家の前も通り過ぎて帰る暇がないくらい、すべてをかけて仕事した。洪水の事が大事。食べ物、衣服、住居のことは放り出して、民のためにすべてを尽くした、と鄭さん。菲は"にら"のことでしょう、と安澤さん。どこにでもある、いやしい、粗末な食べ物を食べた。高さは立派さを表すもの。高さのある車をそのまま入れるには門や、屋根や柱が高くなければならない、一般人は茅葺きで、また茅葺きが揃っていないものなどに住む、と鄭さん。茅葺の場合屋根だけで地面に掘っ立てたようなもの、と丸尾さん。ここでは、閒然とする無し、堯では巍巍乎、蕩蕩乎、舜では臣下のことで至徳、そこになんらかのランク付けがあるのですか？と川那辺さん。孔子はどうだかわからないが弟子はつけている。孔子は口では触れていないが、禹には違うものを感じていた。禹から政権が自分の子にゆく。それで落ち着きがないところがある、と鄭さん。前の章と一緒に読めば、禹とは閒然とする無しと誉めて、武王を批判していることになる、と張さん。あからさまではなく、間接的にということですね、と丸尾さん。上下関係の乱れる政治の現状、実状、上下関係のずれをどう立て直すかが大きな仕事、春秋を書くこともそういうこと。弟子たちもその意図が理解でき、先生の意向を汲んで配置している、と鄭さん。
民の立場で考えるのが孔子。今のイラクなら、苦しんでいるイラク国民、またアメリカ兵士の立場で考える、と沈さん。平和的な手段で解決する事を望む、と張さん。朝鮮通信使を日本に送ったのも日本人が武力で紛争解決しないことを望んでのこと。来るたびに確認する事は、朱子学がどの程度取り入れられているかをみること、と鄭さん。面接して論語の理解度を探っていた？と安澤さん。というより、文化使節的で、人々に披露する、日本にいい文化を示さねばならない。双方共にかなりの費用がかかる。戦争の起こらないことを望む、それを広めるための朱子学、論語、と鄭さん。論語が入ってくる前には、日本人には言葉が少なく、仁、義、孝・・・とかそんなものがなくて、ランク付けが行われ、複雑な思いを勉強するようになったと聞きますが、と丸尾さん。伝わってきたのは早い段階だろうが、実際読まれたのはいつ頃からですか、と安澤さん。それより何より日本で何故2000年も読み続けられてきたの、と丸尾さん。入ってきたのは早い、天皇家が欲しがる時代、百済から王仁が「論語」と「千字文」を、と鄭さん。405年、と安澤さん。五経は論語より前、8～9世紀には孝経を読まねばならなかった、と張さん。本格的に吸収するのは遣隋使から、中国のものを入れてきて100年たって知識人層がでる。遣唐使の時代にはそれらの人々が活動を始める。法律を学び、制度を学び、8世紀の末には論語と孝経を知識人に読ませた。都での官吏の子、地方の役人の子、それが平安朝のはじめ、と鄭さん。読み下し文はいつ頃から、と丸尾さん。平仮名ができてからですね、その前は万葉仮名、と鄭さん。韓国も一緒でしょう、と沈さん。平安朝では遣唐使が廃止されてから知識人層が減り、僧がそこを埋めた。韓国では新羅から高句麗に移り、知識人層のレベルが非常に高くなった。韓国は中国に接近し、日本は中国から離れてゆく。江戸時代になりまた日本に入った、と鄭さん。江戸時代には五経、論語、孝経が知識人の読み物となる。その知識人が一般人に論語を教えた。石田梅岩はストーリーを入れて庶民に教えた、孝経は論語より分かり易く、物語にしてゆけば、子供にも分かる、と張さん。面白いから二千年も続いている。孔子と弟子の内輪の話が、どうして国を挙げて読まれてきたのか？と丸尾さん。西欧にもあるでしょう、プラトンの対話などが、と安澤さん。論語が日本語で読まれるようになったのは比較的に早い。朝鮮でも、モンゴルやチベットなどでもあった、と鄭さん。チベットは違うでしょう、と張さん。不思議とおもわへん。孔子や弟子の言っていたことが大事なテキストとなることが、と丸尾さん。張さん、鄭さんが参加しておられる「東亜經典與文化」研究計畫」がまさに東アジアにおける論語の読まれ方を研究しておられる。我々が日韓台中また、女性を含めてこういう読み方をしていることも、一つの事例かもしれない、と上田さん。社会的にどういう意味をもっているのか、こういうことをお互いに実現してゆけば、お互いに刺激になる、と鄭さん。決断を迫られるときには論語を参考にしています、と安澤さん。何故。古来から読むのか、は良い質問。中国は、中国文化大革命で孔子を批判しました、と張さん。昔の王朝を守ろうとする、それでは進歩、革新はない、そのために西欧に遅れて負けることになった。その原因とされた、と鄭さん。封建制度、階級制度の遺物、共産党は皆一緒、孔子には身分制度がある。今の中国は進歩している。でも何故、海外に出る人（華僑）が孔子を読んでいるのだろう。国家の力で儒学を発展させようとするのにピッタリ。孔子は負けていない！と張さん。孔子は、生産力と生産関係についてのべていないからね、とは沈さんの言。
音にも魅力がある、中味の良し悪しもあるが、詠む音を聞いていて気持ちがよい、と丸尾さん。音楽のなかの規則・・・従っておもしろい・・・別に従わなくてもおもしろものがある。そういう風なのが積み重なり独特な表現を獲得することがある。今までネイティブを聞いたことのない韓国語のものがよく判った。沈さんの読んでくださったものが意外とよくわかった。これはもしかすると、沢山のものに反応してゆく・・・西欧のものでもバッハやベートーベンのことを沢山聞いて、わずかなところにこれが反応し、自分の中に入ってくるリズム。そのリズムが感じやすくなってきていると中村さん。本能的直感が・・・と丸尾さん。本能でないところ。始めから美しいものは怪しい。何でひとが好むのか・・・生命力が呼び起こされるようなもの、と中村さん。音からくるのか？千字文はおもしろい、三字経もおもしろい。老子道徳経も元来、音で伝えるために作っている。老子は読みやすいが、中味が分かり憎い。李白と杜甫、日本では、李白が良いとされるが、中国では杜甫の方が読まれている。それは中味があるから、知識人がもつべき中味があるから、と鄭さん。音から入って感じたこと。日本語はダラダラつながっている。心kokoro 新arataなど同じ母音が続いており、口なども最後のoやaを想定して形を作って待っている。中国語はひとつひとつが立っていて、其諸異乎人之求之與qí zhū yì hū rén zhī qiú
zhī yú同じ母音の影響を受けずに連なっており口がついてゆかない。日本人は和を以って貴しとなす、仲良くしようとする力が働いている。中国語はひとつひとつがはっきりとしているでしょう、と丸尾さん。ラテン世界とゲルマン世界は一つの和音でも違う体系。ゲルマン世界は秩序立つ階層がはっきりしている。全体が一つの秩序をもってはっきりしている。反対からみれば、ラテン世界がそうかもしれないが、和音の秩序となるとゲルマン。子音がはっきりと立っている。文の構造では、最後に決めるのがゲルマン、フランス語では中国語とおなじく早い時点で決める。音楽の中にそういうことが現われる。人がそのどこを好むか、地域によって違う、と中村さん。学而第一の詠み方も北京語ではリズムが入らない。書いたものを読むようなもので、沈さんの詠みは言葉が立っていて判りやすい。張さんの詠みは、門虫南語（みんなんご、南方語）でリズムがある、と話がはずみました。恒例の寄り道談義。
2007年8月11日 子罕 1～5
先生は、罕（まれ）に利についてお話になった。これについて語るときは、命と仁と與（とも）に語り、利だけを語ることはなかった。普通は利と命と仁を並列にして読み、三つについて語ったとされる。前者では、利がメインで命と仁は與（とも）にとなる。弟子の残した記録のなかでは、利と命より仁が多いが、普段の話の中では、仁について語られることが多いわけではなかった、とする説もある。A與B與Cという文法構造も珍しい、と高井君。子罕言利與命、與仁と切り、利と命についてはまれだが、仁についてはよく語った、称えていた、とする解釈がありますが、と高津君。ぼくは、ひとつは内容がどうか、ひとつは文法がどうかで攻める。内容としては利と命・・・利は言わず、仁はよく語り、命が入っているのがややこしいなあ・・・命というのは何？と安澤さん。自分の力が及ばないこと、天命かな、と高井君。それぞれの比重がどうなっているのか？分からないなあ・・・天命は言っても仕方ない。利については言わない。利で動くなでしょ。仁は大事にしなさいと言う。文の構造からは、そうとはいえない。編集ミスとか、そういう予期しないことがあったとは考えられません？総知識を動員するとそれくらいしかない、と安澤さん。孔子は働きに対する報酬はあたりまえ、貪ることはダメ、それなりのものはいただかれた。邦に道有れば、貧且つ賤は恥なり。邦に道無くば、富且つ貴は恥なり（泰伯13）でしょう、（正当なものについてはいいけれど）、意図しなくて、大金が入るというようなことがあるとしたとき、必要以上に執着心持つかな・・・わからない、と川那辺さん。これは弟子が孔子を評したものでしょう、孔子をそういう風にみている、と高津君。罕という字を使っている何故ですか、と上田さん。普通なら、稀か希のことですよね、と高井君。罕は詩経からとったおごそかな、古典的言い回しで、利と命と仁をおっしゃるときには、姿勢をただし、何か、あらたまった気持ちになられたのでは、と上田さん。短くて分かりにくいものは、一般的に理解しておくのでいい。あまり口にだして言わない。それより、それは学んで尽くすことが大事。利と命と仁のそれぞれの性質が異なり、その性質ごとに考える方がいい。弟子は聞きたくてもあまり聞けなかったことだけに、記録に残した。利を求める事は良くない。仁は得がたいもの。命は自分ではどうしようもないもの、と鄭さん。あまりそのことを言えば、重さがなくなってしまう、と高津君。孟子は王に向かって、王は利でものを見すぎる、仁も義もあるとたしなめている、まあこのへんで次にゆきましょう、と鄭さん。
達巷黨の人が言う。達巷は地名、朱熹の時代には場所が分からなくなっていたのですが、黨は五百家の村。偉大なるか孔子。博く學びて、一言において名付けることが出来ない、これが特色などとはいいようもない。このことを耳にした孔子は、ユーモラスに「何かやろうかな？それじゃ、何をとろうか？御を執ろうかな、射を執ろうかな?御を執ろう」とおっしゃった。御、射は周禮、大司官にあり、士大夫の修めるべき六芸（禮、樂、御、射、數、書）。朱熹は御をいやしいものとしているが、孔子はわざと下のものをとった、と高井君。御は今でいえば、車、孔子はドライブが好きだった？と安澤さん。孔子が自分自身の天命を語っているよう。御は身分の高い人の馬夫、どこに向かうかを知っていて方向を示す、これは人を導くという意味が隠されている。射は武力、反乱を起して行うことを暗示している、と高津君。経営コンサルタント、社長になるのでなく舵取りを行う事、ぼくの特技、アドバイザー、ドライバーかな、と安澤さん。この言葉が若いときに言われたのか、晩年なのか？晩年だったら、前に出てゆく人を教育して導くことが自分の仕事、と川那辺さん。ニュアンスをどうとるか？達巷黨の人はどんなレベルの人か？田舎の人で、政治をしている人ではない。大哉はものすごく褒めている言葉。それに対して「俺は何をしようか？」と弟子に向かって言っている。まともに褒めてくれておれば、こんな応えをするだろうか？自分のことを分かって褒めてくれているかとなると、そうではない、と鄭さん。苦笑いしている感じ、と川那辺さん。一つに名付けることが出来ないは素晴しさをいう、と高井君。大哉は褒め言葉だけれど、後の、大宰の言う時のことばと一緒に読めば、違いがわかる、と鄭さん。用いられなかったので芸とある。その意味では、孔子は当時何かをして名を残したかった。全く名を残さなくてもよいとは思っていなかった、と高津君。一杯学んでいるのに秀でたものがない、孔子といえばこれというものがない、と安澤さん。普通、田舎の人がどう孔子を思っていたのか、普通そんな言い方はしない。とても立派にみえない、と川那辺さん。達巷黨とは字義的には儀礼につうじた村で、いわば、同業者。それが孔子を皮肉っていっている。そのことが噂となったとみえて、孔子はどうせまともに言ってわかる相手とは思わず、御か射で名を成せというなら御とでも言っておくれと冗談話にしてしまった、と上田さん。弟子たちもその気持ちは十分分かっていた、と鄭さん。
麻冕は麻布を織って作った冠。麻を使った赤黒い冠。それが禮であるが。今は絹で作って、純は絹のことで、質素にしている。儉であり悪いこととは思えず、私もそれに從う。堂の下から拜するのが禮である。今、堂に上って拜するのは禮にかなっていない。泰は驕り高ぶったことで、皆がそうしているが、私は從わない。臨機応変に対応した。禮に対する孔子の対応、と高井君。従っていいことと悪いことを分ける境界線は何ですか？と鄭さん。身分かな・・・そこはよく考えてはいなくて、と高井君。ポイントは後ろにある。前は節約のこと。全部そうなってしまったが、禮の持つ意味の方向がそこに示されている。君と臣のあり方、秩序が乱れている、と鄭さん。君使臣以禮臣事君以忠（八佾19）とあった。堂の上であっても、忠の心があればいいのではないか、そこまでこだわることはないのでは・・・と高津君。政治の事について何をすべきかというときに、「名を正す」というのがある。禮に則って行う。当時はほとんどが無視していた・・・大夫が無視して乱れてしまっていることを厳しく言っている、と鄭さん。この時代麻が絹に変わった、流行でしょう、でも最後にこれだけは譲れない。日本のお葬式事情で思うことがある。昔は家でやるのがあたりまえ、このごろはセレマとかそういうところでしょう。行って香典を受け取らないというのはがっかりする。お返しをしなくていいから楽でしょうのが売り言葉にすらなっている。葬式ってそんなものではないでしょう？昔は過去帳があり、何時亡くなられ、誰からどうなったという記録が残された。香典を取らないことにより、お返しにあがることも、過去帳もなくなり、途絶えてしまう。楽なほうに流れてゆくと、それは、（大事なことを）大変傷つけることになってゆく、と川那辺さん。韓国では葬式において気持ちを表すことは禮。結婚式や葬式は気持ちを大事にする。ここでは、身分秩序を犯すことを言っている、と鄭さん。堂の上で拝むというのは、諸侯が祖霊を祀ることで、祖霊の子孫であればいいが、極端にいえば私が天皇家の祖霊を祭ればとんでもない逸脱でしょう、今の時代では寺社観光参拝でずかずか入り込んで堂内で拜するのですが、孔子はそれは筋が違っており、私は堂の下で拜するというようなもの、と上田さん。当時一番大切なことは禮。政治に参加する資格を持ち、理想を実現しようと、孔子に禮を学んで出世しようとしていたのだが、孔子からすれば、許せないことをやっているからたまらない、と鄭さん。式典を行う事で政治に参加している。イベントを仕切るノーハウ、そこに孔子の生きる意味があるのでしょう？その秩序が乱れている、と安澤さん。乱れていることに慣れているが許せない、と鄭さん。だから名を成すところがない、と高津君。材料のことは流行でいいが、根本的なことはダメ、と厳君。上田さん源平じゃなくて厳平です。時代の流れに従わない、流されないように自分を持つのが知識人の志となった、と鄭さん。悲しい事に弟子は時代の流れに従った、と高津君。北宋では、治政でなく、自分を修めて国を治める、内聖外王、内容がないと時代に流される。朱子学では自分を修めることが大切となる、と鄭さん。
弟子の記した言葉。四つのものには無縁。私意がなかった。必ずこうでなくてはならないということではない。ひとつに固執されることがない。我は私に近い。朱熹は私意、期必、執滞、私己。事を行う前には、私意、期必の心構え。事を行うには、執滞、私己でなくてはならないが、実際にはこれの悪循環となる、と高井君。鄭さん、これは60歳以上の孔子に対する評価ですか、と高津君。60歳以降か分からないが、先生が模範的として語られたこと。よく聞いたこととして孫弟子が記した。すでに聖人化されていたが、と鄭さん。褒めていますね、と安澤さん。朱子のように関連して循環しているかは疑問、と鄭さん。思ったまま主観的。私意と私己は。意は主観的ではないか、と厳君。こういうことを経営者はよくいう、日常の行いとしてこれを学ぶ。コンサルタントとして助言する。仕事のネタを仕入れる、もう仕事でやっているようなものです、と安澤さん。意なくとは述べて作らず、ありのままの姿を求めることで、都合のいいように解釈するようにしないことではないか、と上田さん。述べて作らずじゃないでしょう。憶測でよく当る、子貢ですが。そういうことはしない。無可無不可（微子篇8）、こだわりがない、これ（四つを絶つ）を乗り越えてゆくイメージ、と鄭さん。
孔子が匡において畏れる。文王が亡くなっているが、ここに文がないであろうか。文は禮樂制度と朱熹が言っています。文王が作ったものが「ここ」とは「私」、私にないだろうか？もし天がこの文を滅ぼすならば、後死の者とは自分のこと。この文に與（あづか）ることが出来なかっただろう。天が未だこの文を滅ぼさざる、文王の禮樂を滅ぼしていないのであるから、匡の人が私をどうできよう。天という強い言葉をもってきている。天生德於予（述而篇22）と同じような言い方。衛から陳にゆく途中に匡があります、と高井君。解釈はそれでいいと思う。要は孔子の気持ち。弟子がその言葉を記した。天命、道を受け継ぐ使命感、一番苦しいときに強い気持ちを発した心は何だったのか？と鄭さん。史記を読んだときに出てきましたが、それに関連させると面白いとおもいます、と高井君。孟子に五百年説というのがある。道は五百年に一度聖人が出てつなぐ、自分が継ぐ者という意識、自分でないと誰が継ぐのかという気持ち、孔子も順調に行っておれば、そういう気持ちを持たなかった、と鄭さん。生きるか死ぬかの場面。天生德於予桓魋其如予何（述而篇22）という簡潔なものと比べると、まるで科白みたいで劇画タッチ、コロッと人が変ったようなのはどういうこと、と川那辺さん。面白い指摘。確かに書き方が異なる。以前はテーマ別だが、ここではテーマが何か？バラバラ。次の郷黨篇は禮のみまとめている。残ったものが子罕篇に入っている。言葉が落ち着かない。文体からすると先進篇からは、40～50年違う感じがする。子罕篇で文体のことをいわれたことはないが・・・と鄭さん。孔子に対する評価が述而篇に似ている。子罕篇は分かり易い、と高津君。説明っぽく書いている、と鄭さん。伝えることを意識している、と高井君。気持ちが入りやすいのが子罕篇、二三子の手・・・とか、うまい科白、と高津君。論理的に説明しているので文体が違う、どっちがインパクトがありますか？と鄭さん。ぼくは前の方が分かり易い、と安澤さん。こっちの方のインパクトが強い、と高井君。荒野で一行が立ち往生した場面（序説3）などで話合ったことがありますが、放浪の旅では家族連れの一行であり、武器を持った一団に囲まれるというのは危険な状態であり、如何にそれから遁れるかが目前の問題でしょう。そんなときに"天命が我にありどうすることができよう"などと指揮官が言い出したらどうしますか？あとになってそういう気持ちで交渉したというならまだしも、その場面で、こんな交渉の仕方をされれば"ぞっ"としますよ。こういう交渉は結局は子路や子貢や弟子の方がうまくやったのでしょう。荒野の時も、子貢が楚へ走り、王を説得して援軍をつれてきて事なきを得てますから、と上田さん。この場面の現実では、孔子は魯では法務大臣、国際的に認められた政治家として、ある程度の見込みがあって動いていた。あてがなく動いているのではなく、仕官の誘いがあってのことで、自分の存在が分かっているという自信があったし、天命を受け継ぐという自負があったから言えたこと。それが一行を安堵させるものであった、と鄭さん。
ここから話は脱線ムード。学生時代に御所で夜、靴を袋に入れて抱えてつききろうとした安澤さん、70年代学生運動の頃、上田さん分かりますよね、とは安澤さん。パトカーが来て降りた警官に瞬時に周りを囲まれ袋を臨検され、そりゃ怖かった。警官でこれ、武器を持ったものに囲まれるのはそりゃ怖いだろうね。オーム真理教なんかも、もともとは心の問題を解決するものだけれど、武装をしてテロまで起こす。教祖に天命だから大丈夫といわれてもね。間違って、孔子が殺されてしまっていたら論語はないでしょう。ところで厳平君は10年くらい前かな、最初、会議場でアルバイトをしていた時、上田さんと知り合った。上田さんは、古典を中国語で読みたいということで、鄭さんは中国語読みを磨く為に、二人の論語音読の先生をしたのが厳平君。教育学が専門で、古典は、実は、関係ないのだけれど。7月29日の花火のチケットを買いに会議場に来て上田さんと再会。その花火の写真を配る上田さん。奥さんの作品。張さん、鄭さんの京都大学での学会でも厳君と一緒、厳君の先生がその学会の京大側の責任者。世の中狭いのです。姿を消していた鄭さん、ビールを片手に帰還。高井君は今日で最後の塾頭。高津君はバイクで帰るので、缶を上田さんの横へ。高津君は子罕篇でえらく乗ってきてる様子。やおら鄭さん。盆休みの18日の次、25日は川那辺さんがやってください。ええっ、訓読だけですね。ここしばらくは、いろんな人にやってもらうということで、と鄭さん。張さんが旅行から帰ってくるので、と鄭さん、草々に帰宅。先週は張さん最後だからと、川那辺さん、中村さんも一緒に白木屋に沈没。本日は厳君登場、高井君最後で、またまた白木屋。
2007年8月25日 子罕 6～9
安澤さん、リクルーターの面目躍如。吉明君（狭西省外事弁公司、京都府国際課勤務）、中村佳永子さん（精神科医、京都府勤務）、二人を紹介。本日は、川那辺さんが塾頭。
長いのでまず前半部分から。大宰が子貢に尋ねた。孔子は聖人なのですか。どうして多能なのですか。子貢がこたえました、固より、いうまでもなく、天が孔子は聖人であることをゆるされた。又、多能であった。孔子が、これを聞いておっしゃった。大宰は私を知ってはおられないのでしょう。若いときに賤しく、色々仕事をして多能になった。君子は多能であろうか、そうではない。牢は誰？弟子ですか？（そうです。琴牢）牢がおっしゃるには、先生は、私は政治の世界に用いられるチャンスがなく多能になった、と字面だけでは、そういう解釈。用いられなかったから、やけで言っているのではなく、後悔していないという感じがした。大宰の聞き方に関しては、ちょっと失礼かなというイメージ。ここでいう多能は才能のあってというより、苦労してやったことが、能力になったというもの。子貢が「固天縱之將聖又多能也」と言葉巧みにおっしゃっているようだが、確かに説得力があるが、つらい下積み生活があり、本領を発揮する場がなく、なかったから何事にも対処できた、ということでしょうか、高津さんどうですか？と川那辺さん。大宰が大変失礼な言い方をしているということですが、よく知っていると解釈する人もある。大宰は孔子が多能、博学であることを知っているが、聖人なのかなという疑問を持っていたのかもしれない、私のことを知っているかと聞くのは、と高津君。よくご存知ということですか？と川那辺さん。孔子は政治に参加したかった。君子はこまかいことはしない、いやしいことをしない、政治に参加しておれば多能ではおれない。だけど孔子は多能、売り言葉に買い言葉みたいになって・・・と高津君。多ならんか、は多能？何が多いのですか?人数ですか？と川那辺さん。先に多能なのかと聞いており、多能で間違いない。君子が多能であろうかと言っている。孔子が若いとき多能であった、多能であることを褒めている。子貢もそれを目指しているのであり、物を知ろうとしている。それを聞いた孔子は、君子は多能を求めているのでなく、仁徳を持って自分の場所に居ればよい。大宰や子貢にそれはちがうと言っている。川那辺さんの解釈が正しい。我を知っているという解釈が多いが、我を知るか？は我を知らないである、と鄭さん。君子は政治に集中すべきということですか？と高津君。吾不試故藝はどう解釈すべきですか、と川那辺さん。弟子が他のところで聞いた、その時の言葉。樊遲が農作業のことについて尋ねると、農業の事は農業をする人に聞いてくれと孔子は言っている。子貢に君子は器ならずと言っている、と鄭さん。多藝、藝があっては素人的にはマイナス評価ですね、と安澤さん。違う。必ずそうするべきではないとのこと。大宰は孔子のそれだけをみている、子貢もそうである、と鄭さん。上田さんどうですか、と川那辺さん。孔子は大宰が自分のことを知ってくれているという風に思っていたので、川那辺さんの解釈を聞いて、あれ、そうなんだと思い直している。大宰は呉の総理職の喜否（ひ）で、子貢とは二度会っており、二度目の交渉で子貢の手腕を高く評価し、その師である孔子も高く評価していたと思っている。聖人であるが何故多能なのかという問いに子貢の対応は、舜や堯のような王位につく聖人ではないが、いづれは天が聖人にするもの、いろいろ苦労をして聖人になる人という対応をした。そういう風にみていたので・・・と上田さん。大宰は喜否と定まった訳でなく、違えば歴史的背景も異なる。そういうことを除いて解釈する必要がある。その解釈では我を知るか？以下が意味をなさない。孔子が何でもできる、そういうことを肯定的にみていることに、またそれに乗った子貢に違うと言っている、と鄭さん。
私は何でも知っているのか。そんなことではない。学のない人が私に聞くことがあった。空空如たりは、悾悾如たり。まごころを尽くす意味。空、むなしいでは解釈が全く変わる。学のない人が私に質問をした。私はまごころで教えた、持っている知識のすべてをもって教えた、というのが孔子のあり方と思っているのですが、宮崎先生のものでは、「私が知恵者だとは、見当はずれでしょう。私の知恵袋はいつも空っぽです。それに聞き方の下手な者がやってこられるのは一層困る。私の袋から何も出てくるものがないのだ、二つの隅を叩いて振って見せるばかりだ」と書かれている。空空如たりを、むなしいととると、こんなにも中身が違った解釈となる。しかし、孔子は互郷の人を受け入れており、学のない人にこたえることが空しいというのとは違うような気がする。むしろ一生懸命教えるとみるべき、高津さんどうですか？と川那辺さん。本の解釈では、孔子が農民の質問、何も知っていないのであるが、聞こうとする事の始めと終りを聞いて応えた、と解釈する人もある、と高津君。叩くは質問することで、学のない人の質問の両端、始めと終りを、何故そう思うかと尋ね、疑問がなくなるまで聞いてゆく、知が知識を教えるという方向のみならず、自分の疑問が解消されるということを言っているのでは、と上田さん。聞いてあげるということですか。色々な人が色々な答えをする。このことはよくわからないなあ、と安澤さん。孔子の弟子は、士の身分で基本的なことは出来ている。そうじゃない人でも、誠実に聞くのであれば、私はというところ。空空如は全く知らないこと、と鄭さん。聞きたい人が、何が聞きたいのかも分かっていない、と高津君。中国現代訳では、全然違う。私は何も答えなかったとしている、と安澤さん。舜執其両端而用其中於民、両端は極端な両端。それを取り去って真ん中をとる。どこにも偏らないこと。偏らない判断ができること、その答えをだすことに尽くすこと、今日はじめての二人はどうですか？と鄭さん。よくわからない、と吉君。話をよく聞いて整理して答えを出す、材料を提供するは、カウンセリングに通じるかな、と中村（佳）さん。史記、孔子世家で孔子は色々な事を聞かれると、その度に正確に答えるとある。大宰の話と結びつくが、司馬遷の解釈では、道理で知るべき、物知りとされる次元がちがう、と言っている、と鄭さん。
鳳鳥は鳳凰、フェニックスみたいなもの。周の時代、岐山に現われた。河圖は黄河に現われた龍の背中の毛が八卦に似ていた。それを写しとったもの。余談ではあるけれどそれとよく対比される言葉で洛書というものがあり、これは、禹の時、洪水をおさめた人。そのときに神亀が現われたそうで、亀の背の紋様を写し取ったもののことをいうらしい。それを出さないので私にはどうしよう。鳳鳥、河圖はめでたい兆し、それが出ないということは、孔子には、絶望的イメージがある。しかしこの人には、そういう風に思ってもらっては困るので、こうは言うものの、私がなんとかしてやろうという意志があってほしい。だから、これは高尚な言葉の遊び、（以下要約）弟子の中で、絶望した姿を伝えるものという人達がいるが、井上靖氏は「孔子」において弟子の口を借りて、師は本気で吾已矣乎などとおっしゃることはない。それでは弟子達が困惑してしまうことになる。こころの底では、人間の将来を明るくみておられ、人間は自分達の種族を絶滅させるほど愚かでない、自分の生きている間に平和を基調とした明るい世界を実現させる事ができないのは返す返すも残念であるが、死後には必ずそういう世界がやってくる、と語らせていらっしゃる。先生はそうみておられたのでは、高津さんどうですか？と川那辺さん。そこまで考える・・・気持ちが伝わってくる。そういわれるとそうかな・・・川那辺さんの意向に感動します、と高津君。ぼくは文字通りで。I have no future.の意味と思う、と安澤さん。晩年の孔子は、顔回、子路、孔鯉（息子）に先立たれ、天は我を滅ぼせりという状況、春秋や易に注釈をつけることに証を求めておられることからしても、絶望的な気持ちを抱いておられたことと思う。鳳鳥や圖を天が出すということでもないかぎり、事態は好転することはないと踏んでおられた。ただ、孔子は周あるいは堯舜などの理想を後世に残さねばならないという強い気持ちを抱いておられ絶望のみではなかった、だけど、川那辺さん力が入ってますね、と上田さん。逆の方向、弟子からみれば、鳳鳥や圖もでない、何もない、どうしますか。良い世の中なら何もすることはない。西洋と東洋ではテキストの演奏の仕方が異なります。忠実なのは西洋、すべてを書き込みます、東洋では口伝え、一番の所は楽譜の上では伝わらない。先生は世の中はダメになった、ぼくの時代ではどうしようもない。さあ、どうしますか？ということになる。ここでは、その東洋のテキストとでもいうべきか・・・と中村（典）さん。中村さんの言っておられることが理解できているかわかりませんが、もしこの通り進み、鳳鳥や圖も出なくて、自分の力ではうまく運ぶ事が出来ないなら・・・と高津君。テキストを超えているところが必ずあります、一つのテキストに相対するもの、音楽では、コントラプンクト(Kontrapunkt、counterpoint、点対点)というものがあり、書いていない、向こう側の方に何か意味がある。絶望の対角線上に何か？では絶望しない方法は？（実は絶望の絶望その底まで落とされてしまうと、全く違った回転をするかのように、全く新しい世界が見えてくる。）と中村（典）さん。老子を聞くようです。この言葉は後に時代に合わなく、恵まれなかったときに引く言葉。麒麟を捕まえたという話もある。弟子がこの句を論語に入れたときは、すでに孔子は聖人化されていた。上田さんがおっしゃるように、自分が引き継ぐという潜在意識がある。川那辺さんがおっしゃるあきらめない意志もある。夢に周公を見ずというのがありましたが、自分が継ぐ、天命を自覚するというものがある、と鄭さん。リーダーシップのある人が出て、それを孔子が補佐できれば、と高津君。孟子は天下を取れる立場にはなかったが、孔子の場合、人材が集まっており、知名度はあり、天下がとれたでしょう、と鄭さん。
孔子は、齊衰者、喪に服する形の一種、冕をつけている人、目の見えない人。年下であっても起立して、必ず小走りにすばやくゆく。瞽者は樂師とされる。私事ではあるが、葬式の道を通るときは、一礼して小走りして、親指を隠して過ぎる、親の死に目に会えなくなるからということ。それを小さい時から叩き込まれ、今でもそうする。自転車を降りて端を歩く、そういう風にしていたので、小走りというのはよくわかる、高津さんどうですか？と川那辺さん。先生の行動の記録。孔子は普通の人と思って普通の行いをする。相手がどうであれ作法に従う、と高津君。これは孔子の人柄、考え方をあらわしている。礼儀を尽くした。注釈書をみれば、葬儀の専門家。詩経を習ったので師として敬意を払った、世襲の音楽家は瞽者となった、と安澤さん。齊衰者は喪に服している形、冕衣裳者は礼服の形、瞽者は見えない、それぞれが普通じゃない思い、こころ構えがあり、そのことを気遣い、いわゆる恕、相手をおもいやる心をもって接しられた、と上田さん。瞽者には音楽家が多いのですが、目が見える音楽家との違いはどうですか、中村先生、と川那辺さん。それは分らないが、何事にも鋭い感覚があり、よい意味でのおそれがあります。一人そういう人がいると、その人がどう反応するかが大切になる。自ずとそこが中心点になる。話をしているとき、言葉のやり取りの仕方が違う。視覚が遮断されているせいか、１０倍テンションが違う、と中村（典）さん。クリスも目がよくないので、耳、音に対して厳しい。聡明は、耳と目の良いこと。何故この句がここに入っているのか？郷党篇にも同じものがある。ここでは目の見えない人と音楽家を結びつける必要はない。一番目は喪、次は身分の高い人、目が見えないのは哀れみの対象。その前では、それに合わせて礼儀を行う、と鄭さん。前回言ったことですが、子罕篇は他の篇とちがっている。劇画タッチなところもある。こういうものを見るとほっとする。一息つける、と川那辺さん。（初登場のお二人に）こんな風にして、疑問を抱いて考えてみるのがこの読書会です、と鄭さん。今日は川那辺さんの熱い思いが満ち満ちた教室。来週も川那辺さんにお願いします、その次は高津君となりました。
2007年9月1日 子罕 10～13
鄭さん、童嶺君（南京大学文学部、京都大学留学）と現る。来日5ヶ月目、残り半年で日本語に磨きをかけねばなりません。本日も、川那辺さんが塾頭。
顏淵がためいきをついて言いました。之は孔子のこと、孔子を仰げばいよいよ高い。これを鑽(き)れば、先生の話をきりつけみても、硬くて歯がたたない。前にいらっしゃるとかと思えば、不意に後ろにおられる。循循然としては、秩序だって、穏やか、ゆったり。本当に正しく人に勉強を教えておられる。我を博(ひろ)げる、才能、知識を広げるために、文、古の教養をもって教える。約は束ねるとかいう意味があるのですが、実践に対して、禮をもって教える。罷（や）めようと思っても、やめられない。学問の魅力にとりつかれてしまい、やめることができない。出世する才能は今中止した。先生は非常に高い所にいらっしゃることがわかる。いくら近づこうとしても、及ぶ事ができない。顏淵の人柄の分かる文。先生の事を本当に賞賛しているが、美辞麗句はなく、簡単で深い言葉で言う。仰げばいよいよ高い、切り裂けばいよいよ硬いは距離感、質量感がある。弟子との距離感がうまく描かれている。前と後ろ、緊張感、前は、先生の指導の仕方で、手取り足取りの状況。それが終わると後ろから見守っている。非常に美しい形、尊敬している、才能を評価している、その距離感がすばらしい。高津さんどうですか？と川那辺さん。川那辺さんにずっとやってもらえないかな・・・前と後の川那辺さんの考え方にビックリしました。最初導き、後は見守る・・・すごく良かった。ついてゆこうとするが、肩をならべようとしてもできない。顏淵にしても、追いつけない。それは分かるが、距離感というものはつかめなかった、と高津君。孔子を評価するものであるが、顔回の評価は、（努力を）いっぱいしてます、でなくて、勉強すればするほど偉大、実際の教育現場のことをやっている、ところで、之は孔子のことですか？と鄭さん。孔子そのものでなくて、孔子が教えようとしていること、人のことではない、と川那辺さん。孔子というと切るとか言えない、漠然という言い方、先生の道という風なもの、ここは四字、四字となっている。前後は確かに分かりにくい。人で解釈するとおかしくなる。別の方向で考える。目の前でつかめそう、分かるような気がするが分からない。到達しがたい表現、と鄭さん。上田さんどうですか？と川那辺さん。前は先生が話をされているのを顔回が聞いている状態、後ろは、いつの間にか聞き役に回っておられ、しゃべらされているイメージ。罷という字は獣に網をかけて疲れるのをまって捕えること、先生でも疲れることがあろうとその機に追いつこうとするが捕えることができないイメージ、と上田さん。それは千年も前の字源の話で、当時はすでに"やめる"という意味で固定化されており、疲れたものを捕えるということにはならない、と鄭さん。安澤さんどうですか？と川那辺さん。教え方がうまいので、落ちこぼれずやってこられた。・・・自分はやめようとするが、やめることができない・・・教え方が非常によいのかな、と安澤さん。童さん、どうですか？と川那辺さん。鑽は中国では二つの意味があります。zuàn鑽は名詞で“たがね”zuān鑽鑽は動詞、ここでは動詞の方。博文と約禮の関係は並列関係ですか、前後関係ですか？と童君。どっちが優先するというものでなく並列です、と川那辺さん。程子は並列でないと言っています。博文のあとで約禮です、と童君。前後をつけるというのは考えられない、どちらもなくてはならないもので、どうして前後をつけなければなりませんか？と川那辺さん。文とは詩経や書経といったものを学ぶことで自分を広げるのですが、孔子は学ぶだけではだめで、日常の政治活動などで実践できなければダメであり、それを禮に則り血肉化してゆくことを求めておられ、川那辺さんのおっしゃるように並列かと思います、と上田さん。導く過程を言っている。文により博める過程があり、禮により約する過程がある、と鄭さん。約するとは、と安澤さん。前に上田さんが束ねるとおっしゃってた（雍也篇25）。禮を実践するときのあり方でしょう、と川那辺さん。宋の時代に何故順番をつけたかというと、「大学」で自己修養と天下を治める、その過程で順番が必要とされたことによる、と鄭さん。文と禮、このふたつには順番がある。文は今より意味がずっと広く、文で心が広くなり、禮で約束する、と童君。四つの過程、学ぶ、広める、約する、尽くす、と鄭さん。
先生の病気が悪くなった。病(へい)たり、とは重篤の状態。子路は、自分の門人を臣下として仕えさせた。病閒とは、病状がましになってきたこと。久しいかな、は嘘をつくことが長いこと。臣下が居ないのに臣下が居るようにする。私は、誰をだますのか？天をだますのか？天はお見通しのこと。臣下の手により葬られるよりは、弟子の手で葬られたい。大きな葬式でなくても、道路で死ぬことはないだろう。顔回とは対照的な子路の行動。顔回は美しく、素直な気持ち。子路は、個人的には好きで、単純で純粋、孔子にも華々しい時代があり、それを汲んで盛大にしようとするやさしい気持ちがあり、孔子は嘘を怒っているようであるが、心ではありがたく思っている。信頼している弟子によって葬られたい。道路で野たれ死ぬことはないでしょう、高津さんどうですか？と川那辺さん。私事ですが、お婆さんにいい棺おけを作ったのだが、最後を華々しく葬ろうとするのは、今でもそうじゃないですか。子路は、孔子の弟子ということを越えて、家族のようなつもりで行った。二人の間の関係を越えたやり方。本心から最後を飾ってあげたい気持ち。愛情がある感じ、と高津君。中村（佳）さんどうですか、と川那辺さん。孔子が弟子を愛していた気がする。子路の気持ちも分かるし、両方が思いやっているのはないでしょうか、と中村（佳）さん。臣というのは?家来か？と安澤さん。孔子は大臣をしており、その時は臣が就いていた、しかし、晩年は仕官しておらず、弟子は居るが家臣はいなかった、と上田さん。臣が居ないというのはどういう生活をしていたのか、と安澤さん。それはこれまでに何度かそういう話をしたでしょう、いやこのことについては始めてのこととやりとりがあって後。病気の時に子路が祈るというのがあった（述而篇34）。子路がそういう時には表に立って行う。顔回の葬儀のとき顔回の父が、棺おけのいいものを作りたくて、孔子に車を売ってくれと頼むのであるが、孔子は、大夫の身分であり出仕するのに車が必要であり、断っている。華やかなことを拒否しているが、孔子は身分を越えた禮を行ってはならないとする。その行動が思い起こされた。先生が、この場合に拒否されたのは、禮を行う事の大切さを知らしめたもの、と鄭さん。我を約するに禮を以ってするか、と高津君。子路が間違っている事をはっきりさせた、と鄭さん。子路が孔子を担いでやろうとするが上手くゆかない。孔子が周公のように王を担ごうとするが上手くゆかない、似たもの同士、と高津君。この時、子路は衛で出公に仕えていた。孔子は名を正すべしとかいって、出公を立てることに同意しなかった（述而篇14）。子路のこの仕官に孔子は危うさを覚えており、そのことが原因で子路は死ぬのであるが、二人の間に行き違いが起こっていた、と上田さん。子路の年齢からしても、政治に参加するラストチャンスでそうしたかった、と鄭さん。子路が孔子をほって置いて政治参加したいと思っていたとは思えない、と高津君。それは若いときのこと。この頃では、孔子は教育に専念しており、子路はそういうことにはついてゆけなかった。子路はこの病気についても、万一のことがあれば孔子を継ぐものとして指揮をとっている。孔子亡き後を考えて葬儀を執り行うくらいの気持ちはある、と鄭さん。それでは子路のイメージが崩れてしまう、と高津君。童さんはどうですか、と川那辺さん。孔子が子路を責める理由は、子路が天をだますこと。ここで天は宗教的なものでなく哲学の概念、と童君。
子貢が言いました。ここに美しい玉があるでしょう。匵は箱、箱に納めて隠しておきましょうか、良い値段をつけて売りましょうか、と言うと、先生は売ろう、売ろう。私は買い手を待っているとおっしゃった。顔回、子路、子貢の特徴がよく出ている。子貢らしい、高く売りつけるじゃなくて、価値を認める人のところで高く売ること。子貢は言葉がたくみ。よく怒られているが、上手な言い方で頭がいい。怒られることが分かった上でしているのではないか？ここはきれいにできている、高津さんどうですか？と川那辺さん。待ってました！子貢は聞き方が上手い、先生の気持ちを引き出すのがうまい。ここから先は上田さんにしゃべってもらったほうがいい、といいつつも、子路は気持ちを知って行うが怒られる、孔子の気持ちをストレートに適えようとする。病が厳しいときは最後を飾ってやろう、本来通りに政治に参加できていれば立派な葬儀になるはず。先生の気持ちを理解して、禮を越えた事をしている。このへんで上田さんどうですか？と高津君。二人のおっしゃる通りと思います。子貢は投機に長けた人で、金儲けも上手い。その子貢以外には、このような問いかけはできないでしょう。孔子も思わず、売ろうと本音をだす、と上田さん。禅問答の答えを引き出している感じ、あきらめているかどうかを上手く聞き出した。伯夷、叔齊が怨むかと聞いて、先生は衛君を助けない（述而篇14）と答えを出したり、孔子の気持ちがよく分かっていた。言葉がたくみで、上手い聞き方をする。陽貨が孔子を政治に参加させようとして、「その宝を抱きて国を迷わす・・・時を失う」と孔子を宝に例えるが、子貢は美玉という。政治に参加したい気持ちを引き出している。結局は、天下に道あれば出る、天下に道なくば隠れるに帰す、と鄭さん。この句が本心であった、と高津君。中国ではまずは断るのが通例、二度目もなんだか言って断る、三度目にそこまでおっしゃるなら仕方がないと受ける。断わられるともっと高い地位を用意しなければ、ということもある、と鄭さん。ぼくは中村（佳）さんを呼ぶのに10回は断られました、と安澤さん。笑うしかない、中村（佳）さん。
先生は、九夷に行きたいと思われた。九夷は九つの野蛮な国。陋を"せまい"と読ませているが卑しいこと。或る人が、どうして陋しいところへ行くのとかといいました。君子がいれば、どうして陋しいか?荒廃しているところを見て、九夷に行きたい。君子の行いによって、いい国になる。君子行くことによって、周りを感化してゆけるという自信ともとれるが、九夷に行くには川や海を渡ってゆかねばなりませんか？夷というのは？と川那辺さん。東夷、西戎、北狄、南蛮。東夷を朝鮮という説があるが、孔子の時代は福建省、山東半島、北京あたり、文明のない地へ行く、田舎町の印象にとどまっていた、と鄭さん。子路が筏を作る話（公冶長篇7）があった。世の中に絶望したときに遠い所に行くのは逃げ？新天地を求めて？私が行けば何とかしてやるという意志があるのでは、と川那辺さん。君子とは自分の事を言ってますか？と高津君。基本的には自分を含めている。孔子は個人の話から一般化して言う。君子が居るのか、居ないのかが問題。或る人に対する批判。物じゃなくて君子の存在、と鄭さん。夷狄の君有るは諸夏の亡きに如ざるなり（八佾5）というのもありましたね、と高津君。東夷、東に対してはいいイメージがある。禮記、王制には東は日の出る所、人々の性格は柔順、道は行い易く、善き王のもとでは王化され、樂舞を献じる（子罕篇13）と述べており、下克上の諸国の現状とは違うものをみておられた、と上田さん。それは逆で、禮記が書かれた頃に、孔子がそう言っていたということから好意的に作ったもの、東夷は一般人が住めるところではないと思っていた。正しい君子がいれば”まし”ですよの意。今の世界であってもアメリカでなくても、田舎でも、人間らしい生活ができる所がいいですよ、と鄭さん。その時孔子はどこに居ましたか？と安澤さん。魯でしょう、と上田さん。或る人によりますね、魯とは思いますが分かっていない、と鄭さん。童さんいかがですか？と川那辺さん。陋とは君子が居るか、居ないかのこと。筏の話ですが、孔子は東の海を越えて行きたかった。日本です、と童さん。だから童君も日本にやってきた、孔子の時代に日本というものは知られていなかったけれど、倭人とは、もとは、南方の小さい人という意味です、と鄭さん。
来週は高津君、再来週は安澤さんが塾頭。新しい人も増えましたので、来週からは中国音読と訓読を復習してもゆきます。
2007年9月8日 子罕 14～16
6時前に大雨。すでに出た人は雨にうたれ、出ぬ人は出ることあたわず。ずぶ濡れとなったのは上田さん。中から乾かすとビール。時間に間に合ったのは高津、川那辺、中村（佳）、上田の四人。学而第一から八イツ第三まで音読。成田君も高井君も中国に着いて新たなる生活に備えていることでしょう。本日の塾頭は高津君
先生がいいました。私が、衞より魯に反(かえ)って、音樂を正して、雅頌、各おのそれぞれに場所を得るようにした。魯に帰ったのは69歳でしたね。正しいとは整理したという意味がある。雅と頌をそれぞれ適切な所で使えるようにした。川那辺さんみたいに情熱的には言えませんが、淡々と言っているが自画自賛のようで・・・上田さんどうですか？と高津君。濡れをビールで乾かす上田さん、今日は記録がむつかしそう、いきなりあてられ、手が止まりました。今日は誰がどう言ったかは不明。印象記となります。各国によって雅頌の演奏に異同があり、孔子はそれを正したということであるが、本来の姿に戻すということは、音楽は社会を映す鏡であり、世の乱れを正したということかと川那辺さん。政治と音楽とは関係が深いのかと中村さん。八イツ篇をひいて、政治の乱れが八イツの乱れとなってあらわれていることを述べる高津君。雅頌というのは祖霊や神を祭るものであり、その音楽とは聞かせる対象は祖霊や神であり、参列している人ではない。孔子はそのことを大切にしている、現代でも音楽は一般リスナーを対象としているが、国風のものならそれでよいが、雅頌ともなれば、その立場にある人が祖霊や神をもてなすということ抜きには語れないものと上田さん。そこへ鄭さんが登場。高津君、塾頭席に就かなければ、その気持ちでやってもらわないと、と席移動を促す。返す刀で、何故孔子はこんなことを言ったのでしょう。文字通り見れば、音楽を正したとなれば、政治も正したということになりませんか？これは、弟子がそう聞いた事の記録。実際はどうだったんでしょうか、これは何時頃の言葉と思いますかと鄭さん。司馬遷の解釈をみてもそうだが、春秋や易なども自分が正したということであるなら、高津君のいうように、69歳で魯に帰って以降がいいのでは？川那辺さんが音楽といものが流行に流され易く、それを孔子が正すというのは、孔子はそうしたいと思っているが、世の中は現代と同じで、リスナー中心の方向に向かっており、正したことはそうだろうが実際は受け入れられなかったのでは、というのが上田さん。音楽の真髄は美を尽くすのみならず、善を尽くす。神人和合という孔子のスタンスは受け入れられますかね？
外で働くときは公卿に従う、家の中では父兄に従う。喪式をするときは一生懸命やらねばならない。酒で困らしてはならない。私にとってはなんでもない。学而篇に「弟子入りては則ち孝、出でては則ち弟（悌）」。家では孝、外では悌と言っている。お酒のところは上田さんに聞いてみましょう、と高津君。不爲酒困は孔子、私は有酒困。我々は酒を買って飲むために飲む。そういうことはしないし、いくら飲んでも乱れないといっておられるが、酒は気狂水、酔うために飲む。私にとってはなんでもないなど本当かな？酒は飲みすぎて問題となるが、乾杯というくらいで、飲めないのも問題がある、と上田さん。酒は敬をもたねばならない。祖霊や神を祭るときに用いられ、その分け前に預かる、喧嘩の仲直りにも必要、そのときに乱れてはいけない。酒がないと成立しない、分け合うときに飲めないというのは問題がある、と鄭さん。などと言っていると川那辺さん、これは葬式のときのことを言っており、その後の酒の席のことでしょう。そういう場での席のお酒は故人を悼む気持ちを持っていただく、お下がりのようなもので、場所を間違えて酒で乱れるというなことをしてはならないということではないですか？そう思いますよ、葬式の手伝い行ったときのこと、のみ過ぎないように弟子に注意している、とビール片手の上田さん、誰がそんなこと言ってます？と鄭さん。注釈にあったと思いますよ、誰の注釈？既に上田さん酩酊状態。あった！たしか、誰かの葬式の席で弟子が酒で失敗して･･････孔子がしかったとか・・・・・うん、確かにあった！どこにあったかは、覚えてない、と。
先生が川のほとりでおっしゃった。逝くのは時間と水のながれ。過ぎ去るものは、水の流れとは、夜昼とどまることなく流れてゆくこと。孔子は嘆いて佇んでいる。川のほとりで感じたのは、昔の事は過ぎ去ってゆくだけ。自分は昔のように国を立ててやりたいと思うがどうにもできない。嘆いて感じている姿。時代の流れにさからえなかった。川那辺さんどうですか？と高津君。どんな川ですか？と川那辺さん。黄河を想像してます、と高津君。黄河の水、とうとうたる水の流れ。その黄河をどんどん遡る。だんだん小さなせせらぎ、山の方へと行く・・・何があるのだろう。・・・手中におさめられない。自分が辿ってきた道。その川の流れを見ながら、過ぎ行くものを嘆くというよりむしろ、年を老いてもなおふつふつと湧き上がる孔子のエネルギーみたいなものを川の流れと重ねたような感じ。だから、ここでは水のエネルギーを感じる。と川那辺さん。川の流れはひたすらながれてゆくもので、昼夜とは時間、歴史のことでそういう区別のないこと。スタインベックという人が、男は区別のなかで生き、女は持続のなかに生きるという風なことを言っておられる。何もかも飲み込む川の流れは隠者を思わせ、隠者は孔子に時の流れに逆らって生きるなとささやきかける。しかし、孔子は鳥や獣と生きるわけでなく、人の世に生きるのが自分と、自分の道にかえる、と上田さん。水の流れ、海、不安定でこわい、と中村さん。原泉混混 不舎晝夜 盈科而後進 放乎四海 有本者如是 是之取爾 苟為無本 七八月之間 雨集 溝澮皆盈 其涸也 可立而待也 故聲聞過情 君子恥之 孟子の言葉。水源の泉はこんこんと、昼夜をおかず、穴があってもそれを埋めて流れて海に達する。本を持つものはかくのごとし。そのことを取り上げている。本が無ければ、7、8月に雨が降って、溝や?が一杯に満ちても涸れてしまう。そこに立って水がくるのを待つということになる。評判だおれであり、君子はこれを恥とする。朱子学では学問はそういうもので、やめずにやるもの。水源の泉のごとき孔子。人生無常、だから今をたのしもう。・・・・論語の中には孔子が水にまつわる話をたくさんしている。特にここの文章はどう理解をするかということで、いろいろな意見がある。孔子が本当に言いたかったことはなんだったろうか？その理解は読む人々の時代によっても随分と違いがある。自分の心で読めばいい、と鄭さん。次の文へ移ろうと気持ちがあるものの、次なる塾頭安澤さんの力を最大限に発揮していただかないといけないという周りの期待から、子曰吾未見好徳如好色者也は次回へ。予告編が長引いて9時半終了。突然の雨に打たれた上田さん、打たれた雨以上のビールに酩酊、筆よりお口が回り、そんな日もあっていいかもしれない。
2007年9月15日 子罕 17～21
私は美人を愛するほど熱烈に有徳者を愛する人をまだみたことはない、と貝塚先生は言っておられる。色は昔から色々あるが、美人でいいのですかね？ぼくの考えは、動物行動学者の日高先生じゃないが、美人に目が向くのは自然。徳を好むは学ばないとそういう方向に行かないから、そういう風な人は見た事がない。明治の民法学者の穂積重遠先生は、色を美人ととるとして、徳は徳のある人ではなく、徳そのもの、有徳者と解していない、ぼくもその方がよいと思う、と安澤さん。色はうまれつきのもの、徳は学ばないという指摘は面白い。色を好むは誰でも持っている。それほど徳を好む者は見当たらない。学ぶ者に対する言葉、と鄭さん。美人でない人の立場はどうなりますかね？今の時代風にいうなら、女の人を美人かそうでないかで判断するのは如何なものか・・・と安澤さん。この時代色を好むとは美しい女性を指す言葉として定着している。徳は徳そのものか、徳を持つ人かであるが、美人と対比しているのは徳のある人、孔子のいいたいことは何かがポイント、と鄭さん。一生懸命学ぶ情熱を持ってた人は少ない、徳の価値の分かる人が少ない・・・と安澤さん。史記を読んでいたときに、衛の国で霊公の車で出かけるところで、南子とからめて、この言葉を引いている。為政者が孔子のような権威者より女性を大事にした事を孔子が怒っていた、と鄭さん。色を好む事のない人は、徳を好むことにおいても、強烈にならない。英雄色を好むとはこのこと、と安澤さん。色は男女の交わり、徳は人と人の交わり。男女の交わりは孔子においては善き子孫を残すことを前提にしている。社会の存続もそうで、人が人を蹴落としたり、傷つけたり、殺したりするようでは成り立ち得ない、と上田さん。色即是空、あ！これは違ったかな、と安澤さん。そうじゃなく、ここは徳と色を対比している。徳ある人は君子、賢人、これは志を目指す者に対する言葉、と鄭さん。では改めて聞きますが、徳とは何ですか？と安澤さん。色と徳を対比すれば、色は表面、外面的、徳は内面的なもの。面白いものの対比、色は備わっているもの、徳はおそらく普通にしていれば身につかない、修養、修練することが必要。また、色は動物的なら、徳は別のもの。徳には鍛えるイメージ。色を否定する者ではない・・・それがなければ徳を積むこともできない、と川那辺さん。これは誰かが徳について話している時に、徳を好むとはそんなものではない、色を好むくらいに徳を好むようでなければダメだ、孔子は自分がそうだと言っている。この色を美人とすれば、安澤さんが言われたように、それでいいのかな？男女の交わりでしょう、と上田さん。そうでしょ、美人じゃなくてもいい、と安澤さん。これは女と寝るというような話ではない、これは為政者とか権力者、上に立つ者が女性を好むことについて、その時代のエリートに対して、あるいは、士あるいは大夫に向けて批判をしていること、孔子の立場に立って考えるなら、徳のある人を使うより個人的なことに走っていることを戒めたもの。色は顔色でもあり、政治家の前で侍る者、機嫌をとるものも含まれる。孔子が何故この言葉を言ったのか、何故それが残っているのか、背後関係がどうであれ、それを考えずとも8割方は読めるのが論語、だから一般人も読める、と鄭さん。魯の歴史でもそうだが、不義密通、男女の交わりの乱れが国政の乱れを招くというのが現実（時代背景：論語1）。美人を好む程度で終わらない。男女の交わりも正しくなければ生まれた子の相続をめぐって政治が乱れる。そのことで当時の人々が幻滅を感じていたということもある、と上田さん。話が尽きそうにもなく、安澤さん次に行く。
丁度山を作るようなものだ。最後にもうひと簣(もっこ)というところをやりとげないのは、やめた自分が悪いのである。丁度土地をならすようなものだ。最初にひと簣をあけるだけでも進行したのは、自分の手柄である、と貝塚先生が言っておられる、が・・・意味が分からないな？何を例えているのか？勉強の事か？政治の事か？と安澤さん。周時代の召公が王の心得として、「山を為ること九仞、功一簣に虧く」、最後の一簣を欠くなら功はならない、と戒めた言葉の一部、書経にある、それと関係させないなら計画だけして一歩も踏み出さないともとれる、と上田さん。穂積先生は、学問の事だが、一般に通用する。やるなら最後までやれ、「九仞の功、一簣を欠く」といっておられる。宮崎先生はどうですか？川那辺さん、と安澤さん。宮崎先生は、「学問にたとえれば、山の作るようなものだ。あともっこに一杯の土で出来上がるときでも、そこで止めたらその人の仕事は未完成のままだ。学問は又地面の凹みを埋めるようなものだ。もっこに一杯の土を放り込んで埋めただけでも、一歩進めば、その人一歩だけの進歩がある。」と書かれていると川那辺さん。俺止む、俺往く、自分なんだ。完成直前で止める、出発するのもない。先生、環境じゃなくて、自分自身のこと。他人、時代、環境のせいにせず、自分で発奮する。自から求めるものには手助けが出来る、と鄭さん。川那辺さんはどうですか？と上田さん。鄭さんと同じ。始まりも終わりもすべて自分の責任。一山積めば完成のところをしない。自分が悪い。それをしなければ、達成しない。平地を作るときに、でこぼこに土を埋める。自分で進み出て、最初か最後かいづれにしても自分の意志でするべきもの。そうしない者は必要ないというくらいの強い気持ちがある。穂積先生にしろ宮崎先生にしろ解釈本ばかり読むと、美しくまとまった言葉でイメージが固定してしまうので、漢字を見て自分のイメージを広げた方がいい、と川那辺さん。
私が教訓をのべているとき、しまいまでちっとも飽きずにきいているのは、顔淵だけだな、が貝塚先生、と安澤さん。弟子が先生の話を聞いて分かったような気がするのであるが、顔回はじっとそれを聞きながら先生が何を言わんとしているのか、自分にとってそれがどういうことになるのかとじっと姿勢を崩さず聞き入る、そういうことができるのは顔回しかいないなあということでは、と上田さん。次のは、顏淵のいなくなったことを言ってるんですよね。惜しいなあ。学問が日々に進歩しているのを見たが、その停滞しているのをみたことがない（貝塚先生）、とは・・・と安澤さん。優秀で次々と進んでゆく者はいる。我を博むるに文をもってするというところ、しかし、我を約するに禮を以ってする、実践して自分のものとするまで止まることがない。そこまでやるのは顔回と私くらいの者だ、と上田さん。弟子に言って、自分にも言っているのかな、と安澤さん。そこのところは、一生懸命やってきて止まる。行き詰まって悩む顔淵、それを見た事はない。今まではないが、それが見えたら何かいえただろうか、と考えた・・・鄭先生、ということはありませんか、と川那辺さん。止には「やむ」と「とどまる」の二説がある、と安澤さん。方向性を持つ動詞が使われている、づっと進む、進まない、最後までやめないこと、そういう顔回を惜しんでいる。孟子がどこまでも流れて絶えない川の流れの解釈をしたのも、止まる事がないことからきている、次も続きとして述べている、苗にして秀でない者が有り、秀でても實らない者がいる、と鄭さん。
これは、後進の弟子たちを言っている。先進の人たちとはちがって教団が大きくなり、弟子も多いし、学問で身を立てるということが出来る時代に入ってきていた。才能が有れば認められるということで、素質がいい者が来るが、そこから先がむつかしい、と上田さん。後進に例えたとあるが、それもありうるが、そういう方向ではない、と鄭さん。そこへ、二十歳過ぎればただのひと、と割って入る安澤さん。この言葉は、先の可與共學未可與適道可與適道未可與立可與立未可與權と関連し、出発は一緒であっても最後まで成し遂げるかどうかの方向。韓国では、英才教育で高校までは世界で一、二であるが、大学へ行くと落ちてしまう。何故そうなるのかが深刻な問題。大学へ入ったらよい、そこで終わる。あるいは就職の受験勉強になってしまう、と話が現代に移った鄭さん。ところでこの読書会1年半になりますが、そろそろ曲がり角。鄭さんは自分が言い出した会に誘った人達、今来ている人たちにも、来なくなった人たちにも声をかけた責任を感じて、どうしたものか悩んでおられる。韓国、中国、台湾、日本の人間が論語を通じて交流を図るが看板であるが、論語の中国音読を進めたい、論語を読まない中国人にも論語を読んでもらう、日本人でも普段読めない訓読を行う、内容の議論をする、女性の参加を歓迎する、意外に少ない日本人との交流の場をつくる、が内容。それなりに得る物があると思う人は残る。忙しい人は、ぱらぱら来る、それは仕方がないことでしょう。面白くなくなって、他にすることがあって来ない人もある、それもいろんな考え方があって、仕方ないことでしょう。そう責任を感じていただかなくとも、それでいいでしょう。1年半前には、ほとんど、音読や訓読ができなかったのだから、続けている人はそれなりの手ごたえを感じている。順番に塾頭をやってみると、それなりに出来てくる。だから、続けられる人で続けておれば、またそれで次の展開がある、というくらいでゆきましょう、と例のごとく、いざ白木屋へ！一杯。先週は酒困の上田、鄭さん。今日は地下鉄のある時間で「お開き」。来週は川那辺さんに塾頭をお願い。
2007年9月22日 子罕 22～25
先生がおっしゃった。後生は後に生まれた人、弟子の中でも後から来た人、畏る可し、侮ってはいけない。來者と後生は同じ、後から入ってきた人のことが、今いる弟子には勝らないことではあろうが、どんどん伸びて将来どうなるかはわからない。四十、五十になっても芽の出ない人間は、期待も何もない。年月ばかりたつ人、後から来る人でも、どんどん良くなるので、ぬかされることになる・・・いまひとつよく分からない、後生と来者は一緒で、今は今の弟子でいいのすね？と川那辺さん。そういうことでしょう。後生に対応するのが先進、子路や子貢や顔回等々、今というのもそれらの弟子。後生の弟子とは40～50歳の年齢差がある。しかし、彼等ももう40～50に達しており、今それとわかる業績をあげないと、畏るに足らないと発奮を促している、と上田さん。童さんどうですか？と川那辺さん。老人と若者と二つを一緒に対象としている、それが目的、と童君。私もそういうことがいいたかった、全部の世代に言っている、と中村(典)さん。後生畏る可しとおっしゃる。先進の弟子は孔子と政治を共にし各国を放浪して苦難を知っているが、後生はそれとは違い教団の中で育ってきたため、先進の基準でみれば劣るのでしょう。しかし、後に教団を継ぎ、論語を編纂するのは後生であり、自分達とは違った可能性を見ておられたのですかね、と上田さん。畏る可しとはどういうことですか？私にはプラスのイメージ、神々しい感じ、すごく可能性が大きい。40～50になった人にがんばれ、光り輝いていることにもなっている、と思えます、と中村（典）さん。これは若者に対してよくいう言葉。重いのは後ろの方、40～50になっても何でもなければどうしようもないに力点がある。その前の苗の話しと一緒、40～50は実るべき時代、苗が良くても穂がつかなかったり、穂がついても実らなければという流れの中で読むべき、と鄭さん。この頃の寿命は40～50でしょうか？と中村（典）さん。平均寿命はそうでしょうが、乳児死亡率が高いことが原因で、生き残っている人の寿命は結構長く、孔子も70なんぼ（73歳と鄭さん）まで生きている、と上田さん。40～50は不惑、天命を知る、とある。陽貨篇で、40歳で人に憎まれるようでは終り、40歳で人格が定まるともいわれる。水が流れる話、一もっこを止める、進めるという話、いづれも自分の責任で行うことを言っている、その流れの中で読むべき。上田さんは両方に対して言うという風にみておられるが、一つの対象に両面からいうというのがあり方で、後ろに重きがある、と鄭さん。では、次に行っていいですか？と川那辺さん。
これもちょっとわかりにくのですが・・・先生がおっしゃっいました。法語というのは正道を説く、真正面からいうこと。從はないということはないでしょう。従って間違った事を改めるのは重要な事。巽與の言、巽は謙遜の遜と同じ、ここが分からない・・・褒めてくれるような言い方に説（よろこ）ばない人はない。これをたずねることを繹す、繹とはづるづると引き出す意味、糸口を見つけて尋ねること、それが貴重なこと。それをしないなら、これはどうする事も出来ない。つまり、言われたことで自分を改めることが大事。褒められた気になり喜んでいるのではなく、その言葉の裏に何があるかを見つけてゆかねばならない。それをひたむきに追求すべき、と思いますが、上田さんどうですか？と川那辺さん。そう思いますが・・・法語の言とは孝経にある先王の法言、～をすべし、～をしてはならない集のこと。これに従って自分の悪いところを改めるという風に釈されるのが通例ですが、改めるというのは、前に両端を叩くというのがあったように、その言葉を吟味して実践してみて体得すること。巽與の言は穏やかで逆らわず心地よく、その気にさせられるもの。繹すはおっしゃった通りで相手の心の意図を尋ねる、この二つを怠ってはいけないということだと思います、と上田さん。童さんどうですか？と川那辺さん。多分この章は、別の人の言葉を聞いて繹ねる方法を述べたもの。法語は厳しい言葉、従うべき言葉。法語、巽與の言は、どちらも聞き易いが、どちらも動きにくい・・・変えにくい・・・ええと（行うことがむつかしい、でしょうと鄭さん）、と童君。法語、巽與、どちらも間違った方向でなく正しい言葉。従うべきもの、喜ぶべきもの、いい方向のものだが、学ぶ者、政治を行う者は、それをおっしゃるように、良く考えねばならない。民には説明できるものではないが、士たる者はそれがなくてはならない、と鄭さん。繹すを貴しとなすはプラスのイメージ、どちらも然りですが、特に後の方は想像力を大きく働かせており、できなければどうしようもないと言っておられるが、次の新しい表現のフィールド、種があると感じる。反対の現象も、もしかしたら、考えればパワーアップされるのでは、と中村（典）さん。急にテーマがバラバラになって、どうも子罕篇は何かちがってるでしょう、と川那辺さん。教える方法がいくつもある。法語的なもの、巽與のもの、何故そうなるのかを尋ね、確かめて、心の動き、行動を改めて行う・・・いえばいうほど判らなくなる、と鄭さん。音楽でいえば、対応する場所に何かがあり、複眼的にみてゆく、そのことを言うのでは、と中村（典）さん。喜びのメロディーと同時に不安のモチーフが、絶望の中に希望が進行している、この前コントラプクトとおっしゃってたことですね、と上田さん。巽は八卦の一つ、風の意味、さわやかに通りすぎる（それでどうなります、と鄭さん）、聞く場合には・・・（心地がよいですか？と川那辺さん）そうです、心地いいです、と童君。おまけがつきましたところで次ぎ。
前にも同じものが出てきている、と川那辺さん。そこへ安澤さん登場。上田さん、サボったらダメですよ、と立命館大学交友会の案内。本日これに出席して一杯入ってのご登場。先輩が出席しないとは困ったもんだ。次からは出てくださいね。これはね、ぼくがやりましょうか？日常的にいえば、間違ったら改めるに憚ることなかれ、論語にでているかどうかは知らなくても、日本では良く知られている。ぼくは中小企業の社長のコンサルタント。社長はなんでも自分が正しいと思っている。社長が一番優れている必要があると思っている。そうじゃなくて、優れた人に金を払って雇えばいい。すべて自分が一番上でなくちゃならないと思い、そこを理解できないところが馬鹿なんだなあ。そういう社長が多い、と一杯の勢いの安澤さん。学而篇にもありますが、君子の心得、ここでは弟子に向かって言っている。二回いうのはなかなか実行しがたいことであり、重要視されているため、と上田さん。論語は自分を治め、国を治めるのであるが、ぼくが中小企業を相手にしているのはさっき言ったとおり。ぼくは、ぼくより優れた人ばかりがまわりにいます、と安澤さん。優れているって？何が優れているのですか、と川那辺さん。才能も能力も・・・と安澤さん。忠信とあり忠は君に対するもの、信は友に対する者、己に如ざるとは能力よりも信のことを言っている、と上田さん。私もそう思ったもので・・・と川那辺さん。己に如かざる、とは？と中村（典）さん。英語では、とテキストを渡す安澤さん。孔子は三人行必有我師者（述而篇21）と言っていますが、これと矛盾します、と童君。学ぶことの反面教師。ここでの友というのは、志を共にする朋友。志が良くなければ友とならない。忠は君に対すとは限らず、心に尽くすこと、友であってもよい。毋れという厳しい言葉が使われている。同じものが二回でてきていることの意味はまだ判らない、と鄭さん。英語をみて判りましたが、己はプラスイメージになっている。自分自身のような人でないと友とはしない。自然神道的、音階でいうと、絶対音と相対音の二つがあるが、その中で鏡みたいになっている。これを書いているのは男性であるが、女性がもっているのは一般的には相対音であり、それは、入れ替えてみればよくわかる。女性はどちらも強力に受けているが、相対音感だなあと思う。記録の仕方が違い、それを最初にインストールしておかないとややこしくなる、と中村(典)さん。己は肯定的にみているときに使う。自分を信頼するというものがある、と鄭さん。反対の方からみれば、そういう人が友でいてほしい、と中村（典）さん。志を持っておれば得られる。自分を持てば持つほどむつかしくなる、孟子曰く、士が読書をするのは友を求める為、今いないから、古の人と友になる、と鄭さん。不は重要な言葉。不をとると肯定形が判る。両方が見える、ここ数週間に皆さんが中国音で読んでおられるように読めば、そういう見方ができるようになってきた。英語のように横向けにして読むとよく判る、楽譜も横向け、向きを変えるとスイッチが入る、と中村(典)さん。
三軍、一軍は12500人、三軍で多くの兵がいても、帥は一番上の人、を奪うことができる。匹夫は帥の反対、普通の人であっても志を奪うことは出来ない。これだけのことが書いてあるのだが、帥と匹夫の対比であるが、よく判らない。将帥が軍をしっかりと掌握していなければ、たとえ兵士が多くても将帥は奪われてしまう。たとえ一般人であってもしっかりとした志を持っていれば、その人の志が奪われてしまう様なことはない。自分の立場に甘んじていてはいけない、上田さんどういうことですか？と川那辺さん。諸侯は二軍天子は六軍。三軍は大諸侯の軍。帥は軍司令官、これは軍事の能力の問題であり、ふさわしい能力がなければ取り替えることができる。志は心の問題であり、取り替えることができないもの。匹夫といえど志あれば、いかんともしがたく奪う事はできない。これは、成田君が言っていたように、三軍から帥を奪うことはできるが匹夫から志を奪ふことはできないの構文、と上田さん。匹夫は日本語では普通の男ですか？身分の賎しい人ですか？と童君。英語ではa manです、と安澤さん。日本語ではそう悪い意味ではないでしょう、卑下謙遜していう・・・と上田さん。匹夫の勇（思慮が浅い、ただ血気にはやる小勇）ともいいますね、と童君。中国語ではどうなんですか？と上田さん。孔子の時代は身分の賎しい人です、と童君。孔子の弟子にはそういう人たちが結構いましたね、と上田さん。孔子ももとはそうだった、と安澤さん。軍とは軍隊の意味だけですか？ある目的をもったグループでいいなら、そのディレクターなら、三つくらいなら変える事が出来る、と中村（典）さん。志という言葉が重要。匹夫は士ではない。一般の人でも志を持っていれば奪うのはむつかしい。軍を率いる能力は外にあるもの、取り替えられる。これは可能であっても、これは可能でない。志をもてばの例えは孟子までゆくと、自分が正しければ千万人あっても行かん、これは日本では江戸末期、明治の初めに引用された。「自反而縮、雖千萬人吾往矣（自ら反みて、なおくんば、千万人といえども吾往かん）」、すべては自分にある、陽明学で重んじられた。匹夫でもそうだから志を持てば充分なことができる、と鄭さん。弟子に君子になれと言うのではない？ところで君子とは何か？と安澤さん。あるときは政治家、あるときは徳を持って政治に参加する者、と鄭さん。政治参加するとはどのレベルか？と安澤さん。天子、諸侯というのは定まっている、それを支えるのが士、上と下を結ぶ。諸侯と民の間で政治に参加する者、と鄭さん。君子は諸侯にアドバイスする人か？諸侯のことか？と安澤さん。そこはよく判らない、と鄭さん。君子は頭の中、概念上のもので褒め言葉、と童君。君子は小人の反で身分をさすものではない、と上田さん。正しい政治をしたものが君子、孔子の時代では天子や諸侯は含まれていなかったのではないか、中間で政治を行う人達だろう、と鄭さん。
来週は安澤さんに塾頭をお願いします。貝塚先生の釈を読んで司会するだけでいいの？いいですよ、子罕篇を終えましょう。いづれ、中村さん、童君もお願いします。
2007年9月29日 子罕 26～28
今日の塾頭は上田さん。鄭さん多忙にて欠席。安澤さんも急な会議で欠席。高津さん、童さん、Dr.中村さんと川那辺でスタート。今日こそは子罕篇を終わらせようと思うものの、最初から話が脱線。ところが、その脱線から思わぬ展開があったりして、和やかな雰囲気で始まっていく。
中国読み、訓読みを終えて、さて本題へ。
子曰、衣敝縕袍、與衣孤貉者立而不恥者、其由也與、不忮不求、何用不臧、子路終身誦之、子曰、是道也、何足以臧
上田さん、先生がおっしゃった。破れた縕袍、これは綿や麻をつめたドテラのようなもの。孤貉は、狐とむじな、そのような立派な皮の防寒着を身につけた人の横に立っても、恥じないのは、由だねと。「不忮不求、何用不臧」は、詩の中の一節を引用したもので、不忮不求 自分で自分をそこなわない、むさぼらない、相手にもねだらない。それはいいことだろう、と。もともとの詩の意味は、 君子に対して上の人に対してこのような気持ちを持つことは、徳がある。そういう意味では、孔子は、子路を君子並みに持ち上げ褒めている。子路も孔子がそんな風に褒めてくれたので、一生口ずさんでいた。と。ところが最後のところに来て、「子曰、是道也、何足以臧」となるのは、立派な服を着た身分の高い人の横にいても恥じない。これは一種の狂。孔子に言わせると、良いというには足らない。危うい感じ。高津さん、子路の態度には風格がある、そんなボロを着ていても少しも恥じないところを見ると。でも、少し清貧に甘んじているって感じがするんですがと。それと、孤貉を着ている人ってどんな人なんですか？と中村さん。郷党篇にいろいろな防寒着のことが出てきますが、孤貉を着ている人というのは、かなり身分が高い人のことをさすんじゃないですかね。と上田さん。立派な着物を着た人の横にボロを着ていて立っていても少しも恥じない、これは確かに子路らしい、体裁にとらわれないそれでいて、何か確固たる意思のようなものがあり、清貧という言葉にはぴったりだということで孔子は、一度は褒めているものの、最後のところで、是道也、何足以臧とどうして言ったのか？それで良いといえるのか？少し違うんではないの？と少し批判めいている。孔子にしたら、礼という意味で、少し問題視していたんじゃないかと。身分の高い人の横に並ぶ、子路の格好に対して。心意気の強い人でしょ、子路って。戦で亡くなっているのも、上田さんのおっしゃるように、少し危なげ感じを孔子はおっしゃってるような。と川那辺さん。僕は、詩の意味は分かりにくいけれど、礼は形だけではないと孔子は言っているし、子路はとても内面的に凛としている。だから孔子は、子路をものすごく褒めていると思うんだけどと、高津さん。そこで上田さん、臧は戕と臣からなり、戕は聖器としての兵器、それで俘虜とした臣を清め祓うことから来る字、臣としてきちんと身を修めていて善いという意味。しかし、その中に危うさを感じるんですね。「是道也、何足以臧」これは、反問というか、それでいいの？そうじゃないでしょ？という感じがするんですがね。童さんどうですか？私は、孔子が全面的に子路の貧富にこだわらない姿勢をほめていると思います。「是道也、何足以臧」は、この道を持ってすればどんなことでも成功をおさめることができると、肯定的です。これで十分だという意味ですよと童さん。朱子の解釈ですが、これはものすごい褒め言葉で、子路にはこれ以外にもたくさん褒めるところがあるのに、ただこのことだけで子路を褒めるには足らないという意味です。上田さんと川那辺さん、絶句！でも、もしそうならばそれだけで褒めるにたらない子路の行動に何故「衣敝縕袍」をもってきたのかしら？高津さんがいっている礼は形でない、内面的なものというのはわかるけれど、孔子の礼の概念が少し違う気がするのですが・・と川那辺さん。しかし、全く正反対の解釈ができるというのは、実に面白い、と上田さん。童さん、中国の昔の文法には、1つの漢字に全く正反対の意味を持つものがあります。特に「乱」という文字なんかは、全く逆の解釈ですね。それは、前後の漢字を読んで意味を解釈するわけですが・・・・・。では次へ。
子曰、歳寒、然後知松栢之後彫也、
秋が過ぎて冬になっていく状態。松と檜 しぼむにおくるる。彫は、テキストによって凋、彫に分かれる。凋は、おちる、しぼむ、いたむ、とされ、彫もそうよませているが、ほる、かざると訓じられる。冫（にすい）の場合、凍ってしぼむって感じかな。広葉樹は先にしぼんでいくが、松や檜は一番後になる。と。これは、先生がかなり晩年におっしゃったのでしょう。日本人の感覚だと、松や檜は寒いときに綺麗に見える。凛として美しい。自分の人生にたとえて、自分の人生を全うしようと考えておられたんじゃないのかなと上田さん。歳月を経て、逆境にもあって、孔子はどんな状態だったんでしょう？と中村さん。逆境もあったでしょう。晩年、弟子がついていけなくて、自分のもとを去っていったようなこともイメージされているんだと思いますよと上田さん。何かを比喩されているんでしょう、自分自身の身に置き換えるだけでなく、世間一般を見ても言っておられるような感じがと中村さん。では、世間一般ならどんな思いで？と高津さん。中村さん、人を見るとき、その人がよい状態の時は注目する、でも苦しい時には、本当の意味での長い付き合いの中でその人の良さが見えてくる。という感じ。僕も同じように感じます。歳寒は、世の中の乱れを例える。事変が起こったときに君子か小人かが分かる。と童さん。では、松や檜は、君子のたとえですか？と川那辺さん。そう！そう！こういう内容から、中国では諺がたくさんあります。疾風知頚草 強い風が吹くと頚草を知る。路遥知馬力とか。日本にもありますか？と童さん。なるほど･･････全員、うなずく。高津君どう？いやぁ僕はもっと簡単な単純な方が好きですよ。次の知者とかそういうのが・・・。
では、それを高津君にやってもらいましょうと上田さん。絶妙なバトンタッチ。
子曰、知者不惑、仁者不憂、勇者不懼、
高津さん、知者は心を理解をしているから、回りの流言に惑わされない。仁者は自分の役割を知っているので、人生のなかの起きる悩み事に対して悩まない。勇者は恐れていては何も出来ない。決断も早い、進んでやる気持ち。困難を打開する力。惑うと憂うの違いがわからないと中村さん。対して、高津さん、 知者はすでに真実を見出しているので、惑わない。 はっきり判断できる人 優柔不断にならない。憂えず・・例えば、食べ物がなくてどうしよう？そんな悩みはない。お金がなくても心配にならない。子路は憂えずかな？一般的に抱える悩みについて、心が広い人 知者は損するようなことはしない。仁者は損得勘定がない。上田さん、 惑わずは選択するときの問題。選択に惑わないことに期待している。孔子的に言う疑わしいものを一つずつ取り除くと核心を得る。 憂いの根っこは、人が自分のことをわかってくれないこと、そのことを憂うな。むしろ人のことをわかってやれ。とそんな感じかな。惑わずというのは、いろいろな情報を持って、正しいものを見極める。常に比較できる知識で判断するでしょう。しかし、憂えずといのは、ちょっと捕らえる場所が違う。憂えずという仁者に対しては、泰然自若、達観というイメージを持ちますね。と川那辺さん。すると童さん、中国には、文法の中で互文という解釈があります。ここでいうと、知者と仁者と勇者は、惑わず、憂えず、恐れずは本当はその全てを三者が持ち合わせている部分なのですが、漢字で表現するという文法上の約束事で「知者不惑、仁者不憂、勇者不懼」こう、書かれていると。孔子はどう思っていたかは分からないけれど。上田さん、 勇者 義を見て貫く為にはどのような状態であっても恐れない。さて、安部さん（首相）はどうだったんでしょうか？極端な場所におかれたときに人間は惑う。いろんなこと考えるからね。何に対して恐れたのか。義に対して恐れる政治家がいるのかね？かなり厳しいことを言っている。高津さん曰く、これ重きは均等。いつもの鄭さんは、後ろに重きをおくというけど・・・。と高津さん鄭さんの代弁。爆笑。上田さん、 互文の解釈っておもしろいね。詩は言葉と音と舞がセットになっているから、音や舞によって解釈が全然違う、書かれたものにそんな解釈があるとは、皆まとめてイメージしたらいいんだ。一つずつ切らなくていい。中村さん、 上に立つべきものは全部そろっていてほしいですね。童さん 全部を持っていると解釈することがいいと思う。上田さん、 確かに仁者だけって言う人はいないね。高津さん 互文であっても、別々であってもそれぞれの意味がありますよね。互文という解釈の仕方があると童さんが教えてくれて、知者不惑、仁者不憂、勇者不懼 と書かれているとどうしても、知者が不惑なんだという狭い解釈でとどまろうとしてしまうが、解釈の幅が広がりますね。確かに、知者だけ、仁者だけなんていう人はいませんし、全て持ち合わせた中で、そのひとの突出した部分を当てはめるとあえていうなら、仁者不惑となるのかもしれません。と川那辺さん。子罕篇終わるはずが、活発な意見が飛び出して、三つしかすすまないが、童さんの口から次々に出てくる多面的な解釈に一同、終始うなずき、質問が飛び交う。童さんいつの間にかホワイトボードデビュウを果たし、差し入れのぬれ煎餅を「月見団子」と間違い、そこから小豆の話になり、愛の詩を綴る童さん。紅豆生南国 春来発幾枝 願君多採才頡 此物最相思 今夜は脱線、大爆笑の論語会となりました。
さて、来週の塾頭は、安澤さん。上田さんは用事のため、二週お休みになるため、書き取りは高津さん担当。次の漢文は、鄭さんがかなり力が入るため、鄭さんの「傾向と対策」が必要との高津さんのアドバイス。またまた、来週が楽しみです。
2007年10月6日 子罕 29～30
本日の出席者安澤さん（塾長）、川那辺さん、中村さん（医）、チョンさん、高津と、上田さんがいないため、初めて記録係りに挑戦。
六時半まで安澤さんとふたりだったため互いにいやな予感をしたけど、中村さんの手作り栗で和やかに開幕し、またいつものように脱線し、思い出（成田さんと高井さんの話ですよ、見てますか？）に慕ってから里仁、公冶長、雍也の中国語読みと里仁の訓読。ジクザクと進まない訓読、チョンさんの登場でほっとする僕。八時にしてようやく本文。
子曰 可與共學、未可與適道、可與適道、未可與立、可與立、未可與權 「一緒に同じ学を習っても、一緒に同じ道を行くことができない、一緒に同じ道をゆくが一緒に立てず、一緒に立つが一緒にはかることができない・・・どういう意味かな川那辺さん」とここで指名「そのままを読んで何となく理解できるか・・・」。「よくわからんけど」と答えながら悩む川那辺さん「同じ道に行っても同じ仕事をするでもないし、同じ仕事をしても同じように考えることはできない。本来そういうものだよといいたいのか？そうなるけど、そうじゃないよといいたいのか？・・・次の句と一緒に読んだら、本来そういうものだけれど、かえることができる」「一緒に論語をやってても同じ考えをもっているわけでもないし・・・」。続けて読まないとわかりにくいということで一先ず次ぎの句へ。
唐棣之華、偏其反而、豈不爾思、室是遠而、子曰、未之思也、夫何遠之有
「唐棣はにわ桜かな、これは流行歌、当時流行った歌、あわないと気持ちが離れるみたいなことを日本語でなんと言うかな、川那辺さん」と言いつつも「惚れてかよれば千里も一里」と爆笑を誘う安澤さん。
「前の句のほうがやさしいじゃない？」とチョンさんの一言で前の句に戻る。力説する「これは完成までの過程を言ってる。最初は一緒に学ぶが進路は違う。同じ進路を行っても、立つ＝三十にして立つというように、同じ何かを持って自分を表すことができない。一緒に学んでも、ともにしっかりした学問を身に付けられるとは限らない。左伝では「立つ」ことを三つに分けている、徳、功、言。人によっては立つ場所（徳、功、言）が違ってくる、立つ＝成果を立ってるか？成果を立ったか謀れるかどうか？適切に判断できるか？トップに立つ人は適切に判断できないといけない」
「この句を逆に読んでみたい、例えともに同じ道を目指せなくても、一緒に学ぶことはできる。例え同じ立場にあらなくても、一緒に道行くことはできる。例え同じように考えられなくても、同じ立場に立つことはできる。僕が思うに人は育った生活環境などからもともと同じようになることはない。でも互いに刺激しあい、相手から学ぶことはできる。例え考え方が違っても、立場が違っても・・・」と高津「子曰、我三人行、必得我師焉、擇其善者而從之、其不善者改之」
「条件文は、前の句を前提に下の句について言う、ともに・・・ともにべからず、程度の密度を言う。人生の中にこういう順番がある。「子曰、苗而不秀者有矣夫、秀而不實者有矣夫」と同じ」とチョンさん。これは弟子を励ますためにある。学ぶのは正しい道ゆくため。正しい方向、正しい道ゆくのは立つため。孔子の価値観が入っている。
では再び「唐棣之華、偏其反而、豈不爾思、室是遠而、子曰、未之思也、夫何遠之有」に入る。
距離が遠くなったけど、どうして君を思わないだろう？気持ち離れることはないと感じる川那辺さん。「どうして、何でこんな最後のところにくるだろう」と中村さん。「詩心がないじゃない」とつっこむチョンさん「詩の好きな高津くんは？どう感じる？」。「・・・」うまく感じることができなかった高津「室は家のこと？」と考え込むか・・・
この詩は一般の人の間でよく歌われたが、一般の人は詩に対して理解しているかどうか？「前のニ句は比喩、言いたいことは後ろにある。これは孔子の詩に対する解釈」とチョンさん。「何思っていないのに何か遠いだよ！」と安澤さん。
「恋愛の唄だけど、孔子は恋愛について言ってるわけじゃない。弟子たちが今の世の政治は難しい、それに対して孔子は思っていないのに何で難しいだろうと比喩」とチョンさん。遠いというのは思い方足らん。
「孔子が比喩する例え話はほかにもある？」と安澤さんが質問。「論語中では少ない、中庸の中では詩経の中の詩をもって比喩することが多い」と答えるチョンさんがさらにつづく「個人的に、この詩は若い奥さんをおいて、防人に行く人が花を奥さん例えて歌った歌」。チョンさんの一言ではじめてこの詩からカタルシスを感じる高津、それでも「さきもり」ということばを理解するのに時間はかかった。普通使わないよな・・・
両方思うこともあるでしょう？花が出た場合、女性を例えるゆえ主語は男性。
ここから（九時前）は論語から外れ、中村さんの手作り栗の話から、落ちた栗を生で食べたことのあるチョンさんに驚く川那辺さんは「生で食べてはいけないじゃなかった？」チョンさんは韓国で厳しい生活環境を強いられたことがあったのであろう、われわれの食感と同じようにはかることはできない。来週は休みで、次は２０日でお会いしましょう。
2007年10月20日 郷党 1～3
本日の出席者は上田さん、大倉酒造で試飲して既に出来上がっていた。川那辺さん、中村さん、チョンさん、童嶺さん、高津、今日も記録するが、前回の分はまだできていなかった。楽しみにしていた方々にここでお詫び申し上げます。
さて、高井さんからメールが来たと、上田さんから高井さんは向こうで苦労をなされていることを知り、国際交流について熱く語るチョンさんと上田さん。話し合い場（論語読書会）を提供したチョンさんを誉める上田さん。このような場を積極的に作っていてほしいと童嶺さんを筆頭にお願いするチョンさん。二人とも「国際人」だからこそ同じ思いを持つ。そこで登場した中村さんを見て、いつもと違うね、「色」ですねとチョンさん。「吾未見好徳如好色者也」。いつものめがねをかけず、スカート姿で登場した中村さんは前回の栗に続いて今回も「戦慄」ならしむ？「吾未見好徳如好色者也」
孔子於郷黨恂恂如也、似不能言者、其在宗廟朝廷、便便言唯謹爾
郷党（自分のふるさと）は孔子の実家。実家においてああや、こうやといわなかった。宗廟は祭りのとき、朝廷は皆で議論するとき。唯、慎みながらいったという言い方。孔子先生は好きなことばかり言ったわけではない。といきなり力説に入る上田さん。この句についてなぜか記録に冒頭する僕に指名。この章を簡単と言いながら用事で来れなかった安澤さんを尻目に難しいとわめく僕はとりあえず、この句は曰くが少ないのはなぜ？と前から疑問に思ったことを質問。上田さんは俯きに入る。僕の質問にチョンさんは童嶺さんを指名。この編は普通の生活を説明するところ、孔子は言葉として言わないが行動で示す。後に弟子が見て記録したのではと。この辺で上田さんがいびきを出す。
この篇孔子が実際に行動したところだけまとめた。論語の最後はこの篇で一旦終わったはず。それからの篇は弟子の言葉が多くなる、言葉も長くなる。第十までの篇は前編で、第十一からの篇は後編である。またこの篇はわれわれの示しとなる篇。音や動作など表す擬態語・擬声語が多くなるのもそのためであるとチョンさん。
なぜ郷党でそうしたが、恂恂＝（心を表す）態度、便便＝辯と同じ、音の表現。不能、いうことはよくできない。似不能言者＝言い方が悪くなるけど、まるで話せない人のようだという例えに違和感を感じる川那辺さん。似、何を説明しているかというと、恂恂如也をもう一回説明している。あとの便便言と対比する。公でははっきりと発言するとチョンさん。自分を育ってくれた人に対して、自分がいくら偉くなっても、偉くしない様子。でも、「子曰、中人以上、可以語上也、中人以下、不可以語上也」という言葉のように、郷党にいる人に政治などの話をしても仕方ないと思って語らなかったようにも思うがと素直になれない高津。この句は後に弟子たちが見た孔子の様子を記録したもので、普通そんな思いで書かない・・・
日本の有名な知識人は実家に帰るときはどんな様子？と質問する童嶺さん。いつの時代？江戸時代以前。・・・・・・詳しい人はいない（高井さんOR成田さん、もしわかる人がいましたら教えてください。）。中国では、郷党に帰るときは２パターンがある。ひとつは孔子のように慎む。ひとつは威張る。
朝與下大夫言侃侃如也 與上大夫言誾誾如也 君在踧踖如也、與與如也、
臣下＝下大夫と話すときはやわらかい感じで（非常に親しく、楽しく話す）。上大夫と話すときは穏やかで（妙な気遣いせずに、普通に）。君子がいらっしゃったときは礼にかなってといった感じ。上大夫（天子、諸侯など）は世襲で、下大夫は下から上がっていく、それ以上上になれない。上と下ではかなりの差がある。孔子は下大夫と同列、当時はそんなに位が高くない。これは孔子の上と下の人との対応。下にいたから孔子が遠慮したとは思えない、上の人にも思えたこといえたと思うけど、下の人は難しいこというとやられるから、それをわきまえていったでは。日本の喧喧諤諤と同じ、上の人に対して「こうであるべきではないか？」と言うし、下の人にもビシビシと言ってた。上下とも侃侃如也。ここから上田さんの苦悩が始まる。わからん人には何を言ってもわからん、わかる人にはいわんでもわかる。わからん人に言って怒らすと逆に憎まれる。高津くんも勤めている、ミスがあったときに誰の責任になる？最終的に社長など、上司が担ぐことになると思うが基本的に自分のミスは自分責任ですとたどたどしい高津。今の人は私じゃない、私は言われた通にやっただけとか、責任者はだれだれとか、とりあえず責任を押し付けようとする。孔子はそんなことを言わない。上にたいして責めない。間違いをしても責めない。間違ったとしても、自分がしっかり導けなかったという自負を持っていた。だれだれが悪いという人ほど、今おきている問題についてわかってない。一番わかっている人は現場で働く人。だから私は何が起きても下で働く現場の人に対して責任を担がせない。責任とるから問題の解決のほうが先と考える上田さん（爲酒困）にただただ脱帽です。
君子があかんでも自分が担いだろうにたいして中村さんは自信はあったと思うけど、そこまでは・・・と孔子を分析。中国人の「士」というものが持つ使命は唐と宋の間では違う。唐のあたりまでは王様は天命によって定められている。宋の時代あたりになると士大夫の権力が強くなる。世の中平らかにするのは自分たちと・・・道高一尺，魔高一丈。孔子のような方が世の中を収められる時代はくるのだろうかと思いつつまた来週お会いしましょう。
2007年10月27日 鄕黨 4～6
公門に入るに鞠躬（きつきゅう）如たりとは、身をかがめて入る、背をのばしてはいけない。容れられざるが如しとは、つつしんで入ること。立つに門に中せずとは、真ん中は君が進み、門を入ったところに君が立つ位置があり、それが位、臣は脇から入る。行くに閾（しきい）を履(ふ)まず、位を過ぐれば色、勃如たり、とはここで顔色を変え、緊張する。足、躩如たり、とは慎しんでそろそろ歩くこと。其の言、足らざる者に似とは、余計なことはしゃべらないこと。転ばないように、齊(し)を攝(かか)げて堂に升る、齊（し）はzīで、衣服の"すそ"のこと。鞠躬如たり。氣を屏（ひそ）めて、息せざる者に似とは息をとめて上ってゆくさま。出でて一等を降（くだ）ればの一等とは最上段の階、顏色を逞(はな)って怡怡如たり。階段を降りるときには顔色をかえてにこやかにされる。階を沒(つく)せばとは階段を降りきること、沒はméiで否定形をつくる、mòで尽きること。趨はさっさと歩く事、翼如たりとは飛ぶがごときこと。其の位に復(かえ)ると踧踖如たり、足をすくめて恭敬する、と上田さん。女子社員教育、VIPの接待の場合、入ってこられる場合、歩調を合わせて、真っ直ぐたたず、腰をかがめ、あまり前に行き過ぎず、先導しつつも前にですぎず、先導が終わり戻るときには凛として帰ってきなさい、さっさと帰ってきなさいみたいなことがあった、と川那辺さん。送り届けるときは緊張する、と安澤さん。息のかかるようなしゃべり方はしない、と高津君。必要以上のことをしゃべらないでしょう、と川那辺さん。これは連れて行った弟子が見て記したものか、それともマニュアルみたいなものがあったのか？と高津君。見せることにひとつの美意識、見られていることを意識してやっているのでは、と川那辺さん。これは孔子の本業、と安澤さん。葬儀とか祭祀なんかの儀礼の専門家、と上田さん。VIPを送り届ければほっとして顔色も自然に変わるけれど、孔子の場合、場面場面で意識的に顔色を変えているのでしょう、と川那辺さん。昔も今もこういうことはかわらんね、と安澤さん。
圭を執りて、鞠躬如たり。周の封建制度では公侯伯には七寸、子男には五寸の圭を授与している。外国に使節としてゆくときに、持参して主君の敬意を相手の主君に伝える。国を代表する重さを象徴しており、勝（た）へざるが如くし、上ぐるに揖するが如くし、下ぐるに授くるが如くす、とその授与の仕方を教えたもの。勃如として戰色、緊張しておののよくような顔色をして、足、蹜蹜如として循ふ有り、とはこまたにつき従うような歩き方。ここまでは公式の会見の場合。享禮は献物、皮馬、錦繍、産物などを庭に陳列する禮、容色有りとは、ほのぼのとした気があらわれること。私覿（してき）とは非公式な私的な会見、愉愉如たりとは、顔色のなごむこと、と上田さん。童君、圭とはこんなものと図をみせてくれる。平たく細長く、厚みはない。一寸は3cmと安澤さん。七寸なら21cm、五寸なら15cm、あまり大きくはないなあ。漢の時代では印璽が用いられ、卑弥呼は魏から親魏倭王の金印をもらっている、と上田さん。志賀島の漢倭奴国の金印も、と安澤さん。茶道では茶杓など軽いものを重たくみせ、水差しとか重いものを軽くみせる。それが美意識とされ、ここでは、大事なものを重くみせている、と川那辺さん。とそこへ鄭さんが登場。それを待っていたのが童君。童君、8時30分に教室に戻る用があり、しばらくたってお出かけ。
君子、紺緅（かんしゅう）を以て飾らず。飾(かざ)る、（もとおす、もとほす｛巡らす、回す｝）と訓じるのは、衣の領袖を縁取りすること。紺は、玄色（深青揚赤色）で齊服用、緅は浅絳色（赤茶色）で三年の喪服用。君子は、齊服喪服の色で縁取りはしない。中国では正色は青赤白黒黄、それぞれの間色が緑（青＋黄）紅（赤＋白）碧（白＋青）紫（黒＋赤）緇（黄＋黒）とされる。紅紫、以て褻(せつ)服と為さず。褻服は私服のこと。正服には正色を用いるべしとされ、私服であってさえ、孔子は間色である紅紫を用いない。婦人、女子の服装とされたようである。逆からいえば、当時は紺緅の飾、紅紫の褻服が流行っていたのを孔子は応じなかった。暑に當りて、袗の絺綌、必ず表して之を出ず。暑いときの衣服、袗(しん、ひとえ)は葛糸で織った単衣のこと。絺綌（ちげき）の絺は布目の細かいもの、綌は粗いもの。葛布は透けて下が見えるため、當暑袗絺綌必表而出之は暑い夏に外出するときは、裏衣を着て必ずその上から袗絺綌を着たとする説と、在宅の折は袗絺綌のみであるが、外出するときには上衣をつけ、その上衣の色に葛衣を合わせたとする説がある。ここからは寒いときの衣服と毛皮の取り合わせ。緇衣（しい）には羔裘（こうきゅう）、緇衣は黄黒の衣、黒木綿の上着、羔裘は烏（からす）羊の皮衣、冬はこれを下に着込む。素衣（そい）には麑裘（げいきゅう）、素衣は染色されていない生地のままの衣、麑裘は鹿の子の皮衣で色は白に近い。諸侯の君臣が月の朔日（ついたち）を告げる儀式の服装。黄衣（おうい）には狐裘（こきゅう）、黄衣は豊年祭あるいは年末に、先祖・五祀・諸々の神を祭る時の上着、狐裘は狐の皮で黄色い。褻裘（せつきゅう）、私居の皮衣、長く右の袂（たもと）を短くす、とは右手を使いやすくするためという。必ず寢衣有りて長、一身有半。これは斎戒のときのことと思われ、寝るときには必ず寢衣に着替える。狐貉（こかく）の厚き以て居る、とは賓客には、狐（きつね）貉（むじな）の厚手のものに座していただくこと。喪を去(のぞ)いては、佩びざる所無し、とは三年の喪が終われば、はずしていた冕や玉飾りなどを元通りに着けること。帷裳に非ざれば必ず之を殺(さい)す。帷裳は朝祭用の正しい巾の布を垂らしたのみの裳、それ以外は縫い合わして腰まわりの巾を狭めることか。殺はshā で殺すshàiで減じること。羔裘玄冠して以て弔（ちょう）せず。朝祭用のものは弔事には用いない。吉月（きつげつ）には必ず朝服して朝す。吉月とは月朔（つきはじめ）のこと。孔子は必ず、正装して朝された、ということは他の人はそうでもなかったことになる。魯においては、文公より月朔に出なくなり、子貢はそれ故に告朔之餼羊を去（な）くそうとした。他人はともあれ、先生自らは朝服して出仕された、我愛其禮を貫かれたのであるが、一人浮いていた、と上田さん。正しい時代に戻そうとした、変人はいつも居るもので・・・私も浮いてたが毎回来るから認めてやろうと・・となった、と安澤さん。百年前はこういうことは厳しく守られていた、韓国では朱子家禮で服装も決まっていた。清の時代にはこの文の一文字一文字を調べ、一生調べ続ける、考証学などが行われてきたが、日本の場合にはここの所は生活習慣に根づかないためとばしてしまうことが多い、と鄭さん。穂積先生も若い頃には無視していたが、年をとってからは読むようになられた、日本には考え方は伝わっている、と安澤さん。服装の色で正色といわれると日本人にはきつすぎる、間色だろうなあ、上着と毛皮の色の取り合わせはなかなかのもの、我々は慶事も弔事も黒服、ネクタイの色が違うだけだが、中国は朝祭用と弔事は違っているみたいだが？と上田さん。韓国では弔事は白。色には意味がある、禮記ではそれだけで一章をもうけており、鄕黨篇くらいの分量がある、それを読むとまたちがった解釈ができるようになるが・・・青は東、赤は南、白は西、黒は北、中央が黄色、と鄭さん。皇帝は黄色の服ですよね、と高津君。吉月は一般的には正月、孔子が出仕しなくなっても、吉月には正装していたとみる、上田さんのは古注、と鄭さん。古注は事実関係を書いてくれるが朱子あたりからは、何故そうするのか、考え方が中心になってきている感じ、と上田さん。朱子は全体を通じる考え方にもとづいて個々の解釈をしますから。中国では王安石が人事と天とを分けて考え、人事は克服できるものとした。それまでは、災害も天の意思とみなされていた。非常に革新的であったが周りがついてゆけず、失敗に終わるけれど・・・朱子はそれをまるめて体系づけた、と鄭さん。鄭さんによると、論語の注釈書は、元来は皇太子教育用に、それが科挙試験に用いられるという形で流布しており、日本では科挙試験というものがないため、寺子屋とか論語とそろばんとか、座右銘的な読まれ方をしており、伊藤仁斎などは若い女性に入れ込んで、そういう日本のあり方自体が研究の対象になって・・・と上田さん。仁斎がうらやましいのでは、と安澤さん。恒例の脱線。
大学の先生から韓国ではどうですか？と聞かれ、逆に、先生日本的とおっしゃいますが先生の日本的とはどんなものですか？と問うと、江戸時代中期から末期ということだった。大抵の日本人はそうじゃないか？上田さんどうです、と鄭さん。それは東京の人でしょう、京都じゃ仮名文学、源氏物語、国風文化だし、奈良の人なら・・・聖徳太子と声がする・・・じゃないですか、と阪神タイガースの上田さん。いや、やっぱり大衆が参加してくる町人の文化となれば元禄あたりからで江戸でいいのでは、と安澤さん。日本はづっと続いているからうらやましい、韓国や中国では文字をとってみても断絶がある。前の時代が否定されてしまって別個のものとなってしまう。日本は海で隔てられ外から適当に入ってくるが韓国では陸続きで直接影響を受ける。日本には李白や杜甫が入るのは江戸中期以降、それまでは韓国ではとうの昔に忘れられた白居易がはばを利かせていた、大衆文化が江戸中期に起こるという遅さが日本の近代化には逆に役立った。中国では宋の時代、韓国では15世紀に起こっており近代にはすでにマンネリ化していたが、日本ではそれが江戸末期更に欧米の刺激を受けて明治につながっていった、と鄭さん。遅れが幸いするなど、この読書会の脱線は楽しいものです。白木屋でビール片手に延々と続くのでありました。
2007年11月3日 鄕黨 7～9
７）齊zhāiは身を潔める齊浴（沐浴）のこと。神事にあづかるために、身体を洗って清める事。その後で濡れたからだにまとう着物が明衣。浴衣のこと。布とは布衣、麻布で作った簡単な衣。かわけば、礼服に着替える。次は食と居に関する齊戒、必ず食を變へる。肉、刺激臭のある食物を食さず、酒もひかえる。外に籠もって身を潔めることがあるが、この場合には在宅でのこと、居、必ず坐を遷された。改まったところに齊する場を設けたのだろう、と上田さん。何日くらいどんなことをしていたのですか、と中村（佳）さん。寝門の外七日、寝中に三日とかいいますから長い場合もあるけれど、ここでは在宅だから、そう長くはないのかな・・・日本では伊奘諾尊が黄泉の国に伊奘冉尊に会いに行った後、黄泉の汚れを祓うために身体を洗うのですが、そのようなこと。神事に参加することなので身を清めるのでは、と上田さん。浴衣ってバスローブでしょう、と川那辺さん。One should wear a cotton bathrobe.別室居住不与妻妾同房 One should live apart from one's wife.と安澤さん。綿じゃなくて麻。 そうじゃなくて、俗世間から離れる事じゃない、坐を遷すとは方角を変えることと関係はありません？と川那辺さん。風水か、と安澤さん。服と色の話があったでしょう、それで思ったのですが、と川那辺さん。そうか、ならば白っぽい衣となれば西向きということですかね？と上田さん。白虎（西）、青龍（東）と安澤さん。朱雀が南、と上田さん。玄武が北と川那辺さん。
8）食sì（いい）は飯のこと。食shíは食べる事、食物のこと。先生は精（しら）げを厭（いと）わずですから、精米した米、白米、玄米より白米を好まれた。膾（なます）は、ここでは牛、羊や魚の肉を切り刻んだもの。日本では野菜ですね、と上田さん。大根、人参と柿とかですね、と川那辺、中村（佳）さん。膾は月（肉）辺ですから中国では肉や魚を前提にしているのでしょう。細かく丁寧に切ったものを好まれた。饐（いす、すえる）yìは、飯がむれて、ぷんぷん臭うこと、餲（あいす、すえる）àiも、腐って臭くなることですが、饐は時間的経過で腐る事、餲は乾魚や乾肉などが古くなって味が悪くなること。魚が腐ることを餒（あさ）れる、餒は腹がすいてぐったりしていることからきており・・・と上田さん。さんまの目を見るといいます、と安澤さん。そう鮮度がおちて、でれんとしてること。肉の爛（ただ）れることを敗（やぶ）れる、そこなわれて、くずれていること。色惡とは常色を失っていること、臭惡とは臭うこと香りの悪い事。飪
(じん)は煮ること、熟すことで、失飪は生煮え、未熟の食物のこと。時（とき）ならずとは、時節を得ないもの、または朝夕昼の食事時以外のこと。割（きりみ）不正とは肉を方形にきちんとサイコロにしない、野菜を一定の長さにきちんと切り揃えないこと、と上田さん。そこへ、朝寝坊した、と鄭さんが登場。夜の朝寝坊ですか？と上田さん。そろそろの出番しょう、と安澤さん。醤（しょう）は肉、魚、野菜、穀物などに麹や酒を加え塩漬けにして作るもので、肉醤、魚醤、草醤、穀醤と種類が分かれるようです。食べ物にあわせてふさわしい醤を用いなければ、食べない。食氣sì qìは色氣の対で食欲ともされるが、ここでは肉の氣に対する食の氣。食氣は一字で餼（こめ）とする説もある。肉が多くあっても、ご飯の味を損ねるほど多くを食べない。このほうが肉の味がおいしくなる・・・と上田さん。おかずは副食、主食はご飯、上岡竜太郎もそういうてるよな、と安澤さん。唯、酒については無量、ただし亂に及ばぬとあるが本当かな？無量に飲めば私は乱れる。沽酒（こしゅ）は売買される酒、市脯（しほ）は市販している薄く切って塩漬けされた干肉。我々が飲み会のために買って酒を飲むというようなことはしない。祭事のお下がり、儀式や郷飲に際してのこと。史記に、不致膰俎於大夫というのがあったごとく、肉などが支給され、また、束脩（述而篇7）を授業料として贈答されるともあった。薑（はじかみ）は生姜のこと、これを撤（す）てずに食べられたが、多くは食べない、毒消しという概念があったのでしょうと上田さん。唯という言葉が気になる。酒を買って飲むというのは、この当時まだ普及していないし、沽酒という表現には偽物、正しくないという意味が入っている、と鄭さん。尊という字は酋（酒）を寸（手）で持つこと、神に捧げること、酒は元来神事で神人和合を求めるもの、酔っ払うために飲むというのは邪道なんでしょう。この唯というのは肉などは多く食べてはいけないが、唯、酒は別です、酒はなんぼ飲んでもよろしい、ではありませんか？と酒は別と強調する上田さん。肉も買って食べるという概念ではない。神や祖先に捧げたお下がりをいただく、酒と似たところがある。公に於て祭るときの賜肉は宿（しゅく）せず、その日の内に分けて食すこと。宿すことは、魯公室の祖霊に対して禮を失するとされたのであろう。公でない祭の肉は三日以内に食された。三日を過ぎれば食されなかった、と上田さん。三日にどういう意味があるのか？夏の三日は肉はもたないが、冬は一月はもつ、三度は何度ものこと、三日は何日ものこと、と鄭さん。ステーキ肉は三日ねかせると旨味成分がでて一番美味しいが、三日を過ぎるとダメになる、と川那辺さん。魚も釣りたてはダメで時間をおく、と安澤さん。腐る手前が美味しい、と声がする。食すときには語らず、寢るときには言わない。語は答えて述べること、食事の会話はあっても、論じることはない。言は寝言を言うこととは関係なく、臥して物を言うことはしない、座していう。食事においては、食することを大切にされた。shū shí疏食（そし）とは玄米のこと。食shíは食べ物。菜羹（さいこう）の羹とは肉と野菜を煮たこってりしたスープであるが、菜羹は野菜だけのスープ。魯論では瓜を必に作るとある。疏食菜羹と雖も瓜（かなら）ず祭る。瓜は漬物ともされる。供物が粗末であっても、祭るに必ず齊如たり。鬼神を敬して祭られた。そうではなくて、瓜祭というもの、お下がりを頂く前に、少しずつを器に盛り供え、飲食（煮炊き）を始めた人、燧人（すいじん）氏は木をこすって火をおこし、火を用いることを人間にもたらした。庖羲は、犠牲を養い庖厨（料理）して天を祀ったとされ、こういう人に感謝する祭りをするという説もある、と上田さん。包丁をもった料理人、伏羲でしょう、と安澤さん。これは前後からすれば、儀式におけるあり方を言っており、適当にしてはいけない、大事なことはこうしないといけないということではないか？酒は量りにくいのでコントロールできないから乱れると注意している。宿はいいものが宿っている。三日のところは三日過ぎれば鬼神が宿るからダメ。全体に祭事のことを言っている、と高津君。生活のものが入っており、いちがいに祭事とはいえない。学ぶものの模範とすべき。無量は量りにくいというなら難量とか不量ではないか、と鄭さん。不量は量れないで意味が違う、酒の量は量りがたい、と高津君。酒を飲めば分かるよ、と鄭さん。孔子は食べる事においても、言葉に慎重であった南容のごとく、きちんとされていたのでは、と上田さん。普段の食事の仕方がこういうのであれば嫌だな、庶民は食べる事にすら困っているだろうし、贅沢だし、祭事のこととみたい、と高津君。昔は、食事のときはしゃべるなといわれたものだ、こういうことはちゃんと伝わっている、酒はかための酒ともいう、と安澤さん。酒は神事、祭事にも喧嘩の後の仲直りにも必要、と鄭さん。
9）席そのものに関するか、席次に関するか両方にとれる。この当時には、椅子も卓子もなく、地面に鋪(舖）を敷いて席とした、それがきちんとしていなければ坐らない。諸侯は三重、大夫は再重とされ、鄕黨篇14からすれば、どうもこちらの方といわざるをえない。鄕人飲酒などにおいて席次が正しくなければ、それを指摘するといふことはなく、じっと立っておられた、ともとれる。位牌の並べ方についてもこだわった先生である、どうとるべきなのか、と上田さん。一度坐ってから坐を変えるのはつらい、禮にかなった仕方で位置ができていなければ、と現代訳がつけられている、と安澤さん。席、座す場所、席次、ただの敷物でいいのでは、と鄭さん。日本人なら自分で乱れたところを直して坐ればいいと考えるが、坐さず、で立っているのでしょう、と上田さん。自分で直してはいけない。何か不服がある、二度とそうしないように学習させるためにあえて自分では何もしない、と安澤さん。立ったままなのでしょう、と上田さん。そういうことでしょう、正しておられる、と川那辺さん。自分に合わない所には行くべきでない、加担しないほうが良い、と鄭さん。一度足をいれれば、と安澤さん。郷党ならまだしも、公式の場でも正しくなければじっと一人立ったままでいる？と上田さん。当然でしょう、と安澤さん。この五文字は強烈だなあ、と高津君。実際できる？と上田さん。閣僚会議で総理より先に坐った人がおられた、その場合、総理はその人が立つまで立ったままでいるべきなのね、と川那辺さん。国会の席に「席不正不坐」と貼り付けておけば、効きますね、と上田さん。
さて12月16日には高津君の華燭の典。12月23日をメドにお祝いの会をしましょう、忘年会も兼ねます。
2007年11月10日 鄕黨 10～13
本日珍しく沈さんが顔を出す。なんと奥さんと一緒。南春蘭さん。中国では夫婦別姓。子供ができればどっちにするの？沈南Xかな・・・父方になるのが多いが必ずしもそうするわけではない。文化大革命の嵐の後、春が来た、蘭のように咲いて欲しいとの願いから命名。安澤さん、名字真漂亮、你是更漂亮。天安門の安、毛澤東の澤、英雄の英、治国安民の治と自己紹介。奥さんにっこりどころか吹き出し笑い。
10)鄕飲酒の禮、杖者（じょうしゃ）は杖をもつ人、50歳になると家で杖す、60歳になると鄕で杖す、とされ老人のことを杖者といふ。鄕飲酒では、杖者が出る前に先に出ることはなく、杖者が出られれば残ることなく出る、ということでしょう。儺は"おにやらい"のこと。日本でいえば節分の"鬼は外"、儺儺nuó nuóと声をあげ鬼を祓う。鄕黨での行事、朝廷の公式儀式でもないのに朝服とあるから正装しておられる。阼階とは宗廟の正殿の東側の階段、主人の側、そこで宗廟に疫鬼が侵入せぬように追い払われたということでしょう、今でいうなら、節分の豆まきを黒服をきてやるようなものでそこまでしなくてもいいようなものだが・・・中国では節分の鬼退治みたいなものはありますか？と上田さん。旧正月の前の日、大晦日の花火、爆竹、と沈さん。ダダと言って鬼を払うとある、と安澤さん。鄕飲酒のところで何故儺の話がでてくるのかな？と上田さん。鄕飲酒のマナーについて述べ、おにやらいに移ったのはお酒に関係があるからじゃない、と川那辺さん。鄕飲酒禮にあり、おにやらいには酒がつきもの、お酒で神妙な感じになる、儀式にはお酒が必要、と童君。阿片とお酒、と沈さん。酒は厳粛なものであったが、おいしいところだけとって、酔っ払う、と安澤さん。手首を切って血を垂らして契りの酒とする、と沈さん。東北の"なまはげ"もヌオーとかウオーとか言っているのでは、と川那辺さん。鬼退治には弓を鳴らすというのがあります、と上田さん。中国では鬼の面をつけた人の周りを皆が踊り、最後に火を渉って新年を迎える、と童君。もっと恐ろしい鬼の仮面で鬼を追い出すというのもある、と沈さん。
11) 儀禮、聘禮に、「大問曰聘、小聘曰問」とある。大問には卿相を派遣し、小聘には大夫を派遣するとされる。問人於他邦とは以前に派遣した使者に再び訪ねさせることで、すでに相手国の君を知っており、よろしくたのみますとの気持ちを伝えるべく、再拜してその使者を見送られた。君主でなく友人とみる説もあり、親しくその友人に見（あ）うが如く、再拜してその使者を見送られたともされる。以下は別の話であるが、季康子が先生に藥を饋（おく）られた。食を賜えば必ず嘗めて以て拜すのが禮とされるようだが、先生は拜してこれを受けられたが、その藥を嘗められなかった。その理由がよくわからないが、丘（私）はその藥に未だ達（つう）じていないので、敢て嘗めないとおっしゃっている。孔子の疾（やまい）に応じて藥を饋（おく）ったというより、疾とは関係なく藥を饋られたのか？と上田さん。当時はメールもなければ、郵便もなく、交信の手段はむつかしかった。ここまでして使者にお願いするのは、大事な事を託したからでは、と高津君。この時期は道中の安全は確保されず、生きて帰ってくることも危ぶまれ、これで最後というような気持ちもあるのでは・・・治安も悪く追いはぎすらと安澤さんが合いの手・・・送られた人も責任を感じて、いい加減なことはして帰ってこれない、と川那辺さん。茶でもそういう作法はないの、と安澤さん。その域には達していませんので、と川那辺さん。童君何を必死に見ているの？と上田さん。おにやらいですが周禮に、方相氏が之を掌る、とあります、と童君。黄金四目蒙熊皮、戈を執り、楯を揚げ、玄衣未裳して、儺儺と唱え、疫鬼を毆ったというものでしょう、と上田さん。孔子の時代には薬は珍しいもので贈り物とされた、と童君。何故、敢えて嘗めないというのか、と上田さん。孔子と季康子の関係は？暗殺とか、と安澤さん。季康子は孔子を尊敬していたと思う、と上田さん。毒を酒にまぜてというのはよくあること、と沈さん。韓国では臣下に薬を渡すのは、死ねの意味、季康子からきたものであれば注意する・・・というてみただけと沈さん。薬は大変貴重なもので、間をとって、その場であけないでという風な禮ではない？と川那辺さん。孔子ですらその薬の効能が分かっていない。季康子は孔子を尊敬している、大事に思っておられ、誰かからもらった貴重な薬を孔子に配られたのでは、と高津君。南春蘭さんの名前の由来を聞いた安澤さんが本日冒頭の絶妙の自己紹介。マルクス経済学の沈さん。南さんも同じく経済学専攻。研究中に先輩の沈さんと・・・・研究yán jiūは煙酒yān jiǔに通じると童君。煙酒中に沈さん何を教えていたのか、タバコをふかして、酒をついで研究ねえ、と上田さん。
12) 廏（うまや）焚（や）けたり。廏は馬を養うところ、馬車用の馬、孔子が司寇の時とされる。朝政ですから朝廷での執務中に火事の知らせがあったのでしょう。朝を退（まか）りてとは、執務の途中か、終へてか？多分おわってからでしょう。人傷（そこな）うか? 馬を問われなかった、とありますがどうでしょう、と上田さん。これを読むと仁徳とはこういうことかと感じられる、と高津君。普通は馬のことを聞くが普通と違った、編者の意思がある、と安澤さん。人為的なことだが、その人を咎めず、誰か怪我をしたものがあるかを聞いた、と高津君。司寇の時だから馬車は必需、馬は大切なものであった。邸宅が焼ければ家族の安否を聞くが、廏が焼ければ、馬の安否を問うのが普通、と上田さん。春秋時代では馬は珍しく貴重なもの。北狄には馬が多いが南には馬は少なく、魯は小国であり、貴重なものであった。これは古典的人本主義、と童君。胡錦濤も人本主義と言っている、と安澤さん。春秋時代は鉄器時代への移行期、封建時代には奴隷が農民となり、農民を大切にするという意識が生まれてきた、と沈さん。五人の奴隷と馬一匹でしょう、と南さん。現代中国も経済発展により、そういうことになってきている、経済が発展すれば政治に参加する意欲がでてくる。毛沢東時代のように押さえつけるのみではなくなっている、と沈さん。君子は義に、小人は利にとあったがその利に馬、義に人を置き換えてみたい、と高津君。
13) 君が食を賜うとは料理した食べ物、必ず席を正してとは、敷物をきちんと整へること、先ず嘗（な）むとは、味見をすること、後でそれを家族、親類、縁者に分け与えたとされる。腥（せい、なまぐさき）とは、豚肉中で星のような部分とされるが何処の事か？後には生肉をさすようになった。これは宗廟に薦（すす）められるが、生肉のままでなく必ず熟（に）てから供へられた。生（せい、いける）は生きた家禽、家畜の場合は、これを畜（やしな）うとは、祭祀に使うために飼っておくこと。侍食（じしょく）するとは君と食を共にすること。君祭とは、先に瓜祭とあったが、君も少しずつを器に盛り供え、飲食（煮炊き）を始めた人に感謝する祭り。臣はその時、祭らず、先に飯（はん）すことが禮とされた。客としての禮では、主人が箸をつけてから飯するが、侍食や君祭においては、君が感謝の念を表はされると先に臣が飯すことが禮であったようだ。ここからは別の話。疾（しつ）し、とは（孔子が）病気になること。視とは見舞うこと、東首（とうしゅ）は東枕とすること。この（陽が上る）方向に首を向けることは、生気を受けるとされた。加（か）すは着ること、朝服を身に着ける。紳（しん）は幅広の帯、拖（し）くは、引き伸ばすこと。病臥しており、著衣束帶して君を迎えることができないため、朝服を身に着けて臥し、その上に広帯を載せ、出仕の服装の体を整へてお迎へされたとなりますかね、と上田さん。先飯は毒味のこと、と安澤さん。昔は毒薬を使うことが多かった。君から来るのは暗殺ではなく明殺。日中戦争前中国の武術家が日本人に毒殺された、と沈さん。先飯は初めご飯だけを食して祭りが終わるとお下がりの肉や魚を食べたという説もある、と高津君。明殺とくればご明察、と安澤さん。明察秋毫、鉄面無私、大徳寺は京都の名刹と次々に繰り出す安澤さん。黙殺もあれば悩殺もある。悩殺て何と童君。沈さんは南さんに悩殺された？南子ていたでしょう。孔子を誘おうとした悪女といわれるが、才女。衛の殿様に会うには南子を通さないとダメというくらい。若い美男子の昔の恋人を呼び寄せて重用するのを殿様に認めさすほどの才媛。更に中国語の飛び出す安澤さん。包拯、包公日本でいえば大岡越前。ささいなことから真実を見出すのは明察秋毫、裁きは公平無私、鉄面無私。老公とまで来ると、安澤さんは中国人！！！老公とは主人のことです、と童君。鄭さんは鄭公にしようと沈さん。名字真漂亮、你是更漂亮。をどういうタイミングで口にすればいいのか安澤さんに聞く童君、今日の一番の言葉は？悩殺です。12月23火日のお昼に高津君のお祝いの会と決まりました。
2007年11月17日 鄕黨 14～16
張伯承君参加、仏教大学比較思想、洋務運動と幕末思想などを研究中。
14) 大廟に入るに、毎事問う。これは以前にもでており（八イツ篇15）、よほど印象深い光景であったと思われる。何故ですかね？と上田さん。はじめてご先祖の廟に入られたとき、心得を係りのものに聞かれた。毎回でなくはじめていったとき、分からない事は担当に聞かれた、と貝塚先生はいっておられる、はじめてのところはええ格好せず、専門家ぶらずにちゃんと聞く。孔子はいつもは禮の専門家、禮に対して宗廟に入るときにそうされたことが印象的にうつっていた、と安澤さん。孔子は禮にうるさい、相手にとってはプレッシャー、復唱して教える。きちんとして禮を伝えたい、と川那辺さん。自分のわからないことは、素直に聞いたのでは、と中村（圭）さん。毎事問うということが二回もでてくることからも、普通の人はこういうことはしなかったと思える。分からないことを聞くのはあたりまえで、二度もいうことはない。奇異に感じることをあえてやっているから記したのでは、と上田さん。知ったかぶりをせずに、素直に聞いていたというところもあるだろうし、ひょっとして禮も少しずつ流行に押し流されて、変わっていたのかもしれない。たとえは、私たちが法事のときに昔からのしきたりを知らなかったら、聞くでしょう。これでいいのねと確かめていく。最初はきちんとしていても、だんだん楽する方向に流れていくでしょう。その前はこうでしたね。としつこく聞くことで、安易に流れていくことを止めるというような心理的プレッシャーというか。と川那辺さん。おばあちゃん、おじいちゃんに聞くと収拾がつかなくなる、と安澤さん。毎事は毎度毎度のことではなく、分からない事を聞くというニュアンスです、と高津君。張さんも賛同。席不正不坐同様、結構いやみな行動だったのでしょう、間違いを正すような行動じゃないですか、ついている人や弟子に伝えるパフォーマンスではない？と上田さん。三綱五常という言葉が中国にあります。「三綱」は君臣・父子・夫婦の間の道徳。「五常」は仁・義・礼・智・信の五つの道義と、張さん。
15) 朋友が死んで歸する所無しということは、引き取り手がいないということ。そういう朋友がおられたとなる。そのときに、私のところで殯（かもがり）したらよいといわれた。朋友の饋(おく)りものは車馬というから、当時としては貴重なもの。それであっても、祭肉でなければ、拜せずですから、今でいえばお下がりの肉をもらえば拝するがキャデラックをもらっても拝しないということになります、と上田さん。鄕黨篇の禮というのは、一般人の価値概念からかなり外れているのもが多いみたいな気がして。例えば、今のキャデラックと肉みたいに。鄕黨篇というのは、本来論語がこの篇が最後のものであって、後はその後つけたされてものだと鄭さんが言っておられたように、この篇は、編纂した弟子たちが、他の篇では入りにくい、またとても文章が短く、前後関係のわかりにくいものが多くて、この篇を読んでいると、おおよそ孔子の禮というものが、現代では勿論、ひょっとしてその時代でも一般人の価値概念の枠の外にあったんじゃないかと川那辺さん。前の友達は行くところがない、後はすごい金持ち、友達から高価なものはもらわないほうがよい、と安澤さん。最初の方は情けがある、それでも違った禮については、非常に手厳しいと川那辺さん。追放されたケースもある。義を重んじる。お供え物と車馬。車馬は経済的なもの。お供え物は気持ちのこもった物。車馬とお供え物のちがい。値段的なものではない。禮についてはきちんとした人。祭肉についての気持ちが強い、と高津君。ここには二種類の朋友があり、一人は貧者、一人は富者。これに対する先生の対応の仕方がひとつであり、車馬と祭肉への対応がもうひとつ。古来、友は財を通ず、財を分かち合うべきものとう考え方があり、貧なら貧を分かち、富なら富を分かつが前編、お下がりは祭祀をされた方のご先祖からのものであり、経済的なものではない、と上田さん。中国で言う朋友とは、周禮でかかれているのだが、書かれていることはしなくてはならないもの。ご先祖さま、日本での天皇かな、ご先祖様は尊敬しなくてはいけない、と張さん。朋友というのは日本で言う友達とは違う。何かあったときに助けてくれるのが朋友、友達だったらそうしてくれて良い、よく知っているとか付き合っているという程度の事ではない、と高津君。
16) 寢（い）ぬるは眠ること。尸(し、かばね)せずとは、死者のようにはならない、脚を伸ばして布をかけられているような格好にはならない。膝をたてる、横臥されたとなろうか。居は家の自分の部屋に居ること。容（かたち）づくらずとは、容儀を整えたりせず、リラックスしていること。齊衰者とは斎戒している者、狎(な)れるとは、平素より相親しいこと。必變は如何に親しくとも、顔色を変えること、哀の心をあらわす。冕をつけた人、正装した人や瞽者（めくら）を見て、褻(せつ、なれる)とは、親しくはなく目下でよく見知っていること。貌（ぼう）すとは、その人の位にあわせて容貌をつくられた。凶服は死人を送る衣服。式は車の橫木を?み、頭を下げる格好。車上で敬すること。版は戸籍の記された木版。「周禮」に「民數を王に獻れば、王拜して之を受く。とあり、民の數を重んずればなり。」ということらしいが、なんでこんなものを背負うのか？孔子も同様に版を見れば敬せられたとなる。迅雷風烈とは自然現象であるが激しい気象状態、孔子は顔容を整えて之を敬したということ、と上田さん。見苦しい格好をして寝ることはない、と中村さん。ぼくらは普通寝るときは足を伸ばして寝ているからといって見苦しい、死んだ人間みたいとは思わない、と上田さん。寝るときでも気をはって寝ておられた、と川那辺さん。三蔵法師は手を横にして寝ている、あ、そうそう、この間どこかでお葬式をしてたんですよ。そうするとその前を通るおばさんたちが大きな声を上げて騒ぎながら、通っていて、川那辺さんが、今でもお葬式を見ると親指を隠してそっと端をと歩くのが身についていると言っていたので、川那辺さんが見たら、怒るだろうなぁと思ってと、高津君。え？？私そんなに怖くないよと川那辺さん。笑 でも、僕らでもお隣がお葬式をしていたら、いくら自分の家の中にいても、テレビを見て笑うなんてことはちょっとひかえて、少しボリュームを落としてって思うよなと安澤さん。いやぁ、はっきりはわからないけれど、版は、版図のことでそれはいろんな土地の訴訟をするときに大切なもので何かしらそれが必要なときだったのかな？と高津君。あ、そうだねぇ、土地の訴訟をしたり、戸籍はやっぱり税の元になるものだし、それを大事にしていたと、安澤さん。で、そういう人を見たら、敬しておられたというんだから、こういうことが頻繁にあったということなんでしょうか？そんなものを頻繁に運ぶというのもよくわかりませんねぇと上田さん。ところで、雷が落ちるのは神様の怒り、悪い事をすると雷が落ちると小さい時にいわれた、と高津君。日本では雷に"へそ"を取られるという、と安澤さん。平和なときでは分からない、上を見て寝ていると、襲われたときに一瞬では立てない、と中村（典）さん。寝込みを襲うといいます、と安澤さん。寝るは弓、走るは風、居は亀といいます、冕をつけるのは大人になること、また、知識のある人、士大夫のこと。瞽者、目が悪い人、不自由な人は尊敬された、天、鬼、神様は尊敬されるべきものです、と張さん。
2007年11月24日 鄕黨 17～18
本日はトリオ、童君、川那辺さん、上田さん。三人成虎と童君。二人が虎を見たでは信憑性がないが、三人が見たとなれば虎がでたことになるそうです。本日の話もトリオですから虎は虎となるでしょう。
17）車に升（のぼ）るは乗車すること。正しく立ちて綏を執るとは、立つべき位置があり、そこには綏、車から下げられた縄、がありそれを握る。一方御者が、樊遅が孔子の御者として登場するが、馬車を操縦するには、九丈九尺（約20ｍ強）前方を確認し、馬と車の接続部に注意していなければならないとされる。車中にて?顧せずとは、孔子が後ろを振り返らないこと、疾言せずは声高にしゃべらないこと、ともに御者の前方注意を散漫にしない配慮、親指せず、とは車上の高さから車下の人を指差すと、指された人が戸惑う事になるとされるようである、親指で指すというのはへんですね、と上田さん。このころの普通の車は運転手一人、主人一人、戦のときには、御者一人、弓（射手）一人、槍者一人の三人、と童君。衛の国では、衛公と南子が前、宦官と孔子が後ろに乗るとあり、君公はもう少し大きな車に乗っていた、綏をとるだから立ったままでしょう、と上田さん。親指は自らを指差すことです、と童君。それって、自己アピールをするってこと？と川那辺さん。反感をもたれるでしょうね、と童君。疾言は早口でしゃべることでは、と川那辺さん。士大夫は容儀が重要で、親指も疾言もダメ。車の内に居る人達は景色として、車外の人から見られている。美少年が通ると婦人は花を投げる、醜男なら石をなげる、と童君。ええっ！石を投げれば誰だかわかるでしょう、と川那辺さん。一人でなげれば失礼、皆で投げれば分からない、と童君。本当にそんなことってあるの、と川那辺さん。六朝時代のことだけれど、「世説新語」にでている、と童君。女の人が乗っているときにも投げるの？と川那辺さん。女は乗りません、と童君。なんでも、大学で女性が自転車の後輪に突っ立って、前でこぐ男性の肩に手をあてている姿にはビックリしたそうです。
18）色みて斯に舉（あが）らむとは、色は気色ばむこと、人の気配を感じバタバタと飛び上がること。翔（かけ）りて而して後に集（とど）む、とは飛び上がって何処かにとまること、ここでは山梁、山の橋の上。山梁の雌雉、時なるかな時なるかな。これをどう解釈するかはさておいて、子路これを共し、三たび嗅ぎて作（た）つからみるのですが、一般に共は供で雉をつかまえて料理して先生に供したが、先生は三度臭いを嗅（か）いで食べずに立ち去られた、とされる。昔から、場違いな話と思われ、嗅は鳴く、あるいは羽をひろげるという字と間違っているとされ、子路が共（むか）うと、三度鳴く、あるいは羽ばたいて飛び去ったと解釈されるようでもある。そうすれば、時なるかなとは、人は乱世でびっくりして逃げ去り、どこかに集まるが、所を得ず、時も失うことが多いが、雉はさっと逃げて安全な所に身を移し、まことに時を得ているとなる。それにしても、何故、これが鄕黨篇の最後に置かれたものか、と上田さん。何が起こったのか分からないが、飛び立った。動物的感覚で一番良い時に帰ってきている。孔子は本領を発揮することができず、なかなか良いタイミングが合わずに放浪しさまよっていた。自分を雉にたとえ、もし一番よいときなら、と自分を重ね合わしている。子路が選択肢をだしたが参加しなかったり、参加しようとして弟子に止められたこともある。良い時をみつけるのは、むつかしい、しかし、雉は簡単にそれをしている、でも、その後に続く「子路これを共し、三たび嗅ぎて作（た）つ」は、前と何の関係があるのか、さっぱりわからない。と川那辺さん。時なるかなとは、感嘆のことばです、と童君。子路がつかまえどきと思った、それにしても、鄕黨篇で区切りがつき、先進以下は後に付け足されたものという風に聞いていたでしょう、何故最後のところで車の運転とか、雉の話になるのか、どうみても終りらしくない、起承転結の「結」となるにはあまりにお粗末な感じがしてと川那辺さん。学而篇の始まりとこれを比較すれば、つりあいがとれない。隠者のような生き方でなく、社会のなかで生きてよりよいものを作りたいというのが孔子の方向。だのに、ここにきて雉の方がうまく生きているでは、老子みたいな話になってしまい、けったいな具合になる、と上田さん。嗅は戞だという、と童君。戞は鳴くとされ、また、古闃の反なり。兩翅を張るなり。ともされる、と上田さん。本当に鄕黨篇が、最終章なのか、いささか疑問。それと次の先進篇になると、先進と呼ばれる弟子たちが、いったい孔子が何歳ころについた弟子たちなのか？十哲と呼ばれる人にもかなりの年齢差があるので、孔子のかなり若い頃から弟子としてやってきた人たちは、孔子と共に成長して経験をして、いろんな考えをもっていただろう。でも、優秀な弟子と言われてもかなり、孔子との年齢差がある人たちは、いったい孔子の年齢のどのあたりから、ついてきているのか？その年代を裏付けるようなものがあれば、これから先の先進篇の理解も違ってくるだろうし、そういうことを童君知っていたら教えてくれる？と上田さん。確かに、年齢から考えるとこれ本当なの？ってひょっとして架空の存在じゃないの？と疑問をもってしまうところもありますよね。そういった時代考証をするということも、理解を助ける良い材料ですねと、川那辺さん。童さん、「あの～～今おっしゃったこと日本語で書いてください」と上田さんへ。童さん、来週が楽しみです。上田さん、長年勤務された国際会議場を１９日付けで、無事退職。長い間ご苦労様でした。上田さんの第二の人生を祝して、来月高津君の結婚祝い、上田さんの慰労会、そして論語の忘年会とたくさんの意味を持った飲み会は、来月２３日です。安澤さん、間違えないように。会場は、上田さんがセッティング中。来週は、「先進篇」へ。
論語読書会その3へ
